弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2025年7月10日

七三一部隊「少年隊」の真実

日本史(戦前)


(霧山昴)
著者 エイミ・ツジモト 、 出版 えにし書房

 日本軍は満州(今の中国東北部)に七三一部隊を置いて、残虐非道の限りを尽くしました。日本軍に反抗したような人々(無実の人々もいました)を逮捕・連行してきて、生体実験し、結局、全員を殺害してしまいました。正式な建物(施設)が出来てからは脱走した人もいません。ナチス・ドイツの絶滅収容所でユダヤ人が何百万人も殺害されましたが、連合軍が解放したときに少なくない生存者がいて救出されたのですが、七三一部隊では、逃亡に成功した人はただの一人もいません。
 そして、ドイツでは殺害されたユダヤ人の遺族に対して政府と企業がそれなりの賠償金を支払っていますが、日本は、殺された人の遺族に対して一切の補償をすることもなく、今日に至っています。
 七三一部隊で殺害された人々の名簿はまったくありません。ナチス・ドイツは詳細な名簿をつくって収容者を管理していましたが、七三一部隊は、収容した時点で、それまでの氏名ではなく、すべて番号でのみで管理していました。
 七三一部隊の存在は日本陸軍のトップも皇族たちも知っていた。東条英機は七三一部隊を数回は訪問しているし、竹田宮も訪問している。
 七三一部隊の建設にあたっては、石田四郎の出身地である千葉県の加茂村や多古地区から多く関わっている。
 七三一部隊で生体実験の対象とされた人々は「マルタ」(丸太)と呼ばれた。人間扱いはされなかった。ただし、実験データをきちんとするため、食事は良く栄養管理はされていた。
 憲兵隊や特務機関などが捕まえた、ロシア人・中国人・モンゴル人そして朝鮮人もアメリカ人捕虜もいた。この本には少年隊にいた人が黒人(それほど真黒ではなく、浅黒い人とされている)もいたと証言しています。アメリカ軍は自分たちの仲間が人体実験の材料とされたうえで殺害されても、七三一部隊の首脳部である石井四郎たちの責任を追及することはなかったのです。それより人体実験の材料の入手を優先させたのでした。
 マルタには女性もいた。ロシア人女性も中国人女子学生もいた。妊娠して出産した女性もいたが、赤ん坊はすぐに殺された。
少年隊は、14歳、高等小学校在学中で、向上心に燃え、知的好奇心が旺盛な者ばかりだった。ここで勉強すれば、医学校に進学できて、医者にもなれるという甘言もあったようです。
アメリカ軍の捕虜は、飛行士で撃墜されて日本で捕虜になって満州に送られてきた。少尉。薄黒く、背丈は大きかったが、やせていた。30歳くらいで、15番と呼ばれた。
ソ連は七三一部隊の関係者を裁判にかけ有罪としました(死刑はなし)が、アメリカ軍は、そもそも東京裁判の対象ともせず、すべてを闇に葬ってしまいました。
戦後の帝銀事件のときも、犯人は七三一部隊の関係者だという有力説がありましたが、そちらのほうは追及されることもなく、うやむやにされました。
 それにしても、七三一部隊の隊員に少年隊員が多数いたとは驚きです。
(2025年3月刊。2750円)

 参政党の公約は「15歳までの子ども1人に10万円」を毎月配るといいます。とても耳ざわりがいいコトバですよね。でも、参政党は医療費の無償化や教育の無償化をなくして、その代わりに月10万円を配るというのです。とんでもないことです。医療費や教育費が全額自己負担になってしまったら、大変です。
 「月10万円」の公約の裏には、こんな危い話が隠されています。参政党の正体を見た思いがします。

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