弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

アメリカ

2017年3月12日

カフェインの真実

(霧山昴)
著者 マリー・カーペンター 、 出版  白揚社

コカ・コーラの成分は今も怪しいと私は疑っています。中毒性の原料が混じっているからこそ、そんなに美味しくもないのに、タバコのように、いつまでも止められずに飲み続ける人々がいるのです。
コカ・コーラの名前は、初期の製法に入っていた2種類の興奮剤に由来する。南米産のコカの葉と、カフェインをふくむアフリカ原産のコカ・ナッツだ。
20世紀初めのコカ・コーラ1杯(250ml)には81ミリグラムのカフェインが入っていた。これは現代のコカ・コーラ350ミリリットル缶に含まれているカフェイン量の倍以上だ。裁判のあと、コカ・コーラ社は、カフェイン量を減らした。
そして、粉末カフェインをつかっている。合成カフェインは、植物がつくり出したカフェインを横取りしたものではなく、カフェインの成分を池の物質から流用して組み上げたカフェインだ。
モンサント化学工業は合成カフェインを大々的に生産している。
あの悪名高きモンサントがここにも登場するのに驚きます。
カフェインは運動能力を高める薬物だ。しかし、たいていの競技で使用が認められている。カフェインの作用は、運動能力や認知力の向上、そして不眠や不安障害に至るまで、多岐にわたる。
カフェインには、うつ病を予防する効用があるかもしれない。コーヒーを飲む人のほうがうつ病になる人が少ない。そして、もっともコーヒーを飲む人は、もっともうつ病になりにくい。
カフェインの禁断症状は、実に不快なもので、頭痛や筋肉痛、疲労感、無気力、うつ状態をともなうことが多い。カフェインの摂取を急にやめると、多くのアメリカ人はひどい不快感に見舞われる危険性が高い。
カフェインは、神経細胞に対する作用の仕方がコカインやヘロインのような依存性薬物とは異なっている。とくに、脳内のドーパ濃度に及ぼす影響は少ないようだ。
私はコンビニにはあまり入りたくないのですが、街角にあるコーヒーショップでは、よくカフェラテを飲みます。さすがに、二杯目は抹茶ラテにすることも多いのですが・・・。
(2016年12刊。2500円+税)

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2017年3月 9日

愛は戦渦を駆け抜けて

(霧山昴)
著者 リンジー・アダリオ 、 出版  角川書店

報道カメラマンというより戦場カメラマンと呼んだほうがいいように思えるアメリカ人カメラマンの体験記です。
アメリカ人としてパキスタンの現地に行ったとき、次のように言われたそうです。
「お引き取りください。空爆が始まって、アメリカはイスラムの兄弟を殺しています。あなたたちアメリカ人は、いまや招かれざる客です」
まさしく、そのとおりではないでしょうか。世界中に戦争を起こしておいて、武力衝突のタネをばらまいていながら、それによって途方もない甘い汁を吸っているのに、表面上は世界平和を語り、民主主義をお説教するなんて、私にはとてもまともな国のすることとは思えません。
トランプ大統領になって、一段と、その間違った方向が強まることを恐れています。武力(軍事力)によらない民生支援を世界はもっと真剣に考え、行動すべきだと思います。
そんなこと言うと、理想だけ、現実を知らない者のたわごとだと非難されるかもしれません。
でも、著者はカメラマンとして、世界最強のアメリカ軍に随行していて、アメリカ軍兵士が殺されていくのを目撃しています。なぜ、そもそもアメリカ軍がベトナムのジャングルに行ったのか、もう歴史が証明していると思います。完全にアメリカは間違っていました。同じ誤ちを今も世界各地でくり返しているだけなのではないでしょうか。
アメリカ軍は、アフガニスタンにおける軍事作戦においてドローンを駆使しています。戦場に倒れている人物が生きているのか死んでいるのか、赤外線センサーを搭載したドローンを飛ばして、熱を感知するかどうかで、司令部にいる指揮官は判断している。
指揮官たちは、司令部にいて、それぞれの部隊が現場で戦っている映像を壁を埋め尽くす画面で見つめている。そして、電話によって、遠隔地にある基地から部隊を出動させて、要請に対応している。高級指揮官たちは、タマの飛んでこない遠くの安全地帯にいて画面上の捜査で指揮しているというわけです。
そして、現場で何が起きるか・・・。
「もう無理だ。これ以上は歩けない。ぼくはやめる」こう言いながら若い兵士が泣きじゃくる。
もう限界だと言い続ける兵士を、ほかの兵士がうしろら押して前進させている。戦場の実際を写真と映像で伝えてくれる報道カメラマンの存在は貴重だと改めて思いました。
それにしても、本当に危険な仕事です。実際、著者は拉致・監禁もされています。
たくさんの臨場感あふれる写真があり、危険な状況がひしひしと伝わってきます。
(2016年9月刊。1900円+税)

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2017年2月12日

大統領を操るバンカーたち

(霧山昴)
著者  ノミ・プリンス 、 出版  早川書房

 アメリカの政治が財界によって動かされてきたことを実証している本です。銀行家がアメリカの大統領を背後から操っていたのです。日本でも同じことが言えるのでしょうか・・・。
1929年の大暴落から2008年まで、銀行家たちが民主的に選ばれたリーダーではなく、君主的なリーダーとして、アメリカを支配してきた。これらのエリート銀行家たちは、今日もなおアメリカの金融システムを動かしている。
アメリカの偉いところは、アメリカの政治の根幹に関わる文書が国立公文書記録管理局や大統領図書館に保管され、分類され、一般にも公開されているところです。
 1933年3月4日、FDR(フランクリン・ルーズベルト)大統領は就任演説で、次のように述べた。
「恐れる必要があるのは、恐怖そのものだけだ」
 この当時のアメリカでは1400万人が失業しており、900万人が蓄えを失っていた。FDRは、1933年5月、連邦緊急救済局を設立した。公共事業プログラムによって、失業した人々にさまざまな政府の仕事を提供した。1935年、公共事業促進局と社会保障局に引き継がれた。
 FDRは、銀行業に対する国民の信頼を復活させた。資本主義を下支えし、銀行家たちの賛同を得つつ、彼らを自己破壊的な行動から抜け出させた。
 さらに、銀行産業の世代交代を促進した。銀行業界は反撃したが、FDRは屈しなかった。FDRは銀行業界に対して、過去のどの大統領よりも大きな力をもっていた。議会や一部の主要銀行家の支持はもちろん、国民の支持も得ていた。
 ニューディールの第二段階で、FDRは社会保障法によって退職者や障がい者のためのセーフティーネットを導入した。このとき失業保険プログラムも創設した。
これに加えて、FDRは富裕層に対する積極的な増税を実施した。最高税率が25%から63%に引き上げられた。1942年には税率は82%へ、1944年に94%に引き上げた。そして、法人税のほうも31%を40%に引き上げた。銀行家たちは怒り、FDRの敵となった。
1936年の大統領選挙で、FDRは大企業や最上層の金融資本家を声高に批判し、圧倒的な国民の支持を得て再選された。
1939年9月、イギリスがドイツに宣戦布告したとき、ニューヨーク証券取引所には買いが殺到し、史上最大の債券取引高を記録した。このとき、戦争は経済的恵みになると投資家たちは考えた。戦争はヨーロッパの競争相手に打撃を与え、アメリカの資金と金融サービスを世界の金融ピラミッドの頂点にしっかりと位置づけたのだ。
戦争はもうかるもの。銀行家たちは戦争を好ましいものと考えるというわけです。実におぞましい存在です。そんな輩が国を間違った方向へひっぱっていくわけです。
(2016年11月刊。2700円+税)

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2017年2月 5日

アメリカ黒人女性作家論

(霧山昴)
著者  加藤 恒彦 、 出版  御茶の水書房

 1991年12月発行の本です。私の本棚に長く「積ん読(つんどく)」状態にありました。正月の人間ドッグのときにホテルに持ち込み、ようやく読了することができました。
 三人の黒人女性作家が取りあげられています。アリス・ウォーカー、トニ・モリソン、グローリア・ネイラーの三人です。前二者の本は私も読んだことがありますが、三人目の作家は知りませんでした。
 この本は1980年代の黒人女性作家論をテーマとしているようです。
 アメリカ人種主義社会のなかで、失業と貧困にあえぎ、家長としての責任を果たせず、未来に絶望して、無責任な父親となって家を捨てる黒人男性が多いことは、よく知られた事実である。
 これは30年も前のアメリカ社会の描写ですが、今はどうなのでしょうか?実のところ、現代日本にも多少あてはまる現象ではないかという気もします。というのが、日本では、その前にあまりの低賃金のため結婚できない若い男女が増えていることから、その結果として少子化が進んでいるようにも思います。
 この本では、貧困のなかでの暴力の連鎖をテーマとする本も紹介されています。
 両親に愛されることなく育ったために、自己の人間としての価値に気づくことができず、したがってまた、他者を愛することも深い意味ではできなかった。さらに、直接的な感覚をこえて物事の本質を見抜く知性を奪われてしまった・・・。
これって、現代日本にも当てはまる現象と言えるのではないでしょうか・・・。
 エリートの若い黒人カップルがいる。夫は、厳しい競争社会で、より以上の成功を求めようとするからこそ、妻に自分への理解ややすらぎの場を求めるのに対して、妻は夫に富や地位を求め、夫を競争社会に駆り立てようとする。ともに富と成功を追い求めることによって、皮肉にも二人は相手を失っている。
 これまた、現代日本にも共通するところが多いように思われます。
 その意味で、25年も前の本ですが、いま読み返すだけの価値があると思いました。
(1991年12月刊。3000円+税)

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2017年2月 1日

国家とハイエナ

(霧山昴)
著者  黒木 亮 、 出版  幻冬舎

 自分さえよければ、世の中がどうなろうと知ったこっちゃない。そんな人物がアメリカ大統領になりました。
トランプの就任演説の全文を日本語で読みましたが、あまりに低次元の話ばかりに涙が出そうになりました。そこには、そもそも政治は、弱者であっても人間らしく生きていけるようにするためにこそあるという考えは、みじんもありません。本当に残念です。
しかも、弱者が超大金持ち(ウルトラ・リッチ)を支持しているのです。きっと自分たちのために何か良いことをやってくれるだろうという幻想を抱いて・・・。悲しい現実です。
でも、日本だって似たようなものです。とっくに破綻しているのが明らかなアベノミクスをまだアベ首相は固執し、多くのマスコミが無批判にアベノミクスの効用をいまなお宣伝しているからです。
 この本は、破綻したアフリカや南米の国債を安く買って、欧米で勝訴判決をとり、タンカーや軍艦、外貨準備や果ては人工衛星まで差押して、投資額の10倍、20倍をむしりとる「ハイエナ・ファンド」(ハゲタカ・ファンド)の実際を暴いています。
 狙われた国家は、裁判を使った合法的な手段で骨の髄までしゃぶられ尽くすのです。もちろん、狙われた国家自体も、アフリカの大統領の多くが利権を私物化しているといったように、汚職・腐敗にまみれています。それでも、「ハイエナ・ファンド」に奪われなかったら、そのお金が福祉や民生用の国家支出にまわっていた可能性は大きいのです。
 「ハイエナ・ファンド」の手先になって動いているのが投資コンサルタントであり、弁護士たちです。
「法律書をもったハイエナ」は、額面7千万ドルの債権を800万ドルで買い、ペナルティや金利もふくめて1億2000万ドルを払えと訴える、それに、アメリカやイギリスの裁判所も結託している。ハイエナ・ファンドは、国や国際機関や金融機関の債務削減を利用してもうけている。これを規制しないと、せっかくの債務削減の意味が無に帰してしまう。
ハイエナ・ファンドによる訴訟の3分の2以上がアメリカとイギリスで起こされている。ひとたび外国で訴訟が起こされると、数十万ドルから数百万ドルにのぼる弁護士費用、旅費その他の経費がかかる。これは貧しい債務国にとっては、重大な負担となり、まともに戦える国はほとんどない。
ハイエナ・ファンドが投資したお金の何十倍という途方もない利益をあげる一方で、最貧国では一日1ドル以下で生活している国民が大半で、食糧や薬が買えなくて、子どもたちがバタバタと亡くなっている。
 債務削減を受けたアフリカ10ヶ国は、削減から4年間のうちに、教育予算が4割も増え、保健予算にいたっては7割も増えている。これを「ハイエナ・ファンド」は許さない。
 いわば吸血鬼のように他人の生命・健康を損なわせてまでして、自分たちの法外な要求を法の外形を利用して押しつけているのです。そんな悪どい商法に巻き込まれた人は哀れです。
 最後に、本作品は事実にもとづいているとの注記があります。読んでいくうちに気分が重たくなってしまいますが、それでも「ハイエナ・ファンド」と果敢にたたかっている人々も紹介されていますので、少しばかり救われもします。
(2016年10月刊。1800円+税)

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2016年12月17日

使用人たちが見たホワイトハウス

(霧山昴)
著者 ケイト・アンダーセン・ブラウワー 、 出版  光文社

アメリカの大統領宮殿はフランスにある古城とそっくりなのだそうです。
この本では、ホワイトハウスの建築デザインのもとになったのは、ダブリンに建つ18世紀のジョージアン様式の邸宅であり、現在はアイルランド議会議事堂として使われているレンスター・ハウスだとされています。どちらが本当なのでしょうか・・・。
そのホワイトハウスの仕組みと、そこに住んでいた大統領ファミリーの実情の一端が明かされています。
ホワイトハウスには132の部屋、147の窓、28の暖炉、4つの階段に3基のエレベーターがある。外からは3階建てに見えるけれど、実はふたつの中三階があり、6つのフロアーから成る。三階と四階がレジデンスと呼ばれ、大統領とその家族の居住スペースになっている。そこに総勢100人ものスタッフが働いている。
アッシャーは、案内係とか門衛と訳されるが、招待客や訪問客を案内する。チーフアッシャーの下で各部門の監督にあたる。メイドや執事(食事の給仕や銀食器の管理などを行う)がいる。ホワイトハウスには、96人の正規スタッフと250人の臨時スタッフが働いている。
スタッフ用のキッチンや貯蔵庫は地階に位置する。
大統領ファミリーのための食材は、身分を隠したレジデンスのスタッフが直接、食材を購入して安全を期す。何よりも匿名性が重要だ。ファーストファミリーのための食材だと誰も知らなければ、食材に毒を盛ろう考える者はいない。
レジデンス内で毒味役はいない。スタッフ自身が毒味役を兼ねる。そして、外で大統領が食事をするときには陸軍の担当者が厨房で監視し、準備や調理に目を光らせ、必ず毒味する。
クリントン大統領夫妻ほど感情的なカップルはいなかった。スタッフは、その激しい感情の起伏をたびたび目撃した。ホワイトハウスに働くことはローラースケートに乗っているようなものだった。
ジョンソン大統領はめったに満足せず、常に怒鳴り声を響かせていた。その気の荒さとあからさまな弱い者いじめのため、ジョンソン大統領と顔を合わせるのを避けるスタッフが多かった。
クリントン大統領が不倫騒動を起こしていたころ、クリントン大統領は、頭を数針も縫うケガをした。ヒラリーが、大統領を本で殴ったのは間違いない。
これって、有名な話ですよね・・・。ヒラリーは、よくカンシャクを起こした。この本にも、そう書かれています。
レーガン大統領は、任期中の75歳ころからアルツハイマー病の兆候が認められていた。そして、大勢のスタッフに囲まれて育っていく子どもたちがいました。思春期の難しい年頃をホワイトハウスで過ごすのは本人にとっても大変なことが多かったようです。
現在のキャロライン・ケネディ駐日大使もその一人です。いろいろ不祥事もあったようですが、すべては闇のなかです。口の固い人のみの職場なのです。
トランプ大統領が、子どもの学校の関係で、しばらくホワイトハウスでは単身赴任生活というニュースが流れていますが、当然なのでしょうね。
(2016年10月刊。2000円+税)

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2016年12月15日

黒い司法

(霧山昴)
著者 ブライアン・スティーヴンソン 、 出版  亜紀書房

この本を読むと、アメリカのような国になってはいけないと、つくづく思います。
アメリカは収監率が世界一高い。総受刑者数は1970年代の初めに30万人だったのに、今は230万人までふくれあがっている。執行猶予中や仮釈放中の人は600万人。
2001年にアメリカで生まれた子どもの15人に1人は、やがて刑務所に行き、今世紀中に生まれた黒人男性の3人に1人が将来投獄される計算だ。
いま死刑囚監房で刑の執行を待つ死刑囚は数千人。
25万人もの子どもたちが成人用の刑務所に送られて長期刑に服している。そのなかには12歳以下の子どもさえいる。3000人近い子どもたちが終身刑を言い渡された。
アメリカは、少年に対して仮釈放なしの終身刑を科すことのできた世界の唯一の国家だ。
薬物犯罪で刑務所に収監されている人は、1980年に4万1000人だったのが、いまでは50万人以上になっている。
アメリカの刑務所にかかるコストは、1980年に69億ドルだったのが、現在は800億ドル。そこで、民間の刑務所建設会社や施設サービス会社は、州政府や地元自治体に何百万ドルと献金して、新たな犯罪を創出し、より厳しい判決を言い渡し、塀のなかにもっと人を閉じ込めろと彼らを説得して、さらにもうけようとしている。
民間企業の利潤追求のせいで、治安を良くし、大量投獄のコストを減らし、そして何より受刑者の更生を促進するという方向に向かうべきサイクルが絶ち切られている。おかげで州政府は公共サービスや教育、医療福祉の予算を刑務所事業に割り振っている。その結果、かつてないほどの財政危機にある。
黒人の死刑囚は、そのほとんどが、全員白人かほぼ白人ばかりの陪審による評決を受けていた。黒人は陪審から排除されてきた。
アラバマ州は、すべての判事をきわめて競争の激しい党派選挙で選んでいる。このような州は、アメリカ全体で6州のみ。
海外の戦争からの帰還兵は戦争のトラウマをかかえて地元となり、刑務所行きになることが多い。1980年代半ばまで、刑務所人口の20%が戦争経験者だった。ひところは、この割合は低下していたが、イラク・アフガニスタン戦争の結果、再び上昇している。
子どもの死刑を認めている国は、アメリカのほか、いくつかしかない。
アラバマ州は、ほかのどの州よりも、世界中のどの国よりも人口あたりの少年死刑囚の割合が高い。アラバマ州では、殺人の被害者の65%が黒人であるのに対して、死刑囚の80%が白人が被害者となっている。
フロリダ州では、2010年までに、殺人ではない暴行罪で起訴された100人以上の子どもが仮釈放なしの終身刑を言い渡された。そのなかには13歳もいた。
13歳とか14歳で終身刑を受けているのは、全員が黒人かヒスパニック系。
アメリカでは、1994年から2000年にかけて子どもの人口が増加したにもかかわらず、少年の犯罪率は下がった。「スーパープレデター」(超凶暴な野獣)が到来するという予言はまったくの間違いだった。
アメリカの刑務所は、いまや精神障害者の「人間倉庫」と化している。大量投獄の主たる要因は誤った薬物政策と過重な量刑にあるが、貧困者や精神障害者をむやみに強制収容したことも、受刑者の記録的増加を招いた原因になっている。
2002年、連邦最高裁は知的障害者に対する死刑を禁止した。知的障害をもつ死刑囚は全国で100人。
2005年、連邦最高裁は子どもの死刑を禁じたが、そのとき死刑囚監房にいた子どもの既決囚は75人ほど。
アメリカでは、女性囚人が1980年から2010年まで646%も増えた。これは男性の増加率の1.5倍。全国で20万人もの女性が収容されており、100万人以上の女性が監視・管理下に置かれている。これらの女性受刑者の3分の2は、ドラッグや窃盗などの軽罪で入っている。女性受刑者の80%近くに未成年の子どもがいる。母親が収監されると、子どもたちは暮らしにくくなる。
いやはや、大変な国ですよね、アメリカという国は・・・。過度の重罰化は、こういう状況を生み出すわけです。寒々とした光景ですが、この本は、そのなかでも果敢にたたかっている弁護士によって書かれていますので、そこに救いがあります。
(2016年10月刊。2600円+税)

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2016年11月17日

錆と人間

(霧山昴)
著者 ジョナサン・ウォルドマン 、 出版  築地書館

サビをめぐる面白い話です。
アラスカには1300キロの長さの原油を運ぶパイプラインがある。そのパイプラインの中を錆探知のロボットが走っている。すごいロボットです。長さ5メートル、重さ4.5トンというのです。それをどうやってパイプラインの中を動かすのでしょうか・・・。並々ならぬ工夫と努力が必要なようです。そして、それをクリアーしてこそアラスカの地に人間らしい生活ができるというわけです。そこには、どうやら日本の科学技術も貢献しているようなのです。なにしろ、敵はサビです。どうやって見つけ、また、その手当てをするのが、難問ぞろいでした。
サビのおかげで、原子力発電所では少なくとも数人が死亡し、あわや原子炉がメルトダウンを起こしようになった。核廃棄物の保管も困難である。
世界最強のアメリカ海軍にとっての最大の脅威は、なんとサビなのである。そして、世界最強のアメリカ海軍は、サビとの戦いに敗北しつつある。
給水本管を守るため、水道水にも腐食防止剤が含まれている。水を陽イオン満載にして、腐食性を弱めようとしている。
宇宙にすらサビがある。そこでは分子酸素ではなく、原子状酸素があるからだ。ほとんあらゆる金属が腐食の餌食になる。
ニューヨークの港にある自由の女神像も骨組みがサビついていた。女神像にある1万2千個の骨組み用リベットの3分の1は緩んでいるが、あるいはなくなっていた。骨組みの約半数が腐食していた。
異種の金属同士が触れると腐食が起こる。それは、電池が機能する仕組みによる。銅と鉄の間に水分があるのは、こつの金蔵が接触しているのと同じほどの問題がある。結局、塗料のせいで、女神像は巨大な電池と化していた。
高さ91メートルの女神像の修復のためにカンパで集めた14億ドルがつぎ込まれた。
食品缶詰工場で働く人々の乳ガンの発症率は一般集団の2倍になっている。それも閉経前なら5倍である。
防食技術者の平均年収は10万ドル。防食技術者の11%は年に15万ドルを稼いでいる。年収20万ドルをこえる人も4%いる。
サビとは、金属原子が環境中の酸素や水分などと酸化還元反応を起こすことで生成される腐食物。
サビについて、人間との深い関わりを認識しました。
(2016年9月刊。3200円+税)

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2016年11月 3日

「その日暮らし」の人類学

(霧山昴)
著者 小川 さやか 、 出版  光文社新書

東アフリカのタンザニアで15年にわたって零細商人に密着し、そのタンザニアの町での商慣行、商実践そして社会関係を調査している日本人(女性)学者のレポートです。
ところ変われば、品変わると言いますが、日本人にはとても理解できない状況です。そこでは、日本人の一般常識はまったく通用しません。
タンザニアでは、一つの仕事に収入源を一本化するのは、リスキーなことである。
タンザニアの人々のもつ事業のアイデアは、その後の人生において実現することもあるが、少なくとも、その実現が一直線に目ざされることはない。
タンザニアの都市住民にとって、事業のアイデアとは、自己と自身が置かれた状況を目的、継続的に改変して実現させるものというより、出来事、状況とが、その時点でのみずからの資質や物質的、人的な資源にもとづく働きかけと偶然に合致することで現実化する。
このような仕事に対する態度は、彼らの危機的な生活状況を反映している。彼らは一方で、計画を立てても、本人の努力ではどうにもならない状況に置かれている。
計画的に資金を貯めたり、知識や技能を累積的に高めていく姿勢そのものが非合理、ときには危険ですらある。
「明後日の計画を立てるより、明日の朝を無事に迎えることのほうが大事だ」
一日くらい食事を抜いても、同じ境遇の仲間がいて、明日を語りあうことが楽しいと思えるし、重労働をこなせる自らを誇りに思うことができる。
広告産業が未発達なタンザニアでは、流行がコントロールされていないので、消費者の需要・嗜好の多様性はゆっくりとしか変化していかない。
タンザニアでは、2000年ころから、中国に渡航して商品を買いつける商人が急増している。国の法や公的な文書は価値をもたず、香港や中国に商人本人が出向いて、みずから対面交渉をし、そこで取引の詳細と輸送までの手続をたしかめる。そうしなければ騙されやすい。人々は大企業の権威を無視し、具体的な人間との関係性でしか動かない。対面的な関係こそが信頼できるすべてである。
旅行者扱いで短期的に中国・広州に入ってくるアフリカ人は年間20万人にのぼる。
中国のコピー商品は、消費者の心を動かす価格にまで一気に引き下げ、そこから売れた商品の価値を徐々につり上げていく。
アフリカでは、今、ケータイによる送金サービスが発展している。これは、銀行のサービスを利用できない人でも、利用できるので、どんな奥地の農村部でもつかわれている。
いやあ、目を大きく開かせられる思いのする、面白い本でした。著者は、よほどアフリカ、タンザニアの現地に溶け込んでいるようです。アフリカの人々の物事の考え方を理解するに役立つ本だと思いました。
(2016年7月刊。740円+税)

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2016年10月26日

移民大国アメリカ


(霧山昴)
著者 西山 隆行 、 出版  ちくま新書

アメリカには毎年100万人の合法移民が入国している。不法滞在者は1000万人をこえる。移民大国であるアメリカは、このところ中南米系とアジア系の移民が急増しており、2050年までには、中南米系を除く白人は人口の50%を下回ると予測されている。
日本と違って住民票の存在しないアメリカでは、10年ごとに人口統計調査が行われる。
アメリカの黒人は、1960年に人口の11%だった。2011年には12%で、2050年には13%と、横ばいで推移するとみられている。
中南米出身者は人口の17%であり、黒人をすでに上回っている。
アジア系は2011年に人口の5%で、2050年には9%にまで増大するとみられている。
共和党は、非白人票をあまり獲得できていない。中南米系は一貫して共和党より民主党を支持している。
白人ブルーカラー労働者は、1980年代以降、支持政党を民主党から共和党に変える傾向がある。主として黒人の福祉受給者に対する反発からである。
近年のアメリカでは、中南米系、アジア系、黒人のすべてにおいて、民主党に政党帰属意識をもつ人は、共和党に政党帰属意識をもつ人よりも多い。その結果、共和党は白人の政党、民主党はマイノリティの政党という傾向が顕著になりつつある。
オバマ大統領は、奴隷を祖先にもたない。アメリカの全黒人の10%が奴隷と関わりのない人々になっている。
日本では、人口10万人あたりの収監者数は58人。アメリカは730人。収容者には黒人男性と中南米系男性の比率が非常に高い。
アメリカは移民を受け入れることによって発展してきた国。アメリカは先進国のなかでも、生産年齢人口が増大し続けている稀有な国だが、それは比較的若年の移民を受け入れ続けているから。
なぜアメリカでトランプのような大統領候補が生まれ、一定の強固な支持を得ているのか、その理由を探る本でもあります。
(2016年6月刊。820円+税)

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