弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

ヨーロッパ

2020年8月 8日

タルピオット


(霧山昴)
著者 石倉 洋子とナアマ・ルベンチック 、 出版 日本経済新聞出版社

イスラエルの人口は900万人で、大阪府と同じくらい。面積は四国くらい。
イスラエルの成長をけん引しているのは、ハイテク産業。イスラエルの輸出に占めるIT製品の割合は、10.8%(2017年)。
日本企業71社がイスラエルに拠点を置いている(2018年10月現在)。5年間で3倍に増えた。
イスラエルの食糧自給率は9割超。砂漠で食料を自給するための技術開発も進んでいる。
天然資源のないイスラエルにとって、唯一の資源は、人であり、頭脳だ。
ユダヤ人は、既存の枠組みや前提条件を疑うところから始めて、新しいアイデアを出そうとする。ルールは絶対ではない。なぜダメなのかと問いかけ、議論するのがユダヤ人だ。
イスラエル人は、非常によく質問する。質問することで、お互いの視点の違いを知ることができるし、思考が刺激されて内容が発展し、新しいものが生まれることが多い。
イスラエル人の「質問好き」は、常識や前提条件を疑い、新しい発想での課題解決がイノベーションを生むことにつながっている。
イスラエルでは、正解、不正解がはっきりとした試験は少ない。正解、不正解が明確な試験だと、選ばれる人が画一化してしまうからだ。
イスラエル国民は、18歳(高校卒業)から男子3年、女子2年の兵役義務がある。
タルピオットの選抜プロセスは、高校生の早い段階から始まる。成績、健康状態などの一般的な試験で1万人が選ばれる。そして、物理、数学、コンピューターサイエンスや歴史などの科目について、クリエイティピティを測る試験があって数百人にしぼりこまれる。次に3日間の合宿があり、グループに分けられて、複数回の面接で最終的に50人が選ばれる。このこき、学業成績がトップというだけでは選ばれない。リーダーシップ、チームワーク、創造性が重視される。
タルピオットは、3年間(40ヶ月)のトレーニングプログラム。受講生の4分の1が途中でドロップアウトしてしまう。
過去40年間でタルピオットの卒業生は1000人のみ。卒業生はタルピオンと呼ばれ、イスラエル国防軍のさまざまな部隊に配属される。そして最低でも6年間は従軍し、現場で力を発揮する。
イスラエルにあって、日本にないものは、失敗を許容する文化だ。
スタートアップ(起業)でも失敗を恐れない、これは大切なことだと私も思います。
人材重視のイスラエルで成績優秀な若者を確保し、育成していくシステムがあるというのを初めて知りました。道理で強いわけです。
日本では「教育重視」のかけ声だけで、アベ流の教育改革は一部のエリート層の育成にのみ目を向け、一般ピープルを見事に切り捨てています。これでは日本はますます世界から置いていかれるだけではないでしょうか...。
(2020年3月刊。1600円+税)

2020年8月 5日

無の国の門


(霧山昴)
著者 サユル・ヤズべく 、 出版 白水社

内線下のシリアに、フランスに一人娘とともに逃れた作家(女性)が一時帰還し、絶え間ない爆撃の下、反体制派の人々のあいだで暮らしながらシリアの人々を訪問し、その苦悩に耳を傾けた1年間のレポートです。読んでいて辛くなりました。内戦というのは、同じシリアの国民同士が殺しあうのですから、本当に悲劇というほかありません。
著者は本の前書きに次のように書きました。
私は現実を生き、現実を書き、隠す。
死者たちが、私のノドを通る。
ひとりひとり、神に届くほど高く昇り、それから次々と私の血に落ちてくる。
私は、あなた方の短い人生を見つめる語り部だ。あなた方を見つめている。
私は、あなた方のために書く。そして目を離さない。
著者がシリアを出国したのは2011年7月。
イスラーム法では、未亡人は3ヶ月と10日が経過するまでは、いかなる男性にも会ってはいけない。著者(女性)は、殉死者の妻たちの話を聴きとりに行こうとするが、それには同行する男性の援助がいる。しかし、妻たちはイスラーム法のきまりで、男性とは会えないのだ...。
シリア人の墓地のあり方は変わってしまった。死者を家の中庭に埋葬するようになり、公園も墓地に変えられた。殉死者は木々の間に埋葬され、簡素な墓石が置かれた。長い壕を掘りすすめ、そこに何十人もの死者を一緒に埋葬する。
著者が銃機関砲を操作している若者に、戦争が終わったら何をするつもりなのか、問いかけた。
「オレは運転手の仕事に戻るよ。こんなのは全部放り出して...。好きで武器をとったんじゃない。こんなのは死の道具だ。オレは生きたいんだよ」
まことに、もっともしごくな答えです。誰だって殺しあいしたくないのに、不幸なことに内戦の真最中に置かれているのです。
内戦が続いて、読み書きがまったくできない世代が出現しつつあり、子どもを兵士にしようとする動きもある。IS(イスラム国)が少年兵の育成に成功しつつあり、ヌスラ戦線も少年兵の脅威に乗り出している。
無力感や絶望が色濃く漂うなかで、著者はシリアの女性たちを一貫してポジティブな存在として扱い、賛美してやまない。
暗い思いをかかえていても、女性たちはしたたかに現況を乗りこえようとしており、そのまなざしは、生きるほうへ、未来へと向けられている。
そうなんです。シリア内戦下の生存ぎりぎりの極限的状況の描写が続くなかでも、最後まで読み通して思ったのは、さすがに女性は強いということでした。
(2020年3月刊。3200円+税)

2020年7月30日

裏切りの大統領マクロンへ


(霧山昴)
著者 フランソワ・リュファン 、 出版 新潮社

毎日毎朝、フランス語をこりもせず書き取りしながら学んでいる身として、フランスはとても気になる国です。
2017年5月、フランス史上最年少の39歳の若さでエマニュエル・マクロンは大統領に就任した。2018年11月、黄色いベスト(ジレ・ジョンズ)運動が始まった。政党や労働組合などの組織が起こしたのではなく、中産の下から低所得層がネットを通じて声を上げ黄色いベストを着て街頭に出たのだ。彼らはマクロン大統領がすすめている新自由主義による社会保障の切り捨てなどに抗議した。
著者のフランソワ・リュファンはジャーナリストであり、今では国会議員でもある。マクロンの出身地であるアミアンの出身で、同じ中学・高校に通った。
マクロンは生まれてから今日まで、ブルジョワの内輪社会がはぐくんだ果実そのものだ。上層と下層とが交わらない社会的アパルトヘイトの産物であり、民衆から離れて、マクロンははるか遠くで生きてきた。目に見えない仕切りがマクロンたちエリートを囲んでいるが、暗黙の仕切りが存在することを自覚していない。無自覚で暗黙であるからこそ、仕切りは仕切りとしての力を発揮する。
黄色いベスト運動が始まるまで、貧乏な人々は、隠れて、こっそり苦しんできた。貧乏から抜け出せない屈辱、家族を守れない屈辱、家族にしかるべき幸福をもたらせない恥をかかえて...。フランス中が、まるで黄疸(おうだん)にでもかかったかのように黄色まみれになったとき、マクロンはいったいどこにいたのか。モロッコに、ベルリンに、アルゼンチンに、アブダビに、そしてルーマニアの大統領を迎えて一緒に美術館を見学していた。
マクロンは、自分が知らない国の大統領だ。知らないどころか、軽蔑している国の・・・。これが、この本(原著)のタイトルになっています。
著者は、マクロンが左翼を装ったことを厳しく糾弾しています。
マクロンのようなグランゼコル(エリート養成機関)出身者は、高級官僚になり、そのあと民間大企業に天下りし、そのあと再び官邸や省庁の高いポストに返り咲き、国家に仕える立場にありながら、内部から国家を解体する人たちだ。
マクロンは、ロチルド(ロスチャイルド)銀行に勤めた。マクロンの顔は自信と確信に満ちあふれている。そこには、挫折の痕跡とか苦悩、つまり何か人間らしいものが、まったく認められない。
フランスの製薬大企業サノフィに対してマクロンは経済大臣として1億2500万ユーロの助成金を交付した。このサノフィがつくったクスリの副作用として自閉症の子どもが生まれた。何十年にもわたって、サノフィは何万人もの子どもたちに自閉症を引き起こした薬を売っていた。なのに、サノフィは賠償せず、それどころかマクロン大統領はサノフィの社長を大統領宮殿の晩餐会に招待した。
マクロンは、20年来、超大金持ちの信愛の情に浸かって生きてきた。夕食をともにし、冗談を言いあい、信頼しあってきた。
マクロンは富裕税は効果がなかったと断言した。そして富裕税を廃止すると同時に、年金生活者の課税率を上げ、賃借人への援助金を切り下げ、政府援助の雇用契約を20万も削除した。
マクロンは民衆の誇り、名誉を傷つけている。民衆は馬鹿にされている。マクロンは、絶え間なく、貧乏人に教訓を垂れる。マクロン大統領は、どんなスピーチをするときでも、前もって原稿をチェックする人がいて、照明と撮影技師、舞台装置係、メイクを享受している。
わが日本のアベ首相は、いつだってテレビにはうつらないプロンプターの文字盤の原稿を棒読みしています。なので、いつも心に響かないのですが・・・。
マクロンは、テレビで微笑(ほほえ)む。いつでも微笑んでいる。そして、その微笑は凍りついた。それは死の微笑だ。サルコジやオランドには、まだ人間的な面があった。しかし、マクロンはプログラミングされたロボットのような技術的官僚なので、民衆は統計上の数字、収益を上げる変数の一つにすぎないから、暮らしが立ちゆかない庶民の苦しみや羞恥心、尊厳を傷つけられた痛みなんて、想像すらできない。
マクロンの若くて、のっぺらぼーな顔立ちを見るたびに、この本に書かれていることを思い出すことにします。
(2020年2月刊。2000円+税)

2020年7月21日

イラン現代史


(霧山昴)
著者 吉村 慎太郎 、 出版 有志舎

コロナ禍のおかげですっかりヒマとなり、読書と整理・整頓そしてモノカキがすすみます。
イランという国は、私にとってとてもイメージのつかみにくい国ですので、その現代史を語った本を読んでみようと思いました。といっても、奈良の正倉院には今から1200年以上も前の奈良時代にシルクロードを通じてペルシア(ササン朝)の産物が御物として奉納されています。溙胡瓶、白瑠璃碗、金銅八曲長杯、狩猟紋や花喰鳥の紋様などです。
イラン現代史とは、一言でいうと「従属と抵抗」に彩られた歴史だということ、だそうです。
著者の「あとがき」によれば、イランは、「何がおきても不思議ではない国」と言われてきたが、今は、アメリカも同じだとのこと。残念ながら、まったく同感です。
大国政治にふりまわされる国際社会の脆弱(ぜいじゃく)性と法治主義の形骸(けいがい)化の現実は容易に変わりそうにない。これまた著者に同感と言うしかありません。
そして、著者は現在のイランについて、こう結論づけています。現在の「イスラーム法学者の統治」体制を熱烈に支持する人々、それに激しい反感を抱く人々、今ある体制に関心がなく、日々の生活に汲々とする人々、欧米の価値観に憧れ、移住さえ夢見る人々など、多様多様な人々がイランにはいる。それに応じて、対政府観や対欧米観も一様ではなく、またそれは時代の移り変わりとともに微妙に、ときにドラスティックに変化を遂げる。
なーるほど、ですね...。
私はイラン・イラク戦争(1980年~1988年)って、いったい何だったのか、関心がありました。人口規模でイラン(3700万人)の半分以下(1700万人)であり、国土面積でも4分の1位のイラクが戦争にふみ切ったのは、サダム・フセイン政権の「生き残り」をかけた「防衛的革命干渉戦争」という性格があった。サダム・フセイン政権は開戦によってホメイニ新体制の崩壊をもくろんだが、それはまったくの誤算だった。
イランは、シャーの残した正規軍(兵力35万)より兵力30万に達した革命防衛隊、その傘下で100万人まで動員可能だった義勇兵を主力として、イランは「人海戦術」を多用した。
イランもイラクも兵器製造脳力は皆無に等しく、両国は、諸外国からの兵器輸入に依存した。ソ連はイラクに兵器を大量に売却したが、中国はイラン・イラクの双方に売却した。ヨーロッパ各国はイラクにやや多いくらいで、ほぼ同等に売却した。アメリカは表向きはどちらにも売却していないが、イスラエルなど秘密ルートがあったようだ。
要するに、国連安保常任理事国は、イラン・イラク双方に停戦を呼びかけていたものの、実は、戦争の継続によって利益をあげていた事実を忘れてはいけない。
アメリカのトランプ大統領は、イラン政権を「ならず者政権」、「独裁政権」、「新テロ国家」と呼び捨て、対イラン経済・金融制裁を再開しましたが、私はこれは間違っていると思います。
おかげさまでイランについて、少しだけ知ることはできました。ありがとうございます。
(2020年4月刊。2400円+税)

2020年7月10日

総力戦としての第二次世界大戦


(霧山昴)
著者 石津 朋之 、 出版 中央公論新社

第二次世界大戦の実際をたどった貴重な労作です。
総力戦とは何か...。戦闘員(軍人)と非戦闘員(一般国民)の区別を無視して戦われる戦争のこと。そこでは、軍事力はもとより、交戦諸国の経済的、技術的、さらには道義的な潜在能力が全面的に動員される。
そして、国民生活のあらゆる領域が戦争遂行のために組織され、あらゆる国民がなんらなかの形で戦争に関与することになる。したがって、敵に対する打撃は、単に敵の軍事力だけでなく、「銃後」の軍需生産はもとより、食糧ならびに工業生産全般の破壊、およそ国民の日常生活の麻痺にまで向けられる。
さらには、国民の士気の高揚、逆にまた敵国民の戦争への意欲をそぐための宣伝、すなわち戦争の心理的側面もきわめて重要な意味をもつことになる。端的にいうと、「総力戦」の時代においては、戦争の勝敗は、もはや戦場で決まるのではなく、国家の技術力や生産力の動員能力の有無によって決定される。
ドイツは西方戦線で圧倒的な物量をもって攻撃を始めたのではない。ドイツ軍と英仏軍は戦力はほぼ互角だった。ドイツ軍は空軍力では優位だったが、戦車の数では劣っていた。フランス軍3000車両、イギリス軍200車両に対し、ドイツ軍2700車両だった。そして戦車の性能に決定的な差異はなかった。ドイツ軍は、歩兵部隊や砲兵部隊の一部は最後まで馬に頼っていた。
「電撃戦」でのドイツ軍の勝利は、優れた運用の結果であり、物量の差ではなかった。
英仏連合国軍の大多数の将校にとって、戦車は「馬車の延長」でしかなかった。
政権を掌握したあとのヒトラーは、あまり大衆の面前での演説を好まなくなった。これに対して、チャーチルは、ラジオなどを通じて常に国民に語りかけた。
わが安倍首相は記者会見のときでさえ、プロンプターというカンニングペーパーなしでは話せないようです。その点、ドイツのメルケル首相とは格別の開きがあります。
ドイツのロンメル将軍について、現在では必ずしも名将と呼ぶに値する軍人ではなかったという評価が歴史家のあいだでは一般的だとのこと。要するに、兵站(へいたん)を無視して、戦術的な勝利ばかりを追求していた軍人だと酷評されているわけです。
ノルマンディー上陸作戦の始動が知らされたとき、ヒトラーは寝ていたわけですが、仮りにすぐ起床して動き出したとしても、連合軍の上陸地点の本命はパ・ド・カレー地区であって、ノルマンディーは陽動作戦だと思っていたので、たいした対策はとらなかっただろう...、としています。なーるほど、ですね。
それにしても、ドイツ軍の目くらましのために連合軍は、いろんなことを準備していたことを改めて知りました。要するに、パ・ド・カレー上陸作戦を本物だと勘違いさせるため、パットン将軍を責任者とする軍団を新設し、しきりに無線で連絡をとりあっていた様子まで演じていたわけですし、お金も手間ヒマもかけていました。
ノルマンディー上陸作戦のとき、アメリカ軍はオマハ海岸で苦戦したが、それはドイツ軍の戦力を過小に評価していたことによる。
日本では戦前・戦後の現代史について、学校では十分な教育がなされていない。それで、日本人は十分に戦争を認識していない。もどかしい限りです。
第二次世界大戦における日本の果たした役割や現実について、もう少し分かりやすい解説があればよかったのですが...。
あなたも、図書館で手にもって通読してみてください。
(2020年3月刊。3500円+税)

2020年7月 9日

未来のアラブ人


(霧山昴)
著者 リアド・サトゥフ 、 出版 花伝社

シリア人の父とフランス人の母のあいだに生まれ、幼年期をリビア、シリアそしてフランスで過ごした著者が、誕生から6歳までの自分の体験をマンガで紹介しています。
リビアはカダフィ政権下にありました。自称・社会主義を目ざしていたようですが、とにかくモノが極端にない生活だったようです。
そして、シリアではアサド政権下です。おそらく父アサドの時代でしょう。シリア人の父は成績優秀、奨学金を得て、パリのソルボンヌ大学に留学し、そこでブルターニュ出身の母と出会ったのです。
父はシリア出身で、イスラム教はスンニー派でした。そして、ドクターを目ざし、ドクターを得ると、リビアに渡って大学の教員になったのでした。
そして、いったんフランスに戻ったあとシリアに渡ります。ところが、フランス人の母をもつ子ども(著者)は、「ユダヤ人」とされ、シリアの子どもたちから、親戚でありながらもいじめられたり、大変な日々です。
それでも、著者は母親とともにたくましく生き抜いていくのでした...。
リビアそしてシリアでの過酷な生活がマンガで実によく描かれていると思いました。
オビにフランス発200万部の超ベストセラーと書かれています。ほんとかしら...と疑ってしまいますが、そんじょそこらの薄っぺらなマンガ本とはまるで違っていることは間違いありません。世界を複眼的にみるためには必読(見)の本だと思いました。
(2020年3月刊。1800円+税)

2020年7月 2日

『世界』がここを忘れても


(霧山昴)
著者 清末 愛砂・久保田 桂子  、 出版 寿郎社

アフガニスタンの女性・ファルザーナの物語というサブ・タイトルのついた絵本です。
アフガニスタン女性革命協会(RAWA)を支援している「RAWAと連帯する会」共同代表の著者がアフガニスタン現地での活動を通して知りあったアフガニスタン女性たちから聞いた話をもとに、「ファルザーナ」という女子大学生のストーリーにまとめた本です。
見開きに文章と絵があるのですが、描かれた絵がいかにも文章にマッチしていて、読み手の心をぐぐっとつかまえて離しません。
アフガニスタンというと、先日、惜しくも殺害された中村哲医師を思い起こしますが、国の再建にはまだまだ時間がかかるようです。
アフガニスタンでも大学に通う女子学生はいるのです。通学はバス。バスは、前のドアは女性客が、後ろのドアは男性客がそれぞれ乗り降りに使うといった区別がある。
アフガニスタンの就学率は男性68%、女性39%。大学は男性14%、女性5%になっている。女性の高等教育への進学はなお困難。
識字率は、男性55%、女性30%。15歳以上の半数近くは、読み書きができない。
タリバン政権時代は、女性への教育が禁止された。
アフガニスタンでは、カブール(カーブル)のような大都市を除いて、女性がひとりで外出するのは基本的に認められていない。夫や父・兄弟といった親族男性と一緒に出かけることが求められる。
アフガニスタンでは、今なお爆弾テロが絶えないようです。暴力(武力)には暴力で対抗するというのは、果てしない暴力の連鎖です。中村哲医師のような地道な取り組みこそ日本の果たすべき国際支援なのではないかと考えました。
よく出来た絵本です。ぜひ、あなたも手にとって読んでみてください。
(2020年2月刊。1800円+税)

2020年6月23日

ベルリン1933(下)


(霧山昴)
著者 クラウス・コルドン 、 出版 岩波少年文庫

ヒトラーが首相に指名される前のベルリン、ヒトラーが政権をとったあと、一気に暴力支配がすすんでいく様子が少年とその家族の生活を通して生々しく語られます。暴力が横行する日々の生活光景に胸が痛みます。
ヒトラーが政権を握る直前の選挙で、実はナチ党は一気に票を減らしたのでした。
ナチ党は200万票を失い、共産党は100万の票を伸ばした。ベルリンのなかのヴェディング地区では10万人が共産党に投票した。2人に1人が共産党を選んだことになる。
チューリンゲン州ではナチ党は40%も票を落とし、逆に共産党が伸びた。ザクセン州、ブレーメン市でもナチ党は大敗を喫した。しかし、選挙で票を失ったとはいえ、33%を獲得したナチ党はいぜんとして第一党だ。
ナチの党撃隊が共産党本部の前を行進して挑発すると、数日後、共産党は10万人をこえる人数でデモ行進した。
ところが、ヒンデンブルグ大統領がそれまでの言葉に反して、ヒトラーを首相に指名した。ナチ党が権力を握ったのだ。
ヒトラーが政権を握ったら、共産党はゼネストで対抗すると言ってきた。しかし、600万人もの失業者がいるのに、どうやってゼネストができるだろう。飢えと寒さに苦しむ人々が、スト破りをしないでいられるわけがない。勝算のないストのために、人は自分の仕事を失う危険をおかすだろうか...。
ヒトラーが首相になっても、共産党と社会民主党は互いに相手を非難し、攻撃しあっていた。どちらも、相手の党が政権を握るくらいなら、ナチ党のほうがまだましだと考えていた。
社会民主党は共産主義を敵視していた。共産党はスターリン絶対の下で、自分の頭で物事を考えることができなくなっていた。
やがて国会議事堂が炎上し、それは共産党が放火したとして共産党員が大量に検挙され、虐殺された。それは、社会民主党の活動家も同じだった。
ヒトラーが「くたばれ、ユダヤ人」と叫んだとき、それがまさか本当にユダヤ人の大量殺戮を意味していると思った人はほとんどいなかった。
1933年3月5日は、戦前最後の国会選挙。投票率88%のなかでナチ党は44%の得票率だった。絶対多数はとれなかった。いろんな妨害をされながらも社会民主党は18.2%、共産党は12,2%を得た。
ベルリンのヴェディング地区では共産党が9万3千人、社会民主党が5万4千人としてナチ党は6万2千人の支持を集めた。
むき出しの暴力が横行するようになると、それを喰いとめるのは大変なことだと、この本を読みながらつくづく思いました。ファシズムは芽のうちに摘むしかないのです。
少年文庫の本とは、とても思えない、ずっしり重たい本です。正直言って、読み通すのが辛い本でした。
(2020年4月刊。1200円+税)

2020年6月18日

戦車将軍グデーリアン


(霧山昴)
著者 大木 毅 、 出版 角川新書

ドイツ国防軍のグデーリアン上級大将は、1940年5月の頂点から、1941年の対ソ戦におけるモスクワ前面での敗北、そしてヒトラーから解任へと転がり落ちた。
ドイツ敗戦の後は、戦犯裁判の被告となることは免れたものの、栄誉も財産も失い、悲境のうちに死んでいった。
グデーリアンは、ドイツ装甲部隊を育て、指揮し、勝利をもたらした最大の功労者だという見解が定着していた。しかし、それは主としてグデーリアン本人の書いた回想録『電撃戦』によるもので、実は、不正確なものだった。
そして、グデーリアンは語っていないし、認めてもいないが、ナチス・ドイツ軍によるユダヤ人をふくむ住民の大量虐殺に加担もしくは目をつぶっていたという事実があった。
グデーリアンはヒトラーを信奉し、反共・反ユダヤ主義の信念で一貫していた。
グデーリアンとマンシュタインは陸軍大学校の同期生だったが、この二人は決して仲がいい関係ではなかった。
グデーリアンはベック陸軍参謀総長とは違憲があわず、むしろベックを装甲部隊にとっての障害をみなしていた。このベックは、戦争を避けるためクーデターを起こしてヒトラーを排除することまで考えついて、結局、ヒトラー暗殺に失敗して命を失った。
1940年5月10日に発動された「黄号」作戦で、グデーリアンはアルデンヌ突破を成功させた。ところがクライス装甲集団司令官は、グデーリアンを命令違反と単独行動として激しく叱責した。このクライスの背後にはヒトラーもいたので、さすがのグデーリアンも従わざるをえなかった。
そして、それは、ダンケルク停止命令となった。この停止命令は、ヒトラーが自己の権力を保全・強調するためのものだったというのが、今の私には一番もっともらしく思えます。いずれにしても、ドイツ国防軍のなかでも決して一枚岩ではなかったのですね...。
そして、そこに「軍事の天才」と自称するヒトラーの独断と思い込みによる作戦指導があって混迷をきわめたのでした。
ソ連攻略を目ざしたドイツ軍のバルバロッサ作戦については、その目的が明らかでなかったと著者は評価しています。ソ連軍は頑強に抵抗しましたし、ソ連の国土はぬかるみのためドイツ軍の戦車は立ち往生してしまったのです。
グデーリアンは、ヒトラー暗殺計画の一味から参加するよう誘われたのですが、結局、日和見を決め込んだのでした。日和見ということは、ヒトラー側へも通報していないということです。肝心な決行の日には自宅にいたようです。暗殺がうまくいくか失敗するか、いずれにしても自宅にいたらアリバイがあると考えたということです。
ドイツ軍の「電撃戦」なるものは、当の本人がそのように主張しているだけで、実は落氷の綱渡りだったという。真相なのですね...。
『独ソ戦』を補完するものとして、コロナのせいで客がまばらになった福岡・六本松のコーヒーショップで一心に読みふけりました。
(2020年4月刊。900円+税)

日曜日の夜、寝る前に楽しみの「ダーウィンが来た」を見ようとしていると、テレビのある和室から「キャーッ」という家人の悲鳴が聞こえてきました。何事か...。それはそれは見事なムカデがいました。地元ではゲジゲジと呼んでいます。15センチほどもある、テカテカとした光沢のムカデが泥壁にへばりついていました。慌ててハエ叩きで叩いてみましたが、へっぴり腰で叩いたせいで、手応えもなくポロリと床に落ちてしまいました。決してくたばったとは思えませんが、動作は鈍くなりました。電線コードが近くにあって叩きにくいので、掃除機の吸い取り口をムカデにあてました。すると、ムカデはするっとテレビ台の下に逃げ込んだようです。仕方なく、重たいテレビ台を2人がかりで上げてテレビ台の下を懐中電燈で照らしてみましたが、見つかりません。いやあ困りました。こんな部屋でムカデなんかと一緒には寝れない、そう言って家人はさっさと逃げ出してしまいました。
翌朝、掃除機のゴミ吸収袋を取り出そうとすると、ガサっと動くのです。逃げ切ったと思ったムカデは掃除機に吸い込まれていたのでした。いやあ、最近の掃除機の吸引力って、すごいパワーをもっているんですね...。
自然に近いところに住んでいると、家の中の床に太いナメクジがいたり、庭にモグラや土ガエルだけでなくヘビまでいたり、あまりうれしくない隣人とも近所づきあいをしなくてはいけません。歩いて5分の小川にホタルが乱舞するのを見れるというのは、こんな環境であることを意味します。
夏に草取りをしていてヒマワリを見上げると、ヘビがからまって昼寝しているのを見て、あれえ...と腰を抜かしてしまう出来事が起きたりもするわけです。

2020年6月 8日

私のおっぱい戦争


(霧山昴)
著者 リリ・ソン 、 出版 花伝社

フランスの若い(29歳)女性が自分の乳がんのためのおっぱいを半分切除した体験をマンガで描いたものです。
著者はフランス生まれのフランス人女性。カナダのケベック州(フランス語が公用語の一つ)でテレビゲームのグラフィック・デザイナーとして活躍していた。29歳で乳がんの診断を受け、その3日後から、友人などへ漫画ブログを開設した。このブログが評判となり、開設して6ヶ月でコミック本となった。
全3巻のうちの1冊目の本書では、乳首に異変を感じたあと、検査と診断を受けてから、左胸を乳首ごと切除した。
がんという事実をなかなか受けいれられなかった自分の心の動き、周囲の反応、そして同棲中の恋人の支え、手術後の自分の身体などが、かなり正直にユーモラスな絵と文章で紹介されています。
フランスでは本になって1万部も売れたとのこと。なるほど、身近な人ががんになったら、どう接したらよいのかをふくめて、いろんなことを学べ、考えさせられます。
乳房をとったら女性ではなくなるのか、片方の乳房をとったら半分だけ女性ということになるのか、などユーモラスな問いかけもあり、考えさせられます。
巻末の解説によると、著者は治療を終えてフランスに帰国し、今はマルセイユに恋人と1歳の息子と一緒に元気に住んでいるとのことで、ほっと安心しました。
著者は、がんに「ギュンター」というドイツ風の名前で呼ぶことにしたそうです。要するに、ギュンターとは共存せざるをえなくなったことを受け入れたわけです。
ギュンター退治のことだけを考えるのではなく、毎日、ささやかなことに楽しみを見出すようにしたとか、いろいろな工夫をしたところも大変参考になりました。
気楽にさっと読め、そして大いに考えさせられるマンガ本です。
(2019年10月刊。1800円+税)

 例の10万円が6月5日(金)に入金があり、翌土曜日に手にしました。私が支払っている税金が少し戻ってきたという気分です。大切に使います。
 それにしても、この遅さはどうでしょうか...。スピード感と言えば、アベノマスクをつくった業者に460億円とか、その不良品の検品に8億円。持続化給付金を扱う電通などに700億円以上、さらにコロナ後の観光対策事業を扱う業者の手数に3000億円。こちらは、ものすごいスピード感で巨額のお金が惜しみなく使われています。みんな「アベ様のおトモダチ」です。なんで、竹中平蔵のパソナまでがコロナで肥え太るのか、天下の電通って、こんな汚れないお金までむしりとる存在なのか...。悲しくなります。もうアベシンゾーの顔なんか見たくないという人が圧倒的だというのは本当です。もっともっと怒りの声を上げましょう。

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