弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

社会

2022年9月 1日

世界パンデミックの記録


(霧山昴)
著者 マリエル・ウード 、 出版 西村書店

 AFP通信(世界三大通信社)が変わりゆく世界をとらえた500点の写真がオールカラー愛蔵版として一冊にまとめられました。貴重な記録写真になっています。
 今、日本はコロナ禍第七波の猛威の下にあります。でも、政府は人々に対して何ら行動制限をしていません。病院はパンク状態になっているというのに、医療面でも何ら特別の手だてを講じていません。政府が今やっているのは、コロナ陽性患者の統計をとらないようにしようということ、そして、GoToトラベルの再開を延期したことくらいです。
 アベノマスクに始まった自公政権の無為・無策はひどすぎます。それでいて、「国土」防衛のための軍事予算は青天井で倍増するというのですから、呆れはてて、怒りの声も出なくなってしまいます。
 世界中、コロナ禍は至るところで無数の死者をうみ出しました。そして、死者との別れさえ困難にしてしまったのです。
ブラジルでは、霊柩車が墓地で渋滞し、墓地はあっというまに満杯になっていく。中国では、たちまちのうちに野戦病院がつくられた。 そして都市が封鎖され、町はすぐにゴーストタウンと化した。 完全防護服に身に固めた人々が町を消毒していく。ソーシャルディスタンスが常識となった。
そして、医療従事者はエッセンシャル・ワーカーとして社会から感謝される存在。しかし、過労のため、医師や看護師のなかにだって倒れる人が相次いだ。
いったい、いつになったら、このコロナ禍は終息するのでしょうか...。
身近な人々が次々に陽性となり、また濃厚接触となって、仕事を休み、自宅に閉じこもる。いやあ、本当に大変な世の中です。ロシアのウクライナへの侵略戦争と同じで、まったく明るい見通しをもてないというのは本当に辛いです。
  (2022年3月刊。税込3850円)

2022年8月24日

聞くだけの総理、言うだけの知事


(霧山昴)
著者 西谷 文和  、 出版 日本機関紙出版センター

 一見ソフトな「聞くだけの岸田」は、選挙前、あたかも新自由主義と決別するかのようなウソをついた。国民に寄りそうフリをして当面の選挙を乗り切り、あとですべてをホゴにする作戦に出たので、自民党は選挙で負けなかった。 
 「言うだけの吉村」は、分かりやすい。コロナ対策に「イソジンがいい」と明らかなウソを言ってのけた。これで塩野義製薬の株価が上がった。松井と吉村をトップとする維新の目玉はカジノと大阪万博。これには吉本興業と維新そして大阪財界がカジノ利権で結託している。吉本興業はカジノに隣接する劇場の運営利権を手に入れる予定。そして万博の大使(アンバサダー)に吉本の会長が、マネージャーのダウンタウンが就任。芸人が権力にすり寄っている。その代表格がダウンタウン。コロナによる死者は大阪が日本中で最悪。
 橋下徹は大手サラ金・アイフルの子会社の弁護士で、吉村知事はサラ金最大手だった武富士の弁護士だった。サラ金の顧問弁護士だから悪いということではありませんが、そんな仕事をしていたことは広く知られていいことです。
 大阪テレビ局の朝・夕のワイドショーに吉村知事がずっと出ている。大阪では「へつらい」がまかりとおっている。
 パソナの竹中平蔵は公共・切り崩し作戦。公務員を削って、パソナがもうかる仕組み。水道も鉄道も民営化して、パソナと竹中平蔵がもうかる仕組みをつくろうとしている。
 橋下徹の1回の講演料は200万円。年に何回もするので数千万円になっている。その原資は維新の会なので、結局のところ、私たちの税金。
維新の汚れた部分は報道されないので、なんとなく維新が改革者だと誤解している人が多い。でも、本当は違う。
 ロシアのウクライナ侵攻戦争で、1日2.5兆円の戦費がかかっている。それでもうけている人たちがいる。そんな人は戦争が早く終わるのを決して望んでいない。
 安倍首相はロシアのプーチン大統領と27回も会って、会食もし、3000億円を渡した。
 「ウラジーミル(プーチン大統領)、キミとボクは同じ未来を見ている。ゴールまで駆けて、駆けて、駆け抜けようではありませんか」。よくもまあ、こんなことを臆面もなく、言い切ったものですよね、聞いているほうが恥ずかしくて思わず赤面します。
 漫然とテレビも新聞も見ずに、好きなネット情報だけに頼っていると、維新を改革政党だなんて、とんでもない誤解をしてしまう。ホント、そうですよね。わずか160頁ほどの小冊子ですが、ぜひ多くの、とくに若い人に呼んでほしいと思いました。
(2022年6月刊。税込1430円)

2022年8月21日

花散る里の病棟


(霧山昴)
著者 帚木 蓬生 、 出版 新潮社

 九州で四代、百年続く「医者の家」が描かれている本です。
 「町医者」がぼくの家の天職だった。オビにこう書かれています。でも、戦争はそんな「町医者」を戦場にひっぱり出します。
 軍医にもいくつかのコースがあったのですね、知りませんでした。
 赤紙で招集される医師には相当な苦労が待っていた。まず二等兵で入営するから、ビンタなどの苛酷な軍隊生活を覚悟しなければならない。医師だからといって手加減されない。
ところが、軍医補充制度というものがあって、衛生上等兵となり、1ヶ月の軍人教育が終わると、衛生伍長として陸軍病院で軍人医学を学び、修了したら衛生軍曹になる。
 主人公は、再招集されて衛生軍曹から軍医見習士官となった。そして、フィリピンに派遣された。ルソン島の陸軍病院で働いていると、レイテ島への異動命令が出た。ところが、それは困ると上司がかけあってルソン島にとどまった。レイテ島に行った将兵は全滅した。運良く助かったというわけ。
 ルソン島では薬剤もなく、食糧も尽きてしまって、多くの日本軍将兵の患者は栄養失調のなかで死んでいった。運よく日本に帰国できたので、戦病死した上司の軍医中尉の遺族宅へ行き、当時の実情を報告した。
 現代の「町医者」の活動を紹介するところには、ギャンブル依存症を扱う精神科医に講演してもらったという記述もあり、著者が自分のことをさらりと紹介しています。
 また、コロナ禍に「町医者」がふりまわされている状況を描写するなかでは、例の「アベのマスク」に対する批判など、政府の対策の拙劣され対しても厳しく批判しています。
「町医者」を四代も続けるということが、いかに大変なことなのか、少しばかり実感できる本でもありました。
著者は、次はペンネームの由来である「源氏物語」の作者である紫式部の一生に挑戦すると予告しています。楽しみです。
(2022年6月刊。税込1980円)

2022年8月19日

死刑について


(霧山昴)
著者 平野 敬一郎 、 出版 岩波書店

 この著者の、ときどきの社会的発言は、いつも大変鋭く、共感することがほとんどです。
 このタイトルで著者が何を言うのか、恐る恐る読みすすめたのですが、まったく同感するばかりで、改めて著者の見識の深さに心より敬服しました。
 著者も、大学生のころは、なんとなく死刑制度「在置派」だったとのこと。死刑制度があるのも、やむをえないと考えていたのでした。今は「廃止派」です。
 恐怖心による支配の究極が死刑制度だ。
 人間に優しくない社会は、被害者に対しても優しくない。被害者への共感を犯人への憎しみの一点とし、死刑制度の存続だけで被害者支援は事足れりとしてきたことを私たちは反省すべきだ。
 いやあ、本当に、この指摘のとおりだと私も思いました。すごい指摘です。
 著者が死刑制度に反対するようになったきっかけの一つは、警察の捜査の実態を知ったから。この点は、弁護士生活48年になる私の実感にも、ぴったりあいます。
 日本の警察は(恐らく世界中の警察も、そうなんでしょう...)犯人が無実、つまり冤罪だとわかっていても、いったん「犯人」だと決めつけた以上、決して自らの過りを認めようとはせず、むしろ自分たちの正当性を守るため、場合によって証拠を捏造(ねつぞう)してまでする。その結果、死刑判決が下され、執行されても、警察は「自己責任」とウソぶくだけ。これが警察捜査の真実です。私は弁護士として体験的に確信しています。
 警察官にとって、やってもいない犯行を「自白」させるなんて、朝飯(あさめし)前のことでしかありません。窓のない狭い小部屋に押し込められ、一日中、「お前がやっただろ。やってないというのなら証拠を出してみろ」と怒鳴りあげられたら、フツーの人は3日ももたないと私は思います。私だって、2日以上もつ自信はありません。
 劣悪な生育環境に置かれて育っていたり、精神面で問題をかかえていたりして、それが放置されていたのに、重大な犯罪を起こしたら死刑にして、存在自体を決してしまい、何もなかったようにしてしまうって、国や政治、私たちの社会の怠慢なのではないのか...。
 著者の鋭い問題提起は胸に響きます。
 そして、死刑執行。法務大臣と法務官僚たちが、どのタイミングで、いつまでに何人執行しようか、政治状況をにらみながら話し合いをしている。こんな、人間の命を絶つことを同じ人間が話し合いながら決める、なんて、やっていいことなんでしょうか...。人を殺すための計画をたてて、話し合って決めるなんて、そんな話し合いは、根源的に誤っている。たしかに、私もそう思います。
 死刑執行のボタンを押すのは現場の刑務官であって、法務大臣でも法務官僚でもありません。刑務官の精神的負担の重さに、私はひしひしと痛みを感じます。
 自分の人生に絶望している人が「拡大自殺」として殺人行為を敢行する。そんな人たちに死刑という刑罰は、まったく意味がなく、抑止効果もない。本当に、そのとおりです。むしろ、助成効果があるだけでしょう。
 著者は日本の人権教育は失敗している、欠陥があるとします。とても共感できない人の人権をこそ尊重するような教育が子どものころから必要なんだというのです。これにも、まったく同感です。
 犯罪の抑止のためには、共感よりも人権の理解が重要であり、そうである以上、死刑制度は背理だ。
 著者による問題提起の深さに心が震えるほど共鳴しました。わずか120頁の小冊子です。弁護士会での講演会がベースなので、とても読みやすくなっています。あなたも、ぜひ、ご一読ください。
(2022年6月刊。税込1320円)

2022年8月 9日

朝日新聞政治部


(霧山昴)
著者 鮫島 浩 、 出版 講談社

 朝日新聞の実権を握ってきたのは政治部だ。この本に、こう書かれています。なので、著者は39歳で政治部デスクになったときには「異例の抜擢(ばってき)」だと社内で受けとめられたとのこと。
 私の東大駒場時代のクラスメイトの2人が朝日新聞に入りました。どちらも全共闘シンパでした(私は当時も、今も、暴力賛差の全共闘を支持しません)。そして、卒業して30年以上たって開催されたクラス同窓会に参加したら、その一人が朝日新聞の政治部長を務めていたというのを知って驚きました。この本を読むと、政治部長というポストは社長への最短距離にあるようですが、彼は社長にはなりませんでした。
 著者は、3.11の福島第一原発の吉田昌郎調書をスクープ報道したときの責任者です。スクープ当初は称賛の声だったのが、その表現であげ足がとられ、ネットで叩かれ、ついには朝日新聞の社長が手の平を返して記事を取り消して謝罪表明した。
 いま、冷静に考えても、東電の現場とトップの対応がすべて適切だったとはとても思えません。現に、つい先日の東京高裁はトップに13兆円の賠償に命じたことが何よりの証明です。そして、吉田所長以下、現場の東電社員が決死の覚悟で対処していた事実はあるとしても、東電の社員がトップから末端に至るまで何らの非がなかったとは、とても言えないことは明らかなのではないでしょうか・・・。
 それにもかかわらず、朝日新聞のトップはネット右翼に支えられた政府の攻撃に早々に白旗を掲げてしまったのです。これは、やはりひどい、ひどすぎると思います。
 この本には、政治家・古賀誠への手厳しいコメントが載っています。古賀誠ほど、権力闘争に執着し、人間の心理を細かく洞察して情報戦を駆使し、本音を明かさない政治家はいない。古賀誠は、大牟田市内のスナックに夕刻から番記者を集め、記事への引用を一切禁じる「完オフ懇談」する。そして、カラオケを3巡させたあと、夜8時から裏話を語りはじめる。
そこには、偽情報がまじっていて、それは政界を動かすためのもの。そのやり口が、古賀誠は人一倍、巧妙だった。
 遺族会の元会長として、古賀誠は平和憲法9条を守れという点では、全くぶれることがありませんが、いまなお政界ににらみをきかす現役の政治家なんですよね。
 著者は、朝日新聞が東京オリンピックのスポンサーに加わったのは、経営悪化が原因だと指摘しています。なーるほどですね。
 2009年まで、800万部の発行部数が、2014年に700万部、3年間で100万部のペースで激減。2016年には500万部を割り込み、2021年には442億円の赤字に転落した。
 私は紙媒体の新聞を熱烈に愛読していますが、いまどきの若い人は新聞を読まなくて平気というか、読まないのがフツーになっています。そんななかで新聞が、ヨミウリ・サンケイのような政府広報紙に転落しないよう、マスコミを監視し、また励まし、支えたいものです。いや、もうダメなんだと、早々に決めつけないで・・・。
(2022年7月刊。税込1980円)

2022年8月 2日

自衛隊海外派遣、隠された「戦地」の現実


(霧山昴)
著者 布施 祐仁 、 出版 集英社新書

自衛隊を国連の平和維持活動(PKO)のために派遣する法律(PKO法)が制定されたのは1992年6月のこと。それから30年たった。これまで、海外15のミッションに自衛隊は派遣され、参加した自衛隊員は1万ン2500人(のべ人員)。今や、その一人は自民党の国会議員になっている。世論は、すっかり受け入れ、定着しているかのように見える。しかし、果たして、その実態を十分に知ったうえで、日本国民は受けいれているのだろうか...。
実際のところ、日本政府は日本国民から批判されるのを恐れ、PKO法にもとづく自衛隊員派遣の現場で起きたことをずっと隠してきた。
政府文書は黒塗りされたものしか公表されてこなかった。
南スーダンに派遣された自衛隊員が書いていた日報は「既に廃棄した」とあからさまな嘘を言っていたが、実は存在していて、あまりにも生々しい現実があったことが国民の目から隠されていたことが発覚した。
イラクのサマーワに自衛隊が派遣されたとき、実はひそかに10個の棺も基地内に運び込んでいた。自衛隊員の戦死者が10人近く出ることを当局は覚悟していたのだ。
自衛隊がサマーワにいた2年半のあいだに、周辺地域には、総額2億ドル超が投下された。要するに、日本政府は安全をお金で買っていたのです。
サマーワでは幸いにして、一人の戦死者も出しませんでした。ところが、なんと、日本に帰国してから、陸上自衛隊で22人、航空自衛隊で8人が自殺しているのです。それほどサマーワでの体験は過酷でした。このように、戦地に出かけて滞在するというのは強烈なストレスをもたらすものなんです。それを知らずして、戦争映画のDVDを自宅のテレビで見ているような感覚でとらえて議論してはいけないと思います。広く読まれるべき、貴重な新書です。
(2022年4月刊。税込1034円)

2022年7月26日

1966年、早大、学費闘争の記録


(霧山昴)
著者 編纂委員会 、 出版 花伝社

本格的な学園闘争のはしり、とも言うべきワセダの学費値上げ反対闘争について、当時、闘争をになった人たちが振り返ってまとめた総括本です。
ときは私が大学に入る前年、1966年1月から6月までのこと。150日間もの早大学生ストライキが敢行されました。当局の決めた学費値上げは、入学金3万円を5万円に、授業料5万円(理・教育は8万円)を8万円(同12万円)にするというもの。このころ、国立大学は授業料(文系)1万2千円(月1千円)、大卒初任給2万4900円、自給70円、日給560円、公営住宅(2DK)の賃料7600円でした。学生が怒るのも当然です。ただ、今は、国立大学だって何十万円(正確には、いくらでしょうか...)、私立大学は3桁になっていますよね...。
ヨーロッパのように、学費は無料化すべきです。アメリカから不要不急の超高額の戦闘機や武器を何兆円も買っているのをやめたら、すぐに実現できるのです。人間への「投資」こそ、日本という国が生きのびる最大の保証だと私は思います。この本に、学費の現状と本質的な問題点の指摘がないのが、私には残念でした。せっかくの総括本なので、現時点の学費問題も一言くらい掘り下げてほしいところでした。
それはともかくとして、当時の早大生が、学費闘争の経験を今も自分のなかの「宝」として持ち続けているのを知ることができたのは、大いなる喜びでした。学費値上げを阻止できなかった、残念だったという「総括」は、どこにもありません。
当時のワセダの学生のなかには、靴が壊れても買い換えられず、「新聞紙を靴のように形作り黒マジックを塗って履いていた」人もいたとのこと。私も、革靴の底に穴があいていたのをしばらく履いていたことを思い出しました。それを知った姉が靴代を送金してくれました。
あの早大闘争のなかで学んだのは、民衆の力で、社会や歴史は変えられるという積極的な確信。私も1968年に始まった東大闘争の渦中に身を置いて、同じような思いを抱いています。その点、最近の若者が、同じような体験をしていないことが気の毒だと考えています。
何百人もの早大生が真冬のさなか、大学、つまり教室に泊まりこんだこと、そのとき、朝まで暖房がきいていて、それは職員が風邪をひかないように徹夜でボイラーを焚いてくれたからだったというのには心が打たれました。単なるバリケード封鎖のための泊まり込みではなかったからです。
坂下セツルメントで活動していた学生もいます。一番の収穫は、活動の節目に集団で総括し、成果と問題点を明らかにして、今後の教訓とすることが身についたこと、そして、活動を通じて自己変革したこと。これは、川崎セツルメントに3年あまり所属していた私とまったく同じです。
「民主主義」とは、大変難しく、根気のいることだと思った。まじめに「暴力的なこと」を批判すると、恫喝されてクラス討論にも出席しなくなる学生がいた。すると、暴力的な人たちの思うとおりになってしまった。
このころは、まだゲバルト、むきだしの暴力は少なかったようです。2年後の東大闘争では、途中から、ヘルメット・ゲバ棒が白昼に公然と横行するようになりました。その暴力を賛美する外野もいて、それを克服するのに、大変な苦労をさせられました。
私は、全共闘の暴力賛美だけは、ぜひぜひやめてほしいと今も心から願っています。暴力の賛美は人間性を破壊するものでしかありません。
いま、ほとんどの大学に学生自治会なるものがなく、あってもその存在は希薄であり、形骸化しているようです。本当に残念です。民主主義の実践を体験する貴重な機会だと思うのですが...。
私も知る広田次男弁護士(福島で活躍中)や矢野ゆたか・元狛江市長(4期16年)も当事者として一文を寄せています。
(2022年3月刊。税込1980円)

 日曜日、庭のブルーベリーを収穫しました。それほどでもないかと思っていましたが、皿に一杯ありました。食後のデザートになりました。アスパラガスが今年は細いのばかりでしたので、掘りあげて整地して新しいアスパラガスを植えつけられるように準備しました。
 アサギマダラ(チョウチョ)の大好物のフジバカマ(植物)がぐんぐん大きくなっています。秋の来訪を楽しみにしています。
 先々週の庭仕事で腰を痛めましたが、なんとかフツーになりました。
 久留米は連日700人もの感染者が出ていて、コロナ禍は一向に収束しません。2年ぶりの東京では、行き帰りとも、飛行機は満席でしたが、居酒屋も満員盛況でした。本当に心配ですよね。まあ、ロシアの戦争のほうが、もっと心配ではありますが...。

2022年7月13日

学問と政治


(霧山昴)
著者 芦名 貞通、・・・松宮 孝明 、 出版 岩波新書

日本学術会議の任命拒否問題は今なお未解決であること、その問題点を任命拒否された6人の学者が問いかけている本です。
杉田和博という警察官僚出身の内閣官房副長官が「外すべき者」としたことが政府の文書で明らかになっています。一体なぜ警察トップだった一官僚が学術会議の任命に介入できるのか、まるで私には理解できません。最近の自民・公明政権の恣意的行政運営、学術軽視はひどすぎます。コロナ禍対策は、その典型でした。PCR検査をきちんとせず、大阪を典型として保健所を削減するなど、市民の生命と生活を脅かすばかりです。
マスコミもNHKをはじめとして政府の言いなりで、問題点をえぐり出さずに「大本営発表」ばりの報道に終始しています。そして、政府に批判的なことを少しでも言うと「反日」というレッテルをはってネット上で攻撃する人がいます。それは、自分こそ日本であり、自分と違う考えの人はすべて「反日」だと決めつけるに等しい。いやあ、怖い世の中ですね...。
政府が自分に都合のよい人を審議会の委員として選ぶのは「当たり前」という「常識」は改める必要がある。まことにもっともです。福岡の裁判所にも、審議会がいくつかありますが、とんでもない委員が当局によって選ばれているのに何回もぶつかりました。当局に忖度する意見しか言わないのです。たまには自分の頭で考えてみたら...、と思いました。2人とも大学教授でした。こんな教授の下で学ばされる学生は気の毒だと思ったことです。
同じことが、法制審議会でも起きているようです。法務省から期待される学者ばかりが選ばれているというのです。学者という看板が泣きますよね。でも、そんな本人は「こりくつ」つまり「へりくつ」を弄するのに長(た)けていますし、「メシの種」とばかりに割り切っているようで、いかに批判されようと何の病痒も感じないようです。情けない現実です。
何を学問するかは現場にまかせるべき。今すぐ何かに役立つもの、という観点も捨てさるべき。
本当に私はそう思います。自由な発想、とらわれない発想、権力にあらがう発想、これこそが社会をいい方向に動かしていく発展させる原動力だと思います。みんなが同じことを言っている社会には未来がないのです。みんな違って、みんないい。これこそ、社会が平和で、発展していく基礎なのだと私は確信しています。
岸田首相は、本当に聞く耳をもっているというのなら、任命拒否はすぐに撤回すべきです。
(2022年5月刊。税込924円)

 先日うけたフランス語検定試験(1級)の結果が送られてきました。もちろん、不合格なのですが、64点でした(150点満点)。自己採点では61点、これは4割ということです。合格点は94点ですので、30点も不足しています。この道ははるかに遠く、険しい。まさしく実感します。それでも、めげず、くじけず、ボケ防止のためにも、毎朝、NHKフランス語の書き取りを続けます。

2022年7月 8日

ひと喰い介護


(霧山昴)
著者 安田 依央 、 出版 集英社文庫

著者は司法書士というだけでなく、ミュージシャン、そして作家だそうです。この本は司法書士の体験も踏まえたものということです。
孤立した高齢男性たちが、より孤独で残酷な死にひきずり込まれていくという救いのない状況が描かれています。登場人物の多くは、自分のことしか考えず、悪に立ち向かうヒーロー役が登場して悪人たちを退治するというストーリーではありません。残念です。
著者は巻末の対談の最後で、高齢者のあいだでも分断、孤立化がすすみ、そこに付け込みたい人にとって「入れ食い」状態になるだろうと予測していますが、私も放っておくと、そうなるだろうという気はしています。だって、認知症かそうでないかは簡単に判別できませんし、高齢者介護施設も千差万別ですからね...。
高額の寄付金を出させる高度のテクニック...。24時間、誰かが付き添っているオーダーメイド介護は1日4万円とか6万円もする。
意思能力が完全に欠如していれば、成年後見制度が残っているのですが...。
高齢の入所者たちは、話し相手を渇望している彼ら彼女らから話を聞きだすのは非常に簡単なこと。プライバシーに関わることすべて、親族のこと、資産状況をふくめ洗いざらい引き出してしまう。
陥れられて入った施設では、四六時中、甘いものを与えられ、歯をみがくのを嫌がった結果、もともと多かった虫歯を悪化させ、次々に歯を失って、ついには、咀嚼ができず、流動食しか食べられない状態に置かれてしまう。すると認知症がさらに進行する。
介護施設に親を預けたまま、面会に来ない人も少なくない。
言葉巧みに高齢の人に接近し、その人の子まで引きずり込もうとする。今や恐るべき社会になっている。
この本を読むと、「いかに安らかに余生を過ごす」という施設でインチキが起き、それがバレないというのです。起こりうる話なので、明日の我が身...と考えざるをえませんでした。騙されてしまったという惨めな気分を味わうことになりますが、これも社会に存在するのでしょう。身が震えてしまいます。明日は我が身なのではと...。
(2018年12月刊。税込847円)

2022年7月 7日

住宅営業マン・ぺこぺこ日記


(霧山昴)
著者 屋敷 康蔵 、 出版 三五館シンシャ

住宅営業マン...、あまたある営業職のなかでも群を抜いたハードワーク。きわめて高い離職率を誇っている。一生に一度の高い買い物として、数千万円のお金が動く現場はきれいごとの通じない世界。会社から、「目標」という名のノルマを課され、お客からは過剰な要求、ときに不当なクレームをつけられる。
タマ「ゴ」ホームの固定給は「生かさず殺さず」ほどの金額、つまり、22万円。これに成果を出して歩合給がプラスされて、ようやく生活が成り立つ仕組み。うまくいけば年収1000万円以上も夢ではない。歩合給は、契約金額の1.2%を着工時、上棟時、完工時に3部割で支給される。
イベントの景品だけをもらいにくる「客」がいる。ところが、本気で住宅購入を考えている客ほど、景品をもらいたがらない。その逆に、景品目当ては客にならない人ばかり。
タマ「ゴ」ホームにはノルマはなく目標があるだけ。しかし、いつのまにか「目標」は「ノルマ」にすり替わっている。3ヶ月以上も契約がとれない営業マンは「接客停止」処分となる。 そして、精神的に追いつめて、自主退職の流れをつくる。
また、成績の悪い営業マンの罰ゲームとして、飛び込み営業させられる。成績が悪いと、こうなるよ、という見せしめに使われるのだ。
住宅メーカーによって、金額・坪単価にはかなりの開き(差)がある。これは、広告その他の諸経費・人件費をどれだけかけているかの差でもある。
規格設計と自由設計...。規格住宅は、間取りや外観の自由度がないだけでなく、設備のグレードも落ちて、見劣りしてしまう。
住宅営業マンは、客のもっている「お金のニオイ」に敏感だ。でも、その判断を見誤ることがある。そして、来た人のなかで、誰が決定権をもっているのかを探るのが肝心。本当にお金をもっている人は、逆にもっているフリをしない。
今日、家を買おうとは思っていない人に、今日、家を買わせるのが住宅営業マンの仕事だ。タイミングを逃がすと、客の住宅購買意欲は下がってしまう。
きのう初めて展示場に来た客に、今日、契約の確約をもらい、明日、契約する。所要3日で押し込む。これが、スーパー短期間クロージング。
住宅営業マンは、お客の前で理想の人間を演じ続ける、「一流の詐欺師」でなければならない。多くの人が、家という名の「夢」を買いに来る。
タマ「ゴ」ホームでは、頻繁に入社して退職するため、そもそも新入社員が長く働き続けることを期待していない。
タマ「ゴ」ホームでは、毎朝の朝礼で、まず額縁に入った社長の写真に向かって「おはようございます!」と挨拶する。これって、いかにも軍隊調ですよね、ひどく違和感があります...。
私の依頼者に、何人も住宅営業マンがいました。少しは、その苦労話を聞かされていましたので、話として、良く理解できました。それにしても大変な仕事ですよね...。いつまで、こんなハードな仕事をやれるものでしょうか...。でも、社会的には必要な仕事なんですよね。
(2022年6月刊。税込1430円)

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