弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2025年7月22日
タコ・イカが見ている世界
生物
(霧山昴)
著者 吉田 真明・滋野 修一 、 出版 創元社
私はタコもイカも大好きです。もちろん、食べるのが...。イカは呼子ですよね、やっぱり。予約していかないと、何時間も待たされてしまう店ですが、ともかく美味しいのです。イカ刺しも美味ですが、最後のイカのテンプラなんか、思い出すだけでもヨダレがしたたりそうです。
そんなイカもタコも、実は賢い生物で、切られる痛みも分かっているのではないかと想像されています。なので、欧米では、研究倫理が厳しく、要するにむやみに殺してはいけないというルールが確立しているそうです。日本では、ちょっと無理かな...。
アオリイカは群れをつくる。異性との駆け引きが興味深い。オスは体と腕全部の模様を変化させてメスに近づき、アプローチする。と同時に、近くにいるライバルとなるオスに対して威嚇する。威嚇の対象は1匹ではなく、多数。つまり、アオリイカのオスは、眼でオスかメスか、攻撃するか守るか、愛のシグナルを送るかを判断している。
タコやイカの寿命は一般に1年ほど。最大のダイオウイカは全長10メートルをこえるが、一番小さいのは1センチほどのヒメイカ。
イカは新鮮で活きのよい餌しか食べないという美食家であり、また大いに食い散らす大食漢。
イカやタコを頭足類というが、間違った呼称だ。タコの「頭」は頭ではなく、頭から足や腕が生えているわけではない。タコの「頭」は、人間の頭とは別物。
タコ・イカには、もちろん肛門があるが、外からは見れない。胴体の中に肛門の開口部がある。
オウムガイは、頭足類の祖先。タコ・イカが出現したのは、恐竜が栄えていた中生代。
タコ・イカにも貝殻の名残(なごり)がある。プラスチックのように見える透明な軟甲や、タコのスタイレットという釘状の骨が、それ。
タコやイカは3つの心臓をもっている。サブ心臓が2つある。タコやイカの脳は9個ある。うち8個は、腕神経節と呼ばれる。腕を制御する神経の塊。タコの腕には、脳と同じ数の神経細胞がある。
イカもタコも知能が高い。眼と視力が良い。他者をじっと見つめて、考える時間が長い。敵か味方か、異性か、慎重に判断する。
体全体に知的な表現力がある。色素で変化自在の模様をつくり出す。
学習力と記憶力がある。1日に3回、シンボルを提示すると、3日間も記憶でき、長期では50日も記憶できる。学習のやり直しもできる。
タコもイカもアルコールに酔い、麻酔がきき、眠る。ドラッグ(MDMA)をタコに投与すると、タコは穏やかになる。
チャットGPTとタコの脳は、実は似ている。ええっ、ど、どういうこと...。
人間だけが賢い生物だなんていうのが、単なるひとりよがりだと思わせる本でした。
(2025年4月刊。1980円)