法律相談センター検索 弁護士検索

「心の不調」の脳科学

カテゴリー:人間

(霧山昴)

著者 加藤 忠史 、 出版 講談社ブルーバックス新書

 交感神経は、緊急時に対応するアクセル。副交感神経は休息時に対応するブレーキの役割をする。

完璧主義者や、物事を白か黒かに決めつけて判断する人、自己評価が低い人は、心や身体の不調に陥りやすい傾向がある。

 統合失調症と双極症は、遺伝的相関がとくに高い。

統合失調症の患者には肥満の人が多い。これは、薬の副作用で肥満になるケースが多いことを示している。統合失調症や双極症で肥満の人たちは、本来は、やせ傾向の体質をもっている可能がある。

 1930年代、アメリカの小児科病院で院内感染が広がった。そこで、赤ちゃんを一人ひとり隔離して、親に面会させず、医師や看護師もあまり接触しないようにした。すると、隔離箱に入れられた赤ちゃんは、十分な栄養は摂られていても、体重がどんどん減少して発熱が続き、入院前よりやせて死ぬ寸前の危険な状態になった。そのため、親が家に連れて帰ると、とたんに回復して元気になった。赤ちゃんを孤独にしていたのが良くなかったと医師が気がついて、赤ちゃんを抱いたり遊んだりしてあげると、その死亡率は大きく減少した。そうなんですよね。人間は一人ぼっちでは生きていけないのです。

社会的に隔離された養育環境で育つと、心筋梗塞や呼吸器の疾患、糖尿病、高度の肥満になる確率が高まった。また、うつや自殺企業など、メンタルヘルスにも大きな問題をかかえ、死亡リスクが高まる。

 虐待された子どもの大半は、虐待を繰り返さなない。自分の子への虐待を繰り返すのは半分しかいない。小児期の逆境体験が心に与える影響は大きい。それでも、取返しのつかないほどではない。

子育てに必須のCMPOAは、孤立を感じて仲間を求める行動を起こす脳領域でもある。

 うつ病や双極症では、多くの場合、何らかの症状が小児期からあらわれ、成長とともにゆっくりと本格的な症状に進行して、思春期に入るころにうつ病や双極症と診断される。

 うつ病の遺伝要因をもつ子どもは、ネガティブな表情に対して脳が強く反応する一方で、ポジティブな表情に対する反応が相対的に弱い傾向がある。

脳の機能には、意識的に変えることのできる余地がたくさんある。

 ギャンブル依存症は、人間性や意思の弱さが原因でギャンブルがやめられないのではなく、脳の働き方が変わってしまう精神疾患。つまり、病気なのです。ギャンブル症や物質依存の人は、報酬に対して、報酬系があまり活発化しない。

 ネット依存の大きな問題点は、患者の大半が中・高校生から大学生までの思春期の人たちだということ。

 うつ病を引きおこす主な原因の一つは、脳内炎症ではないか……。脳内炎症が続くと、やがてタウというタンパク質が蓄積して、神経細胞の機能が低下したり、細胞死が起きたりする恐れがある。タウの蓄積は、アルツハイマー病の患者の脳内で起きている。

 レム睡眠は、「浅い眠り」と言われることがあるが、間違い。ノンレム睡眠よりも深い眠り。

眠り始めた最初の3時間に成長ホルモンがたくさん出る。成長ホルモンがたくさん分泌される条件は、夜10時に眠ることではなく、眠りの最初の3時間で2回ほど訪れるノンレム睡眠N3で非常に深い眠りをしっかりとること。

 ノンレム睡眠の非常に深い眠りのときにストレスホルモンの分泌量が低下し、ストレス反応がリセットされることで身体が回復し、免疫機能も活性化する。ノンレム睡眠の深い眠りは、記憶を定着させて長期間忘れないようにするためにも重要なこと。

 レム睡眠のときの血流量が、覚醒時やノンレム睡眠のときよりも2倍に上昇する。レム睡眠はとても特殊な脳の状態で、活発になった血流に乗って、神経細胞にたくさん酸素や栄養が運ばれ、高廃物が一気に回収される。

 コーヒーのカフェインは、レム睡眠による大脳皮質のリフレッシュ効果を防げる作用をしている可能性がある。レム睡眠には、クールダウン効果があるのかもしれない。

 レム睡眠の短さは、認知症と死亡率の高さと関連している。レム睡眠は、脳の発達や老化にも関係している可能性がある。

睡眠の役割は、不良品タンパク質が増えないように全身の活動を止め、タンパク質の合成量を低下させることにある。

 ストレスをためないこと、定期的にストレスを発散すること。これが私の健康法の一つです。

(2026年1月刊。1320円)

すごい人体、やばい人体

カテゴリー:人間

(霧山昴)

著者 カラン・ラジャン 、 出版 河出書房新社

 人間は、身体の内部で薬をつくっていると聞いて、私はひっくり返りそうになるほど驚いたことがあります。すごい力を人体はもっているわけです。無意識のうちに人体はやっているわけなので、意議ある身としては、それを妨害せず、むしろ手助けするようにしたいと考えています。

 人は眼で情報を集めて、脳で物を見ている。そうなんですね、眼が見ているというのは不正確なんです。そして、物には色がついていないというのも不思議です。赤いリンゴを見ているとき、そのリンゴが赤いのではなく、リンゴから反射された光の波長にもとづいて電気信号やデータポイントのパターンを形成し、赤い色を知覚している。脳が赤いリンゴの反射する光の波長を、その物体の周りにある他の波長と比較している。見ているのは信号を翻訳したもの。

 糖尿病により血液中の酸素が慢性的に減少すると、網膜は供給量を増やそうと必死に血管を増殖させようとする。血管が網膜の前にあるため、血管の増加は視力をさらに悪化させる。

 ヒトの脳には10億個の神経細胞がある。各神経細胞が他の1000個の神経細胞と接続しているため、1兆個以上の接続ポイントがあることになる。これは、1兆データポイント分の記憶容量があることを意味する。

 ヒトの記憶は、ほぼ作り話、フィクションだ。記憶を呼び起こすことは、本質的に伝言ゲームだ。

脳には、痛みの受容体がない。

ヒトを除く、あらゆる哺乳類は、身体の大きさにかかわらず、一生涯に刻む平均の振動回数は5億回と、ほぼ同じ。これをルブナーの法則という。ヒトにあてはまらないのは、医・科学の迫害によって、振動回数をのばすことができるようになったから。

 肝臓は、脂肪を分解してエネルギーを取り出すと同時に、タンパク質、ホルモン、切り傷からの出血を止める凝固因子などを生成する。肝臓が果たしている機能は少なくとも500はある。これを機械で代替するのは不可能。肝臓の再生能力は驚異的で、70%を誰かに提供しても、わずか2~3ヶ月で正常に戻る。

 適度なストレスは、ヒトにとって良いもの。ストレスは体液の循環を促進し、心拍数を増やし、血液循環を効率化する。

 三交代勤務の人は、さまざまな種類のがんや代謝疾患、精神健康の問題を抱えている。そして心血管疾患のリスクも著しく高くなる。先日、変則三交代勤務の人と話していたら、身体がなかなか慣れないと、こぼしていました。この本によると、それはわずかなお金をもらうのとひき換えに健康を損なっていることになります。

夜10時を過ぎたら、子どもも大人も寝床(布団)に入って眠ったほうがいいのです。ちなみに私は今、夜10時半に寝て、朝は6時前に起きます。もう朝は明るくなっています……。

(2025年9月刊。2860円)

池田屋事件の研究

カテゴリー:日本史(江戸)

(霧山昴)

著者 中村 武生 、 出版 講談社現代新書

 元治(げんじ)1年(1864年)6月5日に起きた池田屋事件の背景と推移を明らかにした新書です。

池田屋事件のきっかけは、古高(ふるたか)俊太郎の逮捕。古高が、その日の朝、新選組に捕らえられたことを知った長州毛利屋敷に集まった人々は実力で古高を奪還しようと考え、池田屋に集合した。古高は、実は、萩毛利家の世子の腹違いの兄の生母の再婚相手の孫。

文久3(1863)年、長州藩は、考えを改めた。外様猪俣は将軍の臣下ではなく、将軍をふくめて天皇の直臣(じきしん)とする。ただし、これは倒幕ではない。徳川政府はあってよいが、朝廷を決めたことを執行するだけの機関とするという考え方。

 8.18政変が起きて、薩摩島津家は、京都守護職の松平容保の協力を得て、長州の勢力を京都から放逐(ほうちく)した。同時に、三条実美ら七卿を西国・大宰府へ追いやった。(七卿落ち)。

 文久4(1864)年1月、天皇は、将軍や徳川譜代大名による合議制の政治をすすめた。そして、2月、長州征討が決められた。ところが、天皇の指示文書は薩摩がつくったことに慶喜が気がついた。天皇と島津久光が接近するなんて、とんでもなく危険なこと。そこで慶喜は、3月に参預諸俣の会議体を解散した。

 新選組は文久3(1863)年3月に創立された、京都守護職松平容保附属の浪士集団。新長州の浪士集団に対抗するためのもの。

長州関係者は、積極的に古高に近づき、有栖川宮家との多くの接触を依頼していた。

 長州は、宮家や堂上へ、スパイを潜入させていた。古高邸は、情報センターのような役割を果たしていた。新選組が古高を捕まえ、その供述によって池田屋襲撃が始まったという通説は間違い。新選組は、この日までに浪士たちの潜伏場所を207カ所もつかんでいた。

池田屋事件は、長州兵の大挙の京都攻撃=禁門の変を誘発する危険があった。新選組が池田屋を襲撃したとき、桂小五郎は、そこにいたが、すぐさま屋根を伝って逃れて対馬屋敷に入った。狭い池田屋を舞台として2時間あまりの死闘が繰り広げられた。しかし、その結果の戦死者が誰なのか、今なお不明。

 古高逮捕や池田屋襲撃をへて、会津の長州への敵意は頂点に達しようとしていた。先手を打たないと、こちらがやられるという危機意識をもっていた。

6月15日、長州の来島又兵衛が遊撃軍を率いて山口を先発した。ただし、長州勢は合戦のためではなく、嘆願のために京都に向かった。

 元治1年(1864)7月18日、慶喜は長州勢の排除を決め、孝明天皇が長州追討の勅命を下した。一橋慶喜は、孤立していた会津・桑名と手を組んだ。ここに一会桑権力が成立した。同日、禁門の変が始まった。長州は戦いに敗れた。

 一会桑権力の最重要軍事力は新選組だった。150人ほどの兵力というが決して少なくない。軍事的精鋭によって構成されているから。

池田屋事件について、本書は禁門の変の契機となった事件としています。

(2011年10月刊。1320円)

冤罪の深層

カテゴリー:司法

冤罪の深層

(霧山昴)

著者 前澤 猛 、 出版 新聞通信調査会

 再審法の改正が国会にかかろうとしています。法務省は再審決定に対して検察官が異議申立できることを死守しようとしています。でも、検察官は再審が始まってもその手続の中で自らの主張は十分展開できるのですから、現在のように再審が開始されるまで何年・何十年とかかっている状況を変えるべきなのです。この関係で、自民党の稲田朋美議員(弁護士でもあります)が頑張っています。すっかり、見直しました。

 そして、検察官の手持ち証拠の全面開示は当然のことです。証拠は有利・不利を問わず検察官の私物ではありません。そもそも検察官は公僕として社会の負託を受けて行動すべき存在なのです。自分に不利だから証拠を隠すなんて絶対に許されないことです。

著者はジャーナリストです。NHKをはじめとするジャーナリストの事なかれ主義・権力迎合があまりにも目立ちます。高市首相がトランプ大統領に抱きついたり、妙にこびを売っているのに対して、正面からおかしいと批判しないジャーナリストが多すぎます。嫌になります。

 この本によると、「世界報道の自由度ランキング」で、日本は戦界180カ国・地域のうち、なんと70位(2024年5月)です。私は、さもありなんと思います。

いまSNS頼みの若い人たちは活字メディアを「オールドメディア」として信用していないようです。根っからの活字人間である私は、決して「オールドメディア」だからダメ、なんて思いませんが、それでも、もう少し気骨ある報道をしてほしいと心から願っています。

 さて、本編の冤罪です。冤罪なんて昔の話……と決して言えない事件が最近も相次いています。袴田事件、大川原化工機事件、滋賀・日野町事件、福井・中3殺害事件……。

どうして、こんなことになっているのか……。警察の自白偏重の見込み捜査、検察・裁判所での事なかれ主義の横行が原因です。今も続いています。これは、弁護士生活50年をこえる私の実感です。

 なかでも、東京地裁の裁判官たちがガン患者であることを知って保釈を認めなかった大川原化工機事件はあまりにひどすぎると私も思います。遺族が裁判官たちを訴えて国家賠償請求訴訟を提起しましたが、当然のことです。裁判所が身内の裁判官を弾劾できるのか、しっかり監視したいと思います。

 再審裁判で無罪を言い渡した名古屋高裁(小林登一裁判長)は、無罪判決を言い渡した直後、裁判官3人がそろって被告人(「吉田翁」と裁判長は呼びかけました)に対して頭を下げたのでした。せめてそれくらいのことをすべきなのです。

 なお、この本によると、「片手落ち」は差別語ではないとのこと。「片手が落ちた」のではなく、「偏った処理」を言うのです。

著者は最近93歳で亡くなっています。貴重な遺稿なのでした。

 私は、オールドメディアにまだまだ期待しています。SNSにあふれる偏向報道・権力追従が横行していますが、弱い者バッシングに対してメディアもジャーナリストも負けてほしくありません。

 

(2025年3月刊。1650円)

火葬秘史

カテゴリー:社会

(霧山昴)

著者 伊藤 博敏 、 出版 小学館

 東京都内23区に火葬場は6つあるが、それは自治体(区)の運営ではなく、東京博善という民間会社による。そして、この会社は「ラオックス」を率いる中国人経営者・羅怡文氏グループの傘下企業。

 東京博善は売上高90億円、営業利益は40億円という高収益の超優良企業。ひところ、政商として名高い小佐野賢治が支配していたが、身内の死が相次いだことから縁起悪いとして売り出されて、羅氏グループが取得した。私は中国人が経営する企業だからといって、それを問題にするつもりはまったくありません。排外主義に立つのではなく、現実を直視すべきだと言いたいのです。

 東京博善は、薩摩藩の出入り商人である木村荘平が初代の警視総監の川路利良の招きで上京し、まずは「食肉利権」で財を築き、そのあと火葬場で蓄財したもの。

木村荘平は「妾」20人に、実子が30人。その子どもたちには有名人がズラリ……。作家の木村壮太、画家の木村荘八、直木賞作家の木村荘十、映画監督の木村荘二など……。

 古代の日本人の庶民は風葬。つまり、山や河原に遺体を放置するというもの。墓をもつという発想がなかった。今、チベットの60年前の探検記を読んでいますが、チベットでも火葬したあとの骨を拾うことはなく、そのまま河原などに放置していたそうです。墓はありませんでした。今はどうなっているのでしょうか……。

 鎌倉時代から火葬が一般化しはじめた。ところが、明治になってから、神道を国教化するなかで、火葬が禁止された(明治6年)。しかし、天皇家でも火葬してきたこともあり、火葬禁止令は2年後に解除された。

 かつて日本は土葬社会だった。1940年代までは土葬が主で、墓地までの「野辺送り」を経験した人が今でもいる。その後は火葬が増えてきて、今では100%に近い。

「骨をきれいに残す」という習俗は日本特有のものだが、それも最近のものでしかない。東北地方の葬儀業者の9割は戦後に創業している。

現在の火葬場は無煙無臭。主燃焼室の直上に再燃焼室を設置している。火葬場の象徴であった高い煙空がなくなり、外観の工夫で排気筒が見えなくなった。

 本来、仏教にケガレという観念はない。墓石を立てて戒名を刻む一般墓は150万円で、その時代は終わった。納骨堂なら77万円、樹木葬は67万円。お墓は引継ぎたくないし、引き継がせたくない。樹木葬でも合葬墓タイプなら4~15万円。海洋散骨も業者まかせなら、2~3万円ですむ。

 火葬の今昔について、深く知ることが出来ました。

(2026年1月刊。1980円)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.