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寡頭制(オリガーキー)と闘え!

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)

著者 バーニー・サンダース 、 出版 地平社

 トランプのアメリカの心臓部で目覚ましい地殻変動が起きています。ニューヨーク市のマムダニ市長はイスラム教徒であり、白人ではなく、民主的社会主義者と名乗っています。そして、首都ワシントンDCでも同じく民主的社会主義者が近く市長に当選するようです。

金持ち優遇のトランプ政治、イラン戦争を始めたトランプに対して多くのアメリカ国民が「ノー」と言っているのです。

そして、日本では今なお不当にも禁止されている戸別訪問を若者を中心とした選挙活動を展開して、共和党のお金に糸目をつけない選挙広告をはね返しているのです。

ひるがえって、日本では比例代表が削減されそうです。少数意見、女性の声、代表の多様性を奪うものです。

維新が「身を切る改革」と言って高市政権とタッグマッチで進めています。「身を切る」というのなら、まず政党助成金を返上すべきですし、議員歳費を減らすべきです。

高市・自民党の今以上に強権政治を進めることに手を貸す維新、そしていつものように「裏切り」国民民主党は断じて許せません。

今日のアメリカでは、国の歴史上かつてないほどの所得と富の不平等が存在する。現在、頂点に立つ者たちは、かつてなく豊かだ。イーロン・マスクは、アメリカの世帯下位52%を合わせたよりも多くの富を1人で所有している。8000億ドル近い資産をもっているのだ。

上位1%が下位93%よりも多くの富を持っている。大企業のCEOは、平均的な従業員の3505倍もの収入を得ている。たった4社が、牛肉加工の8割、豚肉の7割、鶏肉の6割を支配している。

ウォール街の3つの巨大企業、ヴァンガード、ブラックロック、ステート・ストリートがS&P500企業の95%の主要株主だ。

メディアの集中も進んでいる。6つの巨大メディア企業が、人々の見る、聞く、読む情報の9割を支配している。

アメリカの選挙は、候補者の政策理念ではなく、億万長者が支配するスーパーPAC(政治資金団体)が制作する広告争いに終始している。億万長者とスーパーPACが過激に支配し、きわめて腐敗した政治体制をもたらした。

2025年7月、トランプは「大きく美しい法律」を制定し、上位1%に1兆ドルの減税を提供し、メディケイド(低所得者向けの医療扶助)や栄養、教育の予算を大幅に削減した。高市政権がやろうとしていることですね。

アメリカの外交政策の主要部分は、スーパーPACとその資金提供者である億万長者たちが決定している。トランプが2025年1月に大統領に就任したとき、そのすぐうしろには、イーロン・マスク、ジェフ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグの3人、アメリカでもっとも裕福な3人がいて、さらに、そのうしろには13人の億万長者がいた。

トランプは、億万長者の、億万長者による、億万長者のための政府をつくった。

今日のアメリカには、計り知れない苦痛が存在する。怒り、挫折、恐怖、絶望が存在する。アメリカでは6割の人が食費、住居、医療費をまかなうのにぎりぎりの給料で生活している。2000万世帯が収入の半分以上を住宅費に充てている。80万人がホームレス状態にある。

8500万人が無保険か保険が不十分。毎年6万人が治療を受けられずに死亡している。がん患者の42%は診断後の2年内に全貯蓄を使い果たしている。下位50%の人々は、上位1%の人より平均寿命が7年も短い。

人々の恐怖と憎しみは非常に強力な感情なので、トランプは自らの利益のためにそれを巧みに利用している。

トランプは、恐怖と不安を自らつくり出しながら、人々の目を社会の直面する重大な危機の原因と解決策からそらしている。トランプは病的な嘘つきだ。

アメリカには1100万人もの書類なき移民がいる。これは人口の3%に相当する。書類なき移民の犯罪率は、アメリカで生まれた人よりも、実は低い。

ニューヨーク市長に当選したマムダニは、進歩的な経済政策と戸別訪問運動が勝利のカギであることを明らかにした。

読んでいるうちに勇気がわいてくる本です。アメリカもまだまだ捨てた国ではありませんね…。

(2026年9月刊。980円)

兵庫県知事問題、失敗の本質

カテゴリー:社会

(霧山昴)

著者 小林和樹 、 出版 ちくま新書

先日の沖縄県知事選挙におけるSNS上のフェイクニュースの氾濫、AIを使った捏造動画、そして金かせぎのユーチューバーの暗躍などを、沖縄のジャーナリストの生々しい報告で知ることができました。

そのSNS上のデマ宣伝の9割は沖縄の県民によるものではなく、東京などが発信元でした。

ユーチューバーは評判を立てたら、即お金もうけになることから、「突撃取材」を繰り返します。そのえげつなさは たまりません。斎藤知事が今なお県知事の座にしがみついていること、それを県民が黙って見過ごしていることも不思議でなりません。

斎藤知事が部下の公益通報を無視したうえ、攻撃したのが本件すべての発端だと思います。

斎藤知事は、総務省出身で以前は大阪府の財政課長をしていました。日本維新の会の代表だった松井一郎大阪市長の強力な支援を受けて兵庫県知事になったのです。斎藤知事は、2024年3月に京都市で開かれた日本維新の会の党大会にも出席しています。

自死した元県民局長は、『死をもって抗議する』というメッセージを残していました。

テレビの制作現場では、常にキャッチフレーズを求めている。

2024年9月19日、兵庫県議会は、全会一致で斎藤知事不信任決議を可決した。

兵庫県知事選挙では、斎藤知事を当選させる目的で立候補した立花孝志もいます。自らの当選を目指すことなく、他候補を応援するために立候補する候補者がいるなんて、考えたこともありません。結局、この立花氏は名誉毀損容疑で逮捕されています。当然のことです。立花のSNS発信には20万、そして37万もの返信があったとのことです。

人々は、新聞、テレビに代わってSNSに情報を求めて行った。

SNSでの斎藤知事への熱狂的な応援はすごいものでした。現場では、どこもかしこもすごい人だかりがしていました。「斎藤知事は悪くない」「がんばれ」という声が巷(ちまた)にあふれたのです。

「テレビは斎藤さんの悪口ばかり。NHKは、ちゃんと斎藤さんは悪くないということを報道して」と普通の市民が取材する者にぶつけた。報道よりも、人はSNSを信じた。

いやあ、これは怖い、恐ろしい現象ですね。これが一般化したら、ウソが堂々とまかり通る世の中になってしまいます。

斎藤知事をマスコミがちょっとでも批判しようものなら、斎藤候補を支持する人たちから、大量の暴言と抗議が集中する状況が生まれました。「斎藤知事は可哀想」という思い込みの支持者が生まれ、斎藤候補の当選となりました。まさに、SNSの威力の恐ろしさを実感させられました。その状況を改めて、詳しく知ることができる本です。

(2026年6月刊、960円+税)

台湾有事

カテゴリー:社会

(霧山昴)

著者 五十嵐 隆幸 、 出版 中公私書

中国が台湾を支配下に置くために武力侵攻する。これが台湾有事。

2025年11月7日.高市首相は国会で、「戦艦を使って、そして武力の行使を伴うものであれば、存立危機 事になりうる」と答弁した。そのとき、日本は防衛出動する、つまり中国を敵として戦争状態に入ることになると宣言したようなものです。

当然、中国政府は激しく反発し、それ以来、中国人の 日本渡航を自粛するように呼びかけ、実際、激減して今日に至っています。日本産水産物も中国は輸入を停止したままですので、日本の漁業は大打撃を受けています。それでも、鉄面皮の高市 首相は自分の発言を撤回しようとしません。

トランプ大統領が習近平と仲良くしているのに、高市首相は「平気」を装っています。

高市首相の外交手腕は、 先日のG7のウェブ会議に欠席したことにもあらわれています。この時間、高市首相は公邸にいました。その前まで麻生副総裁と会食していたことも判明しています。平野啓一郎氏は高市首相は会食で酔っぱらった ので欠席したのではないかと疑問を投げかけていますが、高市首相はいつものように、自分の都合の悪いことは「黙して語らず」で、逃げ切るつもりです。許せません。

アメリカ軍の高官は、2027年までに中国が台湾を侵攻 する可能性があると言いましたが、中国自身が「台湾を侵攻する」と明言したことはありません。

台湾政府が戒厳令を解除したのは、なんと1987年7月のことです。そこから台湾は民主化が一気に進みました。

中国にとって、「一つの中国」は主張の原則であり、生命線そのもの。ところが、アメリカにとってそれは外交政策の一部であり、運用の枠組みにすぎない。

アメリカの1979年の台湾関係法は台湾と断交した直後 に制定された、国内法。台湾関係法は、台湾を国家として承認する法律でも、台湾防衛を約束する条約でもない。台湾が十分な自衛能力を維持できるよう、武器供与を可能としている。台湾の地位を確定しない まま、武力による現状変更を抑止する構造がある。アメリカは、「戦略的あいまいさ」政策をとっている。

中国にとって、制海権と制空権は、「獲得」よりも「維持」する方が、はるかに難しい。台湾の地理的条件は、 短期決戦ではなく、高い消耗を伴う持久戦になる可能性が高い。そして、アメリカ軍が介入する可能性もある。

中国の人民解放軍が台湾本島の全面的な制圧を目指す作戦の 維持を可能にする条件は、きわめて厳しい。台湾侵攻するには数十万人規模の兵力を輸送する能力が必要とされる。そのうえ、上陸したあと、大量の兵力を支える兵站の持続性が問題(ネック)となる。

台湾側は、台湾東部の山中に造られたトンネル格納庫にすべての「作戦機」を避難させることにしている。

日本が台湾を「助けるか、助けないか」という二分法は、現実論をあまりに単純化している。

熊本に進出してきた台湾の一私企業であるTSMCのため、高市政権は5000億円も投資しています。

日本国民が安心して次世代へ、同じく安全・安心の社会を残し、伝えていく必要があります。戦争に向けて準備するのではなく、政治家も国も戦争にならないよう努力すべきなのです。大変勉強になる本でした。

(2026年7月刊。1320円)

オスマン帝国全史

カテゴリー:中東

(霧山昴) 

著者 宮下 遼 、 出版 講談社現代新書

オスマン帝国が滅亡したのは第一次世界大戦後の1922年。それまで、戦争や内乱は何度もありましたが、それでもオスマン世界は緩やかな結びつきを保ちながら470年にわたって、全体としてみれば平和な統治を享受し、人々は安全かつ豊かな生活をたのしんだ。

オスマン帝国の統治者たちは、強力な軍事力によって征服した土地から、 ただ財と人を収奪するのではなく、むしろ末永く支配すべく優秀かつ信頼のおける人材の獲得とその養成という不断の努力を重ねた。

常備歩兵軍団イェニチェリは史上空前の規模を誇り、「御門の奴隷」と称された、文武両用の選良集団の精緻な育成制度を生み出した。

オスマン帝国の統治者たちは、治安が保たれ、滞りなく納税されているのであれば、臣民たちの日常生活や信仰には立ち入ろうとしなかった。

オスマン帝国の支配は放任的で、むしろ寛容と評された。

ここでは、さまざまな言語が交わされ、モスクや教会やシナゴーグが軒を並べた。

このオスマン帝国が623年にも及ぶ長命を保ったのは、広大かつ多様でありながら、緩やかなまとまりを有していたから。

オスマン帝国の大宰相は292代、218人いて、その少なくない者が、結局、処刑されたり追放されている。

オスマン帝国においては、帝国の政局が、ときに帝王の大御心(おおみこころ)一つで変転した。帝王個人の裁量に依存していた。

イスラーム法の運用を担当する法務官僚(ウラマー官僚)が文官職の大半を占め、彼らの多くはオスマン宮廷を生きのびた。

イェニチェリ軍団は、1609年には1万3千人から4万7千人にまで大増員された。とくに17世紀になると、イスラーム教徒出身者が世襲し、軍功によって出世していった。16世紀末以降、オスマン宮廷で急速に力をつけたのは、ハレムの守謀を預かる黒人宦官(かんがん)たち。オスマン家の家宰として振るまった。イェニチェリ軍団は1826年に解体された。

オスマン帝国では皇子のうちの1人が帝王になると、他の兄弟たちは全員が絞殺された。内乱が起きるのを未然に防止するためです。それは、他の兄弟に野心があるかどうかで決められるのではなく、全員一律でした。メフメト3世が即位したときには、なんと19人もの皇子を絞殺したというのです。

オスマン帝国は、1918年、最後の帝王メフメト6世のもとで戦った最後の聖戦に200万人もの死傷者を出して敗北した。そして1923年10月、ムスタファ・ケマルが初代のトルコ共和国大統領に選出された。

オスマン語は、トルコ共和国の必修科目となっている。

オスマン帝国全史をざっと眺めることができました。

(2025年3月刊。1650円)

会話する細胞

カテゴリー:人間

(霧山昴) 

著者 石川 香 、 出版 講談社ブルーバックス

1つの神経細胞に対して、数千個のシナプスが接続している。 電気シナプスでは、細胞質が連結している状態なので、電気信号は双方向に伝わりうる。 化学シナプスは、神経伝達物質の放出側と受け手側を明確に分担することで、信号の方向を一方向に定まる。 

電気シナプスは片方の興奮がそのまま隣に伝わるので、複雑な情報処理ができない。 化学シナプスでは複数のシナプスからの正や負の電位変化を合算することで、情報処理が可能になる。 

出産した直後、胎盤が脱落すると、母体ではホルモンバランスが劇的に変化する。 母乳の分泌を抑制していたプロゲステロンやエストロゲンが激減するのをきっかけとして、乳腺が母乳のスタンバイモードになる。 ここで赤ちゃんが乳頭に吸い付くと、プロラクチンやオキシトシンといったホルモンが産生されて乳腺細胞に作用して母乳が分泌されるようになる。 

前の食事から時間がたつと、血中の糖が少なくなる。 この糖はグルコースのこと。 血糖の量は、常に脳の視床下部でモニターされている。 「血糖値が低下してきた」と視床下部が判定すると、摂取行動を促進するための応答が引き起こされる。 食事すると、血糖値が上昇する。 脳の視床下部は血糖値をモニターしているので、血糖値の上昇はダイレクトに「十分な食べ物をとりましたよ」というメッセージとして視床下部に伝えられる。 すい臓でも感知され、インスリンというホルモンが分泌される。 これが「お腹いっぱい」のシグナルとして脳に作用する。 

肥満の人は通常より多くの脂肪細胞を体内に抱えているので、恒常的に食欲を抑制する働きのあるレプチンが増産されている。 ところが、あまりにレプチンが常に血液中にあるので、それを受容する側にある種の「慣れ」が生じ、ちょっと増えたくらいではもう反応しなくなる。 それで、肥満の人の食欲は抑えられない。 

カフェインは、アデノシン受容体の拮抗薬として作用し、眠気を抑制する。 

メラトニンは脳の松果体でつくられ、血中に放出される。 視交叉上核が朝を認識するとメラトニンの合成は抑制され、朝から14〜16時間ほどたって夜になると、急速にメラトニンが合成されて昼間の100倍以上の量になる。 こうして松果体から分泌されたメラトニンが血流に乗って全身に「夜だよ、眠って」とアナウンスする。 

脳をもつ生物は、ほぼ例外なく睡眠をとる。 

衛生環境が改善し、清潔になりすぎたことがアレルギーの発症リスクを高めている。 

腸管には人体全体の免疫細胞の60〜70%が集まっていて、最大の免疫組織である。 免疫系は、腸内細菌を「無視」しているのではなく、体内への侵入を阻むために常にせめぎあいをしていて、結果として一見平和的な共生状態が保たれている。 

体内に存在するセロトニンの90%は脳ではなく、腸に存在する。 脳内に存在するセロトニンは体内のセロトニン全体の2%ほどでしかない。 

このセロトニンは喜びや意欲という感情に関与していて、量が少ないと抑うつ状態に陥りやすく、また、アルコールやギャンブル依存症リスクが高まる。 

がん細胞は、分裂をひたすら繰り返すことに執着しているので、大量のエネルギーを欲している。 がん細胞は、エネルギー収支の効率がとても悪い浪費家。 その浪費家がどんどん増えるから、栄養素があっても足りないという事態になる。 がん細胞は、自分のところに血管を引き込むだけでなく、離れた場所にある筋肉や脂肪などの組織を分解してまで、自分の増殖のための栄養を確保しようとする。 この状態が続くと、筋肉は萎縮し、体脂肪は激減する。 がん患者がやせていくのは、このため。 

哺乳類の中でも、月経(生理)があるのは、霊長類と限られたコウモリの仲間くらいで、超少数派だ。 

知らないことがたくさんありました。 人体のなかの細胞同士のつながりの深さを知ることができました。

(2026年9月刊。1430円)

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