(霧山昴)
著者 寺越陽子 、 出版 新潮社
私は、この映画は一度はみなければいけないと会う人ごとに勧めています。子どもたちにはぜひみてもらいたい。とりわけ、タカイチには少なくとも3回はみてもらいたいと思います。戦争となったらどうするのか、タカイチはあまりにも想像力が欠けています。自分の金もうけのことしか考えていません。
とはいっても、「二度と観たくない傑作」と本のオビにある とおりで、あまりにもあの兄妹が可哀想で、いじらしくて、号泣するしかないので、二度も三度もみることはとても出来ません。夜、眠れなくなってしまいます。
この映画が上映されたのは1988(昭和63)年のこと。実は完成していなくて、一部は色彩のない画面があったとそうです。原作は野坂昭如の実体験をもとにして書かれた 小説。そして、監督の高畑自身も9歳のとき、岡山でアメリカ軍の空襲にあい、11歳の姉とともに九死に一生を得て、助かっています。
戦争の悲惨さ、残酷さが ひしひしと伝わってくる映画なので、これをみて戦争をやりたい、やってもいいなと考える人はありえないと思いますが、高畑監督は、この映画は反戦を訴えるものではないと言っていたという。ええっ、どう して……?
高畑監督は、アメリカ軍の無差別な襲いぬ雨の下を逃げまどい、ウソでなく九死に一生を得、焼け出された間借りした農家の2階で敗戦を迎えた。
「あの辛い戦争はもう済んだ。しなくて済んだ。いや、できたんだ。新しい憲法、その解放感」
高畑監督が「反戦の人」だったのはまちがいない。
宮崎駿監督とちがって、高畑監督は基本的に 絵は描かないアニメーション監督なので、自分の考えをことばにしてまとめる。それを書くことによって、考えを深めていく。
そんな高畑監督の映画をつくっていく過程を書きつづった7冊のノート が発掘されたのです。それをもとにNHKディレクターが取材していったのでした。
高畑監督は東大仏文科出身。高畑監督は、常に現代を意識しながら物語を あつかう。今の時代になぜこの映画をつくるのか、それを徹底的につきつめる。
二度とみたくない映画ですが、それでも誰でも一度はみなければいけない映画。それが「火垂るの墓」です。もし、あなたがまだみていなかったら、すぐにみてください。
(2026年6月刊。1980円)


