(霧山昴)
著者 ポール・コンロイ 、 出版風行社
激しい内戦下のシリアに非合法な手段で潜入して取材した2人のジャーナリストがいた。うち一人のメリー・コルヴィンはシリア政府軍の爆撃にあって死亡し、もう一人は重傷を負ったものの、なんとかして地下トンネルを経由して脱出してきた。
この本のサブタイトルには「メリー・コルヴィン、最後の任務」というものです。死んだジャーナリスト(女性)の名前です。
「国境なき記者団」によれば、少なくとも300人のジャーナリストが取材中に砲撃と空爆によって殺害されるか、交戦当事者の手によって殺害された。このなかには、銃撃によって殺害された日本人ジャーナリストの山本美香氏も含まれる(享年45歳)。 山本美香氏の本は読みました。「これから戦場に向かいます」(ポプラ社、2016年7月刊)です。
勇気あるジャーナリストのおかげで、最前線で何が起きているか私たちは居ながらにして「戦争の真実」を知ることが出来るわけですよね。最近の日本人ジャーナリストはNHKを初めとして、なんだかすごく少なくなってしまった気がします。どうなんでしょうか・・・。高市政権のお先棒をかついでばかりではジャーナリストとは言えません。記者クラブでの内での取材と報道では物足りません。いつも残念です。ホルムズ海峡封鎖の深刻な影響、高市政権の無策、無策の実情をもっと暴き出してほしいものです。
著者はリビアの独裁者だったカダフィ大佐が殺害された2011年10月20日の30日後にはリビア現地に入って、そこでカダフィ大佐の虐殺のあともなまなましく残っている遺体を見ています。
すごく危険な最前線です。シリアに入るには、トンネルを使う。トンネルのなかをバイクを走らせて、物資や怪我人を運んでいる。草地の真ん中に4メートル幅の穴を掘って、これがトンネルの入口。その先に本来のトンネルとして使われているコンクリート管がある。トンネルは完全な円形ではなく、卵のような形で、天井に向かって真上狭くなっている。もちろん、真っ暗。こんなトンネルを3キロも歩く。入口から離れるにつれて温度が上がり、呼吸が短く、激しくなって、ぜいぜい息をするようになる。黙ってトンネルを進んでいくと、身体的苦痛というより、精神的な問題にぶつかる。姿勢と酸素不足のせいで筋肉がきしみ始める。時間感覚を失う。トンネル内で音がする。オートバイの走る音だった。オートバイが一日中、トンネル内を行ったり来たりするのだ。光をを酸素が薄くなり、二酸化炭素が濃くなっている。トンネルの出口にやっとたどり着いた。そこには洞穴があり、コンクリート壁にある5メートルほどの鉄梯子を登って、ようやく外に出た。いやあ大変な潜入経路ですね。恐らく、ガザのトンネルも同じようなものでしょうね・・・。
シリア政府軍は、GRADミサイルを撃ち込んでいる。ロシア製120ミリ多連装ロケットだ。低く力強い音をたてて飛行する。このミサイルが直撃したら家を丸ごと吹き飛ばしてしまう。
シリアの政府軍はイランからドローンを提供してもらっている。ドローンによって戦場からリアルタイムな映像が送られ、探知された地上の標的に向けてミサイルを発射する。ドローンはお手頃価格で使い捨ての「鳥の目」だ。頭上にドローンがあると隠れようがなくなる。大砲の標的を簡単に選びだせる。
衛星電話は一番追跡されやすい。電話に電波が入っている時間が長ければ、それだけ居場所を突き止められる危険性が増す。これは2012年2月の状況です。今から14年も前なのにこうだったのですね。それから、ドローンは、もっと「進歩」しています。
シリア政府軍は、人々が逃げ出せないようにした上で、民間人地域を砲撃している。
メリー・コルヴィンにとって死は一瞬のことだった。砲弾はほんの2メートル先に落ちた。爆発音を聞きもしなかっただろうし、苦しまなかっただろう。メリー・コルヴィンは、残虐な行為がシリア国民に対して行なわれていることを世界に向けて語ろうと決意して行動していた。そして、その究極的な代償を支払った。
戦争特派員って、いやはや大変な状況に身を置くのですね・・・。読みながら身が震えました。
(2025年10月刊。3520円)


