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地面師連絡役カトウ

カテゴリー:社会

(霧山昴) 

著者 河合桃子 、 出版 小学館

積水ハウス 55億円詐欺 事件の舞台の裏側をのぞいてみた気分になった本です。

「地面師詐欺」に関わった連絡役カトウは、メンバーのなかで最年少の40代後半。 2018年10月に逮捕され、2019年8月、懲役4年6月の実刑判決を受けて、既に出所しています。

2021年1月には積水ハウスから訴えられて10億円の賠償を命じられた10人のうちの1人でもある。 地面師として関わった人間の全員が起訴されたわけではなく、不起訴になった人もいるなかで、「分け前という」といって1億5千万円もらっても懲役4年半ですんでいるのも、信じられない思いです。 

だって私は 今も国選弁護人として登録していますが、スーパーやコンビニの万引きで被害金額5千円でも懲役1年とか2年の実刑判決だったりするのですよ…。もちろん、たいがい常習(繰り返し)なんですが…。被害額5千円と55億円とで、ほとんど 実刑の差がないという事実を愕然とします。

地面師側も身内というか、厳格な統制のとれた身内かと思うと、組織なし実はかなりテキトーな寄せ集めだということを知りました。そして、そうなんだろうなと弁護士として直感 で思います。だって、騙しとったいわばお金はアブク銭ですから、今日の友は明日の敵という感覚で、信頼関係があるはずもありません。

なりすまし役の女性は63歳、生命保険 の外交員。報酬100万円で、適当な嘘を言ったのですね。ところが、エトを間違ったりしています。それでもバレなかったのです。

地面師詐欺では、清水ハウスを騙される側として ひっぱってきた人間が「一番偉くて、取り分も最も多い」。これは地面師独特の格付け。

地面師詐欺に関わるのなかの人間では、お金は、みんなが奪いあう戦争みたいなもの。まるで一見、チームプレイがあるようで、実は仲間意識は皆無。 地面師グループの主犯であって、12億ももらっても、億単位のお金を1年間のうちに費消してしまった。まあ、そんなものでしょうね。自分の身を粉にして得たお金でないものは、すぐに消えていくものなんでしょうね…。 

刑務所で4年間働いて得る報奨金は、なんと18万円。これもまた、そのとおりです。いくらなんでも安すぎると私は思います。これでまた、金銭感覚が狂ってしまいます。

詐欺師は、まず自分を騙すことから始める。 きっとそうだと思います。この本の主人公カトウは、超高級自動車を買ったり、ずっと超高級ホテルに宿泊したりしていたようですが、そんなことで心の満足感は得られるはずもありません。まさしく「アブク銭、身につかず」という コトバのとおりです。

地面師グループの哀れな人たちの実態を世の中に知らしめるのも意味のあることだと思いながら読み終えました。

(2026年6月刊。1870円)

新 安全保障論

カテゴリー:社会

(霧山昴) 

著者 半田 滋 、 出版 あけび書房

先日、久しぶりに著者の話を拝聴しました。たくさんの写真と図、グラフを使って、いつものようにとても分かりやすい話です。でも、内容は怖い話のオンパレードです。

その典型の一つが、「台湾有事」が起きたとき、沖縄本島以外の島々にいる人は、観光客を含めて12万人を数日間のうちに九州へ避難させるというものです。えっ、では沖縄本島126万人はどうなるの・・・。とても避難させられないので、各自 自己責任で地下室にでも入りなさいというのです。沖縄本島にはモノレールはあっても地下鉄なんか走っていません。ところが、自衛隊の司令部だけは地下シェルターに入ってミサイル攻撃に耐えるというのです。ええっ、自衛隊って、国民を守るのを役目としているのではないの・・・??

 そして、自衛隊の保有するミサイルの飛行距離を1000キロ以上にして、中国本土奥深くまで届くようにして、国内の弾丸製造工場をつくって、継戦能力を向上させるというのです。

でも、食べものとエネルギーはどうなりますか。食料自給率38%というのも、実はごまかしていて、もっと低いとみられていますし、中国から大量に食料を輸入しています。減反ばかりで米作りも十分に保持されていません。腹が減って戦えるのでしょうか・・・。

アメリカのイラン攻撃によって原油不足は深刻です。ガソリンだけは、政府の補助金によって値上がりしていませんが、ナフサ不足による影響は深刻です。原油備蓄もそれほどはありません。

ところが、高市首相は、こんな緊急課題を放ったらかして、皇室典範の改正、国旗掲揚の新設、そして大阪維新を救うための副首都法の制定といった、まさしく不要不急の法律制定に血眼になっていて、ひんしゅくを買っていました。

高市首相も小泉防衛大臣も非核三原則をなし崩しにしようと必死です。核兵器で攻撃された日本の首相・大臣とはとても思えません。

トマホークやオスプレイとかイージス・アショア(船)とか、アメリカから高額な兵器を爆買いしています。それは何兆円にもなります。たとえば、大学の学費をヨーロッパのようにタダにするのには1兆円ほどで足りるのです。アメリカからの兵器の爆買いを止めたら、日本でもすぐ実現できます。

ところで、著者は、国民が軍事費増大を「望んでいる」と厳しく批判しています。そうなんです。日本のマスコミは、中国の脅威をことさら大きく報道します。すると、なんとなく日本を守るためには軍事費が増大するのも仕方ないかーと思わされているのです。でも、本当は、軍事費を増大させるのは、三菱重工等などの軍事産業を肥太らせるためだし、政治家が甘い汁をすうためなのです。

この本を読んで、もっと地に着いた議論をしたいものです。「戦争に備えて軍備を増やすなんて、そんなバカげたことはやめろ」と、みんなで叫びましょう。

(2025年11月刊。2420円)

地球内生命

カテゴリー:生物

(霧山昴) 

著者 カレン・G・ロイド 、 出版 みすず書房 

深海まで潜っていく潜水艇に乗ると、地球の表面とは違った世界に遭遇するはずだ。深海底は思ったより、にぎやかなのだ。

海中では、人間が溺れるくらいあっという間に衛星の信号が 減衰するため、GPSは使えない。潜水艇の投光器では、深海の暗闇に太刀打ちはできないので、周囲数mを照らせるのみ。

地下深部には、すきまからのメタンがプレート運動や侵食によって生じた亀裂を通じて、ぷくぷくと湧き出ている。メタンは、この不毛の地で唯一の高エネルギー食なので、生物が群がっている。

地下生物のほとんどは、地上に見られるいかなる生物とも、まったく異なる。地球の地下は、生物が多細胞であることや、酸素を利用することに固執しなければ、すみやすい場所なのだ。

地球上のあらゆる堆積物は、常に微量の放射性を放っている。微量なので人体に害はないが、水を分解して微生物を養うほどにはある。

一部の地球内生命は、少しずつ酸素を生成している。

地球の生命は、38億年を無為に過ごしていたわけではない。せわしなく進化し続けていた。

地球の生物多様性の大部分は、微生物が担っている。

PHがゼロに近い環境下でも微生物は生きられる。地下については、高PH環境はありふれている。初期の地球では、特にそうだった。

地球最古の同位体化石は38億5千万年前のもの。生命誕生後の数十億年間、地上には微生物しかいなかった。地球が誕生してから、最古の同位体化石が出現するまで、7億年近くたっている。地球は45億年前に誕生したが、岩石の年代は38.5億年前までしかさかのぼれない。

地球の表面は、プレート運動によって、絶えず造り変えられている。

永久凍土にも微生物はいる。地表の炭素の多くは、永久凍土に貯蔵されている。永久凍土が融解したら、地下の微生物が代謝を活発化させ、この土壌中の炭素を気候変動を悪化させるメタンや二酸化炭素に変えてしまうかもしれない。現在、永久凍土に1600ペタグラムの炭素が隔離されている。この数値は大気に含まれる炭素量の2倍に相当し、もしすべてが気体になれば、破滅的な影響が出る恐れがある。

炭素を地下に戻すと共に炭素を掘り出すのをやめる必要がある。

海底にある多金属団塊の採掘が大規模な産業に発展したら、海底の莫大な量の泥が海面に漂い、表層から暗くなり、光合成プランクトンが死滅し、海洋生物に害が及ぶ。すると、海の豊かな生命は生きられないし、人間の生活も成り立たない。結局、地球と人間の生存に破滅制的な影響が及ぶことになる。

恐ろしいことです。しっかり危険性も認識することができました。

(2026年4月刊。3700円+税)

宇宙でウンチ

カテゴリー:宇宙

(霧山昴) 

著者 A・ポンド・ストーンとC・ホワイト 、 出版 あすなろ書房

みんなの知らない宇宙トイレのひみつ。こんなサブタイトルのついた科学絵本です。小学3・4年向けということですが、大人が読んでも楽しく学べます。

おしっこ(尿)のほうは宇宙船のなかで再生して飲用水としていることは知っていました。 

私が大学生のころ、朝一番の自分の尿を飲むと健康にいいという本があり、それを弁護士になって実践している(という)知人がいました。他人の尿ではなく自身のもので、朝一番の尿には雑菌が入っていないので健康にいいと書いてありました。私もその本を昔、読んだのです。

しかし、ウンチ(大便)のほうは再生利用は難しいでしょう。将来、宇宙船のなかで野菜栽培室がつられたら肥料になるのかもしれませんが……。

当初のころの宇宙船にはトイレがなかったそうです。だって宇宙船に滞在する15分以内ほどでしたからね。ところが、15分以内で地上に戻ってこれなかった、機械の不具合から40時間も滞在してしまった飛行士がいたそうですね。もちろん、おもらししたことでしょうね…。

1968年のアポロ7号から1972年のアポロ17号まで、まだトイレは宇宙船になかった。お尻にビニール袋をあてて排泄し、バクテリアを殺す薬品を入れてよくモミモミする。そうしないと、ウンチからガスが 発生して袋がふくらみ、大爆発を起こしてしまいます。うひゃあ、それじゃあ大変ですよね…。

1998年に打ち上げられた国際宇宙ステーションには、トイレが2個ある。今は1年も宇宙船で生活するのですから、当然ですよね。

おむつ以外に、何かいい処理方法がないか、現在も引き続き、模索中のようです。真空パックにしたウンチを地球めがけて打ち出す。すると、地上に到達するまでに燃え尽きてしまう。まあ、当分はそれしかないのでしょうね。ウンチの再利用はなかなか難しいことでしょう。

ウンチといえば、考古学者の本を読むと、同じ食物をとっていても、男女で大便の成分比が異なるので、男便所か女便所か発掘したときに違いがわかるそうです。これまた不思議ですよね…。

(2026年4月刊。1650円)

手塚マンガで憲法九条を読む

カテゴリー:日本史(戦後)

(霧山昴) 

著者 手塚治虫・小森陽一解説 、 出版 子ども未来社

手塚治虫は敗戦の年(1945年) 7月10日に大阪大学医学専門部に入学しますが、アメリカ軍のB29大編隊による爆撃を勤労動員先の工場で受け、すんでのところで爆死するところでした。工場を駆け抜けて淀川の堤防に出ると、そこはもう死体の山だったのです。

思春期のときの残酷で強烈な戦争体験が、その後の手塚治虫の作品に何度となく繰り返し登場します。そして、自分の体験にとどまらず、ベトナム戦争だったり、米ソの核実験や東西冷戦構造抗争も取り入れ、平和の大切さを投げかけます。

1945年8月15日、日本敗戦を聞いて、手塚治虫は、「これで自由にマンガを描ける」と喜びました。そして、1946年1月から四コママンガの連載を始め、1947年2月からはマンガ「新宝島」を刊行し、これがなんと40万部を完売したのです。18歳の手塚治虫は一躍有名になりました。

私の子どものころは、なんといっても「鉄腕アトム」です。マンガはアニメにもなり、夢中になって読み、見ました。高校生から大学生のころは、「ブラックジャック」にしびれました。弁護士になってからは、「アドルフに告ぐ」です。

いかにも正統派の絵ですが、ともかくストーリーの展開が素晴らしいです。よくぞこんなどんでん返しを思いつくものだと、いつもつくづく感心します。

敗戦間近の日本では、特攻機に乗って若者が出撃していきます。しかし、なかには機体は故障して基地に舞い戻ってきます。もう死んで英雄になっているのに生きているのは困ると軍部は考え、再度、特攻を命じるのです。実話でもあります。それでも死なない兵士は閉じ込めて隔離してしまうのです。

「またもや政府がきな臭い方向に向かおうとしている。子どもたちのために、当然大人がそれを阻止しなければいけない。同時に、子ども自身がそれを拒否するような人間になるよう育てなければならない」

「生命あるものすべてを戦争の破壊と悲惨から守るのだという信念を子どもに植えつける教育、子ども文化はその上に成り立つものでなければならない」

手塚治虫の1986年の言葉です。高市首相は戦争する国へ日本を加速しています。とんでもない危険な政権です。国民の生活の大変さを救う政治ではなく、国民がますます苦しくなる方向にすすめている高市首相には一刻も早く退陣してもらいたいものです。

(2026年6月刊。1650円)

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