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アウシュヴィッツ脱出

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 ジョナサン・フリードランド 、 出版 NHK出版
 アウシュヴィッツ絶滅収容所をめぐる本は何十冊も読んでいますが、若いユダヤ人収容者が2人そろって脱出に成功したという話を読むのは初めてです。志願して収容所に入って、そこから脱出した人(ヤン・カルスキ)の本は読んだことがありますし、このコーナーでも紹介しています。
 その一人は、ルドルフ・ウルバ。19歳のとき、アウシュヴィッツ収容所から脱出した。本名はヴァルター・ローゼンベルク。脱出したあと、ユダヤ人らしくない名前に変えたのです。もう一人の相棒のフレートは25歳。どちらも若いからこそ、脱出できたのです。
 アウシュヴィッツ収容所から脱出するとき、まずは木材の積まれていたところの地下空洞で3日3晩、じっと動かなかった。犬よけに効果があるタバコの臭いを周辺にまいておく。まだ、ここは収容所の敷地内だが、通電フェンスの外側ではある。
ヴァルターが収容所に入れられたのは17歳のとき。若くて健康で、何ヶ国語も語学ができた。17歳のヴァルターは頭の回転が速かった。順応期間がろくにない強制収容所では、それは不可の資質。
強制収容所で人が死ぬのには二つのパターンがある。撃ち殺されるか、殴り殺されるか。そして、生きる意欲を失って死んでいく人々、ムズルマン(回教徒)と呼ばれる、人がいる。
 脱出するには準備がすべて。計画が必要。ヴァルターは、常に脱走について考え、絶対に脱走すると決意していた。ただし、正しい方法で…。ヴァルターは、すばやく相手を値踏みする能力を身につけていた。ここでは人を見る目は必須だ。
 収容所では、その日を生きのびても、死者や死にかけている者とは紙一重だった。
 「カナダ」と呼ばれる区画があった。このカナダの語源は、「中に何か(貴重品が)ないか?」を「カン・エーア・ダ」というドイツ語から来ているという説がある。また、北米のカナダは豊かな神話の土地だからという説もある。
 収容所に連行されてきたユダヤ人たちは引っ越しだと思わされていた。なので鍋やフライパンまで持っていた。そして、必要なときに使うため、歯磨きチューブにダイヤモンドを入れていた。
 カナダには、宝石や貴族品・現金があふれていた。毎日、ドイツ国内に向けて貨物列車が運んでいった。月曜日は、高品質の男性用シャツ。火曜日は毛皮のコート。水曜日は子ども服。そして、日用品は必要に応じて修理されたあと、前線に送られた。
 ナチスにとって収容所は大きなビジネスだった。死者の頭髪をメリって、紙の毛から布地がつくられ、ドイツの工場で爆弾の遅延装置として使用された。そして1942年から44年までに、6トンの金歯がドイツ帝国銀行の金庫に預けられた。収容所の基本通貨は食料で、現金に価値はなかった。カナダでは、親衛隊員と被収容者との間に、持ちつ持たれつの関係が築かれた。
 アウシュヴィッツにも地下組織があった。しかし、それは一種の互助会であり、メンバーだけに安定をもたらす団体。レジスタンスは、収容所を人間らしい場所としようとし、いくらかは成功していた。脱走は常軌を逸している。いわば自殺行為だ。
 強制収容所では他人を信じてはいけない。脱走に成功したあと、二人は運良く、自分たちの体験と見聞したことを報告書にまとめてもらった。これで、ナチスのユダヤ人絶滅計画の進行はストップするはずだった。まだ捕っていないユダヤ人はパニックから騒動を起こして、収容所をストップさせるはずだった。しかし、そうはならなかった。
 イギリスの新聞に真相を伝える話が載った。でも…。アメリカのルーズヴェルト大統領は報告書を読んでも何もしなかった。ウィンストン・チャーチルも同じ。連合軍の爆撃機は収容所のガス室・人間焼却室を爆撃しなかったし、収容所につながる線路も爆破しなかった。
それでも脱出した二人によってハンガリーの20万人のユダヤ人の命が救われた。
二人による報告書の内容があまりにおぞましかったので、にわかに信じてもらえなかった。
 「ユダヤ人は頭がいい。子どもの手を引いて、ガス室行きの列車に乗り込むなんて、信じられない」
「死の工場」の存在を信じるのは、容易ではなかった。人間を殺すことを目的として建設され、24時間稼働する施設。かつて、こんな場所が存在したことはなかった。人間の経験の埒外(らちがい)にあり、想像力が及ばないものだった。
 「どうして、おまえは、そんな馬鹿なことを信じられるのか。ありえない」
 耳にしたことを信じようとはしないというのが大方の反応だった。目の前の事実を否定しようとする。
 「軍が一般市民を殺すなんて、筋が通らない。本当のはずがない」
 情報は必要だが、それだけでは十分ではない。情報を信じさせなくてはならないのだ。
 だから、今でもアウシュヴィッツの虐殺なんて嘘だ、南京大虐殺なんてなかったと堂々と言って、それを信じてしまう人がいるんですよね…。恐ろしい、本当の話です。
なぜ脱出した二人が有名にならなかったのか…。それはユダヤ人協議会がユダヤ人虐殺に手を貸したとして二人が厳しく批判したから。なかなか難しいところです。
身震いしながら一心に読みふけってしまいました。
(2025年4月刊。2970円)
 日本国憲法は、第3章に国民の基本的人権を守るために、たくさんの条文を並べています。憲法というと、なんだか、私たちの日常生活とは縁がないと思われがちですが、決してそうではありません。たとえば、私がこのコーナーに私の意見をいろいろ書いていますが、政府を批判しても逮捕されることがないのは表現の自由が憲法に定められているからです。参政党の新憲法構想案には、私たちにとって大切な基本的人権のほとんどが、バッサリ削除されています。
 参政党にまかせたら、日本は真っ暗闇の社会になってしまいます。

ウィーブが日本を救う

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 ノア・スミス 、 出版 日経BP
 日本の停滞は2008年に始まった。2008年こそ転換点だ。日本の実質賃金は1996年から、ずっと下がりっぱなし。超大企業の内部留保金はずっとずっと増えているのですから、賃金は増やせるはずなのです。政府も連合も、いったい何をしているんですか…。
 この本は、日本には発展途上国としての強みと利点があるとしています。かつて、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」だと言って、浮かれている一部の日本人がいましたが、今や日本を一流国だと考えている日本人がどれだけいるでしょうか…。
 日本国内の市場は縮小している。だって、実質賃金が下がれば、購買意欲が減退するのは必至です。そして、日本の生産性は低水準。だって、非正規社員をどんどん増やしていけば、企業の生産性が高まるはずもないでしょう。
 ウィーブ(weeb)というコトバを私は知りませんでした。Weeaboo(ウィーアブー)を短縮したコトバです。日本文化に首ったけの非日本人を指す。かつては、過剰に日本に執心している人たちを指す侮蔑語だったが、今では侮蔑語としては使われていない(そうです)。かつてOTAKU(オタク)と呼ばれていたのが、ウィーブと呼ばれるようになった(とのことです)。
 日本政府に欠けている政策が2つある。その一は、より良い福祉国家への政策。日本の社会福祉支出は中程度の水準でしかない。そうですよね。生活保護の給付を政府(厚労者)が合理的根拠なく切り下げたことに対して、あの最高裁も是正を命じたほどです。そして、自民・公明・維新・そして国民民主は医療制度の切り捨てを公約にしています。ひどすぎます。国民皆保険をやめて、アメリカのように金持ちだけが助かる保険会社本位のシステムにしたいようです。
著者は、もう一つとして貧困緩和をあげています。いやあ、鋭い指摘です。まったく同感です。誰もが安心して生活できるような社会にするためには生活保護の拡充が必要だと思います。生活が苦しいときに保護を受けるのは、市民として当然の権利なのです。参政党やら国民民主が外国人は生活保護を受けてはいけないようなことを公約に掲げていますが、排外主義ですし、根本的に間違っています。
この本は、日本は治安はいいし、食べものはおいしいし、みんなが移り住みたくなる国だとベタほめしていますが、その反面、日本の生活水準は低すぎる、日本人は今、静かに隠れた貧困に苦しんでいると、きちんとした指摘もしています。見るところは見ているのです。日本の相対的貧困率は、ヨーロッパよりも高い。
 購買力平価での日本の1人あたりGDPは、アメリカの64%、フランスの87%、韓国の92%と、先進国では下の方に位置している。それでも、日本では薬物乱用、10代の妊娠、犯罪は極めて少ない。生活水準が年々低下し続け、労働時間がのび続けているように、静かに犠牲が払われている。
 日本は、それほど幸せでも、気楽でもない国に感じられる。まったく、そのとおりです。
東京をふくむ首都圏には16万軒のレストランがある。パリには1万3千軒、ニューヨーク都市圏には2万5千軒。いやあ、そんなに多くの飲食店があるのですか…、知りませんでした。
 雑居ビルは、いかにも雑念としていて、日本特有の状況ですが、著者は、すごく好意的です。まあ、ともかく日本だと、ほとんどの店で安心して飲み食いできますよね(たまに、ボッタクリの店があり、気をつけないといけないことはありますが…)。
 日本の良さを生かしつつ、さらに貧困対策、そして福祉政策を充実させたいものです。それにしても、すぐに賃金の大幅アップが必要です。大企業の内部留保の巨大さには信じられない思いです。共産党が消費税をすぐ5%に下げること、その財源として、この内部留保金に目をつけているのに大賛成です。赤字国債なんかに頼ってはいけません。
(2025年3月刊。2860円)
参政党は日本人の納めた税金は日本のために使えと主張しています。でも、日本に住んで税金を納めているのは日本人だけではありません。多くの外国人が働いて、税金を負担しています。
 外国人の犯罪が多いということはありませんし、外国人が生活保護をたくさん受けているので、日本人が困っているという事実もありません。生活が苦しくなったら、日本人だろうと外国人だろうと生活保護を受けて生活できるようにするのは当然のことです。
 参政党の主張は、前提からして大きな間違いです。

桐生市事件

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 小林 美穂子・小松田 健一 、 出版 地平社
 こんな不名誉なことで、オラが街の名前が全国に知れ渡るなんて、ちょっと恥ずかしい限りですよね。いえ、私とは何の関わりもありません。
 群馬県桐生市の生活保護行政は常軌を逸しています。だって、生活保護を受けている人に、月7万円をそのまま渡さず、毎日1000円だけ手渡すというんです。保護課の職員って、そんなにヒマなんでしょうか…(ヒマなはずはありません)。保護受給者の更生を指導・監督するためというんですが、これではあまりに人格を無視しています。 
 保護受給者の母子世帯は2011年度に27世帯だったのが、2021年度は、わずか2世帯。これまた信じられません。桐生市の保護利用者は2011年度の1163人が、2022年度は半分の547人。 生活保護率は全国的に増加傾向にあるのに、桐生市では下降の一途をたどっている。今どき、そんなはずはありませんよね。
 桐生市の保護課には就労支援相談員がいて、うち4人は警察官OB。しかも、その元警察官について、市は「マル暴経験者」を希望しているとのこと。いやはや、なんということでしょう。
 この警察官OBが新規の面談に同席し、家庭訪問にも同行するというのです。怖い話です。これでは、まるで保護受給者は元組員ばかりだといわんばかりではありませんか…。桐生市の予断と偏見はきわだっています。
 桐生市では、生活保護を申請しても認められるのは半分以下でしかない。また、保護の却下・取下げ率が他市に比べてズバぬけて多い。辞退廃止数は年に12件、全体66件の18%を占める。他市では3%ほどなのに…。
 ところで、桐生市といったら、昔は繊維産業で栄えていました。その後は、パチンコ台メーカーの「平和」や「西陣」でも有名です。でも、パチンコも、以前ほどではなくなりました。年金支給日しか店内のにぎわいはなく、若者がパチンコをしなくなりました。ネットなどのゲームがありますから、無理もありません。
 桐生市の保護課の職員は大変だったんじゃないかと想像します。ともかく保護受給者を減らすというのを至上命令としていたのでしょう。これは、市長や福祉部長・課長の体質によるのですよね、きっと。北九州市でも同じようなことがありました。「おにぎり食べたい」と餓死した人が出た事件です。厚労省本省から北九州市に乗り込んできた幹部が陣頭指揮をとって水際作戦を敢行していたと聞きました。
 こんな福祉の現場で働いていたら、ストレスがたまって大変でしょう。だって目の前にいる人の生活や人権を守るのではなく、切り捨てようというのですから、仕事に喜びを感じられるわけがありません。あとは、「サド的な喜び」を感じるのかもしれませんが、それは人間性の喪失と紙一重でしょう。
これだけ騒がれたのですから、桐生市の生活保護行政が抜本的に改善されていることをひたすら願います。
 生活が苦しくなったとき、生活保護を受けるのは憲法で認められた権利なのです。堂々と胸を張って申請しましょう。そして、市も速やかに受理して支給開始してほしいと思います。
(2025年5月刊。1980円)
 参政党の新憲法構想案の「国民」にも、本当に驚かされます。国民は、父または母が日本人であること、日本語を母国語とすること、日本を大切にする心を有することを要件として法律で定めるというのです。
 いやはや信じられません。「日本を大切にする心」を持っているかどうか、いったい誰が、そうやって判定するというのでしょうか。秋葉原事件のような無差別殺傷事件を起こした人は、今の金持ちだけが優遇されるような日本社会に恨みを持っていたのだと思います。残念ながら、きっと少なくないことでしょう。
 そんな人をも優しく包摂して、犯罪に走らないようにすることが求められていると思いますが、参政党は、そんな人は国外に追放してしまえとでもいうのでしょうか。怖すぎる発想です。

脂肪と人類

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 イエンヌ・ダムベリ 、 出版 新潮選書
 私たち人間には脂肪が必要だ。原始に生きた祖先たちは肉を目当てに狩りをしていたのではない。求めていたのは脂肪だ。どろりとした骨髄をすすった。脂肪は生きるに欠かせない存在。生命そのものだった。今でも脂肪は生命そのものだ。
2017年の秋ロンドン下水道に130トンという巨大な脂肪の山(塊)が出現した。下水システムを詰まらせたもの。長さ250メートル、重さ130トン。清掃員8人が1日9時間、9週間かけて退治した。
 このロンドン下水道に脂肪の山がそびえ立ったのは、イギリスの成人がウェットティッシュで手をふきはじめたから。トイレットペーパーなら下水でどろどろになって流れていく。ところがウェットティッシュは、下水に溶けないので絡(から)みあって長い鎖(くさり)を形成する。シンクから下りてきた熱い油が鎖状のウェットティッシュに出会うと、油が冷えて固まり、ウェットティッシュが鉄筋のようになる。この130トンという巨大なファットバーグの62%は脂肪で、19%が灰とチリ、10%が水で、残る9%にウェットティッシュが含まれている。
 大腿骨のような長い管状の骨に入っているのは85%は脂肪の黄色い骨髄。北極圏のイヌイットは半年間、食べるのは肉だけ。正確に言うと脂肪だけ。イヌイットの食事は「ケトン食」。
炭水化物があれば、身体はグルコース、つまり血糖を生成して脳にエネルギーを供給するが、炭水化物が欠乏すると、別のプロセスが起動する。肝臓が脂肪をケトン体に変換して脳の燃料として使うのだ。
 脂肪は、私たち人間の身体が長いあいだエネルギーを蓄えられる唯一の物質。炭水化物は48時間で燃焼されてしまうけれど、脂肪なら1.2ヶ月はもつ。だから重要だった。
食品に含まれる脂肪には、主として3つの形態がある。トリグリセリド(中性脂肪)、リン脂質、ステロールだ。
 ケトン体は、肝臓の脂肪から生成され、全身とくに脳の燃料に使われる。それ以外に脳がエネルギーとして使えるのは血糖(グルコース)だけ。
ケントダイエットをすると、体内に備蓄された脂肪が燃焼しやすくなり、おかげで体重が減る。それに血糖値を低いまま安定させてくれるので、空腹感や気分に影響されにくくなり、インスリン値も下がる。
 脂肪は身体におけるもっとも強力な燃料だ。脂肪は身体の中で舌や胃、そして膵臓(すいぞう)から十二指腸で分泌されるリパーゼという酵素によって分解される。十二指腸は小腸の最初の部分で、ここで行われる活動が脂肪の吸収に重要になってくる。
 人生は必ずしも良いことばかりではないが、自分たちが食べるものは、なるべく良いものであってほしい。
 これは、この本の最後に書かれた文章です。まったく、そのとおりです。ですから、お米だって輸入米なんかではなく、地産地消。地元でつくられた、なるべく低農薬の安心して食べられるものを食べたいです。
 「小泉劇場」なんかに惑わされることなく、日本の農業(酪農を含め)をきちんと守り、減反をやめて食料自給率を高めるため、農家に生産奨励金を付与して、みんなが安心して食べられるお米と野菜をつくって双方が生活できる。そんな社会にしたいものです。
(2025年1月刊。2200円)
 参政党は「新日本憲法」(構想案)というのを公表しています。読んで腰を抜かしてしまいました。まるで戦前の明治憲法です。
 国民主権ではありません。第1条に日本は天皇が統治する国だとしています。天皇主権なのです。信じられません。思わず目を疑いました。
 そして、基本的人権がほとんど書かれていません。権利には義務がともなう、公益優先だとしています。
 こんな時代錯誤の参政党に国会議員の資格はありません。

ままならぬ顔、もどかしい身体

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 山口 真美 、 出版 東京大学出版会
 人は外見を区別する生物であり、この区別は意識下で起こるので、たちが悪い。
 女性は容姿が良いことが収入で有利に働き、男性は容姿が悪いことが収入につき不利に働く。
 小学2年生の男子が好きな色は圧倒的に金色で、女子のほうは水色。ピンクを嫌いな色にあげた女子が19%もいる。赤ちゃんは金色を好む。
サルは攻撃をしかける相手には唇を丸くして突き出し、逆に相手に従いますという弱気な表情では歯を見せる。この歯を見せる表情が人間の微笑(ほほえ)みの起源。
 リカちゃん人形とバービー人形。幼く従順そうな風貌の日本のリカちゃん人形に対して、欧米のバービー人形は、成長してしっかりと自分を持っていそうな容姿。
 アメリカでは、子どもっぽい顔はリーダーにはふさわしくないと判断される。大人っぽい顔の人は意図的な罪を犯すのに対して、子どもっぽい顔の人は不慮の罪を犯したと判断される傾向がある。
 欧米人にとってマスクをしている人は不快にうつる。日本人にとってのサングラスと同じだ。欧米人は、相手の表情をよみとるのに口元を見る。東アジア人は目元に注目する。これは生後7ヶ月で獲得する。
マスクをした顔は、マスクをしていない顔よりも魅力的に感じる。これは、マスクで隠した部分を平均額で補って見ていることによる。
 私は、初対面の人から法律相談を受けるとき、マスクをしている人に対しては何度もお茶を飲むように勧め、素顔を拝見するように心がけています。最後までマスクを外さない人は、心を開かなかった人として、もう一歩踏み込んでアドバイスすることはしません。いわばお座なりの対応をして、こちらの足元がすくわれないようにします。
 人間は、1時間かけて知り合いの顔を思い出せるだけ思い出すと、平均500人もの知り合いを記憶している。さらに、有名人の顔だとなんと4240人もの顔を知っているという実験結果がある。うひゃあ、すごい人数です。
高校のクラスメイトの顔は25年後も正確に覚えている。スーパーレコグナイザー。顧客の名前や職業をすべて頭に入れている高級ホテルのホテルマン。何十人もの犯人の顔を写真を眺めて駅の改札口に立って犯人を見つける「見当たり捜査員。顔を見る能力は振れ幅が大きい。
弁護士である私にとって、前に見たことのある人だとはすぐ思い出せても、その人の名前までは思い出せないことがほとんどです。
 全身ガンになって(あとでステージⅠと判明)、手術をし、抗ガン剤を投与され、それから7年たち、今日も元気に活躍している、心理学者である著者が自分の体験を踏まえつつ、顔と身体について考察した、とても興味深い本です。
(2025年4月刊。2420円)
 精神科の病院にしばらく入院していた人が、インドネシア人の看護師がいて、とても優しくしてくれましたと話してくれました。
 私の知っている病院では、介護士不足を埋めるため、インドネシア人に働いてもらうようにしているとのことです。
 参政党は「日本人ファースト」といって、外国人を排斥しようとしていますが、日本は、今、外国人労働に頼らざるをえなくなってしまいます。いたずらに外国人はダメだというのではなく、日本に住む、すべての人が安心して仲良く生活できるようにしたいものです。

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