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「望遠鏡と天文学者」

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)

著者 有本 信雄 、 出版 d ZERO

まえがきに、こう書かれています。太陽は、まだ誕生して46億年しか経っていないが、矮小(わいしょう)銀河の星の中には120億年以上という老齢な星がある。

どうでしょうか。46億年というのを、「まだ」と言い切るところは、さすが天文学者ですよね。たかだか100年ほどしか生きない人間なんて、ちっぽけすぎてケシ粒ほどにもなりませんね。

地球はいずれ今の金星のような灼熱(しゃくねつ)惑星になる。すべての生命が住めない天体になる。ただし、それは10億年後のこと。

著者は、だから、いずれ人類は地球から脱出しなければいけないと考えています。ハビタブルゾーンのある天体に移住するしかないというのです。でも、そんな天体を人類は先に見つけることが出来るのでしょうか。また、万一見つけたとしても、そこに到着できるでしょうか…。

トランプや高市のような、目先の自分のことしか考えない政治家が大手をふって闊歩している地球。戦争の収まらない地球で、そんなことを考えている余裕があるのか、本当に不安でなりません。

人類が生存できる環境とするには、10億年から40億年という、無限に長い時間がかかる。著者はこうも言っています。トランプは地球温暖化なんて嘘だわめき散らし、世界的な取り組みに背を向け、足をひっぱっています。

高市さんはトランプに抱きつき、まったく盲従するばかりです。アメリカにこびへつらうだけの日本の首相は、世界中の笑い者です。ところが、支持率はまだ5割とか6割というのです。トランプだって3割台にまで下がっているというのに…。

冷害を心配していて宮沢賢治の時代は地球温暖化を心配する必要はなかった。なので、火山を噴火させて二酸化炭素を増やして気温を上げようという話が小説の中に出てきた。今は、もはやそんな時代ではない。

著者は運転免許証を持たないのですが、不便な生活を余儀なくされました。でも、それは、自動車の排出ガスを増やすのに自分も加担したくないからなのです。偉いものですね。

宇宙には2000億個の銀河があり、銀河には2000億の恒星がある。その星の1割には惑星があるだろう。すると、そのなかには人類が住める惑星があるのかもしれない。

私たちは、いったいどこから来たのか…。日本は地球温暖化をストップさせる努力を何もやっていない。残念な現実だ。

先の毎日の夕刊(5月1日)に、エイモリー・ロビンスさんというアメリカのエネルギー研究者のインタビュー記事がのっていました。この人は日本が原発回帰策を進めようとしているのは間違いだとしています。再エネ、省エネと比べて原発はコストが高いうえに今から10年もかかる原発に頼らずに再エネと蓄電池で電源を確保すべきだと強調しています。本当にそのとおりです。

原子力ムラとそれに群がる高市首相のような政治家たちが利権を吸うような、汚職にまみれた世界に戻ってはいけません。

それにしても、夜まともに眠れない天文学者って、大変な仕事ですね。頭が下がります。

(2026年2月刊。3520円)

世界自炊紀行

カテゴリー:人間

(霧山昴)

著者 山口 祐加 、 出版 晶文社

日本人の若い女性が世界 12ヶ国をまわって、38家庭を 取材。うち、各国2家庭ずつ 24組の自炊状況を突撃 取材した面白いレポートです。

料理と、それをつくり出した台所が紹介されていますので とてもイメージが湧き、さぞかし美味しいことだろうと、ついヨダレがたれそうになります。

この女性は人並み以上の強じんな胃腸の持ち主かと思うと、タイのカレン族の料理があまりの唐辛子の辛さに胃腸をやられてお腹を壊したと書かれていて、ああ、フツーの人だったんだねと、むしろ安心してしまいました。

台湾では共働きが当たり前で、男女の平等も当然のこと。台湾はベジタリアン人口の比率は13%で、インドに次ぐ世界二位。台湾のご飯は日本のご飯に比べて水分が少ない。パサパサとした炊き上がりになる。

学歴社会の韓国では、家族そろって食べるのが難しい状況。

ポルトガルでは、あらゆる料理に「バカリャウ」という干し鱈(タラ)が必ず入っている。

スペインでは、オリーブオイルをたっぷり使う、決してケチってはいけない。スペイン人は、1日に5回も食事する。夜ごはんは10時に食べる。それでも、寿命は世界第5位の長寿国。身体的ストレスの少ない生活ができるから…。

レストランの食事もいいけれど、美味しい家庭料理を食べると、心神ともに安心できますよね。

(2025年8月刊。2750円)

鳥は飛びながら眠る

カテゴリー:生物

(霧山昴)

著者 渡辺佑基 、 出版 中公新書

本屋に立ち寄って、たまたま手にした新書ですが、すこぶるつきの面白さでした。いやあ、生物はこんなふうに生きているのか……と、驚嘆し、感嘆し、また学者の地道な努力に対して、心から尊敬の念にあふれてしまいました。

画期的な新発見を次々に得たのは、バイオロギングです。超小型の計測器を動物の体に取り付けられるようになったからです。今や、人の目の代わりに、小さな電子機器と、上空に浮かぶ人工衛星が動物を観察する時代になったのです。そして、得られたデータを解析していくわけですが、そこには幾多の仮説を考え、想像して、データを当てはめたり分析していくという地道な作業が求められます。解明まで自動的に得られるというものではありません。

海中を泳ぎまわれるニシオンデンザメは、遊泳速度はのろいけれど、大人になるのに150年かかるという超スローの成長速度なので、寿命は400年という。ええっ、そんな大型生物がいるのですね、信じられません。

ニシオンデンザメは、北極の冷たい海中に生息するものとして、低体温。体が常時冷えきっているので、エネルギー消費量は非常に少ない。体重200キロのサメが1日に160グラムの魚を口にしたら、必要なエネルギーをまかなうことができる。いやはや、これは超超省エネの動物です。

ハチドリは、暗くて寒い夜になると、動きを停止して、昏睡(こんすい)状態になる。すると、昼間は40度の体温が、10度以下にまで下がり、3度になることもある。ハチドリは体温低下に伴って休眠する。

野生のゾウは1日に2時間しか眠らない。ゾウは無用のエネルギーを要する傾斜地を避けて平地のみで生活を完結させてエネルギーを節約している。

バショウカジキは、長い吻と大きな背びれを持っている。バショウカジキにも「利き手」がある。右利き、左利き、自分の得意な攻撃法を集団内に隠すことで狩りの成功率を上げている。

ヒトの女性は妊娠すると味覚が変化し、苦みについてさらに敏感になる。吐き気を催すのは、毒性への耐性の弱い胎児を守るための防御的な対応。

うまみは、消化しやすいタンパク質のしるし。

鳥は洋上を低く飛びながら、半球睡眠している。左目を閉じるときは脳の右側が眠り、左側は起きている。

オオツリハシギという鳥は、子育てが終わると、地球の裏側、1万キロも離れたニュージーランドまで、1週間ぶっ続けの羽ばたき飛行で移動する。

冬の寒いときに、小鳥がくちばしを自分の羽毛に埋めているのは、熱の発散を防ぐためです。

アザラシは、脳の片方の動きを止めて体が沈下しはじめるとノンレム睡眠が見られ、数分後にレム睡眠に切り替わって5分間ほど続き、最後に少しだけノンレム睡眠に戻ってから覚醒し、海面に向かって泳ぎ始める。このパターンだ。

クラゲには脳がない。神経細胞は体内に分散している。集中していない。それでも、観察すると、夜間に眠っている。

ヒトの睡眠パターンは、月の周期と連動している。女性の生理の周期は平均して29.5日。これは満月から満月までの日数とぴったり一致する。だから月経とも呼ばれる。

ヒトの睡眠にも月のリズムがある。満月の夜には寝付きが悪くなり睡眠が浅く短くなる。新月の夜は、逆にぐっすりと長く眠れる。

アザラシは、わずか4日間で子を独り立ちさせる。ズキンアザラシの母乳の脂肪分は、なんと60%にもなる。ヒトは3〜4%なだけなのに……。

生涯の途中でメスが閉経するのは、ヒトを除くと、シャチなど数種のハクジラ類に限られる。群れの行き先を決めるのはリーダーではなく、民主的な多数決で決まる。そのほうが失敗が少なく生存率向上に資する。

渡りをするツルに年長者がいるかどうかで、渡りの巧拙が決まる。やはり年長者の経験は生きるものなのですね……。

わずか250頁の新書ですが、次から次に新発見がテンコ盛りされていました。ご一読ください。

(2026年4月刊。1232円)

ヨーゼフ・メンゲレの逃亡

カテゴリー:ドイツ

 (霧山 昴)

著者 オリヴィエ・ゲーズ  、 出版 創元ライブラリ文庫 

ナチスの医師メンゲレは 南アメリカに逃亡し、30年ものあいだ隠れて生活していました。といっても、実の家族とはずっと連絡をとっていて、ドイツで弁護士となった息子ともスイスで会っています。また、アイヒマンとも一時期はすぐ近くに住んでいたことがありましたが、メンゲレのほうが用心深かったためイスラエルのモサドから居所を探知されることはなく、メンゲレは病気のため衰え、ついに海で溺れ死んでしまいました。偽名のまま墓地に埋められたのです。しかし、結局は遺体は掘り起こされ、鑑定の結果、メンゲレだと判定されました。今、メンゲレの遺骨は、ブラジル医学界が保存しています。

メンゲレに息子は問いかけた「パパ、アウシュヴィッツで何をしたの?」「人を殺したの、パパ? 子どもを痛めつけて焼いたの?」

メンゲレは答えた。「ユダヤ人は人類に属していない」「蚊と同じように叩きつぶした」「何千年も前から、ユダヤ人はアーリア人種の絶滅を望んできた。あんなものはすべて排除すべきなのだ」「自分は、ただ兵士と科学者の義務を果たしただけ」「たくさんある歯車のうちの一つでしかなかった。一部にやりすぎがあったとしても、その責任は私にはない」

しかし、実際のメンゲレは単に「歯車の一つ」というものではありませんでした。単なる責任逃れの口上にすぎません。

アイヒマンはモサドに捕まったとき、メンゲレのことはひと言話さなかったようです。そのおかげでメンゲレはアイヒマンが1962年6月1日に絞首刑で死んだあとも、1979年2月7日に溺死するまで17年も生き延びたのです。

メンゲレは、1956年3月にはジュネーブで家族(妻と子)に再会しています。当時はロシアで戦死したことになっていたので、「アメリカのフリッツおじさん」と紹介され、息子に名乗りました。

南アメリカには、ナチス・ドイツの犯罪者を受け入れる組織があり、社会があったようです。アイヒマンはそのなかで悠々と生活していたわけですが、自己宣伝をしたことから、ついにモサドに捕まってしまいました。メンゲレは、実に用心深かったのですが、それでも本名で登録していたのです。

「死の天使、ヨーゼフ・メンゲレ」という映画が最近、日本でも公開されましたが、残念ながら見逃してしまいました。日本でいうと 七三一部隊に関わった医学者たちですね。「ミドリ十字」を創設してもらったり、また、東大や京大の医学部教授になったり、栄誉と名誉を得ています。許せません。

(2026年2月刊 1,430円)

子どもの日、快晴だったので、久しぶりに近くの小山(388メートル)に登った。わが家から頂上まで、1時間半かかる。途中、ミツバチの箱を20個ほども置いているところがあり、ハチたちが箱の上を乱舞している。道路はよく整備されているが、それでも20分以上は、かなり急峻な山道になっている。幸い頑丈なロープがところどころに張ってあるので、それにつかまり、あえぎながら、やっとの思いで登っていく。足を踏みはずして転落したら、「高齢の老人が山で負傷」という見出しで報道されるのだろうなと冷や冷やする。小鳥たちの鳴き声がかまびすしい。ウグイスも混じって鳴いている。ようやく、見晴らしのいい頂上に到着して、汗びっしょりの肌着とシャツを取り換えて、お弁当開きをする。昔ながらの濃い塩味の梅干し入りのおにぎりを眼下の有明海、そして雲仙岳を見ながらほおばる。紫色の野アザミの近くの白い花にアゲハチョウがとまって蜜を吸っている。弁当を食べ終わると、石のベンチでしばし横になる。陽差しが強くて、暑いほど。帰り路はだらだら坂を下っていく。電気柵が囲われている中にミカンの白い花が咲いている。電気は太陽光発電だ。そして、ビワの実に袋かけをしている人がいたので、声をかけて挨拶する。青葉若葉が目に沁みて、またとない生命の洗濯ができた。

戦争特派員

カテゴリー:中近東

(霧山昴)

著者 ポール・コンロイ 、 出版風行社

激しい内戦下のシリアに非合法な手段で潜入して取材した2人のジャーナリストがいた。うち一人のメリー・コルヴィンはシリア政府軍の爆撃にあって死亡し、もう一人は重傷を負ったものの、なんとかして地下トンネルを経由して脱出してきた。

この本のサブタイトルには「メリー・コルヴィン、最後の任務」というものです。死んだジャーナリスト(女性)の名前です。

「国境なき記者団」によれば、少なくとも300人のジャーナリストが取材中に砲撃と空爆によって殺害されるか、交戦当事者の手によって殺害された。このなかには、銃撃によって殺害された日本人ジャーナリストの山本美香氏も含まれる(享年45歳)。 山本美香氏の本は読みました。「これから戦場に向かいます」(ポプラ社、2016年7月刊)です。

勇気あるジャーナリストのおかげで、最前線で何が起きているか私たちは居ながらにして「戦争の真実」を知ることが出来るわけですよね。最近の日本人ジャーナリストはNHKを初めとして、なんだかすごく少なくなってしまった気がします。どうなんでしょうか・・・。高市政権のお先棒をかついでばかりではジャーナリストとは言えません。記者クラブでの内での取材と報道では物足りません。いつも残念です。ホルムズ海峡封鎖の深刻な影響、高市政権の無策、無策の実情をもっと暴き出してほしいものです。

著者はリビアの独裁者だったカダフィ大佐が殺害された2011年10月20日の30日後にはリビア現地に入って、そこでカダフィ大佐の虐殺のあともなまなましく残っている遺体を見ています。

すごく危険な最前線です。シリアに入るには、トンネルを使う。トンネルのなかをバイクを走らせて、物資や怪我人を運んでいる。草地の真ん中に4メートル幅の穴を掘って、これがトンネルの入口。その先に本来のトンネルとして使われているコンクリート管がある。トンネルは完全な円形ではなく、卵のような形で、天井に向かって真上狭くなっている。もちろん、真っ暗。こんなトンネルを3キロも歩く。入口から離れるにつれて温度が上がり、呼吸が短く、激しくなって、ぜいぜい息をするようになる。黙ってトンネルを進んでいくと、身体的苦痛というより、精神的な問題にぶつかる。姿勢と酸素不足のせいで筋肉がきしみ始める。時間感覚を失う。トンネル内で音がする。オートバイの走る音だった。オートバイが一日中、トンネル内を行ったり来たりするのだ。光をを酸素が薄くなり、二酸化炭素が濃くなっている。トンネルの出口にやっとたどり着いた。そこには洞穴があり、コンクリート壁にある5メートルほどの鉄梯子を登って、ようやく外に出た。いやあ大変な潜入経路ですね。恐らく、ガザのトンネルも同じようなものでしょうね・・・。

シリア政府軍は、GRADミサイルを撃ち込んでいる。ロシア製120ミリ多連装ロケットだ。低く力強い音をたてて飛行する。このミサイルが直撃したら家を丸ごと吹き飛ばしてしまう。

シリアの政府軍はイランからドローンを提供してもらっている。ドローンによって戦場からリアルタイムな映像が送られ、探知された地上の標的に向けてミサイルを発射する。ドローンはお手頃価格で使い捨ての「鳥の目」だ。頭上にドローンがあると隠れようがなくなる。大砲の標的を簡単に選びだせる。

衛星電話は一番追跡されやすい。電話に電波が入っている時間が長ければ、それだけ居場所を突き止められる危険性が増す。これは2012年2月の状況です。今から14年も前なのにこうだったのですね。それから、ドローンは、もっと「進歩」しています。

シリア政府軍は、人々が逃げ出せないようにした上で、民間人地域を砲撃している。

メリー・コルヴィンにとって死は一瞬のことだった。砲弾はほんの2メートル先に落ちた。爆発音を聞きもしなかっただろうし、苦しまなかっただろう。メリー・コルヴィンは、残虐な行為がシリア国民に対して行なわれていることを世界に向けて語ろうと決意して行動していた。そして、その究極的な代償を支払った。

戦争特派員って、いやはや大変な状況に身を置くのですね・・・。読みながら身が震えました。

(2025年10月刊。3520円)

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