弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2025年5月20日

教員不足

社会


(霧山昴)
著者 佐久間 亜紀 、 出版 岩波書店

 この本は主として日本の教育の現状と問題点を紹介しています。日本と対比させる意味で、アメリカのシリコンバレーにある私立の中学校を見学したときの様子が紹介されているのが私の目を惹きました。
学校は、資産家の元邸宅が改築されていて、教室もゆったり。そして、国語(英語)の時間には10人ほどの生徒がジェンダーに関する学術論文を読み合っている。天国のような環境だと驚嘆していると、それでも、ここの教員によると、問題を抱えているのは、他の学校と同じだという。生徒同士のトラブルがあり、親の虐待もある。そして、この豊かな教育環境は、特定の人々を排除することで成り立っている。黒人の子どもや身障児はごく少数しかいない。なので、こんな閉ざされた環境で育った子どもたちが、社会に出て、マイノリティの人々の住む現実をどこまで理解できるようになるのか、アメリカ社会の分断を統合へと導く市民に育ってくれるのかどうか...不安がある。
 そして、教員自身も不安を抱えている。年収1000万円以上をもらっていても、それは平均年収が3億円というこのシリコン・バレーでは低いほうでしかない。そして、私立学校なので、大口寄付者を確保しなければいけないが、彼らは、教育内容にまで介入しようとしてくる。すると、学校、そして教員との摩擦が生じかねない。要は教員の身分は決して安定したものではないということ。なーるほど、金持ち学校にも、内外ともに難しい問題を抱えていることを初めて知りました。
 今の日本の教員不足は深刻。それを実感するのは、とっくに高齢者になっている私の世代でも、まだ嘱託だとか名目はいろいろ違っていても、現役の教員として生徒に接しているという人が少なくないのです。
 日本の教員不足は、今に始まったことではない。戦前から断続的に繰り返されている。今では、政府は教員定数を増やすことはないとしている。すると、教員は非正規化するしかない。
 教員数について、地域格差が拡大している。自治体の財政力によって少人数学級を推進できる自治体と、推進できない自治体と差が生まれている。
驚くべきことに、教員給与を政府は削減しつつあるのです。これはたまりませんね...。
 国は教育費の国庫負担の割合を削減し、今では、教員給与の3分の1しか国は負担せず、残る3分の2は、自治体が負担している。
 終身雇用の公務員は大幅に削減され、伝期付、臨時・非常勤職員が急増している。教員を志望する子どもが減っている。いやあ、これは困ったことです。
 教員に憧れる子どもが減っているというのは、忙しそうな教員を見ているからでしょうか。
 教職の魅力は、第一に子どもが好き、第二に経済的に安定、第三に家庭生活と両立しやすい、だった。ところが、政府による「教育改革」はこれらを否定してしまった。
 教員の労働環境を改善する必要があります。まずは、仕事量を適正化することがあげられます。外部からは余剰にしか見えない人員が、実は必要不可欠な人員であるというのが公務員では多いというのは、私の実感でもあります。
 にもかかわらず、世間には公務員叩き(バッシング)して政治家としてデビューして評判を上げるというパターンが、今でも少なくないという悲しむべき現実があります。
 アメリカでは、学年別の学校行事というのはない。入学式も卒業式もない。運動会や修学旅行というのもない。また、生活集団としての学級(クラス)自体が存在しない。
 私の孫が通っている韓国の小学校では運動会はあるものの、それは担任の手を離れて、イベント業者の手になるもののようです。
 私は小中学校が次々に統廃合されているのに反対です。どんなに人数が少なくても、子どもたちが歩いて通えるところに小学校はあるべきです。少人数学級でいいじゃないですか。先生も生徒も、みんな伸び伸びと遊べ、学べる環境が一番です。そこでお金をケチケチすべきではないと思います。要は、なんでも効率化という名目で、大切な子どもたちの伸び伸びした可塑(かそ)性を奪ってはいけません。
 いろいろ考えさせられる指摘がたくさんありました。
(2025年2月刊。960円+税)

 日曜日に、朝顔のタネを庭のあちこちに植えつけました。夏は朝顔ですよね。いま、庭は黄ショウブが一面に咲いています。アマリリスの白っぽいピンクの花も見事で、心が安まります。クレマチスは終わりました。今年はジャガイモの花に勢いがあります。この調子で地中のジャガイモが大きく育ってくれたらうれしいのですが...。サツマイモは地上部分は元気一杯に生い繁っていても、地中は生育不十分ということが何回もありました。
 サボテンの白い花が一斉に咲いてくれました。まるで鉄砲百合のようです。濃い紫色の矢車菊もところどころに咲いています。
 ジャーマンアイリスは終わりかけています。もうすぐ近くの小川にホタルが飛びかう時期になります。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー