弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

アメリカ

2021年5月16日

グレート・ギャッビーを追え


(霧山昴)
著者 ジョン・グリシャム 、 出版 中央公論新社

グリシャムの文芸ミステリーというので、読みはじめました。やはり、さすがですね、途中で読み止めるわけにはいかなくなります。でもでも、心を鬼にして、本を読むのをやめ、重い心をひきずりながらも準備書面づくりを始めました。なんといっても生活していかなければなりません。今の生活を守るためには、なんてったってお金を稼がないといけないのです。
グリシャムの今度の本には弁護士はちらっとしか出てきませんし、法廷場面も、ほんのわずかだけ。主要な舞台は書店。新刊本だけでなく、高価な、それも超高価な初版本を扱う珍しい書店です。
アメリカでは書店で作家によるサインセールをするとき、一人でなく複数の作家が並んでするという。ということは、どちらが読者に人気があるのか、一見して分かることになる。
一方は長蛇の列で、もう一方は誰も並んでいないなんて、泣けてきますよね。映画『帰ってきた寅さん』でも、後藤久美子がサインセールしてましたっけね...。
それにしても、初版本を集める人がいて、それが高額で売り買いされる現象というのが私にはまったく理解できません。本は本でしかなく、初版本なので価値があるなんて、思いもよりません。私なら、作者が次々に加筆・修正していったとしたら、最後のものを読みたいです。そして、自分がそうしたら、最後のものこそ読んでほしいです。
主人公は売れない女性作家です。そして、その周囲に作家群がひしめています。その大半が、あまり売れていない作家たちです。インスピレーションが枯渇してしまった作家たちは、もはやどうにもならないようです。私もつくづく、兼業モノカキで良かったと思います。だって、どうやって、あんなにインスピレーションが次々に沸いてくるのでしょうか、不思議でなりません。
ミステリーなので、ネタバラシはしませんが、最後のドンデン返しがすごいです。なるほど、そういうことだったのか...という思いと、ええっ、そ、そんなことあるの...、という複雑な思いに駆られました。いつもノーベル文学賞候補にあがる村上春樹が訳しています。
「グリシャムのことは、もうだいたい分かった、とあなたが思ったそのとき、彼はあなたを驚かせる」
このキャッチフレーズは、あたっています。
(2020年10月刊。税込1980円)

2021年5月12日

世界を動かす変革の力 ―ブラック・ライブズ・マター


(霧山昴)
著者 アリシア・ガーザ 、 出版 明石書店

2020年5月、ジョージ・フロイドが警官に首を8分あまりも押さえつけられ、「息ができない」と訴えたのに、絞殺された。今はスマホで簡単に撮影・録画できるのですよね。この映像は私も見ましたが、本当にひどいと思いました。黒人を自分と同じ人間だと考えていたら、あんなことが出来るはずもありません。
2020年6月、ブラック・ライブズ・マター運動が再燃し、アメリカだけでなく全世界で抗議運動が広がり発展した。ブラック・ライブズ・マター運動について、SNSを通して一瞬で広がった運動というイメージをもつ人は多いかもしれない。でも、長年にわたる黒人への弾圧の歴史に対する集団的な怒り、そして長年の蓄積と組織化があってこそ、広がりのある運動に発展したものだ。この本は、そこを詳しく解説しています。
インターネットのハッシュタグから運動を起こすことはできない。運動とは、人間の集団が起こすもの。運動には正式は始めと終わりの瞬間はなく、決して一人の人間が始めるというものではない。運動とは、電気のスイッチよりむしろ波に近い。運動は、分断された人たちが、どのように連帯できるかという物語だ。何もないところから運動は生まれない。
レーガン大統領は「福祉の女王」というインチキ宣伝をし、「逆人種差別」として黒人の地位を白人と同等に引き上げることに抵抗した。クリントンも「ギャング戦争」との戦いによって、黒人コミュニティを荒廃させる法律をすすめた。妻のヒラリーも同じだ。
組織化とは、関係をつくり、さらにその関係性を活用して、一人ではやりきれないことを連帯の力で成しとげること。そして、組織化の使命と目的は、力(パワー)を築きあげること。力がなければ、自分たちに損害を与えている地域社会を変えることはできない。
世の中には2種類のリーダーがいる。もっとも弱い立場のために力(パワー)を使おうとする人と、そうした住民を食い物にして私権のために動く人だ。
現実の黒人は、生きのびるためなら、たとえそれが矛盾した行動だったとしても、なんでもする。99%は大部分が人種的マイノリティだが、白人男性も少しいる。1%は数少ない例外を除いて、ほとんど白人男性だ。
ところが、99%の人々は、努力さえすれば、いつか1%の一員になれると信じている。そして同じ99%の内部で、自分は金持ちになれないのは、お前のせいだと他のマイノリティと相互に非難しあう。
2015年にアメリカで307人の黒人が警察に殺害され、2016年には266人の黒人が殺された。この数字には、自警団や警備員による殺人はふくまれていない。
ブラック・ライブズ・マターがリアルに政治組織として組織化されたのは、2014年のこと。
団結にも努力が必要だ。私たち左派は、人間らしく尊厳のある生き方をみんな示すことのできる存在でなければならない。
黒人の命は大切だと宣言するのは、黒人以外の人々、とくに黒人以外のマイノリティの命の大切さを否定しているわけではない。
なぜ黒人は、全米人口の12%でしかないのに、いま刑務所や高地所の収容者の33%を黒人が占めているのか。なぜ黒人女性は白人女性の2倍近くも収監されているのか。なぜ、黒人女性の妊産婦死亡率ははるかに高いのか・・・。
クリントン夫妻は、現実には黒人コミュニティのためにほとんど何もしなかった。ところが、若い黒人有権者はクリントンにサンダースの2倍の票を投じた。
オバマという黒人大統領の政権が8年間続いたが、アメリカの黒人社会に約束どおりの希望と変化はもたらされなかった。刑務所から7000人もの人々を釈放した一方、何十万人もの移民を強制送還した。
権力的立場にいる者は、他人を犠牲にして、自力で得たものではない恩恵を手にしていることを、まず認めようとはしない。
運動を立ち上げるときは、よく、居心地のいい相手や、考えが一致し、世界観も共通する人だけを相手にして連携しがちだ。しかし、それでは、同質的で小規模にとどまることに安住してしまう。真の変革を実現するには、数百万人規模の運動をつくりあげる必要がある。
インポスター症候群というのがあるそうです。聞いたことのないコトバです。客観的には高い知性や能力創造性を身につけているにもかかわらず、そのことに自信がもてず、自分は「偽物」だと感じている人々のこと。もうひとつピンとは来ませんでした。
堂々356頁もある大作です。アメリカですすめられている黒人の運動についてのショッキングかつ、とても納得できる本でした。
(2021年1月刊。税込2420円)

2021年4月 9日

ベネズエラ

(霧山昴)
著者 坂口 安紀 、 出版 中公選書

南米のベネズエラのチャベス大統領には期待していたのでしたが、この本を読んで、しっかり幻滅してしまいました。
チャベスは、国民を「敵と味方」に二分し、ベネズエラ社会を二極化させた。
たとえば、住宅をつくったら、チャベス支持派を優先入居させるというのです。それはいくらなんでもひどいでしょう。
今、チャベスが後継者として指名したマドゥロ大統領が政権を握っていますが、ベネズエラの経済は破綻し、民主主義は見る影もなくなり、国家制度や国のインフラの多くが崩壊しっています。経済成長率は2014年以降、ずっとマイナス。貧困率は9割をこえ、石油の産出量は5分の1にまで落ち込んでいる。
食料や医薬品が欠乏し、国民の64%が平均して11キロも体重が減ってしまった。総人口3000万人のうち500万人が海外へ脱出した。治安もひどく悪化し、世界でもっとも治安の悪い国になっている。
マドゥロ政権を支持する人も、チャベス派の政権の継続を願っているだけで、マドゥロ大統領個人を支持する人は多くない。
私がこの本を読もうと思ったのは、なぜ、そんなひどい状態になってしまったのに、マドゥロ政権が続いているのか、なぜ軍部によるクーデターが起きないのかを知りたかったからです。その答えの一つが軍部にありました。
マドゥロは軍人出身でないため、みずからの支持基盤や影響力をもたない。そこで、第一に、多くの軍人が政治ポストについている。32人いる大臣のうち11人、23の州知事のうち11人が軍人。また、国営石油会社をはじめ、経済的恩恵の大きいポストも軍人に割り当てられている。さらに、次々に将軍に昇進させ、2000人もの将軍をかかえている。このように軍の政治化がすすんでいる。
ベネズエラの国軍内部には「太陽カルテル」という麻薬取引に関わるグループが存在し、マドゥロ大統領以下の政府高官そして軍高官と親族たちが関わっている。
汚職や麻薬取引、そして拷問や人権弾圧などの人道的犯罪に手を染めてきたチャベス派幹部や軍の高官らは、政権が交代すると、法の裁きを受けることになるのは必至。なので、彼らは、必死でチャベス派、マドゥロ政権を死守しようとする。厳しい国内外の状況にもかかわらず軍の支持が揺るがないのは、ここにも理由がある。
なーるほど、そういうことだったんですね。でも、それにしても、こんな異常な政治体制がいつまでも続くはずはありませんよね...。
これからなお、多大の苦難と犠牲をともなうのでしょうが、それでもきっと近いうちにベネズエラが正常化されるだろうことを心より期待しています。
(2021年1月刊。税込1870円)

2021年4月 2日

囚われし者たちの国


(霧山昴)
著者 バズ・ドライシンガー 、 出版 紀伊國屋書店

アメリカの白人女性学者(英語教授)が世界の刑務所を訪問し、また刑務所内で収容者教育を試行していきます。大変勇気ある試みです。実は、今の刑務所システムの基本はアメリカが世界に輸出したものだったんですね...。
アメリカは、世界でもっとも大勢の人々を投獄している国。230万人が鉄格子の中に暮らす。成人100人につき1人の割合。これはアメリカは世界人口のなかの比率として5%にすぎないのに、囚人の人口では実に世界の25%を占めている。現在、全世界で1030万人が鉄格子の向こうで暮らしている。しかも、なんらかの矯正プログラムの監督下にあるアメリカ人は700万人にのぼる。これは成人の31人にひとり。また、成人の囚人の25%が精神疾患をかかえている。
薬物犯罪による囚人が連邦刑務所の51%を占め、強盗犯は4%、殺人犯は1%にすぎない。
25年以上の服役者のうち、終身刑に服しているアメリカ人がカルフォルニア州だけで、3700人いる。アメリカで終身刑に服しているのは16万人。そのうち、未成年のときの犯罪で終身刑になった人が2000人以上いる。
少年受刑者の10人にひとりが刑務所内で性的暴行を受けている。
刑法にもとづき監視対象となっているアメリカ系アメリカ人(黒人)は、1850年当時の奴隷より人数が多い。黒人のほうが白人よりも6倍も刑務所に入れられやすい。黒人男性の6人にひとりに服役の経験があった(2001年)。
黒人の子どもの4人にひとりは、18歳になるまでに親の投獄を経験する。
アメリカの家庭裁判所で扱われる少年事件のうち、94%が黒人がラテン系アメリカ系。
黒人男性150万人が行方不明になっている(2015年)。これは、24~54歳の黒人男性の6人にひとりは、若くして死亡したか刑務所に入れられたということ。
著者は、刑務所内で教育してみると、素晴らしい聡明な市民、人的資源が牢獄に閉じ込められていることを実感する。
アメリカは、大量投獄システムを産み出し、1990年から2005年までのあいだ、10日に1ヶ所のペースで新しい刑務所が開設された。それは1970年代に始まった麻薬戦争のおかげだ。
アメリカ政府が犯罪者の矯正に支出するのは500億ドル超。過去20年のあいだに刑務所につぎ込まれた費用は、高等教育費の6倍。若者ひとりを投獄すると、年に8万8千ドルかかる。同じ人物を教育するのには、年に1万653ドルが必要なので、その8倍もかかる。アメリカは、刑務所のために540億ドルも支出している。これを人材育成とインフラ再建にふり向けようとしている。
アメリカでは囚人の数が増加の一途をたどっているが、それを犯罪発生率とのあいだに相関関係はまったくない。つまり、刑務所のもつ抑止効果など幻想にすぎない。刑務所行きを恐れて犯罪を思いとどまる者など、ほとんどいない。
アメリカで投獄される人の数が減るにつれて(増えるにつれてではない)、犯罪率も低下していった。これが現実。
刑務所は、家庭を破壊し、社会規範を教えるうえでの親の役割を弱め、経済力を削ぎ、社会に反感を抱かせ、政治を歪めてきた。
囚人の子どもは、自らも刑務所に入る確率が高いことが判明している。
服役している期間は、社会における、その人の信頼関係や人間関係を著しく損なう。投獄を通じて、このような市民を生み出しておいて、地域社会がより安全になるなど期待できるはずがない。
著者はルワンダに行きました。あの大量虐殺があった国です。今では、犯人は死刑になりません。人民裁判にはかけられていますが...。ルワンダの裁判は、「許し」を目ざす。許しとは、被害を受けた者が、もはや加害者を避けたり加害者に復讐したりといった負の感情につき動かされることなく、反社会的でない建設的な動機を反動力に行動できるようになる状態のこと。被害者意識は、受け身の姿勢につながり、日々の仕事がうまくできなくなったり、諦めが早くなったりという結果を招く。
アメリカでは、女性囚人の75%に子どもがいる。親が投獄されている子どもが270万人もいる。
アメリカの刑務所では、8万人が独房監禁の状態にある。他の拘禁施設を含めると10万人にもなる。
ブラジルなど中南米の刑務所は、ギャングに牛耳られている。
アメリカの拘留センターで6万人もの移民が働かされていた(2013年)。これは報酬が時給13セントと、きわめて低く、一種の奴隷労働だ。
アメリカの民間刑務所は、経費節減のため、訓練を十分にせず、サービスの水準を下げ、人件費を低く抑えている。
アメリカの刑務所の囚人の8割は、健康保険に入るのは無理なので、出所してからの生活の保障がない(投票権がないので政治から、あてにされていない)。アメリカで、投票権を奪われた585万人のうち、200万人あまりはアフリカ系アフリカ人(黒人)だ。
ノルウェーの刑務所は、小規模で定員50人未満というのが大半を占めている。そして、それが全土に散らばっているので、家族面会は、その気になれば簡単だ。
アメリカでは囚人の刑期の平均は3年。ノルウェーでは、8ヶ月。そのうえ、ノルウェーでは刑期の3分の1を過ぎると、一時帰宅を申請できるし、刑期の半分をつとめたら、刑務所外での生活が認められる。その結果、成果として、再犯率は20%でしかない。ノルウェーでは、出所されたあと、刑務所にいたことが大きな汚点になることはない。誰も気にしない。
著者はニューヨークで暮らす不可知論者のユダヤ人。身内には、ナチスドイツによって殺害された人がたくさんいるため、ウガンダなどへ行ったとき、なんとなく分かりあえるようです。
世界の刑務所の実情と問題点が430頁もの本に要領よく紹介されています。これからも身の安全には、くれぐれも気を配って、元気にご活躍ください。
(2021年1月刊。税込2310円)

2021年3月 5日

怒り


(霧山昴)
著者 ボブ・ウッドワード 、 出版 日本経済新聞出版

トランプの4年間を総括するというサブ・タイトルのついた本です。著名な記者がトランプ大統領に直接、オンレコで取材したことがベースになっていますので、トランプ前大統領としても全否定できるはずがないものです。
アメリカのすばらしいところは、この本がアメリカで150万部も売れたということです。アベ前首相の回顧録がつくられたとして、それが何万部、何十万部も売れるとは、私にはまったく思えません。
トランプ前大統領の人間性を知れば知るほど、こんないいかげんな男にアメリカ人の多くがコロッと騙され、今なお共和党議員の多くが信奉しているというのが信じられません。
トランプは取材した著者に対して、「すべてのドアの向こうにダイナマイトがある」と答えた。
予想外の爆発で、なんもかもが変わりかねないという意味だ。しかし、そのダイナマイトは、実はトランプ自身だった。
肥大した個性、組織化の失敗、規律の欠如。トランプは自分が選んだ人間や専門家を信頼しない。アメリカの社会制度の多くをひそかに傷つけるが、あるいは傷つけようとした。人々を落ち着かせて、心を癒やす声になるのに失敗した。失敗を認めようとしない、下調べをきちんとしない。他人の意見を念入りに聞かない、計画立案ができない...。
トランプは、長く、自分に異議を唱える人間を傷つけてきた。敵だけでなく、自分の部下やアメリカのために働く人々に対しても同じだった。
トランプはよくしゃべる。ほとんど、ひっきりなしにしゃべる。そのため、かえって国民の多くに信用されなくなった。国民の半分ほどが絶えずトランプに怒りを覚えたが、トランプ本人はそれを楽しんでいるように見える。
トランプ政権では、何事が起きても、おかしくない。何が起きるか、見当もつかない。
トランプ政権のもとで、アメリカの大統領の権力は、いまだかつてなかったほど強まった。トランプは、それをとりわけメディア支配に利用している。
トランプの義理の息子(娘のイバンカ・トランプの夫)ジャレッド・クシュナーの影のような存在も、予測できない要素の一つだ。クシュナーは、きわめて有能だが、意外なほど判断を誤るので、その役割が、きしみを生じさせている。
クシュナーは、ほとんど通常の手順を介さずに大統領の業務に半端に手出しした。ジョン・ケリー首席補佐官は苦慮し、その職務遂行の妨げになった。
クシュナーは、ハーバード大学を卒業していて、知力が高く、できぱきとして、自信に満ち、しかも傲慢だった。トランプは、このクシュナー外交対策のなかでもっとも重要かつ機密の部分を担当させた。しかし、それはうまくいかなかったし、うまくいくはずもなかった。いくら大学で成績が良かったとしてもクシュナーの思いつき程度で世の中が変わるはずもありません。
トランプには、自分なりに信じている事実がある。どいつもこいつも馬鹿だし、どの国もアメリカを騙して、ぼったくっている。この固定観念はあまりも強かった。アメリカはずっと利用されてきた。アメリカは、みんなが金を盗もうとする貯金箱だ。
いやはや、トランプの間違った思い込みは恐ろしすぎますよね...。
国防長官になったマティスは、トランプについて、本を読まないから、できないと見切ったようです。
書物や資料を読む。人の話を聞く、評論する。複数の方策を比較考量して政策を決定する。そんなことがトランプにはできない、できなかった。すぐに変わる、気まぐれなツィートによる意思決定のため、これまでのすべての戦利が沈没しつつある。マティスは、こう考えた。
トランプに任命された国防長官だったマティスは、辞めた理由を著者にこう語った。
愚かさを通りこして、重罪なみの愚行だと思ったことをやれと指示されたので、辞めた。それは国際社会におけるアメリカの地位を戦略的に危うくするようなことだった。
国務長官のティラーソンを解任する理由について、トランプは直接、何も言わなかった。ティラーソンは、トランプについて、「クソったれの間抜け」と会議で言ったことがリークされていた。
自分の思いつきだけで、専門家の助言も無視して強大な権力を行使しようとしたトランプは、アメリカと国際社会に大いなる災厄をもたらしました。残念なことに、そんなトランプの蛮行を今なお偉業だと信じこんでいる人がアメリカにも日本にも少なくないという現実があります。フェイクニュースに毒されてしまった人を目覚めさせるのは容易ではありませんよね...。
(2020年12月刊。2500円+税)

2021年1月26日

ジョン・ボルトン 回顧録


(霧山昴)
著者  ジョン・ボルトン 、 出版  朝日新聞出版

 この本のオビに池上彰の解説文がついています。
 「トランプ政権とは、"大きな赤ん坊"に振り回されながら、なんとか権力にしがみついていたい野心家ばかりの組織であることがわかる」
まさしくその内情が手にとるように描かれ、読んでいると寒々としてきて、こんな男たちがアメリカを牛耳っていて、世界の平和を脅かしているのかと思うと空恐しくなってしまいます。
タカ派のボルトンは1年半ものあいだトランプ大統領の外交担当補佐官をつとめ、トランプのすぐ身近にいました。
 ボルトンは、この本のなかでトランプについて再三再四、軽蔑の言葉を書きつらねています。いかにトランプが愚かな人間であるか、また、側近たちもトランプをバカにしている様子が赤裸々に描写されている。これも池上彰の解説文です。
トランプは、自らの直感と、外国首脳との個人的な人間関係、そして何よりテレビ向けに築きあげたショーマンシップだけに頼って、行政府を運営したり、国家の安全保障政策を策定できると信じている。
トランプに対する周囲の大人たちの働きぶりがあまりにもお粗末なため、トランプは人々の善意を勘ぐり、背後に陰謀があるのではと疑い、ホワイトハウスの運営に関して驚くほど知識不足のまま政権をスタートさせた。
 トランプは自分自身のことを「非常に安定した天才」だとツウィートした。いやはや、恥ずかし気もなく、こんなことを書けるとは...、信じられません。まあ、誰も言ってくれないので、自分で言うしかないのでしょうね...。
 トランプは、ブッシュ元大統領親子とその政権を見下すような物言いをする。
 トランプは一度決めたことを、すぐに変えたがる。
トランプと北朝鮮の金正恩との2度にわたる会議の内情も暴露されています。トランプのほうは、ともかく金正恩とすぐに会って会談しようとするので、ボルトンは苦々しく思っていたようです。金正恩に手玉にとられて、利用されるだけだとボルトンは考えていたのです。その心配な思いはトランプにはどうやら伝わらなかったようです。
 ボルトンは北朝鮮を動かす最良の手段は軍事的圧力だとしています。タカ派の主張そのままです。
安倍首相は、トランプが金正恩と会って話すのを止めさせようとしていたとのこと。
 トランプは、「行きたいんだ。見事な出し物になるだろう」と言った。つまり、トランプは政治ショーの主役を演じたかったのです。それがボルトンは気に入りませんでした。
金正恩がトランプに宛てた書面は、大げさすぎる誉め言葉の嵐で、トランプは大いに喜んだ。これがトランプと金正恩との親密な関係の始まりとなった。
 トランプは、カナダのトルドーもフランスのマクロンもあまり好きではなかった。
 金正恩はトランプに対して、自分のことをどう思うかと質問した。よい質問だ、とトランプは言い、あなたは非常に頭がよく、かなりの秘密主義者ではあるが、とてもよい人だ。全く嘘偽りのないすばらしい人柄だ、と持ちあげた。
 ええっ、ウ、ウソでは...。トランプがこんな答えをするなんて。
 金正恩は、肯定的な答えを引き出すためにあらかじめ考えられていた質問だったに違いない。そんな答えでなければ会話はすぐに終了してしまう恐れがあったから...。トランプは金正恩に、まんまとしてやられたのだ。ボルトンは苦々しそうに、こう書いています。
安倍首相がトランプと話している最中にトランプがすっかり眠ってしまったことがあるというエピソードも紹介されています。要するにアベ首相はトランプからまったくバカにされていたのですよね。
 トランプは安倍首相をイランと交渉してくれと求め、安倍首相はその要請を受けてイランを訪問し、何の成果も得られなかった経緯も紹介されています。アベはトランプのポチだったのです。トランプ政権の内情暴露本として興味深く読み通しました。

(2020年10月刊。2700円+税)
 日曜日の朝、フランス語検定試験(準1級)の口頭試問を受けました。今回はなぜか受験生はおじさんばかりでした(あとから女性もチラホラ来ましたが...)。
 3分前に渡された問題は、コロナ禍によって、何がどう変わったか、というのと、客の要求はいつもまともなのかというものでした。私はコロナ禍について想定問答していましたので、こちらを選択。まず3分間スピーチをします。事前に練習していたとおり、職場のテレワークは、弁護士は面談が欠かせないので無理、家庭では自由時間が増えて、散歩したりガーデニングや孫たちと遊ぶ時間ができたと話しました。今回は頭の中の文章を吐き出し、なんとかフランス語らしく話すことができました。
 次に試験管との質疑応答です。これは、いつもなんとかなっていますし、今回も無事に切り抜けました。年に1回の口頭試問ですが、本当に緊張します。終わって、宇宙の話を書いた新書を喫茶店で読んで、頭のほてりをさまして帰宅しました。

2021年1月10日

宇宙考古学の冒険


(霧山昴)
著者 サラ・パーカック 、 出版 光文社

現代のインディ・ジョーンズは人工衛星で古代の遺跡を探すという話です。
宇宙考古学とは、さまざまな人工衛星データを分析することで、他の方法では見つからない遺跡や遺構を見つけて、マッピングする分野だ。
人工衛星画像と地上探査によると、アマゾン川の流域に1万8千ケ所の遺跡が存在する可能性がある。いま人間が住むのに適しない地域に100万人以上が暮らしたと思われる。ええっ、そ、そんなことが本当にありうるでしょうか...。
人工衛星の撮像システムによるが、画素を構成する光には可視光だけでなく、近赤外光や中赤外光、遠赤外光もふくまれている。さまざまな波長の赤外線を用いて、植生の健康状態のわずかな違いを視覚化すると、色のバリエーションを感知することができる。
たとえば石壁の基礎部分が土に埋もれていったとして、その上に牧草が根づいたとしても、別のところの牧草と同じ深さまで根は伸びることができない。すると、牧草がその部分だけ生育が悪く、干ばつのときには先に枯れてしまう。水路のときには、そこに腐敗した植物がたまり、肥決な腐葉となり、水路跡では牧草や作物がよく育ち、周りよりも草丈が高くなる。
このような植生の草丈の違いによる影は、航空写真で簡単に確認できる。そして植生の健康状態の微妙な違いは、人工衛星の近赤外線観測データから読みとることが可能。人工衛星画像は2000ドル(10万円)で手に入る。
エジプトで、ヴァイキングが活躍していた北欧で、そしてマヤなどの南米で、またインダス文明の遺跡を求めて探査していき、あちこちで遺跡を発見していったのでした。きっとワクワクドキドキの瞬間が何回もあったことと推察します。ローマの円形劇場を上空から発見できなるなんて、すごいことですよね。
著者は遺跡の盗掘ともたたかっています。村ぐるみの組織的が最近もやられているようです。需要が存在しなかったら、盗掘は現在のレベルにはないだろう。盗掘は、いちかばちかの犯罪だ。エジプトの地元住民の盗掘グループのときは、村の共同体内であらゆる遺物の売却代金を分配する。地元住民が遺跡保護に積極的に関われば、世界は大きく変わる。
著者は発掘現場に行きますが、発掘隊長になると、その仕事の大半は雑用係である。本当に大変なんですよね...。
それにしても人工衛星が軍事スパイ衛星ではなく、古代遺跡の探査に大活躍していることを知りました。ワクワクドキドキする内容の本になっています。
(2020年9月刊。2400円+税)

2020年12月19日

終わりなき探求


(霧山昴)
著者 パール・S・バック 、 出版 図書刊行会

パール・バックの本を久しぶりに読みました。ノーベル文学賞をもらっていたのですね。もちろん『大地』は読んでいます。
宣教師だった両親とともに生後3ヶ月から42歳まで中国で暮らした経験をふまえた作品です。1934年、日中戦争の「はじまり」のころにアメリカに帰国しました。
『大地』は1931年に書きあげ、1932年にピューリッツア賞、そして1938年にノーベル文学賞を受賞したのです。戦後の中国政府からは入国禁止処分を受けていたとのこと。
1973年にアメリカで亡くなりました。80歳でした。この本は80歳で亡くなる直前に病室で書かれたものだそうです。384頁もある長編小説ですが、まさか80歳の女性が書いたとは思えない、みずみずしさです。
主人公は、12歳で大学入試に合格し、16歳でヨーロッパへ旅立つ青年です。
その心理描写は、とても80歳という高齢の女性の手になるものとは思われません。まことに作家の想像力は偉大です。うらやましい限りです。私も、こんな豊かな想像力を働かせて、「ホン」を書いてみたいと思います。あすなろうの気分です。今にみていろ、ぼくだって...。
それにしても、12歳で大学に合格するほどのズバ抜けた才能をもつ人が何を考えているのか、ひたすら凡人の私にはまったく想像できません。
ニューヨークの超大金持ちの邸宅にすむ高齢の祖父の日常生活も想像して描写することができません。イギリスの古城にすむ貴族女性の生活なんて、まるで雲をつかむような話です。そして、パリに住む高級古物商の営業と生活、さらには韓国でのアメリカ兵の生活...。
いくら想像力があっても、裏付け調査がなければ難しいと思います。そして、それを一つのストーリーにまとめあげるのです。いやはや、さすがパール・バックだと驚嘆してしまいました。
世界は、いろいろな種類の人間で成り立っている。できるだけたくさん、異なるタイプの人間と知りあうことが大切だ。というのも、そうした人々が基本的に我々の人生を構成しているからだ。
間違ったことをしているということだけで、それをしている人たちを避ける必要はない。そうした行為になぜ走るのか理解してはいけないということもない。世の中は、美しく、秩序ある人々ばかりではない。あるがままの相手を理解するのだ。そのためには、人々から少し距離をとっておく。
モノカキは二通りいる。その一は、技巧や描写のしかたを詳細に検討して、道具としてのコトバを知り尽くしていて、小説や物語の構成要素を研究し、初めから終わりまで筋立てに工夫をこらし、知識のすべてを投入して書きはじめる人たち。このタイプは、だいたいうまい書き手で、養成もできる。
その二は、ひとつの考えや状況にとりつかれて、それを紙に書きつけるまで解放されないというタイプ。ひたすら状況を述べるだけで、解答を示さないかもしれない。答えがあるとは限らないから。このタイプは、書かずにおれないのだ。
私は、まさしく第二のタイプのモノカキです。書かずにはおれないのです。私という人間の理解できたことのすべてを文字としてあらわしたいのです。もちろん、売れる(広く読んでもらう)ための構成を少しばかり考え、工夫したいとは思っているのですが...。
知識は、人を世間ばかりか賢明な人々からも孤立させるので、知りすぎると不安になる。なので、毎日が本の一頁だと思って、丁寧に、隅々まで味わって読むのが一番いい。
人間が知りえない理由によって、その先に真理が存在するという確信を得ようとする。それこそ、永遠の探求心こそが、人間のすべての営為の根源なのだ。
384頁という長編でしたし、じっくり読もうと思い、とびとびに3日間かけて、じっくり味わいながら読了しました。
(2019年10月刊。2700円+税)

2020年12月10日

ルース・ベイダー・ギンズバーグ


(霧山昴)
著者 ジェフ・ブラックウェル、ルース・ホブディ 、 出版 あすなろ書房

1993年にビル・クリントン大統領からアメリカ連邦最高裁判事(終身)に任命された女性判事(RBG)をインタビューしている本です。すごい判事がいたのですね。
RBGはインタビュー当時、87歳で現役の最高裁判事でした。
1956年にRBGがハーバード大学ロースクールに入学したとき、男子学生500人に対して女子学生はわずか9人。それでも前年5人から倍増。ところが、今ではロースクール生の半分は女性が占めている。日本では、まだそこまではいきませんよね。
ロースクールでの成績は優秀だったのに、ニューヨークの法律事務所でRBGを迎え入れようとしたところは一つもなかった。RBGはユダヤ人であり、女性であるうえに母親だったこと(4歳の娘をかかえていた)が問題だった。そこで、RBGは大学で働くようにした。
RBGの母は娘にレディーになることを求めた。それは、エネルギーを奪うだけで、役に立たない感情には流されない女性のこと。怒りや嫉妬や後悔といった感情は、自分を高めるのではなく、袋小路に追い込むだけ。「レディーになる」とは、怒りにまかせて言い返したりせず、何度か深呼吸してから、理解していない人々を教え導くように応える女性になること。
もし意地悪であったり、無神経な言葉を投げかけられたときには、聞こえないふりをして聞き流したらよい。無視してしまえばよく、決してそれでめげてはいけない。ノーと言われても、あきらめないこと。
そして、怒りにまかせて反応してはいけない。過去を振り返らず、変えようのないことで、あれこれ悩まないこと。他人の声にきちんと耳を傾けることが大切。うむむ、そのとおりなんですよね。とはいっても、実行するのは容易ではありませんが...。心がけてはいます。
RBGは次のように呼びかけています。
信念にもとづいて行動しなさい。ただし、たたかいは選び、のっぴきならない状況には追い込まれないように。リーダーシップをとるのを恐れず、自分が何をしたいかを考えて、それをおやりなさい。そのあとは、仲間を呼んで、心がうきうきするようなことを楽しみなさい。そして、ユーモアのセンスをお忘れなく。これまた、まったく異論ありません。
リベラル派の最高裁判事として大活躍したRBG、最強の87歳を知ることのできる80頁ほどの小冊子です。
(2020年10月刊。1000円+税)

2020年11月17日

世界で最も危険な男


(霧山昴)
著者 メアリー・トランプ 、 出版 小学館

アメリカの大統領選挙には冷や冷やしてしまいました。まさかトランプが再選されることはないだろうと期待しつつ、祈る思いで開票状況を見守っていました。敗北したとはいえ、7000万票をこえる得票、前回より600万票も伸ばしたトランプ支持層の厚さには恐ろしさすら感じました。
この本で、トランプの姪(兄の娘)はトランプはアメリカの大統領になんかになるべき人物ではなかったと断言しています。それはトランプの父との関係にさかのぼる精神分析にもよっています。著者は心的外傷(トラウマ)、精神病理学、発達心理学を大学院で抗議している博士でもあるのです。
トランプにとっては事実よりも話の面白さのほうが大事。つくり話のほうが受けると思うと、真実をあっさり犠牲にする。
2015年6月、トランプが大統領選挙に出馬すると言い出したとき、おそらく本人も本気ではなかっただろう。単に広告費をかけずに自社ブランドの名前を宣伝したかっただけのこと。ところが、支持率が上がり、ロシアのプーチン大統領から全面的協力するという暗然の保証を得たあたりから本気になっていった。
トランプには、5回もの破産記録がある。
トランプがこれまでに自力で何かを成し遂げたことはあっただろうか...。
トランプは親族で会食するたびに、必ず他人をけなし、笑いものにした。
トランプは父との関係で、無謀な誇張癖や不相応な自身を示したが、それは父から認めてもらうために必要なものだった。
トランプの人物像は虚像と誤伝とでっち上げで成り立っている。共和党と白人至上思想の福音派キリスト教徒たちがその虚像を延命させてきた。そして、ポンペオ国務長官などが黙認によって延命に加担している。
トランプは好ましくない状況になったときには、その場しのぎの嘘をつき、問題を先送りにして不明瞭にするのが常套手段だ。
トランプ家において分裂と不和の空気をつくっていたのはトランプの父であり、トランプは常にその空気のなかを泳いで育った。この分裂によってトランプだけが利益を得て、ほかの全員が苦しんだ。
トランプは、常に組織の一部となっていたので、自分の限界を思い知らされることもなく、自力で社会的に成功する必要もなく、守られてきた。まっとうに働く必要もなく、どれだけひどい失敗をしても、挽回してきた。
乳幼児期には、生理的欲求が満たされるだけでなく、求めに応じて自分に注意を向けてくれる人の存在が欠かせない。ところが、トランプが2歳半のとき、母親が病気で倒れてしまい、5人の姉弟たちは母なし子同然になってしまった。父親は、裕福な実業家ではあったが、高機能の社会病質者で、共感力をもたない、平気で嘘をつく、善悪の区別に無関心、他者の人権を意に介さない人間だった。
父親の無関心によって2歳半のトランプは大きな危険にさらされた。安心と愛情が与えられず、深い精神的外傷(トラウマ)を負った。この傷がトランプに一生消えない傷を負わせ、その結果、トランプはうぬぼれ、自己顕示、他者への攻撃性、誇張癖が身についた。
トランプ家の子どもたちにとって、嘘をつくのは当たり前であり、嘘は自衛手段だった。生きのびるためには嘘が必要だった。
トランプの父親は家庭において、冷酷な専制君主だった。そして税金を支払うのが大嫌いで、納税を回避できるのなら、どんな手段もつかった。
父親は、「男はタフでなければいけない」というルールを子どもたちに押しつけた。そのためなら何をしてもいい。嘘をついてかまわない。自分がまちがっていると認めたり、謝ったりするのは弱虫のすること。優しさは、すなわち弱さだ。
幼児期に悲惨な育てられ方をしたせいで、トランプは直観的、そして十分な経験にもとづいて、自分は決してかわいがられることはない、とりわけ慰めを必要とするときであっても決して慰めてもらえない。慰めを求めること自体が無意味なのだと悟った。
トランプは、今も3歳のときと変わらない。成長したり、学んだり、進化することは見込めず、感情をコントロールすることも、反応を抑制することも、情報を取り入れてそれをまとめることもできない。
トランプはただ弱いわけではなく、自我が脆弱なために、常にそれを補強しつづける必要がある。なぜなら、自分は主張しているとおりの人間ではないと心の奥で分かっているから。トランプは愛されたことがないのを自覚している。
トランプの特技は、自分をよく見せること、嘘をつくこと、巧妙にごまかすこと、それがトランプ流の成功に特有の強みと解釈されてきた。
トランプはテレビをみたり、侮蔑的なツイートをするほかは、仕事などほとんどしていない。
トランプは、自分が何も知らないこと、政治も市民の権利や義務も、基本的な人間の良識も知らないという事実を国民の目からそらしつづけるためだけに膨大な労力を費やしている。
今回の大統領選挙の開票過程と敗北をあくまで認めようとしないトランプの言動は、本書で描かれていることをあまりに証明するものでした。怖いほどです。アメリカ国民7000万人を騙した危険な男の本質を知るうえで、欠かせない本だと思います。幼児のころ、愛される実感をもたせることの大切さも痛感しました。
(2020年9月刊。2200円+税)

前の10件 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー