弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

生物

2018年6月18日

植物、奇跡の化学工場


(霧山昴)
著者 黒柳 正典 、 出版  築地書館

植物っていうと、動物と違って動かないし、ただ花を咲かせて食べられるだけ。そんなイメージがありますよね。ところが、この本によると、植物は精密な化学合成をする生命体だというのです。
一見受け身な感じのする植物だが、植物同士でも繁殖場所の争奪戦のために化学物質を用いて競争相手を排除している。
季節変化に応答し、決まったサイクルで生活を続ける植物には、動物やヒトと異なる生命維持のメカニズムがあり、その中心を担うのが植物ホルモンという植物独特の生理システムである。光合成システムの構築は、植物の最大の化学戦略である。
昔から多くの科学者が人工光合成に挑戦したが、今なお実現していない。水と二酸化炭素と光で有機化合物をつくるのは、人工的には非常に困難。しかし、植物は、進化の過程で構築した複雑なシステムを用いて、いとも簡単に光合成をやってのけ、二酸化炭素と水からグルコースを合成し、酸素を放出して地球の生命を支えている。光合成能力を獲得した植物は、二酸化炭素と水を材料にし、太陽の光エネルギーを用いてグルコースを合成することができる。
地球上の植物は、1年間に100億トン以上の無機の炭素を糖に変換し、地球上に生活する生物のエネルギー源を供給している。
植物も動物と同じように外界からの情報を何かの方法で受信している。なかでも、光は大切な情報源である。
植物ホルモンとは、植物の細胞により生産され、低濃度で植物の生理作用を調節する物質と定義される、植物独特のものである。8種類の植物ホルモンが認知されている。この植物ホルモンは活性が高いため、植物にふくまれている量が極微量であり、その分析が困難なため、高等植物からの分離・発見は遅れている。
まったく何もせず、ひたすら枯れるまで何ひとつ動かすこともなく、ただじっとしているだけのように見える植物が、なんと偉大な科学者に勝る存在だとは・・・。世の中は驚きに満ちていますね。
(2018年3月刊。2000円+税)

 いま、町のあちこちに淡いブルーの花火のようなアガパンサスの花が咲いているのを見かけます。もちろん、我が庭にも咲いています。
 きのうの日曜日は年2回の仏検(フランス語検定試験。1級です)の受験日でした。どうせ合格できないと分かっていても、それなりに準備しますし、当日も緊張するのです。このところ、毎朝、NHKフランス語講座の応用編を繰り返し書き取りしていますので、少しは上達したかと思うと、あにはかろんや、ますますレベルが下がっているようで本当に困っています。試験が終わって自己採点するのですが、いつものように自分に甘く採点して57点(150点満点)でした。4割にたどり着けません。実観としては2割か3割ほどです。なんとか挽回するのは、いつも書き取りなのですが、今回は聞き取りも、あまり芳しくはありませんでした。でもでも、ボケ防止と思って、くじけずに続けます。ちなみに、我がベターハーフはいま必死で韓国語に挑戦中です。こちらは孫と話せるようです。

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2018年5月21日

サルは大西洋を渡った


(霧山昴)
著者 アラン・デケイロス 、 出版  みすず書房

私が大学生のころ、プレートテクトニクス理論が出てきて、まさか、大陸が動くだなんて考えられないと厳しく批判されていました。アフリカ大陸と南アメリカ大陸が昔はくっついていただなんて容易に信じられることではありません。ところが、今ではそれがまったく定説になっています。そして、大陸を動かすのは、地中深いところのマグマが地表面に吹き出してきて、大陸を少しずつ動かしているというわけです。
地上の大陸が動き、それぞれ別の大陸に分かれていくと、もともと一種だった動植物が、それぞれに独自の変化を遂げていくことになります。
これを頭のなかで観念するだけでなく、現実の動植物をじっくり観察して、間違いないと確かめたのですから、さすが学者は偉いです。
たとえば、ニュージーランドやニューカレドニア島は、かつてジーランディア大陸の一部であり、この大陸が海底に沈み込んでしまったあと、海上に残った島なのです。今から2500万年も前の出来事でした。
ジャガイモは、南アメリカのペルーで先住人が今から4000年も前に野生の原種をつくりかえて栽培したもの。インカ帝国は、ジャガイモを労働者や軍隊のエネルギー源とした。ヨーロッパにジャガイモが入って来たのは1550年代。初めは有毒植物と思われたが、1800年まではジャガイモ栽培は北ヨーロッパ全域に広がった。
アイルランドでは、小麦栽培が難しかったので、1600年代半ばにジャガイモ栽培がはじまった。その結果、人口爆発が起きた。1600年代初頭の人口150万人が200年後には800万人の人口をかかえるまでになった。ところが、1840年にジャガイモの病気が広がり、収穫の4分の3が台無しとなった。そのためアイルランドでは貧しい人々の主要な栄養源が失われ、3年間で100万人もの人が餓死、病死した。そのため200万人もの人々がアイルランドを逃げ出した。そのうちの50万人はアメリカに渡った。暗殺されたケネディ大統領もアイルランド系でしたよね・・・。
19世紀にロシアやドイツが世界の列強として台頭したが、それを支えたのがジャガイモだったと言ってよい。
ところで、訳者あとがきを読んで驚きました。著者の父親一家は、第二次世界大戦中に、アメリカ各地につくられた日系人の強制収容所に入れられたとのこと。母方の祖父母は、日本からの移民、父方の祖母も日系二世とのことなのです。世界は広いようで狭くもあるということなんですね・・・。
(2017年11月刊。3800円+税)

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2018年4月 2日

読むパンダ

(霧山昴)
著者 黒柳 徹子・日本ペンクラブ 、 出版  白水社

はるか昔、上野動物園に来たばかりのパンダを見に行ったことがあります。遠くのほうにじっとしていて、ガッカリでした。少し前に和歌山(南紀白浜)のアドベンチャーワールドに行きましたが、ここは素晴らしいです。わざわざ行った甲斐がありました。パンダを真近で、じっくり観察し、楽しむことができます。ここでは中国と直結してパンダの繁殖に貢献していますが、すごいことだと思います。
この本は、日本にパンダが初めてやってきたときの苦労話から、つい先日のパンダの赤ちゃん誕生まで縦横無尽にパンダを語っています。写真もそれなりにあって楽しい、パンダ大好き人間にはたまらない本です。
パンダなんて、「女子供」がキャーキャー騒いでいるだけじゃないかという偏見をもっている人には、いちどパンダの実物をじっくり見てほしいと思います。もとは熊なのに竹を主食としてあの愛くるしい丸っこい形と白黒パンダ模様はたまりません。そして、動作だって、人間の赤ちゃんか幼児みたいに愛嬌たっぷりなので、見飽きることがありません。誰が、いったい、こんな形と色を考えたのでしょうね。
パンダは木のぼりが上手ですが、それでも落っこちます。ところが、木から落ちても平気な身体をしているのです。
パンダの身体は甘酸っぱい匂い、芽香がする。不快感を与えない。同じことは、パンダの糞についても言える。これは、要するにパンダの主食が竹(笹)によるものでしょうね。肉食だったら、猫の糞のように不快な臭いのはずです。
パンダは鳴く。クンクン、クンクン、クゥンクン。メスがオスを交尾相手として受け入れるときには「メエエエ」と羊鳴きをする。相性が悪いと、「ワン」と犬鳴きをして「近寄らないで」と警告する。
パンダも人間と同じで好き嫌いははっきりしているのです。ですから、パンダの繁殖は難しいのです。それでも日本の動物園で赤ちゃんを育てるのに成功しているのですから、すごいですよね。
パンダファンには絶対おすすめの一冊です。
(2018年3月刊。1400円+税)

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2018年3月 5日

世界は変形菌でいっぱいだ

著者 増井 真那 、 出版  朝日出版社

いやはや驚嘆しました。すごい少年がいます。藤井6段は15歳、中学生ですが、こちらも16歳です。変形菌と10年間いっしょに暮らしながら研究を続けています。
この研究は学会にも参加しているほど、本格的なものです。10年間の蓄積があり、写真でも紹介されていますが、見事なものです。ぜひ、あなたも、この本を買うか図書館で借りるかして、写真をじっくり眺めてみて下さい。変形菌の、たとえないようもない美しさに魅入られてしまうことでしょう。
著者は、変形菌の存在をにおいでも察知することができます。
土と水のにおいを足したような・・・。土から腐った感じを抜いて、キノコから酸っぱい感じを抜いて、混ぜたようなにおい・・・。とにかく、さわやかで、やさしいにおい。これって、本当にどんなにおいなんでしょうか、知りたいです。
著者の書斎の写真がありますが、まさに研究室です。理解ある両親の下で、研究一筋ということがよく分かります。なにしろ、この10年のあいだ、毎日欠かさず変形菌を育て、観察しているのです。
1日に2回チェックする。飼育するときの餌は、オートミール。添加物の一切入っていないもの。
変形体はキレイ好きなので、汚れたキッチンペーパーを取り替えてやる。キッチンペーパーは年間30ロールも使う。
変形体は温度に敏感で、急激な温度変化にさらさないようにする。
変形体とは、変形菌の一生のなかで、ネバネバのアメーバとして動き回る形態(段階)のこと。変形体は子実体(しじつたい)に変身する。もう餌は食べないし、自分から動くこともない。子実体の役割は、胞子を外の世界に飛ばして子孫を増やすこと。子実体一つひとつの中には無数の胞子が詰まっている。たくさんの子実体が並んでいる様子は見事です。
変形菌は世界で800種みつかっていて、そのうち半分の400種が日本でみつかっている。四季が豊かで、気候や風土のバリエーションが多く、そこに季節や台風が世界の胞子を運んでくるからだとみられている。

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2018年2月19日

数をかぞえるクマ、サーフィンするヤギ


(霧山昴)
著者  ベリンダ・レシオ 、 出版  NHK出版

 とても面白い本です。人間だけが遊ぶ動物だ、なんて思っていましたが、今ではそんなことはないと思い直しています。
 人間だけが悲しいとか感情があり、仲間の死を悼むことができるというのも間違いなのです。ゾウが仲間の死を悼んで、なかなかその場を離れようとしないし、骨になっても戻ってくるというのはテレビの映像で知っていました。
 この本では、ヤギだって仲良しが死んだら、その死骸のそばから数日間は離れない。ゴリラもチンパンジーも静かに仲間の死骸のまわりに集まって、順番ににおいをかいだり、そっと触ったりする。それだけではない。カササギもカラスも友の死に「お葬式」をする。くちばしでそっと死骸をつついてみて、そのあと草を加えて戻ってきて死骸の横に置く。カラスも同じように草や小枝を順番に死骸にかぶせていく。
 ネズミは思いやりを行動で示す。仲間のネズミが苦しんでいるのを見たネズミは、目の前に好きなチョコレートがあっても、ひとまず仲間のネズミを助け出そうとする。これは思いやりの心があることを示すものとしか解せない。
 ネズミは、くすぐられるのが大好き。くすぐられると甲高い声でチュウチュウ鳴くが、これは喜んで笑っているということ。
 魚だって遊ぶ。水槽の水をこっそり飲みにくる猫と「待ちぶせごっこ」をする。猫が水槽のそばにくるまで魚は隠れていて、それから、いきなり水面まではねあがって、水を飲もうと思ってる猫を驚かせる。魚と猫は、このやりとりを何回も繰り返し、どちらも傷つくことはなかった。つまり、遊びとして楽しんでいた。
 サルは自分が公平に扱われないことに気づくと腹を立てる。
 イヌ科の習慣では、公平に遊ばない犬は、群れから追い出されることもある。公平に遊ぶ犬は群れの仲間と信頼の絆を深める。
 熊も大いに遊ぶ。そして、クマは数をかぞえることができる。いったいぜんたい、人間は万物の霊長だなんて、誰が言ったのでしょうか・・・。人間なんて、核のボタンを頭上にぶら下げていつ絶滅するかもわからないのに、ノー天気に自分だけ特別な存在だと空威張りしているだけの存在でしかないのですよね・・・。あなたも、ぜひご一読ください。
(2017年12月刊。1600円+税)

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2018年2月13日

動物園ではたらく


(霧山昴)
著者  小宮 輝之 、 出版  イースト新書

 上野動物園の元園長が動物園で働いた半生を振り返った興味深い新書です。
 ナチス・ドイツ支配下のワルシャワ動物園で迫害されるユダヤ人を脱出させていった勇気ある人々を描いた映画を見たばかりでした。動物園というところは、子どもに夢をもたせるばかりでなく、人助けもするところなのですね。
 この本は、動物園がなぜ人間社会に必要なのか、子どもも大人もみんなが行きたがるのかを考えさせてくれる本でもあります。
 動物園は楽しくなければいけない。私も本当にそう思います。子どもも大人も楽しめ、動物たちも生き生きと動きまわっている。そんな動物園であってほしいものです。私も旭川にある旭山動物園には2度行きましたが、圧倒されましたね。また機会があれば行ってみたいところです。
 飼育している野生動物が安心して暮らせるのは、動物たちが飼育係を自分の生きる環境として受け入れたとき。お客さんも楽しくを実現するには、動物が人前に出るのを嫌がったり隠れたりしてしまわないように、いろいろな工夫をしている。職員も楽しくするためには、自分が休日のとき、誰が世話をしても怖がったり暴れたりしないような飼育が必要になる。
動物園の役割の一つにひとの心を癒し笑顔にすることがあげられる。
 ゾウやチンパンジーの飼育係になれるかどうかは、動物たちが担当者として認めてくれるかどうかが大切。いつまでたっても認めてもらえない人もいる。
 ライオンには馬肉を中心として、1頭で1日に5~7キロのえさを与える。
飼育係の職業病の人は腰痛。えさを準備するときに重労働で腰に負担がかかる。また、長靴を常用するので水虫になりやすい。
 動物園内の樹木はエサにすることがあるので、害虫防除のために農薬は使えない。
熊にえさを与えるには、できるだけ同じ時間、決まった時間に熊舎に行く。いつもどおりの時間に飼育係が来ないと不安がる。いつもと違うことをするのは、絶対に避ける。
 動物たちにとって、夕方から夜、そして夜明けを迎えて朝になる。人のいない16時間こそ、マイペースで過ごせる大切な時間なのだ。
 人工保育で育てた動物は、成長してからも人間を恐れない。しかし、動物同士で溶け込めず、繁殖行動がとれない危険がある。
野性のゴリラは群れで暮らし、群れのなかで子は育つ。子が1歳ころ、母親は子育てを父親にまかせる。ゴリラの子は父親に遊んでもらいながら、ゴリラ社会のマナーやルールを学んで成長する。
飼育係は危険と隣りあわせの仕事でもあります。私の小学生のころ、動物園からトラが逃げ出し、そのとき、飼育係と見物客が死んだ(殺された)という事件が起きて大騒動になったことがあります。見物客が便所のなかに隠れ、トラが扉をガリガリひっかいていたというのです。生きた心地はしなかったでしょうね・・・。
昔、上野動物園にパンダが来たばかりのころ、子どもを連れて見物に行きましたが、寝ている姿がちらっと見えただけでした。パンダを間近に見たいなら、やっぱり白浜のアドベンチャーパークですね。読んで楽しく、ためにもなる動物園の話です。
 (2017年11月刊。880円+税)

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2017年12月11日

歌うカタツムリ

(霧山昴)
著者  千葉 聡 、 出版  岩波科学ライブラリー

 カタツムリが歌うだなんて、何かのたとえ話かなと思うと、そうでもないようです。歌うカタツムリの伝説は、ハワイにある昔からの言い伝え。しかし、著者も確かに聞いたというのです。
 小笠原の島で、雨上りの夏の真夜中、耐えることなく湧きあがるように聞こえてきた不思議なざわめき。短い口笛のような音、軋(きし)むような音、ガラスのコップが触れあうような音、そんな一つひとつの小さな音が幾重にも重なり、共鳴し、ついに波濤のような響きとなって、森や谷間にあふれていた。この不思議な音色がカタツムリのものだとは、にわかには信じられなかった。これは、足の踏み場もないほど地上にあふれだした、おびただしいカタツムリの群れが、互いに貝殻をぶつけあい求愛し、硬い歯をむさぼる音だった。
およそ200年前、ハワイの住民はカタツムリが歌うと信じていた。しかし、20世紀の今日、ハワイにはカタツムリがいない・・・。ええっ、本当でしょうか。
ダーウィンはガラパゴス諸島で、三つの島で、15種のカタツムリを採集している。
ナメクジは、カタツムリとともに陸貝のメンバーである。殻のないカタツムリがナメクジの仲間。ナメクジは、多くのカタツムリと同じく雌雄同体で、一匹の個体にオスの機能とメスの機能が両方そなわっている。雌雄胴体の動物は、普通、二匹が交尾をして、卵は別の個体から受け渡された精子と受精する。ナメクジは、それだけでなく、好んで自分の精子を自分の卵と受精させる。
 北海道にいるエゾマイマイは、捕食者オオルリオサムシに襲われると、大きな殻を激しく振り回し、相手に打撃を与えることによって敵を追い払う。殻を武器として振り回すことによって敵を撃退するのだ。
 同じく北海道にいるヒメマイマイハ他の多くのカタツムリと同じくオオルリオサムシの攻撃を受けると瞬時に身を殻内に引っこめ、引きこもって防御する。
 オナジマイマイ系は、交尾のとき、恋矢を繰り返し相手に突き刺す。これによって自分の精子の受精確率を高めるため。恋矢を刺されると、以降の交尾意欲が失われ、受け渡された精子の受精機会はいっそう高まる。そのうえ、恋矢を刺されると、寿命まで縮んでしまう。
交尾相手が自分より大きいと、自分の身が危ない。小さい相手は、子孫を残す相手として好ましくない。できたら、体の大きい相手、つまり質の良い相手と交尾したほうが、この適応度は上がる
 なるほど、カタツムリの研究って、大変ですけど、よくもここまで観察したものです。学者稼業も楽じゃありませんね・・・。
(2017年6月刊。1600円+税)

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2017年10月15日

サバイバル登山入門

(霧山昴)
著者 服部 文祥 、 出版  デコ

私は勇気がないし、臆病な人間ですので、誰もいない山中で一人で寝るなんて出来ませんし、するつもりもありません。そんな私が、著者の本を読み続けているのは、要するに怖いもの見たさです。活字を通してなら、いくらでも知りたいのです。その場に身を置く勇気はなくても、もしもそこにいたら、どうしたらいいだろうと想像するくらいは許されるでしょう。
山ではヘビは貴重なタンパク源。ベトナム戦争が盛んなころ、解放戦線の兵士(べトコン)は、ヘビを見つけたら逃がすことはなかった。同じことは、南方戦線の日本兵士もしていた。
マムシはヘビの中でもっともうまく、山ウナギとも呼ばれる。肉と骨を石でつぶしてミンチしてから炒めると美味しい。うひゃあ、そ、そうなんですか・・・。つかまえたシマヘビを著者がかじっている、とんでもない写真があります。
イノシシは「豚汁」がおいしい。豚肉の味を濃くした感じで、味噌との相性が良い。
シカ肉は当たりはずれがないが、劇的にうまいこともない。イノシシは当たりはずれがあり、当たると舌がとろけるようなうまさ。クマ肉も当たりはずれが大きく、うまいクマ肉は、「肉とはこれだ」と思わせるような光り輝く脂で、とてもおいしい。
シカなどを鉄砲で撃つときの状況、イワナの釣り方が図解されていて、イメージがつかめます。そして、解体作業は写真つきです。
山でキノコをとって食べたいとは思いますけれど、毒キノコを食べたら大変です。ところが、著者は、おいしいキノコと、おいしいキノコに似た毒キノコを覚えればいいと言います。本当でしょうか・・・。
「寝る食う出す、がうまく出来たら、その登山は成功」
そうでしょうが、そのどれもが山の中では簡単なことではありませんよね。
野営地の選び方、野営の手順、タープの張り方、夜の過ごし方が図と写真で説明されています。ステンレス製の茶こしを蚊帳(かや)がわりにするなんて、そんなワザがあったんですね、驚きました。
サバイバル登山でもっとも辛いのは、害虫に食われたり、刺されたりすること。クマとかイノシシではないんですね・・・。ハチによるアナフィラキシーショックが起きたら、そういう人生だと思いなさいって・・・。トホホ、です。
いやはや、手取り足取り、なんでも親切に解説してあります。でも、私にはとても出来ません。サバイバル登山を繰り返してきた著者も、今では3児の父親だそうです。これからも引き続き元気に過ごしていただき、読ませて下さい。私にも、ちょっぴり疑似体験を味わわせて下さい。よろしくお願いします。
(2016年1月刊。2500円+税)

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2017年10月 9日

発光する生物の謎

(霧山昴)
著者 マーク・ジマー 、 出版  西村書店

私が発光する生物を初めて見たのは、ホタルを別にすると、伊豆諸島の戸田(へた)の海岸での夜行虫でした。夜の海岸で怪しげに光っているのを見て、その美しさに驚きました。
ノーベル化学賞をもらった下村脩氏はオワンクラゲをアメリカの海岸で大量に集めたのでしたよね。
自然に発光するダンゴイカ、チョウチンアンコウ、クラゲなどのほか、人工的に発光させて病理研究に役立てている話も紹介されています。
チョウチンアンコウは、口の前方に生物発光するアンテナをもっている。アンテナの先には、何万匹もの発光バクテリアが棲息し、その光に犠牲となる魚が惹き寄せられる。
オワンクラゲの傘の部分には緑色の光を発する数百の発光器がある。その光の点滅がどのように制御されているのか、まだ分かっていない。
蛍光タンパク質をつかってマラリア原虫の動きを探り、ガンとのたたかいに役立てようとしています。
蛍光タンパク質によって鳥インフルエンザの感染もすぐに判明するようになりました。
遺伝子操作は怖いものですが、こうやっていろんな生理現象の解明に役立っているというのはすばらしいことです。
蛍光タンパク質をつかった地道でカラフルな探究がさらにすすむことを願っています。
(2017年8月刊。1800円+税)

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2017年9月11日

山と河が僕の仕事場2

(霧山昴)
著者 牧 浩之 、 出版  フライの雑誌社

神奈川県川崎市で生まれ育った都会っ子が宮崎県高原町で山の生活を謳歌しているという、読んで、また見て楽しい、写真たっぷりの体験記(レポート)です。
フライフッシングの毛鉤(けばり)づくりの仕事に始まり、山でシカやイノシシそしてカモなどを捕まえる猟師となり、果てはシイタケ栽培やら農業にまで手を広げていくのです。
毎日が、生き物を相手としていますので、予定が狂わされることも多いようですが、次第にネットワークが広がっていく様子は頼もしくもあります。
著者はよほど器用な人なのでしょうね。
フライフッシング用の毛鉤をつくっていく過程が写真でも紹介されていますし、シカやイノシシを解体・精肉化していく様子も見事です。
九州は宮崎の山の中で住むのって、虫やら蛇やらいて、大変じゃないかと思いますが、地元出身の気丈夫な奥様とうまく折りあっていきながら、毎日、楽しそうです。
マガモの尻に生えている羽はCDC(フランス語です)と呼ばれる特別の羽。フライフィッシングにはもってこいの羽だ。
罠にかかったメスジカは最後まで逃げようとするが、オスジカは、意を決すると、角で人間に向かってくる。ええって、こんな違いがあるのですね・・・。
シカと同じようにイノシシも罠にかかっても危険なようです。うかつに近づくと踏み倒されそうです。
霧島山麓には、1平方キロメートルに50頭ものシカが生息するとみられている。
シカやイノシシが村人の畑を襲い、日常的に被害を与えているのです。ですから、人間と共存するためには、一定の駆除は必要だとのことです。現実は、単純に野生動物を保護しましょうとはいかないのですね・・・。
著者は猟師になってからアルコールを絶っているとのこと(なぜなのか、理由は書いてありません)。代わりに奥様がビール党としてがんばっているようです。
読んで楽しい、大自然の中で楽しく生きているという素晴らしいレポートです。前の本とあわせて、一読をおすすめします。
(2017年2月刊。1600円+税)

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