弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2025年7月21日

王者の挑戦

社会

(霧山昴)
著者 戸部田 誠 、 出版 集英社

 「少年ジャンプ+」の10年戦記というサブタイトルの本です。
 「ジャンプ」は1988(昭和63年)に500万部を突破し、1994年に、なんと653万部を記録した。信じられない発部数です。
 「少年ジャンプ」の創刊は1968(昭和43)年のこと。私が大学2年生のときです。
 1959(昭和34)年に「週刊少年マガジン」(講談社)と「週刊少年サンデー」(小学館)が創刊されました。私が小学5年生(11歳)のときです。小売酒屋の息子である私は親から買ってもらえず(おこづかいなるものはもらっていませんでした)、小学校の正門前に医院を構える医者の息子(同じクラスでした)が購読しているのをまわし読みさせてもらっていました。大学生のときは駒場寮という寮生600人という巨大な寮で生活していましたので、買う必要はなく、回ってくるマンガ雑誌によみふけっていました。とりわけ「あしたのジョー」が大人気でした。また、「ガロ」というマンガ雑誌も愛好家には、もてはやされていました。白土三平の「カムイ外伝」や「忍者武芸帖」などです。
 現在は電子コミックスの時代。出版不況が叫ばれるなか、コミックス(マンガ)は、電子と紙媒体とあわせると、「週刊少年ジャンプ」653万部時代並みの売り上げがある。今では、マンガが世界中で同時に読まれる時代。欧米やアジアだけでなく、南米や中東でも読まれている。
 「MANGA plus」は、2019年に1月にスタートした国外向けのオンラインマンガプラットフォーム。今では、「ジャンプ」「ジャンプ+」のマンガが、日本と同じタイミングで配信されている。英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、ドイツ語、タイ語、インドネシア語、ロシア語、ベトナム語の9言語で配信。ダウンロード数3500頁に迫り、アクティブユーザーは650万人。日本と同時配信にこだわった。当初は、北米、インドネシア、タイ、フランスの読者が多かったけれど、最近はブラジル、インドが勢いよく増えている。
 ネット上の海賊版サイトが存在し、悩まされている。しかし、これも競合だと考えたらよい。海賊版は読みやすいし、速い。なぜ速いかというと、データ保護の必要がなく、保護しないから...。うむむ、なーるほどですよね...。
 「抜け道」は確かにある。しかし、厳格にするためシステムを煩雑にすると、ユーザーの使い勝手を悪くしてしまう。
 2019年4月、「初回全話無料」ということでスタートしたのが良かった。全話完全無料にしてしまうと、いつでも何度でも読み返せてしまうため、物として所有するという価値以外でコミックスを買う意味がなくなってしまう。
ユーザーにとって、面白いか、使いやすいか、がすべてだ。
 2014年、紙のコミックス(マンガ)は2256億円の売上で電子コミックスは887億円。ところが、2017年には、紙が1666億円に対して電子は1747億円と逆転した。そして2022年には、電子は677億円になった。出版不況のなかでも、電子の登場によってコミックス市場は大きく拡大した。
 「少年ジャンプ+」は2014年9月にスタート。1年で100万ダウンロードを目標としてスタートしたのに、創刊してわすか20日間で達成した。紙の「ジャンプ」は厳選した20作品ほどしか掲載できないのに対して、電子の「ジャンプ+」は、無限、いくら連載してもいい。
ネット社会の無限の広がり、可能性、そして恐ろしさを伝えてくれる本でもありました。
 法曹の社会でのAIの活用も、同じような状況になるのでしょうね...。私は、とてもついていけそうにありません。トホホ...。
(2025年6月刊。1980円)

 参政党の候補者が恐ろしいことを叫んでいます。「日本も核武装すべきだ。これがもっとも安上がりで、最も安全を強化する」と言ったのです。核戦争になったら、日本も、この地球全体が破滅してしまいます。「安上がり」だなんて、とんでもありません。
 ノーベル平和賞を日本の被団協(被爆者の団体です。核兵器をなくそうと頑張っておられます)が受賞したのは、核兵器は人類と共存できないことを真剣に訴えていることが評価されたからです。
 参政党への一票は、日本と地球を破滅することにつながります。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー