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アマゾン

カテゴリー:アメリカ

著者    ジョン・ヘミング  、 出版   東洋書林
 アマゾンのジャングル(密林)は地球上の酸素濃度の維持に多大な貢献をしているのですよね。ところが、そのジャングルに次々に開発道路が出来て、どんどん切り開かれています。人間が地球上にすめるのかどうか危ぶまれているのです。そして、その原因づくりに日本も一役買っています。いわば、私たち日本人も大自然破壊に手を貸しているのです。決して他人事(ひとごと)ではありません。
20世紀末までにアマゾン流域で破壊された森林全体の4分の3は大規模と中規模の牧場が引き起こした。ブラジルは、いまや世界最大数の牛を飼う、世界有数の牛肉輸出国である。そして、大豆をブラジルに輸入したのは100年前の日本人移住者だ。現在、ブラジルは、アメリカに次ぐ世界第二の大豆輸出国となっている。木材の切り出し、牛の放牧、そして大豆栽培がいっしょになり、雨林の破壊を加速させた。アマゾン流域中で、国土の14%にあたる64万平方キロメートルの雨林がチェーンソーとブルドーザーによって簡単に破壊され始めて、40年間のうちに消滅した。これはテキサス州の広さにあたり、フランスの国土より大きい。この密林が永久になくなってしまった。うっそーと叫びたくなるほどの事態です。
 アマゾンの森林は1年間に5億6000トンの窒素を吸収する。もし伐採されたら、この吸収機能が止まるだけでなく、そのかわりに温室ガスを大量に発生することになる。
 アマゾン川流域は、世界最高の生物多様性を有している。昆虫学者は、虫の多さに敬服する。アマゾン川流域の2000種の蝶は、世界の蝶の4分の1にあたる。3000種のハチは、地球全体のハチの10%にあたる。
 アマゾン川流域には、かつては相当の人口があり、文明があったようです。ところがヨーロッパ人が入ってくると、劇的に人口は減少した。その主たる原因は病気だった。その次に、逃亡だった。ヨーロッパ人は現地の人々を捕まえて奴隷労働を強いて酷使した。
 当初のヨーロッパ人たちは残虐行為を平気でしていたようです。でも、彼らは大自然には手をつけませんでした。大自然に手をつけたのは現代の我々なのです。アマゾンの過酷な実情、そして文明人たちがこれほど慈悲のない仕打ちを現地の人々に対して加えていたことに戦慄せざるをえません。アマゾン流域の保全に国際社会はもっと目を向けるべきだとつくづく思いました。
(2010年5月刊。6500円+税)

活劇・日本共産党

カテゴリー:日本史

著者   朝倉 喬司   、  出版  毎日新聞社  
 戦前の日本の現実の一端を深く知ることができる本でした。戦前って、激しい社会だったんだなあと思わず慨嘆してしまいました。
 三人の高名な共産党員が登場します。うち二人は、戦後は財界そして右翼の親玉として活躍しました。そんな人って、意外に多いのですよね。残る一人の徳田球一は弁護士ですが、法廷で活躍したというより活動家だったようです。
 初めに登場するのは南喜一です。大正12年9月1日の関東大震災が起きたとき、まだ30歳をこしたばかりの若さで、すでに70人以上の従業員を雇う工場の主だったのです。
ところが、亀戸警察に実弟が引っぱられていき、そこで陸軍の兵士らに銃剣で刺殺されたのでした。それを知って、南喜一は工場を売り飛ばして、大金をもって運動に飛び込んでいった。もちろん、弟の仇を取るためである。うひゃあ、なんとすごい兄弟愛でしょうか・・・・。
亀戸の虐殺は、権力側の意図とは逆の結果を招いた。「こんなひどいことが世の中にあっていいのか?」という義憤にかられ、かねて定評のあった南葛の労働運動に飛び込む若者が激増したのである。うむむ、なるほど、これこそ階級闘争の弁証法というものなんですね。
 南喜一は、その後、浜松の「日本楽器争議」に関わります。ダイナマイトを会社の役員宅に投げ込んだり、決死隊が組織されたり、さながらヤクザの出入りのような状況です。
 1925年(大正14年)9月、共産党の合法機関紙「無産者新聞」は読みやすくもないのに、売上が一気に1万部を突破した。そして、南喜一は1926年に起きた文京区の共同印刷の大ストライキにも関わります。
 次の徳田球一は、ソ連に福本和夫と一緒に渡りました。そこで、ブハーリンの主宰するソ連共産党の権威のもと、福本イズムは完敗させられたのでした。すると、徳田球一も手のひらを返したように福本を冷たくあしらうようになります。
 徳田は、モスクワに着いて、どうも形勢がおもわしくないと感ずると、ガラリと態度を一変した。この余にもあからさまな豹変ぶりは、一堂のひんしゅくを買い、本人にとっても大変な逆効果となり、たちまち党委員長を解任された。
このころって、ソ連とコミンテルンの影響が今日では想像できないほど強大だったのですね・・・・。
徳田球一は沖縄に生まれ育ち、大正年に、貯金局に勤めながら、夜間の日大法律学科に通った。大正10年に、弁護士資格を取得した。苦学3年である。うむむ、実は私の父も大川から上京して通信省に勤めながら法政大学の夜間部に通い、苦学して昼間部に移ったあと、合格はできませんでしたけれど、司法官試験を受験したのでした。
三人目の田中清玄は、戦後右翼の親玉の一人でもあります。戦前の田中清玄は共産党の指導者にまでなりましたが、その指揮下にわずか2ヶ月足らずのことですが、あの有目な太宰治(津島)がいました。武装共産党というのを始めた田中清玄たちは間もなく逮捕されます。要するに、共産党・アカは怖いんだというイメージを定着させることが出来たら、その役目は終わったのでした。
著者の死によって未完となった本ですが、よく調べていると感嘆させられました。
(2011年2月刊。3000円+税)

海に暮らす無脊椎動物の不思議

カテゴリー:生物

著者  中野 理枝    、 出版  サイエンス・アイ新書 
 ウミウシは、色も形も綺麗なことから、ダイバーにとても人気のある軟体動物の一種です。ちょっと前までは、色のついたナメクジ、気持ち悪い、といって片付けられてしまう可哀想な存在だった。
 ネクトンとは遊泳動物、つまりイカのように潮流に逆らって泳ぐ能力のあるもの。
 プランクトンとは、浮遊生物。エチゼンクラゲのように傘の直径が最大2メートルをこえる巨大なものでも遊泳能力がなければプランクトンだ。ただし、同じクラゲの仲間でもかつおノエボシのように水面近くで生活するものは、プランクトンと区別して、ニューストンと呼ばれる。
ベントスとは、海底近くに暮らす動植物のこと。底生生物という。
 遊泳能力の高いイカは魚などを狩る有能なハンターだ。遊泳能力のやや劣るタコは甲殻類を餌にする。
 スナギンチャクには、長寿であり、猛毒をもつという特性がある。2742歳という長寿の個体が見つかった。
多くのウミウシは、毒を含んだ餌を食べ、その毒を再利用して自分の身を守る武器にしている。ウミウシはほとんど肉食だ。カイメンやホヤ、ヒドロ虫といった固着動物。これらの多くは動いて捕食者から逃れることができない代わりに、多くが捕食者に食われないように毒を蓄えている。ウミウシはこの毒を再利用している。
 ホヤは仙台に行ったときにその近郊の秋保温泉の旅館ででっかいものを食べました。さすがに美味しい味つけでした。ちょっと気色悪い形ではありましたが・・・・。
 海底あたりにうごめく生き物たちは色も形もとても変わっていて、奇妙かつ美的なセンスにあふれています。面白い写真が満載のカラー新書でした。
(2011年6月刊。952円+税)

夕凪の街、桜の国

カテゴリー:社会

著者    こうの史代  、 出版   双葉社
 ヒロシマを生きる若き女性の生活と未来への不安を描いたマンガです。
 私が小学生のころには、ここに描かれているような、雨もりするバラック小屋みたいな家があちこちにありました。着ている服はツギアテ。靴下はほころびたら、あて布で補正する。靴も、する切れるまで履くのが当たり前。トイレは、もちろんぼっとん式です。
 ご飯を食べるときは、丸いちゃぶ台を家族みんなで囲み、小さいおかずを子どもたちが奪いあうようにして食べていました。私なんぞ、5人姉兄の末っ子でしたから、もちろん可愛がられたのですが、食べることにかけては食い意地がはって、兄たちに負けないようにハシをのばして自分の食べるものを確保していました。もらいものの羊かんを姉兄で分けるときには、どれが大きいかを目を血のように食い入るように見つめて必死でした。ですから、そりゃあ美味しいものでした。真剣度が違いましたからね。何もなくても、友だちがわんさかいて、楽しく遊ぶことだけは出来ました。
 ヒロシマでゲンバク被災者は見たことを話せず、自分が被災者だと名乗ることをはばかる時代が長かったようです。そんななかでも、若さで乗り切っていこうとする、すがすがしさあふれた青春マンガです。
(2011年6月刊。800円+税)

警視庁捜査一課刑事

カテゴリー:社会

著者   飯田 裕久   、 出版   朝日文庫
 警視庁捜査一課に12年のあいだ在籍し、勤続25年で退職して分筆業で活躍していた著者は、昨年、46歳の若さで惜しくも急逝されました。この本は自らの体験にもとづく本ですから、並みいる警察小説とは迫真度が違います。
 「○○刑事」というのは、もっぱら巡査の場合のみ。「部長」というと、一般会社では大変な地位であるから、知らない人は大幹部のように受け取るが、実は巡査部長、つまり巡査の一つだけうえの階級の者に過ぎない。
 係長は、警部補。キャップとも呼ぶ。係長の下が主任。巡査部長がなる。末席は巡査。
日本の警察官、とくに私服刑事は、宿直以外の通常勤務のときには拳銃を着装しない。拳銃は泊まりの日につけるだけという悲しい事実が定着している。有事の際に拳銃をつけて出勤するという習慣が、まるで出来ていない。
 特別捜査本部の捜査会議の様子が紹介されています。これは既に、幾多の警察小説に出てくるのとまったく変わりありません。地取りなどをやって帰ってくると、朝の会議で順に報告させられ、それが中途半端だとヒナ壇からガンガンこき下ろされるというのです。それこそ、死ねといわんばかりにやり込められる。ふむふむ、プロの世界ですね。
 最後に警察隠語集が紹介されています。知らないものがいくつもありました。
 アカ落ち・・・服役を終えること。
 牛の爪・・・・初めから犯人が割れている事件。
 グニ屋・・・・質屋。
 ゴンゾウ・・・・ベテランの域に達してもダメな警察官。
 ごんべん・・・詐欺
著者は警察をやめたあとは刑事ドラマの監修の仕事に転職していたようです。
(2011年4月刊。640円+税)

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