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冬眠の生命科学

カテゴリー:生物

(霧山昴)

著者 山口 良文 、 出版 エクスナレッジ

冬眠をする動物は珍しくない。哺乳類の100種以上、全体の 5〜20%が冬眠する。

クマは冬眠するとされていたのに「冬ごもり」と呼ぶべきだとされていた時期がある。でも、 今では、やはりクマは冬眠すると再定義されている。

冬眠と呼ぶための最小限の特徴は、「低代謝」がコントロールされた形で長時間続くこと。

ヨーロッパの寒い地域に生息するオオヤマネは、なんと 1年のうち11ヶ月も冬眠する。1ヶ月しか活動しない。ええーっ、いったい寿命は長いのでしょうか…。

冬眠と睡眠は似て非なるもの。

恒温動物は、代謝を自ら落とすことで体温が下がる。 地球上のほとんどの動物は変温動物。脊骨をもたない無脊椎動物はすべて変温動物。脊椎(背骨)をもつ脊椎動物のうち、哺乳類と鳥類を除いたものはすべて変温動物に分類される。

凍った状態で冬眠するカエルがいる。凍るカエルは、細胞の中の水をうまく細胞の外に追い出すことで、氷点下でも細胞の中身自体は凍らないようにしている。心臓も止まっている。不凍タンパクは、水分子とうまい形で結合することで、水の 成長を抑えて凍結しないようにしている。

変温動物の中には、夏の暑さや乾燥などから身を守るため夏眠(かみん)するものもたくさんいる。えっ、冬眠ではなく、夏眠するのですか……。

鳥類は、基本的に冬眠しない。冬眠のときの体温は、外気温とほぼ同じ。兵庫県の六甲山で遭難した人が体温22度まで下がり、2週間も生きていて発見され助かったことがある。意識を失って、ほとんど何も食べなかった のだから、冬眠していたのと同じようなもの。いやはや、これはすごいことですね。

科学は誰も答えを知らない問題を自分で見つけて解かなければならないもの。新しい「問い」を立てて、それをいかにしたら解けるのか、解き方を自分で 考えるのが科学者で、それをプロとしてやっていくのが研究者の仕事。なるほど、ですね。

弁護士の仕事でも、正解はなく、絶えず次善の解決策を探っています。少しは似たところもあるように思いますが、いかがでしょうか。

(2026年3月刊。1980円)

法律のしごとはおもしろい!

カテゴリー:司法

(霧山昴)

著者 石田京子・濱中淳子 、 出版 岩波書店

弁護士になって50年以上たちました。私にとってまさに天職です。誰に気兼ねすることもなく、自由にモノが言え、そして工夫すると自由になる時間がそこそこ確保でき、豊かな大自然と少々まじわりながら、しかも大金持ちにはなれなくても、経済的にも早くから自立できています。

朝起きて雨戸を開けると、4月には庭のチューリップたちが迎えてくれます。今は黄ショウブとグラジオラスとアマリリスの花が庭を美しく飾っています。遠くには緑豊かな小山と丘が見えます。すぐ下には水田があり、蛙の鳴き声に悩まされていましたが、今は休耕田で、雑草が生い茂っているのが少々残念です。歩いて5分ほどの小川にはもうすぐホタルが飛びかうようになります。

空き家の目立つ古い住宅団地です。子ども会も老人会も消滅してしまいました。

法律家の仕事は単調ではありません。そのとおりです。法律もいろいろあるし、扱う人の意もさまざま。その人自分にあった面白さを発見でき、力を発揮できます。

勝負のかけひきに熱中できる人は、それを面白いと感じる。私は、かけひきは得意ではありませんし、勝負事にも関わりたくありません。負けるのが嫌だからです。なので、裁判で負けたら、落ち込んでしまいます。

他人に納得してもらえるよう、相手が理解できる言葉にして伝える。そのとき、裏づけとなる証拠や事実を並べて、筋道立てて文章で説明にいく。これは私の得意とするところです。そしてこれこそ法のしごとそのものです。

このとき、正解を探すという発想はありません。最善、次善、そしてよりましな選択肢を絶えず考えていきます。これもまた面白い、知的刺激のある作業です。

弁護士に向かない人がいます。対人間に関心が薄い人は、早く方向転換したほうがいいと思います。ビジネスでお金をたくさん稼ぎたい人は、さっさと起業したほうがいいです。人に興味、関心が薄いと弁護士の仕事は辛いばかりです。また、この本では長い文章を読むのが苦手な人は弁護士に向かないとしています。そのとおりです。大量の文書をさっと読んで、肝心な点をピックアップしていくのが求められます。AIにまかせることは出来ません。さらに暗記が好きな人も向いていないとしています。正解を求める発想も向きません。依頼者の立場に立って解決策を柔軟に考えていくことが求められます。

弁護士の仕事は面白いです。ぜひ、あなたも弁護士を目指してください。

(2026年4月刊。1450円+税)

筋肉はすごい

カテゴリー:人間

 (霧山昴)

著者  青井渉、 出版 中公新書

 

小腸から肛門までは7メートルもあり、食物の消化、吸収、排出の過程を一日ほどですます。腸のぜん動運動を担うのが筋肉。体の動くところには必ず筋肉がある。

筋肉には収縮タンパク質があり、これが収縮しては緩み、また収縮しては緩むという繰り返して、体を動かすことができる。 このエネルギーは、細胞の中にあるミトコンドリアでつくられる。赤筋はミトコンドリアがたくさん含まれているので、エネルギーをつくるのが得意。赤筋は持久系スポーツに、白筋は瞬発系スポーツに向いている筋肉。

私は週に1回、プールに行き自己流のクロールで40分かけて1キロ(25メートルを20回往復)泳ぎます。まさに持久系です。速くは泳げません。

筋線維の比率は生まれながら決まっていて、後天的な要因によって容易に変わることはない。なのでスポーツ競技の得意、不得手、運動神経の良さは、ある程度、遺伝子によって決まっている。

ミトコンドリアは細胞内のエネルギー発電所と呼ばれ、酸素を使って大量の栄養素を燃やしてエネルギーを発生させる。筋肉は、このエネルギーを使って収縮する。

ミトコンドリアは赤筋に多く、長距離走のときにはエネルギー供給に貢献する。ミトコンドリア 遺伝子は母方のみから遺伝する。

筋肉はマイオカインという物質を分泌している。(ホルモン)血液中の乳酸は、ほぼ筋肉に由来する。

血糖は、脳が使う主要なエネルギー源。かつて疲労物質とされていた乳酸は、エネルギーとして利用できる有用な物質と認識が改められている。

ヒトの体の水分(体液)は弱アルカリ性に保たれている。これが少しでも酸性に傾くとエネルギーをだすシステムが働かなくなり、筋肉の収縮ができなくなってしまう。これが疲労の原因。

長期間同じ姿勢をすると、筋肉の血流の流れが悪くなり、酸素の供給が不十分となる。そうすると、ミトコンドリアでの代謝が十分にできないので、水素イオンが多くでている。

筋肉の主なエネルギー源は(血液中ブドウ糖)糖と筋肉内グリコーゲンと脂肪。逆に言うと、筋肉の中にグリコーゲンの量が多いほど、バテにくい。

筋肉のミトコンドリアは加齢とともに減少。運動を日常的に行うと、ミトコンドリアの数が増え、質も高まるので、安静にしていても脂肪を燃焼しやすい筋肉になる。

加齢による筋肉の減少をサルコペニアと呼ぶ。やせている高齢者より、少しぽっちゃりした高齢者のほうが元気で、要介護状態になりにくい。

フレイルとは、高齢期に生理的予備能力が低下すること。

腸内細菌は単に腸内にいるだけでなく、さまざまな物質を生み出し、ヒトの体のさまざまな部位にメッセージを送っている。

毎年、子どもの日には、近くの小山 (388メートル)に登ってきました。はかなり勾配のきつい坂道もありますが、頂上にある見晴らしの(下界を眺めながら)いい場所でお弁当開きをする気分は最高です。のぼっておりて自宅にたどり着くまで3時間です。まだ、なんとかのぼりおりできてほっとしました。万一、山の中で転落でもしたら、「老人が山で遭難」と報道されるのではないでしょうか。それを考え、ぜひ避けたいと慎重にのぼり、またおりるようにしています。おりるときのほうが、膝がガクガクします。

(2025年10月刊、1078円)

核戦争、世界滅亡までの72分間

カテゴリー:社会

(霧山昴)

著者 アニー・ジェイコブセン 、 出版 朝日新聞出版

日本も核武装して日本を守るべきだと主張する政治家がいて、少なくない日本人がそうなのかなと思い込まされています。でも、核兵器は一度でも使われたら、この地球が終ってしまうという恐ろしい兵器なのです。この本を読んで改めて実感しました。

この本では、さまざまな状況を想定して、核戦争が起きたときの真実を恐ろしいほど写実的に描いています。

ワシントンにあるペンタゴンに1メガトンの核兵器が命中したら、たちまち周囲の空気は数百万度にまで熱せられ、巨大な火球が形成される。火球ははじめ時速数百万キロの速度で膨張し、数秒後には直径1.7キロの大きさに達する。その光と熱の威力は、コンクリートの表面を砕き壊し、金属は溶解・蒸発化し、石材は粉々に砕けて散り、人間は一瞬にして燃え尽き、炭となる。ペンタゴンの庁舎は一瞬のうちに粉塵と化す。すべての壁が木っ端みじんに砕け、2万7000人の職員は全員が即死する。火球の内側には何も残らない。

火球から放射される熱線は光速で広がり、中心から数キロ先まで、全方位見渡す限りの範囲にある可燃物を片端から発火させる。やがて、その猛火は、250平方キロをこえる範囲、600万人の住む地域を焼き尽くす。

ペンタゴンから東へ4キロ離れた野球場にいる3万5000人の観客の衣服が一斉に発火し、その場で焼け死ぬか、まもなく死に至る。

その後、さらに100万人が爆発から数秒のうちに深刻な熱傷(ヤケド)を負い、9割は死亡する。

人類が20世紀に核兵器を生み出したのは、世界を悪から救うためだった。そして21世紀の今、核兵器が世界を滅ぼそうとしている。焦土と化すまで徹底的に…。

アメリカ政府は「全面核戦争」に向けて態勢を整え、作戦を立て、シミュレーションを繰り返してきた。

全面核戦争とは、最短で20億人もの死者が出ることを前提とした、核使用をともなう第三次世界大戦である。

核兵器を持つことが、どうして核戦争から人を守ることになるのか? 抑止力が働かなくなったとき、いったい何が起きるのか?

 1985年、ロナルド・レーガン大統領とミハイル・ゴルバチョフ書記長は、共同声明でこう言った。核戦争に勝者はありえず、決して起こしてはならない。

アメリカは1770発の核兵器をもち、その大半が即発射可能な状態にある。現在、核兵器を保有しているのは9か国。アメリカ、ロシア、フランス、中国、イギリス、パキスタン、インド、イスラエルそして北朝鮮。

北朝鮮の核兵器は、おそらくソ連崩壊時に保管庫から盗み出され、売られたものだろう。核弾頭とデコイ(おとり弾頭)を見分けるためのレーダーシステムSBXには、数十億ドルの開発費と数億ドルの維持費がかかっている。

アメリカで核兵器の発射権限を持つのは大統領ただ一人。誰の許可も要しない。あの情緒不安定、言うことがくるくる変わり、大言壮語するトランプが地球の死活を左右するボタンを持つとは…、恐ろしすぎます。

核搭載ミサイルが原子炉を撃つというのは、想像を絶する最悪のシナリオだ。これ以上ひどい状況は考えられない。私は、通常ミサイルでも同じことだと思います。

原発防衛というが、核ミサイルの襲来を想定した訓練は一度も行われていない。なぜなら、その場合の防衛手段は存在しないから。

灼熱の球体が直径30メートルの大きさとなり、10分にわたって、どこまでも昇り続けるだろう。原子力発電所全体が海面に陥没し、クレーターとなる。火球の内側にあったものは、影形もなく一掃される。

核戦争が始まれば、開戦直後に5億人が命を落とし、生き残った人々も飢餓と死に追いやられる。北半球全体が放射性降下物により居住不能となる。

もはや清潔な水はどこにもない。あらゆる街灯も照明もない。あるのは、ろうそくの光だけ。電話もつながらない。15分もしないうちに、病気を媒介する虫がうようよと湧きはじめ、人間の排泄物を、ゴミを、そして死体をむさぼり食いはじめる…。

いやあ、核兵器の恐怖、また、そのむなしさの恐怖など、ひしひしと実感させられました。今夜はじっくり眠れそうもありません。

(2026年2月刊。3630円)

拉致(下)

カテゴリー:朝鮮

(霧山昴)

著者 高世仁+NK91 、 出版 旬報社

日本人拉致を発案し指示した拉致したのは金正日。日本人を洗脳して、北朝鮮崇拝の工作員に仕立てあげて日本で活動させる目的だった。しかし、洗脳も簡単ではなかったけれど、工作員に仕立てたつもりでいても、すぐに逃亡したりして期待を裏切るので、断念した。かといって殺すわけにもいかない。金正日の指導が間違っていたなんてことはありえない。そこで、別の目的に使って、生かしておくことにした。いずれにしても、いきあたりばったりで進められた計画だった。なるほど、そういうことだったんですね…。

よど号ハイジャック犯として北朝鮮に渡った田宮ほかの日本赤軍のメンバーたちは、行く前は金日成を洗脳すると豪語していたが、北朝鮮では逆に洗脳されて、工作員となって、日本人拉致の加害者となったのでした。

狙われたのは若い女性。思想性がなく、素直な女性たちだったので、親切そうに近づいてきた元よど号メンバないし妻たちにころっと騙されてしまったのです。本当にひどい話です。

拉致されたなかで2人の日本人男性について、生きているというのに、日本政府は何も行動していません。許せません。

レバノン人女性4人が拉致されたとき、そのうち2人が逃走に成功して拉致を訴えたとき、レバノン政府は直ちに行動に出て、4人全員を帰国させています(うち1人は結婚して子供もいたので、北朝鮮に戻りました)。

安倍首相は小泉首相と違って、拉致被害者の帰国に取り組むことはありませんでした。

安倍にとって、どうでもいい課題だったのでしょう。次の菅首相も同じでした。

「救う会」も「全員一括帰国」にこだわり、可能性のある人から帰国させるという現実的な対応をしなかった。一人でも帰国したら運動がしぼんでしまうから…という、本末転倒な理由です。

日本人を含む外国人拉致は、1970年代後半から急激に増えている。これは対南工作を本格的に担当するようになった金正日の強い意向によるものだった。

北朝鮮から日本への密航は簡単だし、危険がない。韓国への潜入は銃撃戦になるので武装するけれど、日本への侵入のときは武装していない。日本に行かせると緊張感がなくなるので、日本行きは1人2回までと制限されていた。見つかっても絶対に撃たずにとにかく逃げきれ。いやあ、これには笑ってしまいましたよ。そんなもんなんですね…。平和な国、ニッポンなんですよ。いいじゃないですか。

近年の日本政府は、勇ましいスローガンのもとで、北朝鮮との交渉を動かすことはできないまま、「やってる感」の演出だけをしている。高市政権のやりそうなことですよね。「やってる感」の演出だけは巧妙ですから、選挙で「大勝」しましたし…。

大変勉強になりました。全国の図書館に必置の本だと思います。ぜひ多くの日本人に読まれてほしいものです。

(2026年3月刊。2860円)

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