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食べた後どうなっているのか図鑑

カテゴリー:生物

(霧山昴)

著者 アリ・ベスタール 、 出版 ナショナル ジオグラフィック

とても面白い本です。知らなかったことが満載でした。消化器系に重きをおいた本です。

反芻(はんすう)動物とは胃が4つあり、4番目の胃が人間の胃袋にあたる。

プラナリアという扁形(へんけい)動物がいる。原始的な動物。プラナリアは自分の体を2つに切断すると、粉々になった体がそれぞれ再生し、完全な個体になる。プラナリアには心臓がない。なので血管もない。

人間の体内に寄生するサナダムシには消化管がない。胃も腸も口さえもない。宿主である動物(ヒトも含まれる)が消化した栄養素を体から直接吸収する。

クラゲは5億年以上も前から地球上に存在している。クラゲには目はないが、光のある場所を感じている。山形県鶴岡市のクラゲ水族館はぜひ一度行ってみたいと思っています。

ヒトデは5本ある腕のうち、残ったのがたった1本であっても、そこから円盤状の本体部分まで再生できる。

ナマコは攻撃を受けると内臓を外に放り出し、相手が驚いているうちに逃げる。内臓が再生するまでのあいだ、ナマコは内臓なしで生き続ける。

ウロコフネタマガイは、海底の火山に棲息する巻き貝。生きていくために、ものを食べる必要がない。食道の一部にすみついた細菌のおかげで生きている。硫黄を消化しているのは自分ではなく、化学合成菌。

タコは自然界でもっとも知能の高い、無脊椎動物。腕の一本一本に小さな脳がある。全部で3つの心臓があって、血液の色は銅を含んでいて青っぽい。

ゴキブリは、何も食べなくても1ヶ月以上は生きのびられる。

ハエ(イエバエ)の足には味を感じる受容体がある。

ハトは頭をもち上げることなく、頭を下げたまま水を飲める。それはハト目だけができること。ハトのミルク(ピジョンミルク)は、メスだけでなく、オスもつくる。

ネコの舌は甘さを感じることができない。舌にはざらざらした突起がある。

ウォンバットのうんちは立方体。大腸の終わりの部分でつくられる。転がりにくく、落ちた場所に留まりやすいため、うんちが目印となっている。

馬は一度に長い睡眠をとるのではなく、1日になんども短い睡眠をとる。

オオアリクイの舌は1分間に150回も出し入れができる。

すごい、すごい。そうだったんだ…。そう思って連休中はじっくり読みふけりました。図書館で購入してもらって、借りて読んでみてください。自然界の脅威(不思議)にふれることができます。

(2026年2月刊。3690円)

遊女の中世史

カテゴリー:日本史(中世)

(霧山昴)

著者 辻浩和 、 出版 吉川弘文館

昔から、売春は最古の職業だとよく言われています。売春は人類の歴史に普遍的なものだというのです。著者は、これは歴史的事実ではなく、神話に過ぎないと言います。このように言ったのは、イギリスの19世紀の小説の中でのことであって、学者が研究した成果ではないというのです。

日本では、売春が成立するのは、平安時代、9世紀後半以降のことであって、奈良時代より前には、売春という概念は存在しなかった。

遊行女婦(ゆうこうじょふ)という存在がある。貴族たちの宴会に同席し、歌をよんだり歌ったりする専門職人。遊行女婦と男たちの性的交渉は通常の男女関係と区別されていなかった。これは、売春として婚姻と区別する概念がそもそも成立していなかったということ。遊行女婦は遊女と同一視できない。

11世紀の遊女は、歌手として認識されていた。 芸能が重視されていた中世遊女にあっては、報酬が事後的に渡された。 売春が主目的となると、報酬は事前の交渉で取り決められる。

中世の遊女は、宿泊業や歌謡を重要な生業として営んでいたが、売春も重要な生業の一つだった。

中世の遊女に触れる史料のなかには、例えば、高齢の遊女が存在する。50歳ほどの遊女がいる。当時は寿命が短く、40歳から老いた人とみなされるので、40代、50代の遊女は、かなりの高齢ということになる。 つまり、中世遊女の生業を売春だけで理解することはできない。

中世の遊女は、家業を営む自営業者だった。 遊女集団は年功序列によって成り立っていた。 遊女集団は、メンバーの生活を守る、相互扶助的な側面をもっていた。 遊女集団はトラブルにおいて集団防衛を辞さなかった。

遊女は、一家の大黒柱だった。 遊女の長者は世襲された。

事前の交渉において重要なことは、客が気に入らないときには、その場で交渉が不成立となること。これは、客側の立場を強くし、客側が遊女を選ぶという意識の強化につながる。 遊女は、その見た目と価格とを比較した上で選ばれる「商品」になっていった。

中世の遊女なるものの実体を理解することができました。

(2026年4月刊。1980円)

離婚弁護士 松岡 紬

カテゴリー:司法

(霧山昴)

著者 新川 帆立 、 出版 新潮文庫

この著者の本はまだ2冊しか 読んでいないかもしれませんが 読ませます。たいしたものです。アメリカで生まれて宮崎で育って弁護士になりましたが、今は作家専業のようです。まだ35歳の若さですから、モノかき志向の身にはうらやましい限りです。

それなりに取材もしているのでしょうが、発想力と表現、描写力がすごくて感服させられます。

主人公の松岡 紬(つむぎ)弁護士は鎌倉の縁切寺と して有名な東慶寺(本作では東衛寺)の一人娘で、たいした鈍感力の持ち主。方向音痴だし、美人なのに男を寄せつけ ず、今もって独身。こんなキャラクター設定も読みに親近感を持たせますよね。あまりに切れ者の弁護士だと近寄り難いですからね…。

大企業を顧客とする大手法律事務所の男性弁護士もちらっとだけ登場します。「ビラブル300時間をこえてるから、毎日超しんどい…」 ビラブルというのは、クライアントに報酬請求する実労働時間のこと、タイムチャージ制の料金なので、私には、ほとんど無縁です。 300時間というと、月30日、毎日10時間も働いているということになりますね。信じられません。

弁護士生活も50年以上となり、離婚事件は常時担当してきましたし、今も担当しています。そして、相談だけだと、月に何件も受けています。

家事事件って、ドロドロしているから、やりたくないです。司法修習生がこんなことを言ったことがあり、驚きました。企業法務にしても、ドロドロしたものがないとは思えません。紛争はどんなものでも、ドロドロとした部分があると思います。そこに関わって、少しずつ解決の道を探していく。そこに弁護士としての知恵と工夫を発揮し、また苦しみと喜びがあります。

弁護士50年してもタワーマンションを買えるようなお金はできませんでしたが、ローンも終わって、無借金というのはすっきりしていいものです。そして、妻に逃げられなかったのが何よりです。離婚をめぐる弁護士が何をするのか、知ってもらえる本にもなっています。夫が病気で倒れるのを予知して、さっさと離婚をしたい、介護させられるのはマッピラゴメンという話も出てきて、身につまされました。

(2026年1月刊。781円)

刑務所で当事者研究をやってみた

カテゴリー:司法

(霧山昴)

著者 向谷地 生良・掛井 靖彦 、 出版 医学書院

つながりを喪失した「避難者」を受け入れてきた刑務所や精神科病院が、さらなるつながりの喪失と孤立を生み出す社会的循環の歯車となっている。なるほど、言われてみたら、そうなんだよね、とも思いました。

この本は「もっとも関わりが難しい」と言われていた受刑者Aさんを対象とする当事者研究を記録している。Aさんは、6歳で万引きを覚え、16歳で少年院、20歳以降は断続的に刑務所で暮らし、現在40代半ば。当事者研究にAさんが協力することは、Aさんにとって、自分が何かしら社会に貢献できるかもしれないと思えることだった。

累犯をしてきた人たちは、犯罪行為をなすことによって、罰せられたり、注意されたり、批判されることを通じて「つながりらしき」を味わってきた。

「出所してみたけれど、あまり刑務所と変わらない。シャバのほうは食いぱぐれがあるぶん、不自由だけど、刑務所のほうがいい」

「死刑になりたい」人が、なぜ他人を巻き込む人かというと、自分だけがこっそり死ぬことに無念さがあるから。死ぬなら、社会的に何らかの影響を与えてから、という発想になる。なので、死刑は犯罪を抑止せず、むしろ犯罪を助長している。

刑務所の中は、「自分がこうしたい」という思いが封じ込められた世界。

当事者研究の基本中の基本は、その人が主体的に試行錯誤を始める第一歩、その踏み出しを徹底して大事にすること。教育をさせるのではなく、その人から学ぶ。

再犯率は、近年では50%前後。つまり、受刑者の2人に1人は、ふたたび犯罪を犯してしまう。

Aさんは旅へのこだわりが強い。旅行はAさんにとって、無になれる機会。旅に出ることは、現実のモヤモヤからの逃避であり、かつ、「これからどうします」という不安からの逃避でもある。旅先で観光するという目的はない。あくまで一人で社会から離れることが快楽。

私も、たまに一人旅をすることがあります。たとえば、福島の「大内宿」には、レンタカーを借りて一人で行って江戸の宿場町の雰囲気に浸り、大きな一本のネギが載っているネギそばをもちろん一人で食べました。それは、でも、一人で社会から離れるというより、旅先の風景に目的を浸らせることに意味がありますので、Aさんとは違います。

刑務所で長く生活を管理されていることに慣れると、実社会で独り立ちして生きていくのが難しい。

Aさんは、自分や俺といった一人称をほとんど使わず、自分、しかも、自分は、自分と主体として使うことはさらに少ない。そして、人と人とのつきあい方がAさんにとって社会に出てからの生活の難しさ。「自分が誰に何を、どうしていいか、分からなくなってしまう」

劣等感のなかで、「自分」で主体的に人生をつくり出していくチャンスが閉ざされる。就労や金銭管理も含めて、生活をどのように組み立てたらいいのかが分からないので、そして困難を誰にも相談できないので、犯罪に走ってしまう。犯罪は、生きのびるための自助的な方法となっている。

彼らは、決して本音を語らないことで自分を保ち、生き抜いてきた。彼らは、どのようなトラブルがどのような量刑につながるのか、計算しながら犯行を重ねている。

弁護士として50年以上やってきましたし、今も2件、国選弁護人として刑事事件を担当しています。刑務所を出たり入ったりする人に何人も出会いました。この本によって彼らの心情をさらに理解することができました。

(2024年3月刊。2200円)

日本の司法

カテゴリー:司法

(霧山昴)

著者 竹田昌弘 、 出版 インパクト出版会

戦後の司法を振り返った本です。著者は共同通信社の記者で、月に1回配信されていた32回の連載記事を30回にまとめています。

まずは砂川事件の最高裁です。その前に伊達判決が出ています。駐留米軍は憲法9条2項で禁止された「戦力の保持」にあたるので、その存在は憲法上によって許されない。違憲の米軍を保護する刑事特別法も憲法違反なので無効。よって被告人は全員無罪としました。今読んでも胸のすく判決です。ところが、日本政府だけでなくアメリカ政府も大変驚き、裁判官に直接圧力をかけました。最高裁の田中耕太郎長官は、駐日アメリカ大使と何回も会い、裁判の進行状況と審議内容を教え、アメリカの意向に沿う判決にもっていったのです。これは、2008年以降、日本のジャーナリストがアメリカ公文書を調べて明らかにしました。田中耕太郎は罷免されるべき明らかな非行を犯しています。ところが、現代日本の裁判官たちは問題としないのです。結局のところ、同じ穴のムジナということなのです。それは、辺野古をめぐる沖縄県と国との裁判について、東京(最高裁)本庁の裁判官たちが常に国家寮りの判断をし続けたこと、それからも今に続いていることが分かります。

田中耕太郎は、日本の司法制度の歴史において、最低最悪の人間、まさに「売国奴」そのものです。

続いて、長沼事件と平賀書簡問題です。福島重雄裁判官は、自衛隊は憲法違反の存在だと認定したのでした。勇気ある判決をだした福島判事に対して、判決前に札幌地裁の平賀健太所長がわざわざ書簡を届け、国の判断を尊重すべきだと説得しようとしたのです。明らかな裁判干渉です。これをきっかけとして、「青法協退治」が始まりました。私もよく知り、敬愛する宮本康昭裁判官の再任が拒絶されたのです。今は、最高裁による露骨な裁判官差別はありません。統制する必要がないほど、自粛が行き届いています。むしろ、最高裁長官が、「近ごろの裁判官は、上ばかり見ている。こういう判事ばかりで困る」と言うほどの状況です。

私にとって忘れられないのは、三菱樹脂・高野事件でした。東北大学生理事として活動していた高野達男さん(1940年生まれ)の本採用拒否事件です。信じられないことでした。私も学生セツルメント活動等に没頭していましたので、他人事(ひとごと)ではありませんでした。夏合宿のとき、みんなで集合写真に入った写真を撮ろうとすると、顔をうつむきにした先輩がいたのに驚きました。就職などに支障があったら困るというのです。ふえーっ、学生セツルメント活動をしていたというだけでもダメなのか…、本当に実社会とは恐ろしいところなんだと背筋が寒くなりました。私が司法試験、そして弁護士を目指し、必死に勉強したのは、いわば高野さん事件があったからです。

高野さんの話を聞いたこもがありますが、とても誠実そのものの人柄でした。最高裁まで、裁判闘争をたたかい、差し戻し審の東京高裁で和解が成立し、なんと、高野さんは復職したのです。その後、子会社の社長もつとめています。能力、識見ともにすぐれた人だったことの証明です。65歳の若さで亡くなられたのは、長年の心労からだったのでしょうか…。

選択的夫婦別姓訴訟も紹介されています。経団連も公式に選択的夫婦別姓の実現を望んでいるというのに、高市首相をはじめ自民党の超右翼グループは統一協会の後押しを受けたまま、強硬に反対し続けて変わっていません。女性裁判官は3人全員が選択的夫婦別姓を認め、民法750条は違憲としました。このとき、マチ弁出身記載の山浦善樹裁判官も違憲としました。

最高裁の裁判官の一人である三浦守裁判官は検察官出身ですが、独自の意見をたびたび表明して注目されていますが、この問題でも、違憲論をとりました。学生時代にセツルメント活動をしたのがその背景にあるというコメントがあって、わが意を得たりと思いました。

30の事件を通して読むと、日本の司法がかかえている問題状況と到達点がよく分かります。

(2025年11月刊。2750円)

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