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ウォール街、欺瞞の血筋

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著者:チャールズ・ガスパリーノ、出版社:東洋経済新報社
 人々はインターネットでお金持ちになると信じたかった。感情が牽引力となった。
 建設労働者、秘書、バーテン、学校教員など、経済学を学んだことさえない人々が、銀行から預金をおろしてミューチュアルファンドに投資をしたり、証券会社から株を直接買って買いあさりはじめた。アナリストは投資家に下がったら買えと勧めることによって、値動きの激しいハイテク銘柄が下落したときでさえ、何十億ドルという資金を誘導して市場を下支えした。多くの投資家が、いい時期は永続きするものではない、という話を聞きたくないのは当然だろう。
 ウォール街のブローカーたちは、できるだけ多くのカモの資金を市場に呼びこむという、より大きな戦略の一翼を担っているにすぎない。最優良顧客は大企業だ。個人投資家が公平に取り扱われることは決してない。大手証券会社は、小売顧客を第二級市民として取り扱っている。
 貧困層に個人的なサービスを提供する時間的な余裕はない。このようにうそぶいている。
2000年3月からのピークから2001年3月までの1年間で、株価は60%も下落した。この損失はアメリカの歴史上最大規模の破壊(クラッシュ)だ。それは2兆5000万ドル、いや、他の市場をあわせると4兆5000億ドルが雲散霧消した。
 ウォール街の仕組みについてほとんど知識のない中産階級のアメリカ人が、ゲームのやり方を熟知しているブローカーに一生涯の貯蓄を預けてしまった。それは、短期間はうまく機能していた。しかし、市場が暴落したとき、すべてを喪ってしまうことになった。
 わずか3年ほど前には、アナリストはウォール街でもっとも人気のある職種だった。それが今では、大きなトラブルを引き起こすため、投資家にもブローカーにも、そして証券会社の法務部にも嫌われるパリア(最下層民)だ。
 ホント、アナリストって、今では口先だけの、あることないこと口からでまかせを言って信じこませようとするペテン師のイメージがすっかり身についてしまいましたよね。
 投資家にだまされるな。サブタイトルにそう書いてあります。今や多くの日本人の若者が自分こそはだまされないと信じ、ひがな一日、パソコンの前にすわりこんで投機の道に走っています。いえ、家庭の主婦も参加しているそうです。こんなことでいいのでしょうか。こんなことしてたら、日本の将来はお先まっ暗なのではありませんか。

安田講堂

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著者:島 泰三、出版社:中公新書
 1969年1月、安田講堂の攻防戦がテレビで実況中継されました。東大闘争とはこの攻防戦のことと思いこんでいる人があまりに多いので、私の親しい友人は、そのような誤った認識を少しでも解消しようと「清冽の炎」(花伝社)第1巻を発刊しました。
 この「安田講堂」は、社青同解放派のメンバーとして安田講堂に残留し、機動隊と「華々しく」闘い、懲役2年の実刑を受けた人による本です。
 要するに、安田講堂から東大生は卑怯にも全員逃亡したと世間から思われているが、実は、70人も残って闘ったのだ。そして、著者をはじめ懲役刑を受けた東大生が何人もいたということが著者の言いたいことです。そこには何の反省もありません。悪かったのは日本共産党系の学生であり、全共闘は正しかったという言葉のオンパレードです。いえ、考え方が違うのは、お互い、どうしようもないことです。でも、事実をこんなに曲げてしまっては困ります。私は当時、駒場の一学生でしたが、駒場には全共闘対日本共産党系学生そして右翼の学生しかいなかった、などと単純に片づけられていることにはすごい異和感があります。
 著者はマダガスカルのなぜのサル、アイアイの研究者でもありますので、私も、それらの本は感心しながら読みました。しかし、この本は、全共闘賛美につらぬかれているだけではなく、宮崎学の本「突破者」をうのみにした間違いが多すぎて嫌になってしまいます。「東大闘争資料集」を参照したのなら、もう少し事実を確認してほしかったと思います。
 たとえば、11月12日の総合図書館前の激突について、全共闘がぶつかったのは宮崎学らが指揮する「あかつき部隊」500人だとしています。全都よりすぐりの暴力部隊、暴力のプロだとされています。たしかに都学連部隊が予備として控えていたそうです。しかし、ここで全共闘と激突したのは駒場の学生(東大生)が主力でした(私も、その一人です)。
 12月13日の駒場の代議員大会についても、「日本共産党系部隊の公然たる暴力のなかで開かせ、その暴力で実現した会議決定」というのには、とんでもないデタラメさに噴き出してしまいました。あまりに全共闘を美化すると、こんなにも世の中のことが見えなくなるのですね。むき出しの暴力をふるったのは、当時すでに少数・孤立化していた全共闘の方だったことは、駒場の関係者に少し聞いたらすぐに分かることです。
 1月10日夜の駒場寮の攻防戦にしても、「部屋のひとつひとつの取りあいという市街戦に似た攻争」というのはまったくの間違いではないにしても、全共闘が制圧したのは三棟のうちの一つ、明寮の1階のみです。寮生であった私は、その2階にいたので(たまたま1階にいたら、全共闘に攻めこまれて2階へ逃げたのです)間違いありません。私の周囲には、ほかにも大勢の寮生がいました。いわゆる民青の外人部隊が大勢いたのも事実です。そして、このときには、たしかに「あかつき部隊」が来るというマイク放送があっていました。それにしても、中公新書という伝統を誇る新書にこのような間違った記述があると、それが歴史的事実だとして定着するのでしょうね。本当に恐ろしいことです。
 私の友人の本(先ほどの「清冽の炎」)は小説ですし、すべて真実だとは言いませんが、やはり歴史を語るのであればもっと客観的な事実をふまえてほしいと思います。「清冽の炎」はちっとも売れていないそうです。このままでは、2巻目以降の発刊は危ぶまれています。みなさん、ぜひ買って応援してやってください。

ダブル・ヴィクトリー

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著者:ロナルド・タカキ、出版社:星雲社
 第二次大戦中、アメリカ軍のなかでは黒人兵に対して、ひどい人種差別が横行していた。それは基地内でもあったが、より大きな不安は基地の外で待ちかまえている暴力だった。黒人兵士は上官から「基地の外に出るな。出ると帰ってこれなくなるぞ。リンチされてな」と警告されていた。実際、黒人2等兵が後ろ手にしばられて木に吊された死体となって発見されることがあった。
 黒人女性も兵士になっていった。しかし、軍服を着ても、市民として平等な権利を得たことにはならなかった。バスの待合室では相変わらず黒人専用のものしか認められなかった。だから、黒人たちはデトロイトとニューヨーク(ハーレム)でついに暴動をおこした。それをヨーロッパの戦場で聞いた兵士たちは、白人兵士も黒人兵士も、そして日系兵士も、連名で「なぜ、自由と平等と友愛の国であるはずのアメリカでこんなことが起きているのか。いったい我々は何のために戦っているのか」という書面をアメリカの新聞に送った。
 アメリカは大戦が始まると、日系人を強制収容所に隔離した。ジャップはジャップであり、一度ジャップに生まれれば、ずっとジャップなのだ、と。しかし、日系兵士としてアメリカ軍に従軍した若者たちが3万3000人もいた。
 アメリカ人が日本軍をどう見ていたか。このことも紹介されています。
 ヨーロッパでは、敵は食うか食われるかの存在であったことは確かだが、それでも人間だった。しかし、日本兵はゴキブリやネズミのような忌避すべき存在だ。
 真珠湾を忘れるな。奴らを殺し続けろ。これが海兵隊のモットー。ジャップを殺せ、ジャップを殺せ、ジャップをもっと殺せ。こう言ってハルゼー提督は部下を叱咤した。
 俺たちは黄色いネズミを殺すんだ。殺さないと平和はない。だから憎め、殺せ、そして生きるんだ。これは海兵隊の大佐が訓示した言葉。
 猿の肉をもって帰ってこい。これは出撃する部下へのある提督のはなむけの言葉だ。そして、本当にアメリカ兵たちは戦死した日本兵の頭皮、頭蓋骨、骨、耳を戦利品として収集し、本国へ持ち帰った。しかし、ドイツ兵やイタリア兵の遺体から歯や耳や頭蓋骨を収集することなど、まず考えられない。そんなことが知れたら大騒ぎになるのは間違いない。その意味で太平洋の戦いは人種戦争の側面を持っていた。
 アメリカ史上、おそらく日本兵ほど憎まれた敵はいなかった。激しかったインディアンとの戦いが終わって以後忘れ去られていた感情が、日本兵の残忍さで呼び覚まされたのだ。
 トルーマン大統領は、日本への原爆投下を決断したとき、けだものを相手にするときには、それ相応に扱わねばならないと考えた。しかし、さらに10万人を殺すのかと思うと、たまらない気持ちになって、トルーマン大統領は3発目の原爆の使用を禁止した。
 うーむ・・・。これを読むと、本当に複雑な気持ちになります。いずれにしても、アメリカには最悪の人種差別をする傾向と、同時に民主主義を守り育てていく力の両面があるということなのでしょう。だから、昔も今も、アメリカ万歳と手放しで賞賛し、追随していくなんて、私には絶対にできません。
 ところで、この本を読んで、映画にもなったあの「ミシシッピーバーニング」の被害にあった白人学生たちがユダヤ人であったことも知りました。1964年夏に有権者登録運動のために南部に赴いた学生たちの半分以上はユダヤ人だった。ミシシッピー州でジェームズチャニイと一緒に殺された公民権運動活動家のアルドルー・グッドマンとマイケル・シュワーナーもユダヤ人だった。それから、マルチン・ルーサー・キングの側近や、NAACPの有力な活動家はみんなユダヤ人だった。
 なるほど、そうだったのかー・・・。アメリカにおける人種差別の根深さを改めて思い知らされる本でした。

極刑

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著者:スコット・トゥロー、出版社:岩波書店
 私は、目下、死刑相当事案を国選弁護人として担当していますので、大いに関心をもって読みました。著者は私と同じ団塊世代であり、アメリカの現役の弁護士です。といっても、これまでに「推定無罪」「有罪答弁」「われらが父たちの掟」「囮弁護士」など、次々にベストセラー小説を書いています。私も感心しながら、これら全部を読みました。
 まず、前提事実としてアメリカと日本の死刑囚について、相違点を確認しておきます。
 アメリカには2004年12月時点で3471人の死刑囚、うち少年が80人がいます。死刑判決の件数は2004年は130件でした。1999年は282件でしたから半減しています。死刑執行も半減しており、1999年に98件でしたが、2004年には59件となっています。アメリカで死刑が再開された1973年から2004年までに944件の執行が確認されています。なかでもテキサス州は死刑執行が多く、全米の4割を占めています。イリノイ州では、死刑判決をするには通常の「合理的な疑いを越えて」より高いレベルの「いかなる疑いも越えて」を要求するという法案が審議中です。
 いま、日本の死刑囚は74人。死刑執行は年に1〜3人。死刑判決は2004年に14件と、2000年に入ってから2桁台を維持しています。
 アメリカでも死刑制度の見直しが議論されており、連邦最高裁のスティーブンス判事は、これまで非常に多くの死刑判決が誤って執行されたと語ったそうです。
 著者は1978年にシカゴで検事補になりました。アメリカには10人殺した殺人犯とか、33人もの少年を殺したという人間がゴロゴロいて、アメリカ社会の殺伐さに心が震えてしまいます。
 死刑が犯罪抑止効果があるかどうかという点については、どんな調査・統計によっても、その証明はされていない。むしろ、結果として、死刑が実は殺人を鼓舞しているとさえ指摘されている。
 アメリカの警察署長へのアンケートによると、回答した386人のうち67%は死刑によって殺人件数を減らすとは言えないと回答した。ただし、その多くは哲学的な理由から死刑制度を支持している。
 アメリカでは、死刑判決が出てから執行されるまで平均して11年半かかっている。その間の費用を問題にする人がいるが、それは国家財政の規模からみると、まったく問題にならない。
 イリノイ州では、第一級謀殺で有罪となった被告の70%は黒人、白人は17%でしかない。しかし、いったん有罪となると、白人の殺人犯は黒人の殺人犯の2.5倍の割合で死刑判決を受ける。そして、白人を殺害した犯人は黒人を殺害したときよりも、3.5倍の確率で死刑判決を受ける。
 著者は死刑執行を停止する制度に賛成しています。いま日弁連が提案しているのと同じです。
 死刑は被告人の改心の機会を奪ってしまう。我々と同じ道徳基盤に立って、責任を自覚して遺族に謝罪できたということは、本人のとって、また、法にとって崇高な勝利だ。
 このような体験が紹介されています。死刑制度について、よく考えられたアメリカの弁護士による本として一読に値すると思いました。

アジア南回廊を行く

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著者:宇佐波雄策、出版社:弦書房
 福岡県うまれの団塊世代の朝日新聞記者による本です。バンコク特派員、ニューデリー支局長、アジア総局長などを歴任したあと、九州国際大学でアジア概論の講義もしています。
 インドでは大理石はありふれているので、ちっとも珍しくない。木材の床の方がよほど高級である。富豪ほど、木造の住宅インテリアを好む。うーん、そうなんですかー・・・。
 ヒンドゥー教徒は、お墓を一切もたない。遺灰はガンジス川や海に流して、自然に環ることを最高の幸せとする。インド人にとって、死体は魂の抜けた遺体であり、単なるボディーにすぎない。
 ヒンドゥー教にとって、牛は313の神々宿る生き物としてあがめられる。牛殺しは母親殺しよりも重罪なのだ。ところが、水牛は死の神ヤマが乗る乗り物とされ、牛より劣る存在だ。だから、牛肉は食べないが、水牛の肉は食べている。
 インドのラジブ・ガンジー首相はスリランカのタミル人女性の自爆テロによって、1991年に首都ニューデリーで暗殺された。インド軍をスリランカに派遣したことへのうらみからである。スリランカでは歴代の大統領がタミル人反政府ゲリラに暗殺されている。1993年にプレマダサ大統領を暗殺したタミル人テロリストは2年間も忍耐強く時間をかけて大統領の日常行動、警備状況を徹底的に調べ、大統領のそばに徐々に近づいていって、ついに爆殺した。
 むむむ、これはすごいことです。これでは報復の連鎖が止まるわけはありませんよね。
 アジア全体のエイズ感染者は820万人。そのうち510万人がインド。インドでは南アフリカに次いでエイズ感染者が多い国。エイズ感染の危険度がもっとも高い売春婦はインドに230万人いる。そのほとんどが人身売買で売られてきた女性だ。売春女性の多くは文盲。コンドームの普及に取り組むNGOがある。コンドームの品質改良は韓国の医療メーカーが協力している。
 1997年にインド大統領になったナラヤナン氏は被差別カースト出身だった。インドの先住民であるドラビダ族の末裔である。独立インドの憲法を起草したアンベドカル博士も被差別カースト出身であり、カースト差別のない仏教に改宗していた。
 インドで1954年に発見されたという狼少年は、まったくの誤解だとされています。身体障害者の捨て子だったというのです。生後まもなく小児マヒになって、半身がマヒした男の子だった。
 インドでは、今でも狼に襲われて44人が死亡し、32人が負傷した。しかし、これは人間の人口が急増して狼の領域に侵入したり、ウサギやキツネのすみ家であった森林にすむウサギやキツネなどの小動物が減ったからだ。
 インドにはアンバサダーという国産車が走っている。何十年者あいだ同じスタイルで生産されている。この車は、インドの悪路で圧倒的な強さがある。部品に鉄製部品が多用されており、デザイン変更が長くないため、ちょっとした故障は簡単に直して走れる。
 日本の自動車メーカーであるスズキは軽乗用車をインドで生産しています。占有率7割といいますから、たいしたものです。

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