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北朝鮮の軍事外交戦略

カテゴリー:朝鮮

(霧山昴) 

著者 平岩俊司 、 出版 インターナショナル新書

本のオビには、なぜトランプは北朝鮮を攻撃しないのか?とあります。

イランを攻撃したのに、トランプは北朝鮮を攻撃しようとしないどころか、あわよくば金正恩と会談しようと画策しているようです。

何がイランと違うのか……。理由は二つ。その一は、韓国が反対していること。北朝鮮の長距離砲の射程にソウルが入っていて、24時間は撃ち続ける戦闘能力がある。しかも、アメリカの基地も砲撃される危険がある。その二は、中国が参戦してくる危険があること。さらには、北朝鮮の核ミサイル能力が向上したこともある。

北朝鮮の体制崩壊は間もなくという見方がありましたが、今やそれは遠のいています。

むしろ、最高指導者が代わって政権交代しても、それを支える官僚機構が強靭(きょうじん)であることが注目されている。想像をはるかに上回る強力な体制だということです。

トランプと金正恩は既に何度も首脳会談をしていて、25通もの書簡を交わしている。米朝間のチャンネルはすでに形成されている。ひょっとしたら、韓国よりも緊密なチャンネルになっているのかもしれません。

これまで、北朝鮮について、国際社会は三つの過小評価があった。その一は、北朝鮮の独裁体制は間もなく崩壊するだろうという見方。しかし、今も体制が動揺しているようには見えない。その二は、北朝鮮の技術力の過小評価。アメリカ本土まで届く核ミサイルを持てるはずがないとみられていたが、今やそれを持っている。その三は、北朝鮮の「覚悟」、プライドについての甘い見方。

北朝鮮は、2017年5月に「火星12」発射実験、7月に「火星14」等の発射実験をして、核ミサイル開発に拍車をかけた。そして、9月3日、通算6回目の核実験を行った。

北朝鮮は、ロシアの対ウクライナ侵略戦争に加担し、数万人の兵士を送り、最前線で戦闘に従事しています。その見返りは大きいようです。

北朝鮮という国は決して見過ごすことの出来ない国として注視する必要があります。それにしても、かつてはJアラートが頻繁に鳴っていましたが、ここのところ鳴りません。国民の思想動員として必要なくなったのでしょうか。そうとも思えませんが…。

(2026年6月刊。1122円)

 9月12日(土)、天神の映画館でチュニジア・フランス映画「ヒンド・ラジャブの声」をみました。とても刺激的な内容で、夜、布団に入ったとき少女の声を思い出すと涙が出てきてとまりませんでした。

 イスラエル軍が侵攻したガザ地区で起きたことです。市民の乗る普通の車がイスラエル軍に銃撃され、おじさん・おばさんたちが死亡するなか、6歳の少女がひとり残されます。ケータイでドイツに住むおじさんと連絡がつき、おじさんはヨルダンにある赤・新月社(赤十字)に通報しました。赤新月社のスタッフは少女と電話で話し、救出活動を試みます。

 救急車が出動すれば、わずか8分のところですが、イスラエル軍の許可なく出動すると、銃撃されてしまいます。既に20人以上もの救急隊員が死亡しているのです。なんとか2時間以上もかかって許可を得て救急車が出動。あと少しで少女のところへたどり着くと思ったところ、イスラエル軍は救急車を戦車砲で撃ち、少女も殺されてしまいます。

 少女の生の声が、映画でそのまま使われています。イスラエル軍のひどさを実感しました。

知って得する、人間の体内時計のはなし

カテゴリー:人間

(霧山昴) 

著者 中村孝博 、 出版 中公新書ラクレ

人間は時計を見なくても、太陽を見なくても、自分の中で一日のリズムをつくりだしてしまう。

リズムとは、「生命があるから生まれる」のではなく、「条件がそろえば自然に立ち上がる現象」。エネルギーの流れがあり、非平衡状態が保たれると、化学反応であっても、物質の運動であっても、時間構造が生まれる。

女性の体と生活は、男性とは明らかに異なるリズムの中で成り立っている。体内時計にも性差がある。

女性の体内リズムは、男性に比べてはるかにダイナミックで、変化に富んでいる。女性の脳は複雑な処理を行うため、男性よりも20分間だけ長い睡眠が必要。

時差ボケの本質は、「体内時計の混乱」。

体内時計は、気合いや努力では動かない。

サマータイムの切り替え直後には、交通事故の増加、急な心筋梗塞の増加、うつ病の受診率の上昇が報告されている。夜

勤回数の多い女性には乳がんリスクが高く、男性のシフトワーカーは前立腺ガンのリスクが上昇する可能性がある。

体内時計の本質は、次に何が起きるのかを予測し、それに先立って体の状態を整えるための仕組み。

体内時計というのは、便利だから後で付け足された機能ではない。それは、地球という、常に周期的に変動する環境で生き残るために、生命が必然的に獲得してきた、根源的な仕組み。

大変に分かりやすい体内時計の話でした。

(2026年7月刊。1050円+税)

教養としての量子コンピュータ

カテゴリー:社会

(霧山昴) 

著者 藤井啓祐 、 出版 ダイヤモンド社

インターネットの仕組みも分かっていない私なので、量子コンピュータのことが分かるはずもありません。でも、怖いもの見たさ、ではありませんが、ちょっとでも量子コンピュータのことが分かったらいいなと思って読んでみました。そうなんです。何事にも挑戦してみるのが肝心なのですよね。

量子コンピュータは世界で多数稼働していて、国産の量子コンピュータも、2023年以降、複数が稼働している。海外製の量子コンピュータも含めると、日本はアメリカに次いで世界で2番目に多種多様な量子コンピュータが存在している。

量子コンピュータは単なる速い計算機ではない。それは、自然を深く理解し、人類を次の地平へと押し上げる新しい望遠鏡であり、顕微鏡でもある。

粒子と波の性質をあわせ持っているものを量子という。この二重性を基盤としたミクロの世界を統一的に説明する自然界のもっとも基本的な物理法則が量子力学。

温度がある物質は電磁波を放射している。ヒトの体からも、目に見えないほど長い波長の電磁波、遠赤外線が放出されている。これを感知するのが、サーモカメラ。

ミクロの世界では、粒子はある座標の一点に存在するのではなく、空間に広がりをもった「重ね合わせ状態」として存在する。

量子力学を理解するうえで、「ランダム」という考え方は欠かせない。ランダムとは、どのような結果になるか、まったく予測ができないという状況。

アト秒レーザーとは、数十から数百アト秒という、ほんの一瞬の光をつくる技術で、ミクロな世界の変化を「観る」もの。

アトは、100京分の1。アト秒間に光が進む距離は、0.3ナノ(10億分の1)メートル。

アト秒レーザーの最大の特徴は、超高速の現象を観測できること。

ミクロの世界を支配する量子力学は、状態を元どおりに戻すことが常に可能である。

量子力学では、0とも1とも決まっていない、重ね合わせ状態が存在している。0と1を同時に乗せて、それらの可能性を連続的に変化させることができるという特徴が、量子コンピュータの計算速度を格段に上げている。

量子コンピュータが本当の力を発揮するのは、複数の量子ビットを組み合わせて使ったとき。

現在の量子コンピュータの性能では、とうてい暗号解読はできない。

このところ、スーパーコンピュータの開発に勢いがあるのは中国。2022年のスーパーコンピュータのランキングトップ500には、中国のスーパーコンピュータが173台もランクインしている。アメリカの127台をこえて、最多だ。中国はアメリカに並ぶスパコン所有国になると同時に、量子コンピュータにおいても国をあげた巨額の投資をし、アメリカを追い抜く勢いで研究を進めている。

現在の主流である超伝導型量子コンピュータの心臓部となる超伝導量子ビットは日本で生まれた。

量子コンピュータは、汎用品を買ってきて組み立てたら動くというものではない。チップの設計から組み立て、制御法、ソフトウェアなど、すべてを一からつくり上げなければならない。

冷却中性原子方式では、真空状態の中で原子を捕まえて、それを量子ビットとして使う。電気的に中性の原子を光によって捕まえている。光方式は、光そのものが量子ビットになり、計算に光のかたまりを使う。

主な問題は、宇宙線がチップに当たり、一時的に誤作動(ソフトエラー)を起こす。いやはや、こうなると、さっぱり分かりません。まったくお手上げです。

アナログの側面を持ちつつ、デジタルでもあるというのが、量子コンピュータの特徴。

分からないなりに「教養」を身につけようと、最後まで読んでみました。

(2026年1月刊。1980円)

島津四兄弟の九州統一戦

カテゴリー:日本史(戦国)

(霧山昴) 

著者 新名一仁 、 出版 志学社

戦国時代の島津四兄弟は仲が良かったとか、固く結束していたというイメージが広く流布しているが、本当はどうだったのかを堅実に検証している本です。

島津四兄弟とは、義久・義弘・歳久・家久。似た名まえなのでつい混同してしまいそうになります。

著者は、あとがきで、まとめとして次のようにまとめています。なるほど。と思いました。

わがままで個性的な兄弟が、他の大名家のように、ときに殺し合いや家中分裂に至るような深刻な対立に至らず、曲がりなりにも九州統一するまで至ったのは、ひとえに長兄義久の懐の広さとバランス感覚による。そして、それは義久が太守ではあるものの絶対的権力を持たず、老中らの合議による政策決定を探りつつ、島津家としての方向性を決めていくという政治体制が少なからず影響していた。

島津四兄弟のうち2人は、豊臣秀吉の九州進攻のもとに、家久がまず急死。ルイス・フロイスの記録には、豊臣秀長が毒殺したとしている。もう一人の歳久は、あくまで秀吉に本気で抵抗しようとしたので、義久から自害を迫られ、その首は京都まで運ばれて一条戻橋にさらされた。

義久は慶長16(1611)年まで生き(79歳)、義弘は元和5(1619)年まで生きた(85歳)。

関ヶ原の戦い(1600年)のとき、敵中突破をかけて辛じて生きのびた島津義弘たちを描いた『島津奔る(はしる)』(池宮彰一郎、新潮社)は手に汗握る面白さでした。

著者は、島津氏が九州内で無敵であったかのようなイメージは、事実に反しているとしています。たしかに、大友氏との耳川合戦や龍造寺隆信との沖田畷(おきたなわ)の戦いといった、節目(ふしめ)の主要な合戦で、島津氏は勝利している。しかし、用意周到な作戦によって勝利したのは水俣城攻めぐらいで、ほかは敵の失策やら偶然などで、運良く勝利したもの。戦略のまずさから成果を上げられなかった肥後進攻、筑前進攻もある。

太守義久は病気がちであり、自分に代わる前線で差配できる指揮官がいないことを嘆いていた。

義弘との「両殿」体制は、義弘が豊後進攻に固執したり、うまく機能しなかった。たとえば、秀吉の大軍による九州進攻に対して、義久は勝ち目なしと判断して、早々と剃髪して降伏したが、義弘のほうは抵抗しようとした。太守義久が降伏したからといって、家中ばらばらの降伏とならないのが島津家らしいところ。

ところで、秀吉は島津征伐の九州進攻にあたって、島津家を本気で殲滅するつもりだったようです。豊後まで進攻してきた島津勢を「かけ留(どめ)」しておいて、秀吉本隊を含めた全軍の圧倒的戦力で粉砕するつもりでした。それで、自分が行くまで島津勢と決戦しないことを厳命していた。ところが、先峰軍の仙石秀久たちが島津家の「釣り」(オトリ)にうかつに乗ってしまい、結局、島津勢を逃がしてしまったのでした。

秀吉も、島津側が義久のように頭を剃って降伏してきたので、さすがに皆殺しは出来ません。そこで島津氏はなんとか生きのびることが出来たわけです。

島津四兄弟のうち、歳久と家久は京都に行ったことがありました。家久は29歳のとき、天正3年(1575年)上京日記(道中)を書いて残しています。京都から伊勢までの5ヶ月に及ぶ長旅の記録です。

義久も京都の動向を把握すべく、近衛前久らとの書状のやり取りを積極的にしていたようです。鹿児島にいながらも京の情勢はつかんでいたのでした。大変興味深い分析に満ちている本でした。

(2026年4月刊。3190円)

日米密約史

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴) 

著者 信夫隆司 、 出版 中公新書

実に腹立たしい新書です。いいえ、もちろん著者にたいして怒っているのではありません。日本政府のあまりにも卑屈な姿勢に対して怒っているのです。

つい先日、沖縄にあるアメリカ軍基地から史上最悪の化学物質であるPFASが漏出していることをアメリカが認め、日本に通告し、このことを公表していいとしたのに、日本政府はそのことをずっと隠してきた、小泉防衛大臣はPFASの発生源は明確ではないなどと嘘をついていた、このことが暴露されました。沖縄の地元紙による一大スクープですが、本土の大新聞はひっそりと報道するだけです。

PFASって、次の世代にまで重大な健康被害をもたらす最悪の化学物質なんです。日本政府は日本人がどんな健康被害を受けようが、「自己責任」だとして、何らの対策もとっていません。つまり、日本政府は日本国民を守ることはしないのです。それにもかかわらず、日本政府は「国を守る」ためと称して、トマホークをアメリカから購入し、長射程ミサイルを各地に配備しつつあります。それは、「日本国民を守るため」ではなく、「国」と軍需産業そして自分たち与党政治家を守るためなのです。

佐藤栄作首相は「非核三原則」を打ち出し、核のない沖縄返還を実現したとして、1974年12月にノーベル平和賞を受賞しました。ところが、佐藤栄作は、その前、アメリカ大使との会談で、「非核三原則なんて ナンセンスだ」と発言していたのです。

今、高市首相は、同じように「非核三原則」のうちの「持ち込み」を認める、つまり「非核三原則」は、もう止めると公然と言っています。とんでもないことです。いったい、日本に核兵器を持ち込んで、誰から何を守るというのですか...。

日本海側にはたくさんの原発(原子力発電所)があります。核兵器ではない、通常ミサイルを「決死隊」が原発に撃ち込んだら、日本はもう終わりです。

ウクライナと違って日本の周囲は海ですから、陸路を歩いて逃げることも出来ません。

アメリカにとって在日米軍基地を自由に使へること、極東戦略上、譲れないことだった。日本政府は、公式には、寄港・領海通過を含む核持ち込みを拒否してきた。しかし、実際には、核兵器をのせた船舶の日本の港への寄港をずっと黙認してきた。

つまり、アメリカ政府と日本政府は、核搭載船舶の寄港・領海通過について協議の対象外としたのです。

文書で双方が署名したというものはありません。そういうのはなく、「討論の記録」として添付書類にした。国民にバレないようにです。日本政府は文書がないものの、趣旨を徹底するため、歴代の首相や外務大臣にメモを見せて確認させている。

核兵器をのせた船舶の通過・一時寄港は一定期間内であれば、「持ち込み」にあたらないとするというのが日米政府の解釈です。

密約は短期的には摩擦を避け、柔軟な運用を可能にしたかもしれないが、その代償として否定や虚偽答弁に依存する体質を生み出す。そして、国民の政治への信頼を失わせる。

国民や国会に説明できない政策は、長期的には政治の正当性を損なうものである。

核兵器を持てば日本の平和と安全を維持できるなんて、まるで悪い幻想でしかありません。そんなのは高市政権が言いふらす、いつもの嘘です。私たち国民は高市首相に騙されないようにしなければいけません。

(2026年4月刊。1166円)

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