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アンビバレント

カテゴリー:社会

(霧山昴)

著者 鈴木エイト 、 出版 講談社

 安倍晋三元首相を殺害した山上徹也被告と4回面会した著者の労作です。

山上被告は、自分は 右翼だと言っているそうです。そして、事件当日の選挙の不在者投票では自民党と維新に投票したというのです。個人と比例で割り振って投票したそうです。

さらに、山上被告は、自分のつくった銃の威力は相当にが低いと思っていたので、命中 しても命を落とす確率は高くないと思っていたとのこと。それでも、統一協会に打撃を与えることは出来ると考えていたという。いやあ、驚きました。「安倍必殺」の信念で、手製銃を発射させたとばかり思っていました。

「自分のせいで安倍元首相を失ったことで国益を損なった。非常に大きな責任を感じています」「安倍元総理がいなくなれればならなかったのは、殺害されなければならなかったのは、間違いだったと思っております」

 山上被告にとって、安倍元総理は「いなくなればならなかった」「殺害されなければならなかった」のであり、それは安倍元総理が統一協会と関係を持ったという「間違いだった」ことになる。

つまり、山上被告が自身「熱烈に支持した偉大な政治家」である安倍元総理が、「自分のような家庭を破壊し尽くしたカルト教団と通じていた」という間違いをおかした、「統一協会と深い関係を持ち、韓鶴子 を礼賛するという国益を損なう行為をしたこと自体」が「間違い」だったと山上被告は考えているということ。

安倍氏が教団と関係を持ったことこそが「間違い」だったので、安倍氏は「許せない存在」になってしまった。

山上被告の父は京大出身で自殺、父の兄は弁護士、母は大阪市大卒の栄養士で自己破産(統一協会への献金は1億円以上。チヤホヤされて有頂天になっていた)、母方の叔母は医師。

統一協会の本分は、家族に窃盗。横領・特殊詐欺で巻き上げさせたアガリすべて上納させること。

韓鶴子の家が韓国警察に踏み込まれたとき、室内には極新しいピン札で何億円もの現金がありました。つまり、日本で統一協会が解散命令が出たあと、慌てて現金化したということです。

統一協会被害者弁護団によると、統一協会関連で回収した資産をはるかに下回る金額の被害届出しかなく、今のままでは残余財産を統一協会の後継法人に引き渡すしかないとのこと。残念です…。

大変な力作だと思いました。

(2026年5月刊。2090円)

ニッポンの大地震

カテゴリー:社会

(霧山昴)

著者 鎌田浩毅 、 出版 ちくま新書

 緊急地震速報の仕組みを知りました。

地震には P波とS波の2種類あるというのは知っていました。P波は秒速7キロメートルと早いのです。このP波を地震計が捉えたら、データを瞬時に解析して 震源やゆれの大きさを推定して、S波(秒速3キロメートルと遅いけれど、ゆれは大きい)が到達する前に知らせるのです。

この緊急地震速報は完全ではない。しかし、空振りになるより見逃しのほうが怖い。なるほどですね。たしかにとっさに対応できたほうが、突然、何の前振れもないより、よほどましだと私も思います。

日本は世界屈指の地震国。日本列島で地震の起こらない場所なんてない。だから、日本列島に原発(原子力発電所)をつくるなんて、そもそも間違っています。高市政権は「原発回帰」を打ち出していますが、狂気の沙汰としか言いようがありません。何が「強く豊かな日本をつくる」ですか。危いばかりの原発を日本全国につくっておいて、よくも言いますよね…。

日本列島の地殻変動は決して静止していない。沈静化なんて、するはずはありません。そもそも地球自体が日々、少しずつ動いているのですから…。目に見えて動いていないというだけです。

私が大学生だったころ、今からもう60年も前のことです、ウェゲナーの大陸移動説は奇説・珍説一つでした。大陸が動くなんてありえないと考えられていました。ところが、今や、プレートは浮いていて動くもの、そして沈んでいくものというのが常識です。九州は、いずれ、といっても10万年後に、真っ二つに分かれるそうです。

海洋プレートが沈み込んでいくスピードは、1年に数センチほど。

首都圏に直下型の大地震が起きるのは確実。その震源域は19ヶ所も確認されている。首都圏に住む人は、直下型大地震がいつ起きても不思議ではないと覚悟して住まないと行けない。私はそんな覚悟をしたくないので郷里の九州に戻りました。

地震は自然現象。しかし、災害は地震が引き金となって人間が起こすもの。

南海トラフ超大地震2030年から2040年の間に起きると予測されている。このときの津波の最大高さは34メートル。

著者は、いつ東日本大震災(3.11)と同規模の地震、でも被害は10倍になると警告している。西日本大震災は間違いなく近く起きると覚悟しなさいというのです。それは恐ろしいことです。

維新は大阪に副首都をもっていくと叫んでいますが、それより前に大震災対策をやるべきなのです。順番が完全に間違っています。

備えあれば憂いなしですよね。みなさん、震災対策、大丈夫ですか…。

(2026年10月刊。1155円)

山の法律相談所

カテゴリー:司法

(霧山昴)

著者 安藤雅樹 、 出版 山と溪谷社

 長野県出身で今も松本市に事務所を開設している、山登り・山歩きと温泉めぐりを趣味とする著者による、山をめぐる法律問題に明快な回答があって、大変実務に役立つ本です。

完全予約制の山小屋が増えているようです。でも、天候が急変してそこに泊まりたいのに、泊まれないのか…。でも、緊急避難であり、そこからほかへの移動は困難だし、下手すると遭難しかねないときには、山小屋は満床であっても断ることが許されないことはありうるとしています。そうですよね。営利より人命救助が優先のはずです。

富士山では弾丸登山が規制されているそうです。山頂でご来光を望むための弾丸登山なるものが流行したことから、そして事故が起き救助要請が多発したことによるものです。

登山の自由はもちろんあるわけですが、それにも限度はあるわけなので、最低限の規制は仕方ないことだとも思います。

では、入山料をとるのは合法なのか…。法律によって入山料をとること自体は認められています。でも、任意であって、義務ではありません。ところが、条例で義務化されているところがあります。山梨、静岡の両県では、4000円です。

ツアー登山のとき、「主催者に一切責任を問わない」という誓約書にサインすることが求められますが、果たして有効なものでしょうか…。消費者契約法によって、一切責任を主催者に問えないというのは無効になります。でも、すべての内容が無効になるとは限りません。

岩場にある鎖(くさり)が切れて転落したとき、誰かに責任追及できるのか…。その鎖が地方公共団体などが設置していたら、安全性の確保が足りなかったとして、損害賠償請求が認められます。ただし、登山者にも配慮が足りなかったとして、4~6割の過失相殺が多いようです。

ツアー登山で遭難する事故にあったときは…。主催者の会社に責任追及することができます。主催者が登山サークルのような任意団体だと、責任があったとしても確実に賠償を得られるかどうかは不明です。

遭難して救助のヘリコプターの費用はどれくらいか…。この本によるとヘリコプター利用のときは、1時間で10万円ほどだそうです。

いやあ、山をめぐる法律問題って、思った以上にいろんなことがありうるのですね。大変勉強になりました。山をめぐる法律問題についての絶好の実務的手引書です。

(2026年9月刊。980円)

恋する武士

カテゴリー:日本史(鎌倉)

(霧山昴)

著者 関 幸彦 、 出版 講談社学術文庫

藤原保昌は藤原道長・頼通の二代に仕え、「都の武者」として知られ、丹後国司となった。『和泉式部日記』で名高い和泉式部は、保昌の妻となっている。式部(35歳)が道長の娘彰子のもとに出仕していたころ、保昌(52歳)との出会いがあった。和泉式部は多情多恨の女房歌人として知られる。

あらざらむこの世のほかの思ひ出に、いまひとたびの逢ふこともがな

式部の娘が小式部内侍。

大江山いく野の道の遠ければ、まだふみも見ず天の橋立

保昌は文・武両者の性格を有し、軍記作品で平安武者の原点とされる。

平安武者には、身分上昇をはかるべく摂関家に従属し、ときには政敵の暗殺をもいとわない側面を有するという共通の属性があった。

王朝武者の「兵の道」は、ときとして算術的な・ドライな世界だった。目的のためなら手段を選ばずというのは、生き抜くための「知恵」にほかならなかった。結果がすべてだった。

西行は、頼朝と同じく、武人にして歌人だった。そして、西行は恋する男でもあった。

思ひきや富士の高嶺に一夜寝て雲の上なる月をみんとは

西行が出家した原因について、『源平盛衰記』は、「恋の故」とする。

文覚上人は西行を嫌った。遁世した以上は仏道に専心すべきであって、歌道への執心は許されないと批判した。

文覚上人が出家したのは、恋慕する女性を殺してしまったことから。文覚は、恋に命をかけるほどの激情家だった。

武士出身である滝口入道(斎藤時頼)は、同じく恋ゆえに出家した。

最愛の夫が無常の道におもむいたとき、多くは後世を弔うため、妻妾も出家した。

平氏政権は、鎌倉政権と同じく、中世的な体質を有した武家政権である。

平家一門は、貴族以上に貴族らしくというのを模範とした。

義経は「恋する武士」として20余人の女性とまじわった。

曽我兄弟の仇打ちは、象徴的な事件だった。

有力御家人の安達景盛の恋女房を将軍頼家が横取りし、これを知った景盛が激昂、攻撃しようとした。

中世は自力救済がすべてだった。

北条時政は妻の牧ノ方と夫唱婦随の関係にあったが、これが時政晩年に政子・義時との関係を悪化させ、自身の更迭を招いた。

頼朝が挙兵したとき、時政は43歳。頼朝死後、遠江守に就任したのが63歳、頼家更迭(比企事件)のとき66歳。2年後に時政は退場。

鎌倉武士の世界を、色恋の観点から見るという視点が、とても新鮮で面白く読みました。

(2025年11月刊。1100円)

闇の広告史

カテゴリー:社会

(霧山昴)

著者 亀田真澄 、 出版 朝日新書

私はテレビを見ませんのでコマーシャルも、もちろん見ません。それで困ることがあります。依頼者との雑談のとき、「ほら、今テレビで紹介しているあれですよ」と言われたら、どうしようもありません。笑ってごまかして逃げるばかりです。

ところが、ネットは毎日みていますので、そのときコマーシャルが出てきます。もちろん、すぐに消すのですが、それでも消えるまでの一瞬は広告を見せつけられます。

広告は人間の弱さをまた標的にしている、社会的分断をあおりたてている。

広告は、私たちの生き甲斐と生き辛さの両方、そして現代社会のさまざまな問題を生み出している。

この本の前半では、アメリカのエドワード・ルイス・バーネイズというユダヤ人実業家を取り上げています。かの有名な精神分析学のジークムント・フロイトの甥であり、親密に交際していました。

バーネイズは、日常に入り込んで、近さや親しみという温かい感情を与える宣伝を始めた。

バーネイズは、精神分析が広告において「使える」ものだと気がついた。ある商品と無意識的な欲求を結びつけたら、その商品は無意識の欲求の「翻訳」になり得るので、人々は欲求を充足させるために商品を購入すると考えた。

無意識に働きかけて、集団心理をあおることによって世論を操作し、人々の日常生活を変える。

新聞に取り上げさせる。それが批判的であろうと好意的であろうと、大差はない。

「三時のおやつは文明堂」「精工舎の時計が7時をお知らせします」「止められない、止まらない、カッパエビセン」「キンチョーの夏・・・」。いろいろのコマーシャルソングは今もしっかり頭に叩き込まれていて、忘れることなんて出来ません。

プロパガンダは、そもそもは思想宣伝という意味。思想宣伝は洗脳とは違う。

人は信じたいことを信じてしまう。これを「確証バイアス」という。

コカ・コーラは戦争との結びつきの強い飲み物。というのも、コカ・コーラは、南北戦争で傷ついた兵士の鎮痛剤としてつくられた薬をもとにしている。モルヒネの代替品として、コカの葉、コランキの種とワインを混ぜてつくられた薬が出発点。そして戦地の兵士たちに飲ませた。私はコカ・コーラは健康に良くないと考え絶対に飲みません。

フェイスブック(FB)は、私も毎日みています。そこでは、どれくらいのページビュー(PV)があるかというより、「いいね」の数が問題とされているとのこと。オンラインの「口コミ」を利用した広告効果が期待されているということです。

自動再生機能は、人の持っている弱い部分を悪用することで、より長い時間プラットフォームに滞在させるとする仕組み。たしかに、FBをみていて、ユーチューブの映像をみていると、次から次に面白そうな画像が登場してきて、時間があっという間に去ってしまいます。

先日の沖縄県知事選挙では自民党が推した候補が革新の現職知事を圧倒しましたが、X(旧ツイッター)の投稿の9割が沖縄県外からの投稿でした。兵庫県知事選挙の「斉藤現象」が再現したようなものです。

20代の男性が「SNSで発信していたら、アンチコメントが来て、政治は怖いと思っていたが、実際に古謝さんに会ってみると、SNSとは全然違った」と話したとのこと。兵庫県の「斉藤現象」そのものです。

「私のヤナちゃん」と高市首相が持ち上げる農水大臣は、自分の選挙区内の反対派の町長のいる町の予算を大幅カットしましたが、沖縄でも自民党推薦候補が勝ったとたん、沖縄県の特別予算が大幅増となりました。露骨です。要はお金で買うもの、買えるもの、という醜い現実があります。

先ほどの20代の男性に、もう一度よく考えてほしいと思います。本当に、そんな政治でいいのですか・・・・・・。アメリカ軍基地をずっと今のままにしておいてよいのですか・・・・・・。そんな政治は変えましょうよ。

(2026年9月刊。1320円)

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