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ハンムラビ法典

カテゴリー:中東

(霧山昴) 

著者 中田一郎 、 出版 講談社学術文庫

「目には目を、歯には歯」といった報復主義刑法で有名なハンムラビ法典について、実際にそんなことが書かれているのか、知りたくて読んでみました。

もし、人がある人を殺人の罪で告発したが、その罪を立証しなかったら、その告発者は殺されなければならない。

もし、人が息子を産まなかった正妻と離婚しようとするなら、夫は妻にテルハトゥム相当の銀を与え、妻が実家から持した財産を元どおりにして返して離婚することができる。

もし、正妻が息子を産み、そして女奴隷も息子を産んで、夫が自分の子だからと正妻の息子と同等だとみなした上で、夫が死んだとき、正妻の子と女奴隷の子は父の財産を平等に分けなければならない。ただし、正妻の子のほうが先に自分の取り分を選び、取ることができる。

もし、職人が男の子どもを養育のために引き取り、その職人技(わざ)を子どもに教えたなら、その子との返還を要求されることはない。

もし、息子がその父を殴ったなら、息子の腕を切り落とさなければならない。

もし、人がアウィールム仲間の骨を折ったなら、彼らはその人の骨を折らなければならない。

もし、アウィールムが同等のアウィールムの歯を折ったなら、彼らは歯を折らなければならない。

もし、理髪師が奴隷の所有者の承諾なしに奴隷の目印の髪型を切り落としたなら、その理髪師の腕を切り落とさなければならない。

もし、船頭が船の防水化工事をしたが、信頼に足る仕事をしなかったため、その年のうちに船が傾き、欠陥が生じたなら、船頭はその舟を解体し、自分の財産で堅固につくり直し、堅固な船を所有者に与えなければならない。

古バビロニア時代、小作料は収穫量の3分の1がフツーだった。

バビロニア南部では、塩害に強いナツメヤシの栽培が重要な産業になっていた。

結婚は、花嫁が人法による支配権者である花嫁の父から新しい支配権者である花婿に引き渡されることをもって完成すると考えられていた。

ハンムラビ法典には一夫多妻制の例が見られる。第一夫人と第二夫人が姉妹であったり、第二夫人は第一夫人の奴隷であることは多かった。

ハンムラビ法典には、タリオンの原則、すなわち同害の原則があった。ハンムラビ「法典」碑は、1901〜02年にフランス発掘調査団がエラムの旧都スーサで発見した。現在は、パリのルーブル美術館に収蔵されている。大変興味深い内容で勉強になりました。

(2026年5月刊。1650円)

 日曜日の夕方、少し暑さがやわらいだので、庭に出て雑草を取ってコンポストに放り込んでいました。すると、突然、左手に鋭い痛みを感じます。大変な激痛です。これはハチだと察しました。たしかにアシナガバチが飛んでいます。痛いのはガマン出来るほどでしたので、まもなく作業を終えて風呂に入ったあと、ドクダミ酒をつけて様子を見ることにしました。

 すると、翌日午後から、左手はふくれあがりさらに夜になると、水ぶくれまで出てきました。

 連休明けに皮膚科に行き、処置してもらい薬を飲みはじめたら、どうやらおさまりました。

 すっかり忘れていましたが、昨年7月にもやはりハチに刺されるとカルテに書いてありました。アナフィラキシーショックが心配だと周囲からは脅されましたが、医師からは何も言われませんでした。だって、心配しようがありません。もちろん庭仕事は手袋をしています。

 ブルーベリーがたくさんなっていますので、ヨーグルトをまぜて、ハチミツをたらして美味しく食べました。

明治日本散策、横浜・鎌倉

カテゴリー:日本史(明治)

(霧山昴) 

著者 エミール・ギメ 、 出版 角川ソフィア文庫

明治9(1876)年に日本にやってきたフランス人実業家の旅行記です。

ギメはリヨンの実業家で大量の日本で収集した美術品がフランス国立ギメ東洋美術館として残っています。

ギメは8月末から11月初めまで2ヶ月間、日本にいました。そして、神仏の像600点以上、宗教画300点以上、書籍1000冊以上、陶磁器類多数を収集し、フランスに送りました。当初は、リヨンに私立美術館をつくり、あとでパリに移転して現在に至っています。

ギメの旅行記を読んで、ギメも、ギメと一緒に旅行して画を描いたレガメも、二人とも日本人をまったく侮蔑(ぶべつ)的に見ていないことを強く感じます。日本固有の文化や習俗に対する冷やかな視線もありません。

日本人の好みの衣装は暗い色。

日本人女性は、よく知る屏風絵そのものである。膝を閉じた歩き方で歩き、上半身で平衡を保つためのあらゆる動きをして、一歩ごとに肩と逆方向に方を回す。これって、どういう姿勢なんでしょうか……。歌舞伎に出てきますか……。

日本人女性の特徴は、老いも若きも、出会うすべての女性が子どもを背負っていること。赤ん坊とほとんど変わらないほど、年端(としは)もゆかない幼児まで背負っている。他国のどこでこれほどたくさんの子どもが見られるだろうか……。日本は人口の増加がうまくいっているようだ。

少子化が一層進行している現在の日本では、とても信じられない光景です。

氷屋に、小銭をもった子どもや女性が冷たい香料入りシロップを飲みにやってくる。みながほほえみ、優雅で、とにかく感じがいい。こんな記事を読みよむと、読み手までうれしくなりますよね……。

日本人女性が自らも裸になって裸の子どもたちと一緒に庭でたわむれている絵があります。一日に少なくとも一度は入浴するのが習わしで、そのとき男性も女性も裸になることを、たとえ旅行者がいなくても気にしませんでした。

日本人は、イスラム教徒のような、気だるい無表情にならず、生き生きとして開放的である。

日本人は、物事の楽しみを抑制できる洗練された人たちだ。

車夫たちは、とにかく朗らかで、日本語を教えようとしてくれる。うち一人は、とくに好意的で、愛想がいい。とても聡明に見えるし、日本語教師として優れている。

日本人はみな、芸術的感性を持ち、だれもが描き書きするように筆を走らせる術を、学校で学んでいる。学校で書道を教えているということですよね、きっと、これは……。

日本では、家の戸締りをしないといってよい。じっさい必要がないのだ。というのも泥棒が出るのはまれだし、物乞いにいたっては一切出会わない。うむむ、そうだったんですね……。そして、それは、3世紀にわたる無料の公共初等教育のおかげだと解説されています。寺子屋教育が行き届いていたということでしょうか。

女性と子どもがよく旅をしている。家具のほとんどない日本の家は留守にしやすく、地方を見たり、学んだり、気晴らししたりするために、何かにつけて一家総出で巡礼に出かけているのだ。

日本には、旅行者向けの絵入りガイドブックが昔からある。真面目なガイドブックがあると思えばユーモアにあふれたものがあり、版画を使った淫(みだら)なガイドブックまである。

芝居小屋の観客はとても多く、活気がある。あらゆる年齢の女性たちと子どもが多くいる。家族連れでここに来ている。家族総出で娯楽を享受できるということは、日本という国の倫理感は高いものだ。

明治初めの日本って、こんなにいいところがあったんですね……。明治9年というのは、西南戦争の前年にあたります。

(2026年4月刊。1386円)

 私の事務所では市民向けの連続講座を45年間続けています。毎回、民法・刑法・憲法の3つのテーマで6月から7月にかけて2週間おきに開催します。今年の参加者は毎回30人前後でした。

 1回目は1981年6月です。この4月に、今は福岡で活躍している堀良一弁護士を迎え入れたので、この年は、少年法・刑法・サラ金問題・民法・憲法と、欲張って5回もしました。まだ有料にしていました(今は無料)。1回300円、5回通しだと1000円です。新聞に案内記事を載せてもらい、5回の累計は180人の参加がありました。

 翌年からは民法・刑法・憲法の3回としました。参加者は多いときには100人近くなりましたが、だいたい50~60人です。

 さすがに、コロナ禍のときは休みました。2020年と21年は中止し、2022年から復活して、今年は44回目でした。

 新聞に案内記事は載せてもらえなくなりました。新鮮味がなくなったからだと思います。

 この連続講座に向けて事務所ニュースを年に1回発行して依頼者などへ送り、また新聞折り込みなどもしています。

傷ついた身体と都市

カテゴリー:ロシア

(霧山昴) 

著者 松本祐子 、 出版 白水社

第二次大戦においてロシア(当時はソ連)は甚大な被害を受けています。ソ連ではナポレオンとの戦争は「祖国戦争」と呼び、ナチス・ドイツとの戦争 は、「大祖国戦争」と呼んでいます。

ヒトラーに簡単に欺されてしまったスターリンの大失敗によって緒戦で手痛い被害を被り、レニングラードはナチス・ドイツ軍に包囲されてしまうのです。レニングラードの市民と軍隊はよくもちこたえ、ついに陥落させずナチス・ドイツ軍を撃退したのですが、それもスターリンの指導の下となかばすり変えられたのでした。スターリンって、本当に、とんでもない独裁者です。

レニングラード攻防戦をめぐっては、『卵をめぐる祖国の戦争』(早川書房、2010年8月刊)を思い出します。この本には、「図書館キャンディ」というものが登場します。少女が街角で売っています。本の表紙を引きはがして製本糊(のり)だけを取り出し、煮詰めて棒状にして紙を巻いたもの。甘みはないけど、糊にはタンパク質が含まれているから、命をつないでくれる。つまり、絶望的なほど食糧不足で餓死者が続出し、人肉食さえ横行していたなかでの話なのです。この本のあらすじを紹介します。17歳の少女と脱走兵の2人が、秘密警察の大佐から、娘の結婚式のためのウェディングケーキをつくるために必要な卵を1週間以内に1ダースもってこいと命令されて、市内をさまよい歩くのです。飢えに苦しむレニングラード 市民の惨状、敵弾地雷の恐怖、無残な死などが、随所にリアルに描かれています。私にとっても印象深い本でしたので、本棚にずっと残していました。『レニングラード封鎖』(マイケル・ジョーンズ、白水社)という本も読みました(2013年5月)。「ヒトラーの包囲攻撃に耐えた900日、市民の犠牲者100万人のうち、餓死者80万人」と帯に書かれています。

さて、今回の本です。ドイツ軍によるレニングラード包囲は、1941年9月8日に始まり、1944年1月27日まで、872日間にわたって続いた。ソ連の公式発表では、死者64万9千人、うち餓死者63万2千人とされている。近年では、死者は100万人に近いとされている。1942年1月下旬のレニングラードの気温はマイナス30度から40度。食料も燃料も 十分でないなかでのことです。これはたまりませんね……。

人肉食が横行し、人肉食による逮捕者が1942年3月までに1025人にのぼった。

レニングラードはロシア帝政期以来の工業都市。 1939年の人口は男女同数だったが、1946年には170万人の人口のうち男性59万人、女性111万人と女性が多い。とくに20代は、女性は男性の3~4.6倍。若い男性は戦場に駆り立てられたからです。

レニングラードの女性労働者は、1945年に75%、1946年に67%、1948年に60%、1950年に58%だった。レニングラードでは、女性労働者の割合が戦時中、戦後のいずれでもモスクワそして全国より高く、その数値の減り方も、より緩やかだった。

1944年7月8日、フルシチョフの提案によって、ソ連最高会議幹部会は、妊婦や多子女を支援するため、「母親英雄」の1等は9人、2等は8人、3等は7人の子どもを産み育てた女性に、「母親メダル」の1等は6人、2等は5人の子どもを産み育てた女性に授与されるとした。これは、典型的な「産めよ、増やせよ」ですね。

戦後、レニングラードの住民は包囲を経験していない者が多数だった。1939年に302万人だった人口は、1943年には62万人、1944年には55万人にまで減少。包囲が解除されたあとは、毎年数十万人が流入し、1949年には人口222万人に回復した。戦後も、女性のほうが男性の2倍いた。

レニングラード包囲戦を戦ったジューコフら高位の軍人はスターリンから党指導部の権威を脅かす存在とみなされ、政治的に厳しく処遇された。要するに、スターリンの個人崇拝が強まるなかで邪魔とされたということです。

1947年、ソ連の全人口は1億1700万人で、男性は7500万人、女性は9700万人でした。それほど男性が戦死したのです。本当に過酷な「大戦争」でした。

ところで、ロシアのプーチン 大統領はサンクト・ペテルブルク(レニングラード)の出身です。両親とも包囲戦を経験し、幼少の兄は死亡しているそうです。

レニングラード包囲戦の内情をさらに詳しく知ることができました。

(2026年3月刊。2800円+税)

意識の正体

カテゴリー:人間

(霧山昴) 

著者 櫻井 武  、 出版 幻冬舎新書 

意識という現象は、なんとも得体の知れないもの。意識を考えるということは、同時に、「自己とは何か」を考えること。

自己という感覚は、意識のもっとも近くにありながら、その実態はつかみにくい。

 眠るというのは、すうっと、意識がなくなることです。夜中に一度目が覚めると、なかなか寝つかれないときには、まだ意識があります。ごろんごろんと寝返りしているときも意識があるように思います。ところが、ふと意識がなくなってしまいます。

胃カメラを撮ってもらうとき、鎮静剤の注射をされると、数秒のうちに意識がなくなります。でも、胃カメラが終わるころには、半分意識は戻っているようです。夢遊病者のように行動しています。

睡眠は、死と似ている。意識がない。しかし、死と違って、目覚めがあり、再び社会との接続が回復する。 

意識は、広大な脳活動の中で、わずかな範囲を照らすスポットライトのようなもの。

ヒトの身体は、意識を介さずにも動いている。意識は、決して常に行動の主導権を握っているわけではない。 

感情は、感覚情報、過去の経験(記憶)、身体の情報といった多層的な情報が統合された結果。意識は、それをあとから追認する。

意識は脳内で完結するものではない。それは身体の状態……心拍数、腸内環境、免疫応答、ホルモン分泌……と密接に連動する 動的なシステムだ。

大脳皮質のもつ神経細胞のネットワークが意識の内容を構築するために不可欠だ。

眠りこそ、生命本来のあり方であり、進化にともなって覚醒を獲得し、その結果として清明な意識をもつことができるようになった。

 睡眠とは、思考の収納を整理する、夜ごとのリノベーションである。覚醒することによって脳にかけられた「無理な情報の負担」を、睡眠中に解消している。

覚醒とは、生存競争の激化にともなって獲得された「危機対応モード」である。 

睡眠は、単なる休息ではなく、記憶の再構成、神経回路の最適化、老廃物の排出といった再生プロセスの中核を担っている。

ヒトは眠ることなしに、正常な自己意識を保つことはできない。

記憶とは、出来事を脳のどこかに保存しておくこと。その保存は、瞬時になされるわけではない。それはコンピューターとは違う。

睡眠は、「経験」を「記憶」へと変える、いわば、静かなる編纂作業の時間だ。

睡眠とは、ヒトの記憶を時系列につなぎ直す作業の時間だ。眠っているあいだに、過去を整理し、未来に備え、自分という物語を再構築している。

夢があっけなく忘れられるのは、正しい人生史を保存するため。 明確に記憶されないからこそ、ヒトは夢を「現実と切り離された体験」として受け入れられる。

意識は、脳の高次的な働きによって生まれた後天的な機能である。

無意識は、単なる裏方ではない。それは膨大な情報を瞬時に ふるいにかけ、必要なときに意識に送り出す巨大なフィルターであり、同時にヒトの行動や判断の大半を裏で操っている。

意識に届く情報は、全体のほんの一部であり、大多数はヒトの自覚の外で処理されている。 この仕組みがあるからこそ、ヒトは外界の変化に迅速に対応できる。

あまり怖い夢は見なくなりましたが、なんだか焦っているという夢はよく見ます。そのときは弁護士としてではなく、なぜか、たいてい大学生のころのことです。大変勉強になる新書でした。

(2026年1月刊。980円+税)

荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方

カテゴリー:人間

(霧山昴) 

著者 荒木飛呂彦 、 出版 集英社新書

漫画は、描く人の心から湧き上がる情熱が描かせるもの。

漫画の「王道」あるいは「黄金の道」は昔から存在している。あらゆる小説や映画や漫画の「名作」に通じる普遍的なセオリーだ。

悪役は、漫画をヒットさせるために欠かせない、最重要ポイントのひとつだ。悪役とは、主人公の行く手を阻(はば)む何かであり、主人公がなんとしても乗り越えていかなくてはいけないもの。

悪役とは、「思いどおりにいかない困難」であり、「主人公が乗り越えていくべき壁」だ。主人公の「正しさ」に対する「悪」とは何かを、とことん考えなければ、成立しない。悪役をつくるということは、作者の「悪とは何か」という一種の「哲学」が反映される、けっこう深い作業である。

主人公を名のる時の音感も、バ・ジ・ブなど、カタカナの濁音を使うと、シャープな印象を与え、やわらかいほんわかした漫画ではないことが、読み手に伝わっていく。

良い作品をつくるには、「リアルに描く」ことが非常に重要。主要なキャラクターについては詳しい身上調書をつくる。それは単なる設定ではなく、重要度が高い順につくる。

絶体絶命のピンチのところに、魔法の杖が急に降りてくるような、都合のよすぎる展開はダメ。

読者が浸りたいと思う世界をつくっていくには、たとえ架空の世界であっても、リアリティがあって緻密かつ客観的に表現され、説得力が感じられるものでなければならない。

キャラクターを動かしていくときに特に気をつけないといけないのは、理にかなっていない、間抜けな行動を絶対にさせないこと。

お金のことばかりを考えていると、漫画に集中できなくなってしまう。

できるだけ規則正しい生活をすること。健康管理に気をつけることは、漫画家として生きていくための重要事項のひとつ。

著者はデジタルではなく、アナログで漫画を描き続けていくことを宣言しています。私も、すべて手書きで本を書きましたし、これからも書いていきます。モノカキ志向の私にとっても大事な指摘がたくさんありました。ありがとうございます。

(2024年12月刊。940円+税)

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