弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2025年7月29日

習近平体制の中国

中国


(霧山昴)
著者 平井 潤一 、 出版 新日本出版社

 2015年の統計ですが、台湾貿易の4割、対外投資の6割は中国大陸向け。台湾の中国進出企業は10万社をこえる。そこで働く台湾ビジネスマンと家族は100万人以上。台湾から中国大陸への旅行者は550万人で、その逆は414万人。あわせて1000万人近い人々が相互に訪問している。
 台湾人の世論調査では、毎回「現状維持」が多数で、「早期統一」や「台湾独立」は少数派。「台湾人か中国人か」という問いに対しては、6割以上の人が「台湾人」だと答える。これは、最新の世論調査でも変わりません(日弁連は、この7月初めに台湾調査を敢行しています)。
中国は、長く「平和統一」を正面にかかげて、武力使用の表明を避けてきた。ところが、習近平は、2019年以来、状況によっては武力行使もありうるという「硬軟両面」の態度を示している。実際にも、台湾周辺での軍事演習を展開している。
 中国共産党の第20回党大会(2022年10月)では、政治局24人に女性が1人も選ばれず、205人の中央委員にも女性は11人のみ。
 習近平の総書記は4期目となり、しかも伝期は「2期10年」という制限は廃止され、終身制となっている。これはロシアのプーチン大統領と同じですね。
 中国は「絶対貧困」の解消から「共同富裕」方針を打ち出した。しかし、格差は10倍以上に広がり、6億人の1ヶ月の収入は月1000元(2万円)でしかない。
中国がGDP総額で日本を追い抜いて、アメリカに次ぐ世界第2位の経済大国になったのは今から15年も前の2010年のこと。
中国も、かつては「核兵器廃絶」に賛成しかけていたが、今では核兵器禁止条約に反対し、核戦力維持に固執している。
 中国の軍事費は、前年比7.1%増の26兆1千億円。国民生活よりも軍事力強化を志向している。これは日本と同じ傾向ですが、金額がケタ違いです。日本が中国に「勝てる」わけがありません。
 中国の軍事力強化は、主力の陸軍ではなく、主として海空軍に向けられている。空母も3隻ももっている。
中国には農民が都会に出稼ぎに行っているため農村留守児童が6千万人以上いる。これは全国農村児童の3分の1以上、全国児童の2割を占めている(2013年)。
中国では、久しく「一人っ子」政策がとられていたが、2016年から「二人っ子」を認めている。
 中国でも労働力不均衡、老後扶養の困難などがあらわれている。中国でも「高齢化」が急速に進んでいる。上海市では60歳以上の市民が市内人口の3分の1を占めている(2017年)。
中国の人口は14億2千万人超で、インドが14億3千万人弱なので、人口世界一はインド(2023年4月)。
 台湾の対中国投資は大幅に落ち込んでいる。しかし、それでも、台湾企業にとって、中国は依然として大きな市場であり、中国にとっても、台湾製の半導体・情報通信関連機器への依存度は相変わらず高い。
 日本と中国、そして中国と台湾の関係を考えるうえで、絶好の参考文献だと思いました。
(2025年6月刊。2310円)

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