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カテゴリー: 中近東

タリバンの世界

カテゴリー:中近東

(霧山昴) 

著者 川上珠実 、 出版 毎日新聞出版

いまアフガニスタンを支配しているのはタリバン。アメリカは20年間も、アフガニスタンを支配しようとしましたが、結局、見事に敗退してしまいました。かつてのソ連と同じです。その失敗を教訓として学ぶことなく、先日イランを攻撃して支配しようとはしたが、これまた見事に失敗。ところが、見栄っ張りのトランプは近く「勝利」宣言するようです。バカバカしい宣言です。それにもろ手をあげて賛同するのは、日本のタカイチ政権くらいではないでしょうか…。

問題は、タリバン支配下のアフガニスタンで女性が抑えつけられていることです。女性は小学校も大学も行けないというのです。これまたバカげた政策です。

著者がタリバン政権の要人とインタビューすると、女子生徒の通学の安全性が確保できないからだというのです。ひどいものです。政権を担当していながら、女子生徒が学校に安全に登下校できないのを、社会のせいにするのです。それでも、少女たちは、(地域にある)秘密の学校に通っています。著者は、そこに潜入して取材するのです。簡単なようで実は命がけ(の取材)というのに驚かされます。

少数民族であるハザラ人の学校がテロリストに襲われ、命をかけて通っていた54人もの女子生徒が亡くなったのです。痛ましいことです。そもそもイスラム教徒の女性が学校で学べないというのはコーラン(クルアーン)に明記されていることではありません。

タリバンがアフガニスタンを武力で制圧したのは、2021年8月15日。もう5年もまえのことです。一般には、治安はかなり改善されているようです。

タリバンはジャーナリストを抑圧している。2021年8月から3年間で、ジャーナリスト141人が逮捕拘束されている。拷問も受けているようです。

タリバン政府の大臣は、女子生徒に道を歩かせたり公共交通機関を使わせることはできない。専用の車を用意すべきだけど、そんなお金はないと強弁しました。おかしな説明です。

首都カブールでは、マスク姿の女性は多いし、ブルカ姿の女性のほうが少ない。女性の意識は変わってきている。女性だけの街頭デモもあっている。女性たちは黙っているわけではない。

女性に対する学校教育が停止されたことから、女性の結婚が早まり、28%の女性が18歳になる前に結婚している。

アフガニスタンで活動していた中村医師が殺害されたのは2019年12月のこと。偶像崇拝を禁止するタリバン支配下なのに、大きな公園がありそこに顔写真が掲げられています。必要なのは武器ではなく、緑の大地、これを実践した中村医師の偉業を日本政府も少しは見習ったらいいのですが、タカイチはアメリカ頼み、武器頼み一辺倒です。残念でなりません。

勇気をもって現地取材してきた著者はすばらしいです。日本にもっとこんな記者が多くいてほしいものです。

(2026年3月刊。1540円)

パレスチナ女性2人のガザ日記

カテゴリー:中近東

(霧山昴) 

著者 サバ・ムシーン、サルマ・アフマド 、 出版 梨の木舎

この世には、生きるに値するものがある。これが本のタイトルなんです。毎日の生活は人としての「尊厳」が奪われている、苛酷な状況です。それが毎日毎日、果てしなく続きます。

それまでもずっと深刻な状況にありましたが、今の事態の直接のきっかけは2023年10月に起きたハマスのイスラエルへの越境攻撃でした。このとき、1200人のイスラエル人が殺され、250人が人質となりました。しかし、イスラエルの報復攻撃は、かつてないほど大規模なものですし、今も続いています。すでに7万人以上のガザの人々が殺され、うち殺された子どもが4万人とみられていますので、ネタニヤフ首相のやっていることは「アラブ人皆殺し」としか言いようがありません。

ここで紹介されているガザに住むパレスチナ人女性は、1人は22歳の大学生で、もう1人は37歳の専業主婦で子どもが4人います。

この戦争は、ガザで起きている、もっとも残酷な戦争。イスラエルはガザの人々を飢えで殺そうとしている。

シャワーをあびようとしても水がない。洗濯機がないし、あっても電気がない。

2023年当時、ガザ市人口72万人、ハンユニス29万人、ラファ24万人。

ガザ地区には大学が6校、大学に準じるものが17校あるが、そのほとんどがキャンパス機能をなくしている。

力強さと尊厳、そして不屈の精神の象徴であったガザの女性たちが、プライバシーも何も保障されないテントで暮らしている。かつて誇り高く自立していたパレスチナ人が今や一口の水、1片のパン、身を守る一枚の布切れを求めて懸命にもがいている。

イスラエル軍の包囲は、爆弾だけでなく、沈黙も武器となっている。飢えと剥奪と、カメラではとらえられない苦しみや痛みが、ゆっくり人々を殺している。

ガザのテントは、寒い夜にも、焼けつくような昼の暑さにも、何の役にもたたない、ただの布切れ。

お風呂に入りたいというのも、今では遠い夢になっている。市場から、コーヒーやお菓子が姿を消した。ドローンや戦闘機の音が常にあふれて、まるで人の一息一息を見張っているかのようだ。

女子たちは髪を洗えないため、自分の意思ではなく、髪を切らざるをえない。シャンプーも石けんもないため、シラミや皮膚病が広がるのを防ぐため、やむをえず。

高校で学んでいる若者は、いったいなぜ勉強するのか。卒業したら何をすればよいか。大学なんてないし、みな壊されているのに……、と語る。しかし勉強こそが唯一の希望。

現在、海外のジャーナリストは、ガザには一切入れない。イスラエルのひどい仕打ちを報道されたくないからでしょう。ネタニヤフの蛮行は一刻も早く止めなければいけません。そして、トランプの狂気の愚行も……。

(2026年4月刊。2530円)

戦争特派員

カテゴリー:中近東

(霧山昴)

著者 ポール・コンロイ 、 出版風行社

激しい内戦下のシリアに非合法な手段で潜入して取材した2人のジャーナリストがいた。うち一人のメリー・コルヴィンはシリア政府軍の爆撃にあって死亡し、もう一人は重傷を負ったものの、なんとかして地下トンネルを経由して脱出してきた。

この本のサブタイトルには「メリー・コルヴィン、最後の任務」というものです。死んだジャーナリスト(女性)の名前です。

「国境なき記者団」によれば、少なくとも300人のジャーナリストが取材中に砲撃と空爆によって殺害されるか、交戦当事者の手によって殺害された。このなかには、銃撃によって殺害された日本人ジャーナリストの山本美香氏も含まれる(享年45歳)。 山本美香氏の本は読みました。「これから戦場に向かいます」(ポプラ社、2016年7月刊)です。

勇気あるジャーナリストのおかげで、最前線で何が起きているか私たちは居ながらにして「戦争の真実」を知ることが出来るわけですよね。最近の日本人ジャーナリストはNHKを初めとして、なんだかすごく少なくなってしまった気がします。どうなんでしょうか・・・。高市政権のお先棒をかついでばかりではジャーナリストとは言えません。記者クラブでの内での取材と報道では物足りません。いつも残念です。ホルムズ海峡封鎖の深刻な影響、高市政権の無策、無策の実情をもっと暴き出してほしいものです。

著者はリビアの独裁者だったカダフィ大佐が殺害された2011年10月20日の30日後にはリビア現地に入って、そこでカダフィ大佐の虐殺のあともなまなましく残っている遺体を見ています。

すごく危険な最前線です。シリアに入るには、トンネルを使う。トンネルのなかをバイクを走らせて、物資や怪我人を運んでいる。草地の真ん中に4メートル幅の穴を掘って、これがトンネルの入口。その先に本来のトンネルとして使われているコンクリート管がある。トンネルは完全な円形ではなく、卵のような形で、天井に向かって真上狭くなっている。もちろん、真っ暗。こんなトンネルを3キロも歩く。入口から離れるにつれて温度が上がり、呼吸が短く、激しくなって、ぜいぜい息をするようになる。黙ってトンネルを進んでいくと、身体的苦痛というより、精神的な問題にぶつかる。姿勢と酸素不足のせいで筋肉がきしみ始める。時間感覚を失う。トンネル内で音がする。オートバイの走る音だった。オートバイが一日中、トンネル内を行ったり来たりするのだ。光をを酸素が薄くなり、二酸化炭素が濃くなっている。トンネルの出口にやっとたどり着いた。そこには洞穴があり、コンクリート壁にある5メートルほどの鉄梯子を登って、ようやく外に出た。いやあ大変な潜入経路ですね。恐らく、ガザのトンネルも同じようなものでしょうね・・・。

シリア政府軍は、GRADミサイルを撃ち込んでいる。ロシア製120ミリ多連装ロケットだ。低く力強い音をたてて飛行する。このミサイルが直撃したら家を丸ごと吹き飛ばしてしまう。

シリアの政府軍はイランからドローンを提供してもらっている。ドローンによって戦場からリアルタイムな映像が送られ、探知された地上の標的に向けてミサイルを発射する。ドローンはお手頃価格で使い捨ての「鳥の目」だ。頭上にドローンがあると隠れようがなくなる。大砲の標的を簡単に選びだせる。

衛星電話は一番追跡されやすい。電話に電波が入っている時間が長ければ、それだけ居場所を突き止められる危険性が増す。これは2012年2月の状況です。今から14年も前なのにこうだったのですね。それから、ドローンは、もっと「進歩」しています。

シリア政府軍は、人々が逃げ出せないようにした上で、民間人地域を砲撃している。

メリー・コルヴィンにとって死は一瞬のことだった。砲弾はほんの2メートル先に落ちた。爆発音を聞きもしなかっただろうし、苦しまなかっただろう。メリー・コルヴィンは、残虐な行為がシリア国民に対して行なわれていることを世界に向けて語ろうと決意して行動していた。そして、その究極的な代償を支払った。

戦争特派員って、いやはや大変な状況に身を置くのですね・・・。読みながら身が震えました。

(2025年10月刊。3520円)

イスラエル・パレスチナ紛争をゼロから理解する

カテゴリー:中近東

(霧山昴)

著者 イラン・パペ 、 出版 河出新書

 アメリカとイスラエルは交渉中なのに突然イランを攻撃し、ハメネイ師をはじめ、軍の中枢幹部を一挙に殺害しました。本当にひどい話です。国際法違反は明らかです。ところが、高市首相は「法的評価は控えたい」と国会で答弁し、トランプ追随を明らかにしました。それどころか、イランを非難するのです。許せません。

 アメリカのトランプ大統領は国際法なんか知らんと高言し、「力による世界支配」にまっしぐらです。そして、日本の高市首相はトランプのそばでピョンピョン飛びはねて卑屈にへりくだるだけで、次々にアメリカの不要不急の高額兵器を購入し、日本国内では軍需産業を露骨に優遇しています。強大な軍事力を持てば戦争を回避できるという論理が成り立たないことを今回のイラン爆撃は示しています。それは戦争を招き入れるだけなのです。

 日本がすべきことは、軍事に頼らない、平和的な外交力を強めること。それしか私たちの平安と安全を守ることは出来ません。

 ハマスの前身はムスリム同胞団の軍事部門で、1987年12月に創設された。第一次インティファーダの発生直後のこと。ハマスが躍進したのは、2004年11月にPLOのアラファートと議長が死亡したあとのこと。アラファートの死亡も、イスラエルに毒を盛られた疑いが濃厚とのこと。

 イスラエルのネタニヤフは2021年3月に敗れたが、2022年11月返り咲いた。

 今や、イスラエルには本物の左派はいない。少数派はいても主流派ではなく、イスラエル政府の掲げる政策を変える力はない。イスラエルにも、ネタニヤフに反対する勢力はいると思いますが、圧倒的に少数のようです。

 高市自民党は、国会を牛耳っていて、予算審議の充実なんて必要ないと断言し、数を頼んで強行採決を重ねています。あまりにも国会を軽視していますが、「サナエちゃん、がんばれー」と叫んで声援する一般市民がいること、少なくないことには呆れるというより怖いです。膚寒い思いをしています。

 パレスチナは無人の土地だったという神話はまったくの間違い。ユダヤ人国家がパレスチナに建設されたのは、ひとえに大英帝国の国益にかなったから。パレスチナには多くの村が何千年も前から存在していた。パレスチナが広大な砂漠だったというのも誤り。パレスチナに決して砂漠ではなかったし、人々は遊動民(ノマド)でも未開人でもなかった。

 アラブ系ユダヤ人は、イスラエルの右派政党を支える有権者集団として最大規模となっている。パレスチナ人に対する暴力をだれよりも声高に主張することも多い。シオニズムを熱狂的に支持する最強硬派として身の証(あかし)を立てた。

 なるほど、ですね。よくある歴史のパターンです。弱い者は強い者に頼らざるを得ませんからね…。

 著者はユダヤ系のイスラエル人歴史家です。イスラエルにいられなくなったとのこと。現実は厳しいのです。それにしても、イラン攻撃は直ちにやめてほしいです。戦争があたり前の世の中って、怖すぎます。高市首相は、アメリカに対して国際法違反の戦争を止めるよう、きっぱりモノ申すべきです。

(2025年11月刊。1100円)

パレスチナ占領

カテゴリー:中近東

(霧山昴)

著者 平野 雄吾 、 出版 ちくま新書

 一応の停戦合意が成立したあと、日本でガザの実情が報道されることはほとんどなくなりましたね。ウクライナのほうは、停戦が成立しておらず戦争が続いていることもあって、少しは報道されていますが、それでも、戦争がなぜ起きたのか、戦争を支えている軍事産業がボロもうけしていることなど、本質的な報道が極端に少ないように思います。

 ハマスがガザ地区の地下に張り巡らせたトンネル網は、全長数百キロに及ぶそうです。深さは最大80メートルとのこと。私は少なくない人質がこのトンネル内で2年も生き永らえたことにハマスの底力と、ハマスを支える民衆の意思を実感しました。トンネル内の檻に単に入れっぱなしにしておいたら、地上に出てきたとき人質は歩くことも出来なかったと思うのです。でも、映像を見るかぎりしっかりした足取りで歩いていましたし、骨皮筋右衛門ではない人を見ました。これは多勢の人々の、公然あるいは暗黙の支持がなければ、とても出来ないことです。

 いったいなぜハマスはこんなにガザの人々に支えられているのか、私たちはよくよく考える必要があると思うのです。念のため言っておきますが、私はハマスの2023年10月7日の奇襲攻撃を支持していません。どんなに苦しくても平和的な外交交渉以外に問題の根本的解決はありえないと確信しています。そして、ネタニヤフ首相の指揮下のイスラエル軍のガザ侵攻も許せません。既に罪なきガザの人々が6万人以上も殺されているのです。イスラエル軍は即時、無条件で撤退すべきです。

 ガザの人口は220万人(2023年推定)で、東京と同じくらいの人口密度。イスラエルの侵攻によって、高層ビルを含めて、地上部分はどこもかしこもボロボロの惨状です。この復興事業でまた金儲けする企業がいるのでしょうね。まぁ、それでもアメリカのロッキードや日本の三菱重工業のような「死の商人」よりは、断然ましです。

 パレスチナ自治政府に対する住民の信頼は、とても低いようです。それは、アッバス議長とその息子たちがビジネスマンとして不当に収益を上げている、つまり、汚職・腐敗があまりにもひどいことからというのです。残念です。EUからの支援金もアッバスとその側近に流れているとされると、本当に嫌になってしまいます。

 ハマスがパレスチナ人のなかで一定の支持を受けているのには、腐敗した無能な自治政府への反発の裏返しだ。いやぁ、これは困ったことです。こんなことでは、ガザ地区に住むパレスチナ人の統一と団結は困難ですよね…。

 そして、イスラエル。ネタニヤフ首相も汚職の渦中にあり、刑事裁判を抱えているとのこと。

 私は見ていませんが、「ネタニヤフ」という映画のなかで、ネタニヤフ首相の職権濫用が白日の下にさらけ出されているようです。

イスラエル社会も右傾化と分断が進んでいる。ネタニヤフは、安反保障を口実として敵を設定し、社会の分断を政治的に利用してきた。

 私は一刻も早くウクライナとガザの戦争が完全に終結すること、そして復興事業が着手されることを心より願っています。勉強になる本でした。

(2025年9月刊。960円+税)

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