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ドイツ・イデオロギー

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著者:マルクス、エンゲルス、出版社:新日本新書
 哲学者たちは、世界をさまざまに解釈しただけである。肝要なのは、世界を変えることである。
 有名なセリフです。これがマルクスの言葉だったのか、エンゲルスの言ったことだったか分からなくなっていましたが、この本を読んで、マルクスの言葉だったことが分かりました。学生時代にこのフレーズに出会ったとき、新鮮な衝撃を受けたことを、今も鮮明に思い出すことができます。
 この本は、マルクスとエンゲルスの草稿写真によって完訳を試みたもので、新訳となっています。大変読みやすい内容です。
 人間の思考に対象的真理が得られるかどうかという問題は、理論の問題ではなくて、実践の問題である。実践において、人間は真理を、すなわち、彼の思考の現実性と力、此岸性を証明しなければならない。思考が現実的であるか、それとも非現実的であるか、にかんする論争は、それが実践から遊離されると、純粋にスコラ的な問題である。
 私の大学生時代、学園内ではスコラと称する「理論闘争」が流行っていました。要するに論争です。並木路のあちこちで、セクトの論客たちが口角泡を飛ばして論じあっていました。
 意識が生活を規定するのではなくて、生活が意識を規定する。なるほど、そのとおりだと、つくづく思います。しかし、もう一方では次のような指摘もあります。
 支配階級の諸思想は、どの時代でも、支配的諸思想である。すなわち、社会の支配的な物質的力である階級は、同時にその社会の支配的な精神力である。物質的生産のための諸手段を自由にできる階級は、それとともに精神的生産のための諸手段をを意のままにするのであるから、それとともに、精神的生産のための諸手段を欠いている人びとの諸思想は、概してこの階級の支配下にある。支配的階級を形成する諸個人は、とりわけ意識をももち、それゆえに思考する。思考する者として、諸思想の生産者としても支配し、彼らの時代の諸思想の生産と分配を規制する。
 先日発足した安倍内閣の支持率は、なんと7割もあるということです。今、テレビを毎日3時間以上みている人の7割が小泉を支持しているという世論調査の結果があったなんていう恐ろしい話を親しい友人がしていました。マスコミを握る支配階級が貧しい人々の心をつかんでいるのですね。恐ろしいことです。幻想にとらわれた人々をうまく操っているのが小泉でしたし、今の安倍だと思います。
 国家は、支配階級の諸個人が彼らの共通の諸利害を貫徹し、ある時代の市民社会全体が総括される形態であるから、その帰結として、あらゆる共通の制度が国家によって媒介されて、政治的な形態をとることになる。そこから、法律は、意志に、しかも、それの現実的土台から引き離された意志である自由な意志にもとづくかのような幻想が生ずる。同様に、権利は、その場合にこれまた法律に還元される。
 マルクス主義は古いとかいいますが、こういう指摘を読むと、うむむ鋭いぞ、これは、と思わずうなってしまいます。私は孔子の本も道元や空海の本も読みますが、マルクス・エンゲルスの本も、まさに古典として大いに読み直したいと考えています。どんなに古くても、やはり、いいものはいいのです。

競争やめたら学力世界一

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著者:福田誠治、出版社:朝日新聞社
 フィンランド教育の成功というサブタイトルがついています。いやー、実に良い教育ですよ。こんなに伸び伸びとした教育を受けることができたら、本当にどの子もすくすくと学力が伸びると思いますね。今の日本では全国どこでも中高一貫の学校がもてはやされていますけれど、私は大いに疑問です。なにより、それがうまくいったとしても、格差を拡大させるばかりで、日本社会は現在のアメリカ社会のように暴力が横行する、すさんだ社会になってしまうでしょう。それも私は心配です。
 世界学力調査でフィンランドはずっと世界一位を誇っています。この本は、人口500万人の小国フィンランドが教育の力によって世界のIT産業の先端にいる秘密を探っています。フィンランドの面積は日本とほとんど同じで、宗教はルター派キリスト教徒が85%。
 フィンランドでは高校間格差はほとんどないので、たいてい地元の学校に進学する。職業学校への進学率が高い。フィンランドの学校は、できない子の底上げはするけれど、できる子は放っておく。できるから。そもそも、学校は生徒の成長を支援するところだ。
 フィンランドの教育の特徴は、ひとことで言うと、いやがる者に強制しないということ。あの手この手で促しはするけれど、要は本人のやる気が起きるまで待つ。というのは、人間というものは、もともと興味・関心をもって、自ら学んでいくものだから。強制すれば、本来の学習がぶち壊しになってしまい、教育にならず、かえってマイナスだ。
 私は、ホントにそうだと思います。思い出すと、私も大学受験のとき、たくさん本を読みたいものだと痛切に願っていました。いま、腹一杯、本が読めて、本当に幸せです。
 フィンランドの教育は、自分で学べ、うまく学べないときには援助する、というもの。
 大学には同年齢の30%が、高等職業専門学校には35%が進学する。このほか、大人も成人学校で学んでいる。だから、フィンランドは、世界有数の高学歴社会だ。普通科高校では、1994年に学年制が廃止され、単位制になった。大学に入学するまで、たいてい2〜3年かけて社会的経験するのが普通なので、それほど卒業を急がない。
 国は教科書の検定をしない。教科書の作成過程には教師組合の代表も、教師も加わり、一部の者が独走することはない。教科書を選択するのは一人ひとりの教師であり、それを校長が承認する。教科書は一つの教材でしかなく、その使い方は教師個人にまかされる。
 一クラスの生徒は24人まで。午後4時になると、生徒も教師もいなくなる。教師は授業が終われば、生徒と一緒に帰宅してよい。夏休みの2ヶ月間も、まるまる学校に来なくてよい。だから、フィンランドの教師は、おそらく世界一じっくり準備して授業にのぞむことができる。
 職員室は、教師がくつろぎ情報交換する場であり、日本のように会議をするところではない。教師は、同じ学校に定年まで勤めることがほとんど。
 フィンランドの子どもたちは、競争やテストがなくても、なぜかよく学んでいる。
 フィンランドは図書館利用率が世界一。一人あたり年21冊を借りている。日本は年に4.1冊。人口56万人のヘルシンキ市に図書館が38もある。同じ規模の日本の都市だと6〜13ほどしかない。私の町では、移動図書館(バス)まで廃止されてしまいました。
 教師と生徒にゆとりがあると、学力が伸びるという見本のような国です。日本も参考にすべきだとつくづく思いました。

雷鳥が語りかけるもの

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著者:中村浩志、出版社:山と渓谷社
 ライチョウは有名ですが、残念なことに、私はまだ現物を見たことがありません。
 この本を読んで、人を恐れない日本のライチョウは、実は世界で珍しい存在だというのを知りました。アメリカでは、ライチョウは人の姿を見たらすぐに飛んで逃げていくそうです。人間に射たれて食べられるからです。そう言えば、我が家にすむスズメもそうです。家の屋根瓦の下に巣をつくっていますし、しょっちゅう出入りしているくせに、巣を出入りするときだけは物音ひとつ立てません。実に静かにしています。でも、いったん外に出たら例のピーチクパーチクとかまびすしいこと、このうえありません。
 高山にすむライチョウの写真がたくさん紹介されています。日本のライチョウは静かに近づくと1メートルの距離でカメラを構えて写真がとれるそうです。わが家の常連のキジバトは2メートルが限界です。毎朝エサをやっていても、そうなのです。
 ライチョウは飛べないわけではありません。ちゃんと飛べます。日本のライチョウは人間にいじめられてこなかったので、人の姿を見ても逃げないのです。ライチョウは高山にすむ神の鳥として、古来からあがめられてきたのです。
 ライチョウが高山にしかすまないのは、ライチョウが氷河期の遺留動物だから。高山は氷河期の気候に似ているので、雷鳥はそこで生き延びることができた。
 雷鳥は北海道や東北地方にはすんでいない。標高が高くても、高山帯の面積が小さいので生きのびることができなかった。本州には、強い風と冬に多い雪があり、一年中、葉が緑のハイマツがある。そこは雷鳥の営巣場所として、また隠れ場所として雷鳥にとって重要な役割を果たしている。また、ヒツジが日本にいないことが幸いした。ヒツジは白い悪魔だとも言われている。山の草々を食べ尽くしてしまうから。それでは雷鳥は生き残ることができない。
 雷鳥のオスはナワバリをめぐって激烈なたたかいをくり広げる。メスを確保すると、オスはメスを守ってつがいをつくる。ヒナがかえるとメスが子育てをし、オスは単独行動になる。ヒナは天敵のオコジョに補食されたり、危険が高い。だいたい3分の1以下に減ってしまう。
 冬のあいだ、ライチョウは、とにかくじっとしている。動かず、じっとしていると目立たない。それが最良の護身術なのだ。
 中央アルプスにもかつてライチョウがいた。しかし、駒ヶ岳にロープーウェーをかけ、年間に数十万人もの人間が入るようになって、数年のうちにライチョウはいなくなった。
 ライチョウのオスのナワバリは平均して直径300メートルほどの大きさだ。ライチョウはニワトリに近い種類なので、砂浴びが大好き。
 一夫一婦のライチョウだが、まれに一夫二妻のライチョウもいる。
 日本に生息するライチョウは、3000羽ほど。ライチョウの夫婦は、翌年も生き残るのは全体の3分の1ほどにすぎない。ただ、オス・メスともに生きていたら、翌年も同じペアを組む可能性は高い。
 ライチョウが減っているのは、日本に高山気候の地域が少なくなったことにもよると指摘しています。つまり、地球温暖化がここでも原因となっているのです。ライチョウ保存の試みも始まっていますが、なかなか難しいようです。
 実物のライチョウをぜひ山で近くに見たいと思いました。

警察VS警察官

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著者:原田宏二、出版社:講談社
 警察官でありながら、警察の不正・まやかしとたたかっている人々を紹介した本です。世の中にはこんな勇気をもっている人がいるんだなと改めて人間の偉大さに感銘を受けました。
 警察の裏金づくりは昔からあり、きっと今も続いているのでしょう。ところが、マスコミはまったく問題にしていません。残念なことに権力に歯向かう勇気がないからです。
 裏金の使途は、上層部のヤミ手当、官官接待の費用、異動時の餞別、部内の飲食などにあてられる。その金額は300〜400人規模の警察署で年間6000万円は下らない。現場の捜査員などの激励経費にあてられることもあるが、それは例外。裏金システムは幹部が自由につかうためのものであり、現場の警察官のためのものではない。その手口は全国一律。裏金システムがばれないためのつじつまあわせの事前準備が、国の機関である警察庁会計課の指導で入念に事細かに行われている。
 いやあ、ひどい話ですよね。不法を取り締まるべき立場の公務員が、税金を私物化していて、誰も問題にしないというのですからね。
 勇気ある人々を励ますためにも、ぜひ、あなたにもこの本を買って読んでほしいと思います。

サイバー監視社会

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著者:青柳武彦、出版社:電通通信振興会
 アメリカのチョイスポイント社の個人情報データベースには2億2000万人について250テラバイトの情報が蓄積されて、毎日4万データが追加されている。ここが、大規模のなりすまし犯罪グループに情報を渡してしまった。犯人グループは、身元を偽って50件のアカウントを同社に登録し、正当な目的で情報を閲覧するように見せかけて、消費者の名前・住所・社会保障番号、クレジット履歴などの個人情報を引き出した。14万5000人の個人情報が漏れた可能性がある。
 プロの犯罪集団はここまでやるのですね。コンピューターに登録された情報は、どんなに守ろうとしても漏れていく危険があるということです。
 京都府宇治市の住民基本台帳のデータが流出した事件で、市民がプライバシーを侵害されたとして市に損害賠償を求めて訴訟を起こした。裁判所は1人について1万5000円を認めた。これは市の委託を受けたデータ処理システム会社のアルバイト従業員がデータを複写して社外に持ち出し、名簿業者に販売したもの。1人1万5000円といっても、住民全員が原告となったとしたら、総額は31億円を上まわることになる。
 この本では、Nシステムも街頭の防犯カメラもその有用性が強調され、危険性は軽視されています。私は、社会全体の連帯心をもっと高める総合的方策をとるべきだと考えていますので、著者とは考えを異にします。それでも、問題を多角的に考えようとする姿勢自体は評価できると思いました。

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