(霧山昴)
著者 鈴木 裕貴 、 出版 人文書院
ヒロシマとナガサキ、もちろんアメリカが原爆を投下した都市です。今、朝鮮人の被爆者がいると言うと、朝鮮半島にも原爆が落とされたのかと質問する若い人がいるそうです。原爆投下のことが意外に知られていないのですね……。
アメリカは、原爆投下の対象として、まず17都市をあげた。次に5都市にしぼった。京都、広島、横浜、小倉、新潟。最終的には、京都について陸軍長官のヘンリー・スチムソンが反対して除外され、新潟は距離的に遠いので外された。代わりに、広島、長崎、小倉が対象地となった。広島に次ぐ2発目の第一目標は小倉造兵廠と市街地だった。第二目標が長崎中心部。
ボックスカーが小倉の上空に到達したとき、一面の雲に覆われていて、目視確認ができなかった。1時間ほど上空をウロウロしたあげく、長崎に向かった。それで、広島が8時台なのに、長崎は11時台になった。帰りの燃料が心配となって、ボックスカーは沖縄に立ち寄ってテニアン島に戻った。
広島が原爆でやられた直後、「次は小倉だそうだ」という噂がとんだ。どうして、こんなことが言えたのでしょうか……。
小倉が狙われたのは、風船爆弾をつくる工場があったからという話が紹介されています。アメリカは、そんなことまで知っていたのですね。日本人スパイがいたとは思えませんが……。
新潟も原爆投下の対象地でした。それで、大規模な空爆を受けていません。逆にいうと、大規模な空襲を受けていないのは、かえって危ないというわけです。京都もそうでした。広島、京都、新潟は、アメリカ側は通常爆撃禁止地域としていたのです。
そこで、広島に原爆が投下されたあと、新潟県の畠田昌福知事は8月10日、新潟市民に疎開するよう布告しました。国による指示はなく、独自の判断でした。新潟市はたちまち全市が空っぽになったとのこと。知りませんでした。
横浜は5月29日、3月10日の東京大空襲に匹敵する、いやそれ以上の精密じゅうたん爆撃を受け、全市が壊滅した。これは原爆投下予定地から解除されたから。
京都は原爆投下対象都市として「AA級」とされていた。AA級は、ほかに広島だけ。四方を山に囲まれた盆地であり、木造建築が多かったから。
長崎は、京都が外されたことから、その身代わりとなった。京都を除外したのはアメリカ陸軍長官のヘンリー・スチムソン。弁護士であり、京都を訪れたこともあった。戦後の日本占領政策も考慮したうえのことなので、トルーマン大統領の同意も得ていた。
ところが、マンハッタン計画の総指揮官のレスリー・グローブズはなんとしても京都に原爆を投下しようとしていた。そこで、最後まで、京都を通常爆撃禁止区域としていた。3発目の原爆は京都に投下するつもりだった。
京都が原爆投下対象地から外されたことについては、いくつかの伝説があるようですが、スチムソン長官の尽力があったからだと本書はしています。
興味深い内容が盛り沢山の本でした。
(2025年11月刊。2200円)


