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管見 最高裁判所

(霧山昴) 

著者 宇賀克也 、 出版 有斐閣 

最高裁判所で絶えず個別意見と称する少数意見を書いていた著者が最高裁判所を内側から振り返った本です。 

最高裁の長官になる人は少数意見を書かないという不文律があると聞きます。 団藤重光判事は学者(刑法)出身ですが、長官を目指していたときには少数意見を書かなかったけれど、その可能性がないと自覚してからは積極的に少数意見を書いたそうです。

私は著者のような人にこそ長官になってほしいと思うのですが、客観的にはまったく芽はなかったのでしょうね。 いえ、もちろん能力の問題ではなく、ときの政権からにらまれようとも、自分の信念でモノを言う学者出身の人が長官になれるはずはないということです。 すべからく大勢順応でいくような人が長官になっていきます。 私の同期の人もそうでした。 長く法務官僚を経験していて、国会答弁でソツがない人だったので長官になれたわけです。

さて、著者です。 公法学の研究者として、公権力の行使には説明責任が伴うことを強調してきたので、個別意見を積極的に表明したのは、それによって説明責任の一端を果たすという考えによる。 これを実践し、最後まで書いたのですから、偉いものです。 頭が下がります。

著者は、袴田事件では、林景一判事とともに再審開始決定すべきだとする反対意見、夫婦同氏制について宮崎裕子判事とともに違憲とする反対意見を表明した。

これらの反対意見は少数意見なので無意味かというと、決してそうではなく、その後に多数意見となりうるという意味がある。 

最高裁が上告を不受理なとき、著者は、これにも少数意見があることを付記するよう提案しています。 もっともな主張です。 

著者は、条約違反の主張を「単なる法令違反の主張」と扱うのはおかしいとしています。 なぜなら憲法第98条2項により、条約は公布とともに国内的効力を有するとされているので、国内に法的拘束力ある義務が課されているからです。 

女子差別撤廃条約2条、16条1項は国家機関に遵守を義務づけている。 

最高裁の法廷において、裁判官が当事者(代理人)に質問するよう運用すべきだと著者は提案しています。 アメリカでは代理人の弁護士と判事とが丁々発止の意見交換をしているようです。 

私は一般民事事件で2度、最高裁の小法廷で弁論しました。 境界争いにからむ通行権問題と交通事故の保険金の取り扱いです。 どちらも私のほうが逆転敗訴が必至の状況だったのですが、私はせっかくのチャンスなので、厚稿をつくって5分間、口頭で弁論しました。 そのころ、息子と娘が東京で大学生でしたので傍聴させました。

私は経験がありませんが、最高裁で和解が試みられることもあります。 また、判決言い渡しのときに口頭で判決理由の要旨が告知されているとのこと。 いいことだと思います。 

最高裁判事の人的構成について。 現在は、弁護士出身4人、検察官2人、大学教授1人、行政官1人で、その他の6人がキャリア裁判官。 うち4人が民事系、2人が刑事系と固定している。 

かつては弁護士5人だったのが4人と少なくなっています。 そして、その4人は、残念なことにほとんど企業法務を中心とする五大事務所出身者で占められていて、まったく存在感がありません。いつもいつも多数意見に付和雷同しています。 もう少し気概を示してほしいものです。

この本の第2部として、著者の個別意見とその解説があり、大変参考になります。 やっぱり、これくらい自信をもって個別意見を書いてほしいものだと改めて思いました。

(2026年5月刊。5060円)

管見 最高裁判所

(霧山昴) 

著者 宇賀克也 、 出版 有斐閣 

最高裁判所で絶えず個別意見と称する少数意見を書いていた著者が最高裁判所を内側から振り返った本です。 

最高裁の長官になる人は少数意見を書かないという不文律があると聞きます。 団藤重光判事は学者(刑法)出身ですが、長官を目指していたときには少数意見を書かなかったけれど、その可能性がないと自覚してからは積極的に少数意見を書いたそうです。

私は著者のような人にこそ長官になってほしいと思うのですが、客観的にはまったく芽はなかったのでしょうね。 いえ、もちろん能力の問題ではなく、ときの政権からにらまれようとも、自分の信念でモノを言う学者出身の人が長官になれるはずはないということです。 すべからく大勢順応でいくような人が長官になっていきます。 私の同期の人もそうでした。 長く法務官僚を経験していて、国会答弁でソツがない人だったので長官になれたわけです。

さて、著者です。 公法学の研究者として、公権力の行使には説明責任が伴うことを強調してきたので、個別意見を積極的に表明したのは、それによって説明責任の一端を果たすという考えによる。 これを実践し、最後まで書いたのですから、偉いものです。 頭が下がります。

著者は、袴田事件では、林景一判事とともに再審開始決定すべきだとする反対意見、夫婦同氏制について宮崎裕子判事とともに違憲とする反対意見を表明した。

これらの反対意見は少数意見なので無意味かというと、決してそうではなく、その後に多数意見となりうるという意味がある。 

最高裁が上告を不受理なとき、著者は、これにも少数意見があることを付記するよう提案しています。 もっともな主張です。 

著者は、条約違反の主張を「単なる法令違反の主張」と扱うのはおかしいとしています。 なぜなら憲法第98条2項により、条約は公布とともに国内的効力を有するとされているので、国内に法的拘束力ある義務が課されているからです。 

女子差別撤廃条約2条、16条1項は国家機関に遵守を義務づけている。 

最高裁の法廷において、裁判官が当事者(代理人)に質問するよう運用すべきだと著者は提案しています。 アメリカでは代理人の弁護士と判事とが丁々発止の意見交換をしているようです。 

私は一般民事事件で2度、最高裁の小法廷で弁論しました。 境界争いにからむ通行権問題と交通事故の保険金の取り扱いです。 どちらも私のほうが逆転敗訴が必至の状況だったのですが、私はせっかくのチャンスなので、厚稿をつくって5分間、口頭で弁論しました。 そのころ、息子と娘が東京で大学生でしたので傍聴させました。

私は経験がありませんが、最高裁で和解が試みられることもあります。 また、判決言い渡しのときに口頭で判決理由の要旨が告知されているとのこと。 いいことだと思います。 

最高裁判事の人的構成について。 現在は、弁護士出身4人、検察官2人、大学教授1人、行政官1人で、その他の6人がキャリア裁判官。 うち4人が民事系、2人が刑事系と固定している。 

かつては弁護士5人だったのが4人と少なくなっています。 そして、その4人は、残念なことにほとんど企業法務を中心とする五大事務所出身者で占められていて、まったく存在感がありません。いつもいつも多数意見に付和雷同しています。 もう少し気概を示してほしいものです。

この本の第2部として、著者の個別意見とその解説があり、大変参考になります。 やっぱり、これくらい自信をもって個別意見を書いてほしいものだと改めて思いました。

(2026年5月刊。5060円)

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