(霧山昴)
著者 藤田 直央、 出版 朝日新聞出版
国民に大切なことを知らせず、大嘘までついて外交が進められている。このことを知ると、腹立たしい限りです。
オバマが大統領に就任して間もない2009年2月、日本政府はアメリカに対し、核兵器がいかに必要かを詳細に訴えた。日本は、麻生太郎首相のときです。もちろん、こんなことは国民に隠したまま。そして、それが明らかになってからも「ノーコメント」を押し通しているのです。無責任きわまりありません。
このとき、「日本は米国の拡大抑止を必要として続ける」とし、その根拠として、次のことをあげています。
「米国の抑止力は、柔軟で信頼でき、即応でき、選別能力があり、隠密だが存在感を示し、他国に核能力の拡大または近代化を思いとどまらせるのに十分であるべきだ」
「日本は、信頼できるものである限り、米国の拡大抑止に依存する」
「信頼できる能力とは、信頼できる核弾頭、敵の第一撃後の残存数、強力な情報、監視、偵察の能力、頑丈で複数の指揮管制統制網を必要とするだろう」
以上についての解説のなかには、精密に目標を破壊できる「選別能力」がある核兵器こそ敵を牽制する。もし米国の攻撃が常に大量の民間人の犠牲を伴うなら、仮想敵は、そうした攻撃に現実味を感じないだろう。つまり、被害が広範に及ぶ核兵器は、大量虐殺になることが怖くて米国は使えない、と敵に思われてしまうので、かえって抑止にならない。だから「精密」な目標攻撃の出来るアメリカの核兵器に依存するというわけです。どこまで日本政府は卑屈なのでしょうか…。国民に隠しておいて、こんなことを言っているのです。許せません。
日米の外務・防衛当局幹部による拡大抑止協議(EDD)がなされていますが、その協議内容は国民にまったく知らされていない。ジャーナリストとして政府に開示を求めても、肝心なところは「黒塗り」されていて、まったく内容は分からない。
これまで日本の国是(こくぜ)とされてきた「非核三原則」(核兵器をつくらない、持たない、持ち込ませない)について、高市首相は「持ち込ませない」について見直すと強調しています。現実には、アメリカ軍はかつて沖縄を初めとして日本全国に核兵器を置いていました。今は、技術の進歩もあって、沖縄の基地を含めて常時、核兵器を置いている事実はないようです。しかし、それは、必要ならすぐに持ち込めるようになっているからでもあります。
ところが、アメリカは核兵器の具体的な運用は明らかにしていません。そのため、日本政府は「持ち込ませない」という条項をまったく説明できないのです。
高市首相は、どうやら必要なときにはアメリカは日本に核兵器を持ち込むことが出来ることを公にしておきたいということなのでしょう。しかし、それは、アメリカが中国との間で日本を舞台とする核戦争をやってもよいということを意味するはずです。日本人の私たちに大変な惨禍をもたらすものになります。そんなことを政府が国会にはかることもなく決めてよいはずがありません。
核密約については、沖縄返還時の佐藤栄作首相による秘密交渉、密約も詳細に紹介されています。佐藤首相はニクソン大統領と文書に署名までした核密好約があるのに、国民に対しては隠し通したのです。
何より密約が罪深いのは、国民の理解に支えられるべき外交が国民を欺くという倒錯だ。政府が国民の批判をさけるために密約に頼るほど、外交は国民軽視の隠蔽体質を強めていく。そして、密約が発覚すれば、国民は政府と外交への不信を強める。外交について政府が国民に説明し、理解を得ることで外交が強くなるのとは逆の悪循環に陥る。
まことにそのとおりです。この本にはその悪循環のオンパレードです。まったく嫌になってしまいます。
(2025年8月刊。2420円+税)
11月に受験したフランス語検定試験(準1級)の結果を知らせるハガキが届きました。66点をとって合格でした。120点満点ですので、5割ちょっとという成績です。合格基準店は62点ですので、今回は少し難しかったのでしょう。自己採点では6割合格だと4点不足と思っていたのですが、基準点が低かったことから、4点オーバーしています。
1月下旬に口頭試験を受けます。3分前に設問(もちろんフランス語です)2つを示されて、うち1問を選んで、3分間スピーチをしなくてはなりません。時事問題を選んだほうが話しやすいので、今から予想問題を考えて練習します。頭のボケ防止にがんばります。


