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宇宙暗黒時代の夜明け

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)

著者 島袋 隼士 、 出版 講談社ブルーバックス新書

 自分が死んだあとの世界はどうなるんだろう…と考え悩むのが馬鹿らしくなるのが宇宙の話です。そこでは、たかだか100年しか生きられない人間と違って、何万年どころか、何億年というスケールで話が展開していきます。太陽があと50億年もすれば消滅するというとき、もちろん地球も消滅するわけですが、あらゆる生命体も消えてなくなり、恐らく原子状態になってしまうのでしょう…。

 この本の冒頭部分に、鎌倉時代に藤原定家の書いた「明月記」に1054年11月8日、超新星の爆発(かに星雲)を目撃したという記事があることが紹介されています。明月記に書いてあるのを超新星の爆発と結びつけた人は本当に偉いと私は思います。

宇宙は静止した永遠不変の存在ではなく、時間とともに膨張したり収縮したりする可能性がある。これがフリードマン方程式。

 ところが、かの有名なアインシュタインは、宇宙は永遠に不変なものと考えたといいます。もちろん、今では間違いとされています。

星までの距離をどうやって測るかというと、星の明るさが変わる周期とその星までの距離との間に対応関係があるから。なので、星の変光周期を測定したら、その星までの距離を測定できる。どういうことなのか、まったく分かりませんが、ともかく星までの距離は、そうやって測られているのです。

 ダークマターは、電磁波を一切、放射・吸収・反射しない。つまり、光では決して直接見ることはできない。それは「暗黒」というより、「透明」。

 銀河団の質量のうち80~90%がダークマター。銀河団は太陽の100~1000兆倍もの質量をもっているが、そのうちの大半がダークマター。

 宇宙全体の27%がダークマターで、68%がダークエネルギー。残る35%がバリオン、つまり私たちの身の回りの物質。なので、私たちは宇宙の成分の95%を今なお、理解していない。

ブラックホールは、「穴」ではなく、非常に高密度な天体である。

 ファーストスターは、ビックバンから数億年後、宇宙がまだ幼い時代に生まれた。

 重力波を検出するのは、とても難しい。理由は信号の弱さにある。重力波は時空を伝わる波で、重力波が通過すると、時空の長さが変化する。その変化を重力波の信号として受けとるが、その変化する時空の長さは「太陽と地球の距離が、水素原子1個分の大きさだけ変化する」という、途方もなく小さなもの。想像を絶する小ささのレベルですね…。

 著者は東北大学を卒業して名古屋大学で博士号をとったあと、パリ天文台につとめ、その後、中国の北京・雲南で研究してきました。現在も雲南大学の教授です。天文学者って、世界をまたに歩く仕事なんですね。

 そして、宇宙は謎だらけだから研究が面白いとのこと。きっとそうなのでしょうね。門外漢の私には、この新書のように、ここまで分かったという素人向けの解説書を引き続き読んでみたいと思っています。

(2025年11月刊。1100円)

生態学講義

カテゴリー:生物

(霧山昴)

著者 中田 兼介 、 出版 羊土社

 生き物を知れば、人間理解も進む。50年以上も弁護士をしていて、人間社会のさまざまなトラブルにぶつかってきました。どうして、そうなんだろう……と、何度も思い悩んだことがあります。そして、いろんな生き物の本を読むと、なあんだ人間って、特殊な生物なんかじゃないんだと気づかされます。

 たとえば、オシドリ夫婦とよく言われますが、鳥では「不倫」はあたり前のことです。そして、チンパンジーは「政治」をします。2位と3位が連合して1位のオスを蹴飛ばしてしまいますが、永続するわけではありません。同じようにやられる危険はいつだってあるのです。

そして、人間は今やAI頼みになりつつありますが、道具を使うのは猿だって同じです。宮崎の幸島のサルは海で芋を洗って食べますし、カラスはすべり台ですべって遊びます。

 それでは、人間はいったい何が他の生物と違うのか、はっきりした境界線は本当にあるのでしょうか……。

西日本のゲンジボタルは、東日本のホタルの倍の速さで光を点滅させる。5月連休明けになると、わが家から歩いて5分の小川にホタルが明滅するのを見ることができます。自然豊かな田舎に住む良さの一つです。

 アメリカ東部のホタルは、密度が少ないときは、てんでバラバラに光っているけれど、15匹以上集まると、全体が同調して周期的に光るようになる。そんな光景を見たいものです。

 ヒトの祖先は、90万年前、1280人に減って絶滅寸前の状態が10万年も続いた。ええっ、そんなこと聞いたことがありません。いったい、どうしてそうなったのでしょうか、そして、どうやって危惧を脱出できたというのでしょうか……。ぜひ知りたいです。

 すぐ目先に役に立たないことでも、いつかはきっと役に立つことがある。世の中って、そういうものでしょ。目先の原発振興金に目がくらんで、放射線廃棄場処理施設を誘致するなんて、無責任きわまりありません。株主配当しか考えないような投資家に足元をすくわれたらいけないのと同じです。

日本人の平均身長は1980年をピークに縮みはじめていて、2014年生まれは、男性で1.5センチ、女性で0.6センチ短くなると予想されている。出生時に低体重だった子どもが増えたのが原因。これも環境の影響。ちなみに、私の身長はかつて167センチだったのが、今や2センチ以上にも縮んで、165センチを切っています。残念です。腹回りだけが成長していますので、今ではこちらの「成長」をくい止めるのに必死です。

 オウムによく似たヨウムは賢い鳥の代表ですが、お互いを助けあう利他的行動をします。前に助けてもらったら、次に自分が助けるほうにまわるというのです。すばらしいです。

 アミノアリには女王アリがいない。だけど、ふつうより大きなアリが、たくさん卵を産むけれど、ほとんど仕事をしない、そんなアリがいるけれど、攻撃されることもなく、協調・共有している。いろんな形態の生き物がいて、「みんな違って、みんないい」という金子みすずの世界なのですね。その意味で、トランプは最悪ですし、そのトランプに迎合するばかりの高市首相には心を許すことができません。

(2025年11月刊。2420円)

私の職場はサバンナです!

カテゴリー:生物

(霧山昴)

著者 太田 ゆか 、 出版 河出書房新社

 南アフリカ政府公認で唯一人の日本人女性サファリガイドである著者が、その仕事とアフリカの野生動物の多くが絶滅寸前の危惧にあることを紹介しています。

サファリとは、スワヒリ語で旅という意味。自然の中で野生動物を観察しに行くアクティビティ。

著者は大学2年生のとき、アフリカのボツワナ共和国でのサバンナ保全ボランティアプロジェクトに参加したのが、現在の職業につながっています。すごいことです。14歳のころは獣医になることを夢見ていたとのことですが、大学は理系ではなく文系に進んで、その夢はかないませんでした。ところが、この3週間のボランティアプロジェクトに参加して、フランス出身の若い女性のサファリガイドに出会ったのが、夢を具体化する手がかりになりました。そして、2015年に、南アフリカにあるサファリガイド訓練学校の1年間コースに飛び込んだのです。すごい行動力です。若いって、すばらしいですね…。

 サファリガイドの一日が紹介されていますが、起床は午前3時45分で、4時15分に出勤し、午前5時にサファリに出発するのです。だいたい3時間から4時間ほどかけます。朝9時に朝ごはんを食べ、午前10時からデスクワークして、昼2時に昼ごはんを食べて休憩したあと、2回目のサファリに午後4時出発。これも3~4時間かけ、夜8時に仕事終了。なかなかハードですよね。

 百獣の王と言われるライオンも、生きのびるのはなかなか大変のようです。オス8頭のうち1頭しか大人になれないという苛酷さです。そして、メスも命がけで子育てしています。人間の密猟によってもライオンは殺されています。歯や爪は装飾品、骨は伝統薬になるのです。本当に人間は罪深い存在です。ライオンがこの20年間で43%も減少したと聞くと悲しくなります。

 最速のチーターの顔に黒い線が目の近くにあるのは、太陽の光を吸収し、反射をおさえてまぶしいサバンナでも狩りがしやすいようにするため。逆に、ライオンやヒョウの目の下には白い線があるのは、暗闇の中でもなるべく多くの光を吸収できるようにするため。単なるワンポイント的な飾りではなく、合理的な理由があるわけなんですね……。

 そして、大人になれるチーターはわずか5%とは……、苛酷な世界です。

 ゾウは大量に食べて、その半分をフンとして排出する。このフンが食物連鎖に生かされる。そして、種子の広汎な散布にも貢献している。野生生物は、いろんな関連性をもっているわけです。

サイの角が1本で2000万円という、とんでもない高値で取引されているとのこと。密猟がなくならないわけです。

 著者の趣味は野鳥観察だそうです。南部アフリカに1000種ほどの鳥がいて、まだ半分にも出会えていないとのこと。いやあ、すごいですね。そんなにたくさんの種類の鳥がいるなんて……。

 そして、たまには近隣のサバンナにソロキャンプに行くことがあるとのこと。満天の星の下、大自然で一人で過ごす時間は本当に特別で…、と書かれていますが、野生動物に襲われる心配はないのでしょうか…。臆病な私には、とても真似できません。

 著者には、これからも元気に、安全にサファリガイドの仕事を続けてほしいと心から願っています。全然関係ありませんけど、私がボルドー近くのサンテミリオンに行ったとき、土産品を買おうと思って立ち寄ったら、なんと売り子は若い日本人女性だったので驚いたことを急に思い出しました。

 日本人の若者が世界に出なくなって、内向きになったとよく言われますが、若者の存在を知ると、日本の若い人も捨てたもんじゃないと思います。

(2024年6月刊。1562円)

古墳時代の歴史

カテゴリー:日本史(古代)

(霧山昴)

著者 松木 武彦 、 出版 講談社現代新書

 古墳は氏族のシンボルだった。古墳群は、そのつながりの拠りどころとなる血縁関係を、墓の並びという形で視覚的に表したもの。氏族とは、血縁の意識、ないしは同じ祖をもつという共通認識をきずなとして結びついた人々の集団である。実際に血はつながっていなくても、同じ祖をもつことにして、氏族のメンバーになることもある。

 氏族とは、実際の血のつながりよりも、それを軸にした意識や知識、すなわち祖先からの系譜やそれにまつわる神話・祭祀・世界観・価値観、あるいは生産や手工業の技術などまでを広きにわたって共有し、形にし、守り伝えるための結社のようなものである。

 古墳は東日本で発生した。北部九州は、墳丘のない無数の埋葬が群衆する集合墓地が主で、わずかな墳丘墓も、その中に埋もれて点在するだけ。遠距離交易と水田開発が古墳出現の基礎となった。傑出したスケールで築かれるのは、纏向(まきむく)の古墳群で、それまでの古墳群に比べ、核となる民族長の古墳は格段に大きく、かつ前方後円形を基調とし、階層性がはるかに強い。

 ヤマトによる武力統一を想定するならばあるはずの、大規模な武力による征服や衝突の考古学的痕跡は見つかっていない。

 古墳を築く氏族が各地に発生し、西方にも古墳が広がっていった。博多湾の西に面する糸島平野の平原(ひらばる。糸島市)の古墳からは、鏡30面、中国風のこしらえをもった長い鉄刀、珍しいメノウの管玉、ガラスの勾玉(まがたま)、連玉(れんだま)などの副葬品が出土した。鏡のうちの5面は中国産、ガラスの連玉は地中海原産と考えられる。

 箸墓(はしはか)古墳は、それ以前の纏向の前方後円墳の長さ3倍、体積10倍以上という、飛躍的な存在である。規模だけではない。墳丘が幾何学的な立面形になっている。

 箸墓は後円部が散弾に築かれて、高くそびえる。幾何学的な立体形が際立つ。また、葺石(ふきいし)や円筒形をしたスタンドの土製品(円筒埴輪)などのエクステリアが完備されている。箸墓の築造年代は、250年から260年前後ころ。したがって、卑弥呼の墓ということはありうる。

 吉野ケ里遺跡は、規模や他地域産土器の示す物流の量や拡がりの点で大きく劣っていて、邪馬台国とみるのは難しい。

 現在の考古学からは、邪馬台国が九州か近畿かは確言できない。しかし、西地は「邪馬台国」体制のもと、ほぼ一体の枠組みの中にあったとみれる。

 前方後円墳や前方後方墳は、箸墓や卑弥呼より前にすでに存在していた。

 4世紀中ごろのヤマトには、「畿内中枢勢力」と言えるような一つの安定した政治主体が確立していたわけではなかった。「諸王の割拠」する時代だった。

 卑弥呼の邪馬台国は北部九州にあったと私は信じているのですが…。

(2025年10月刊。1210円+税)

イスラエル・パレスチナ紛争をゼロから理解する

カテゴリー:中近東

(霧山昴)

著者 イラン・パペ 、 出版 河出新書

 アメリカとイスラエルは交渉中なのに突然イランを攻撃し、ハメネイ師をはじめ、軍の中枢幹部を一挙に殺害しました。本当にひどい話です。国際法違反は明らかです。ところが、高市首相は「法的評価は控えたい」と国会で答弁し、トランプ追随を明らかにしました。それどころか、イランを非難するのです。許せません。

 アメリカのトランプ大統領は国際法なんか知らんと高言し、「力による世界支配」にまっしぐらです。そして、日本の高市首相はトランプのそばでピョンピョン飛びはねて卑屈にへりくだるだけで、次々にアメリカの不要不急の高額兵器を購入し、日本国内では軍需産業を露骨に優遇しています。強大な軍事力を持てば戦争を回避できるという論理が成り立たないことを今回のイラン爆撃は示しています。それは戦争を招き入れるだけなのです。

 日本がすべきことは、軍事に頼らない、平和的な外交力を強めること。それしか私たちの平安と安全を守ることは出来ません。

 ハマスの前身はムスリム同胞団の軍事部門で、1987年12月に創設された。第一次インティファーダの発生直後のこと。ハマスが躍進したのは、2004年11月にPLOのアラファートと議長が死亡したあとのこと。アラファートの死亡も、イスラエルに毒を盛られた疑いが濃厚とのこと。

 イスラエルのネタニヤフは2021年3月に敗れたが、2022年11月返り咲いた。

 今や、イスラエルには本物の左派はいない。少数派はいても主流派ではなく、イスラエル政府の掲げる政策を変える力はない。イスラエルにも、ネタニヤフに反対する勢力はいると思いますが、圧倒的に少数のようです。

 高市自民党は、国会を牛耳っていて、予算審議の充実なんて必要ないと断言し、数を頼んで強行採決を重ねています。あまりにも国会を軽視していますが、「サナエちゃん、がんばれー」と叫んで声援する一般市民がいること、少なくないことには呆れるというより怖いです。膚寒い思いをしています。

 パレスチナは無人の土地だったという神話はまったくの間違い。ユダヤ人国家がパレスチナに建設されたのは、ひとえに大英帝国の国益にかなったから。パレスチナには多くの村が何千年も前から存在していた。パレスチナが広大な砂漠だったというのも誤り。パレスチナに決して砂漠ではなかったし、人々は遊動民(ノマド)でも未開人でもなかった。

 アラブ系ユダヤ人は、イスラエルの右派政党を支える有権者集団として最大規模となっている。パレスチナ人に対する暴力をだれよりも声高に主張することも多い。シオニズムを熱狂的に支持する最強硬派として身の証(あかし)を立てた。

 なるほど、ですね。よくある歴史のパターンです。弱い者は強い者に頼らざるを得ませんからね…。

 著者はユダヤ系のイスラエル人歴史家です。イスラエルにいられなくなったとのこと。現実は厳しいのです。それにしても、イラン攻撃は直ちにやめてほしいです。戦争があたり前の世の中って、怖すぎます。高市首相は、アメリカに対して国際法違反の戦争を止めるよう、きっぱりモノ申すべきです。

(2025年11月刊。1100円)

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