弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2025年9月12日

次期戦闘機の政治史

社会


(霧山昴)
著者 増田 剛 、 出版 千倉書房

 日本政府は、いま「防衛力の強化」と称して、アメリカからとんでもなくバカ高い飛行機やらミサイルやら、どんどん買い付けています。それで日本の軍事予算は、年に8兆円にもなろうとしています。ところが、お金がないからといって高齢者の医療費負担を2割から3割に引き上げるというのです。
 いったい、アメリカのオスプレイを何機も買って、日本の「防衛力」が向上するのでしょうか。アメリカと一緒になって、海外へ戦争しに行こうとしているだけではありませんか。それは、日本を守るどころか、日本を破滅させるものでしかありません。
 2018年、日本はアメリカのロッキード・マーティン社製のF35を147機購入することを決め、うち42機は、短距離離陸と垂直着陸が可能なF35-Bとした。
 F35は、1000機以上が生産されている、量産型の戦闘機。
 日本がアメリカではなく、イギリス・イタリアと共同開発しようとしているF3は350機をつくる計画。1機200億円以上で、開発経費は数兆円規模。
 ちなみに、中国空軍の戦闘機は1270機(2022年)。日本の320機の4倍だ。
 F22ステルス戦闘機のステルス技術は、レーダーの電波をいかに素直に返さないか、ということ。機体の凹凸を減らして、レーダーの電波を跳ね返しにくくする。また、機体の素材は、レーダーの電波を反射しない複合素材を使用。機体全体は電波を吸収する特殊な塗料によってコーティングされている。
 F22は、空中戦において、敵に見つからないうちに、先に敵を見つけ、先に敵を攻撃し、先に敵を撃墜することができる。そのうえ、超音速巡行能力(スーパークルーズ)をもっている。アフターバーナーを使わず、マッハ1.82で超音速巡行できる。
 このF22は1機1億5千万ドル。アメリカでは、750機製造するはずが、183機にまで減らされた。日本がF22を購入するとしたら、1機200億から400億円ともみられた。しかし、アメリカはF22を日本に輸出することはなかった。
 そこで、先述したとおり、日本はF35を大量に購入することになった。
 空軍がA型、海兵隊がB型、海軍がC型を運用している。日本は、カタログを見ただけで、F35を42機も購入することを決めた。1機100億円なので、42機だと4200億円という巨額な買受代金だ。事実上の空母である「いずも」にF35Bタイプを搭載することを検討している。
 F35の戦闘行為半径は最大1100キロ。F35にミサイルを搭載すると、最大射程距離が自動的に伸びて、北朝鮮も含まれる。また、事実上の空母である護衛艦「いずも」と「かが」にF35を搭載すると、攻撃範囲が格段に奥深くなる。
 戦闘機レベルでは、日本は既に立派な「軍事大国」なのだ。
 なんでもアメリカの言いなり。アメリカの求めに応じてどんどん戦闘機を買わされ、あげくの果てにアメリカの戦争に巻き込まれて破滅させられるなんて、とんでもありません。
(2025年5月刊。2800円+税)

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