弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2025年6月27日
ウンコノミクス
社会
(霧山昴)
著者 山口 亮子 、 出版 インターナショナル新書
人間が排出するウンコの国際比較。1日にアメリカ人は150グラム、イギリス人は100グラム。日本人は200グラムで、中国人は210グラム、インド人は300グラム。ケニア人はなんと520グラム。ところが戦前の日本人は400グラムだったので、半減している。
日本人は85歳まで生きると、生涯に6.2トンの排出することになる。アフリカ象1頭分だ。そして、日本人は1億2400万人いるので、毎日2万5千トンを排出している。
100万都市だった江戸では人糞尿は取引されていて、年間2万両になった。今の8~12億円。
リンは重要な肥料。日本は中国から輸入している。
ウンコは、肥料の3要素(リン酸、カリウム、窒素)のうち、窒素とリン酸を豊富に含んでいる。日本はリン酸アンモニウム(リン安(あん))の90%を中国から輸入している。
リン鉱石は特定の地域に偏在している。中国とモロッコ、エジプトの3ヶ国で8割を占める。
リンは工業用にも使われる。電気自動車のバッテリーにはリン酸鉄リチウムイオン電池が使われる。
汚水処理場で発生した最終的な汚泥は、全量焼却している。
著者はウンコ由来の肥料を生産し、活用することを提唱しています。たしかに、全量焼却するよりは、よほど健全かつ合理的でしょう。
すでに下水汚泥はヨーロッパでは活用されているのです。フランスでは、畑にも牧草地にも、下水汚泥を散布するなどして、8割も農業に利用しているそうです。日本も考える必要があります。「台湾有事」とか言って、中国を敵視していますが、日本は中国に、リンとリン酸についてはすっかり依存しているのです。戦争なんて出来ませんよ。してはいけません。
ウンコを核にした資源の循環が提起されています。画期的な提案です。この提案がホンモノになることを心より祈念します。
(2025年4月刊。950円+税)