弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
宇宙
2012年8月 6日
宇宙就職案内
著者 林 公代 、 出版 ちくまプリマー新書
夏の夜は、寝る前にベランダに出て望遠鏡で月面を見るのが楽しみです。それが出来るのは2ヵ月もありません。満月になった月世界をじっと見つめていると、ウサギこそ跳びはねたりはしていませんが、きっとここには生物が隠れてすんでいる。そんな気がしてなりません。ベランダに出て夜の冷気で火照った身体を冷やし、ゴザシーツに身体を横たえると、すうっと安らかに眠ることができます。さすがに窓全開ということはしません。風をひいたら困りますから。若いころに、ベランダで毛布にくるまって寝たこともありましたが、外は夜は意外に冷えこむものですから、年齢(とし)とった今は、そんな無茶は決してしません。
現代の天文学者は、夜はちゃんと眠っている。うへーっ、そうなんですか。夜中じゅうずっと、空をのぞいているものとばかり思っていました。
実は、ほとんどの天文学者は望遠鏡にさわらせてもらえない。望遠鏡を操作するのはオペレーターと呼ばれる専門の技術者で、コンピューターによって操作している。天文学者は観測よりも、観測データと向きあっている時間のほうが長い。
日本で、天文学を職業としている人は700人ほど。
天文学者は1日を24時間ではなく、30時間制をとっている。
観測屋は天候に左右されるから根気と気の長さが大切だ。
宇宙飛行士の危険の確率は1%。往復の宇宙船で100回に1回は事故が起こる確率がある。ええっー、これって、すごく高い危険率ですよね。なにしろ事故が起きたらほとんど即死でしょうからね・・・。
宇宙船では、水が最高のぜいたく品だ。1人3.5リットルの水を消費する。この水をロケットで運搬すると、コップ1杯の水が30万円になる。そこで、尿から飲料水をつくっている。昨日のコーヒーが今日のコーヒーになり、また明日のコーヒーが作られる。味は、地上で飲む水とそれほど変わりはない。
昔、朝起きたときの最初の尿を飲むと健康にいいというのが流行していました。私の同期の弁護士も実践していたようです。でも、何となく抵抗がありますよね。といっても、宇宙では仕方のないことですね。雪山で遭難したときなど、自分の尿を飲んで助かったという話はよき見聞きしますので、それよりまだはるかにましでしょうね。
宇宙飛行士の一日の生活はスケジュールがぎっしりで、ものすごく忙しいとのことです。15分刻みで作業が組まれているそうですから、大変です。途中で作業放置して、ごろっと横になって休むこともできないのでしょうか・・・。なにしろ、四六時中、地上の健康管理チームに見張られているようですから、相当タフな神経じゃないともちませんね。
これまで宇宙にとびだした人類は500人。そのうち7人が一般人の旅行客。20億円という旅行代金を支払って宇宙に行った。大富豪だ。そして、日本人13人をふくめて世界で500人が予約待ちをしている。すごいですね。世界には、物好きで生命知らず、そしてお金の使い道に困っている富豪がこんなにたくさんいるわけです。
日本の宇宙産業の市場規模は2009年まで8兆円に近い。
宇宙って、遠いようで、案外、近いところもあるなって思いました。
(2012年5月刊。780円+税)
10月の気候・稚内
稚内に行ってきました。稚内空港で飛行機から降りて外に出ると、冷やっとしました。37度の福岡から昼間でも23度という世界にやって来たのです。
さすがは日本最北端。日差しは強いものの、夕方になると膚寒さを感じ、九州の10月でしょう。
稚内で驚いた三つのこと
第一に、商店街を歩いていると、シャッターの閉まっている店が多いのは全国共通ですが、ナントキリル文字があちこちに。ロシア人向けなんです。たしかに、チラホラ見かけます。
第二に、街角(まちかど)に運命鑑定の男性を三人も見かけました。女の子たちが足を停め熱心に聞いていました。道行く若者に呼びかける積極性も見せます。まるで、東京・銀座です。
第三に、住宅地の真ん中に空地にエゾシカが2頭、立っていました。稚内は海に面していると同時に、すぐ山が迫っているのです。
2012年3月19日
太陽と地球のふしぎな関係
著者 上出 洋介 、 出版 講談社ブルーバックス
人間の体からも赤外線というエネルギーが出ている。そのため、赤外線カメラで真っ暗闇でも写真をとることができる。
そうなんですね。人間の体はエネルギーを出し、電気を起こし、体内では薬もつくっているのですよね。不思議です。
人間にとって太陽とは、変わることなく地球を照らしてくれるという信頼感そのものである。しかし、残念ながら、太陽はそんな安定したエネルギー源ではない。
ガリレオ・ガリレイは太陽をずっと観察し、そのスケッチには黒点の形と動きが正確に描かれている。しかし、日の出、日の入り付近のまぶしくない太陽の観察とはいえ、太陽を見続けることが網膜や視神経にいいはずはない。ガリレオは晩年には失明してしまった。
私の知人にも、昼間の太陽をずっと見つめていて、失明ではありませんが、目をすっかり痛めてしまった人がいます。
太陽の黒点は、磁場に邪魔されて、太陽の中心部からのエネルギーが上がってこれらない部分である。
伝書バトは、太陽の高度、気圧、星座、さらには地球の磁場などを組み合わせて、ナビゲーションを総合判断している。天候の悪い夜間飛行のときには、地球の磁力線の方向をつかっている。だから、高緯度に激しいオーロラが舞うと、世界中のハトは混乱してしまう。これはオーロラが美しいから見とれるというのではなく、磁場に忠実なため、オーロラ電流によって世界中の磁場が狂ってしまうことの犠牲者なのである。
人間では、女性のほうが男性よりも地球の磁場を敏感に感じている。ただし、うとうとと眠たい状態では、人間の磁場感覚も働いていない。そして、人間の血液は磁場に敏感に反応する。
太陽と地球、そして生物とりわけ人間の相互関係を知ることができました。
(2011年8月刊。980円+税)
すっかり春めいてきましたが、庭のチューリップはまだ咲きません。ようやくつぼみの形が出来あがったところです。ミニミニ・ハウステンボスだと自慢しているのですが、今年は3週間以上も遅れています。白梅の隣に、サクランボの桜の白い花が咲いています。ピンクのソメイヨシノのようなあでやかさはありませんが、5月に赤い実がなると心が浮き立ちます。
今朝もウグイスが清澄な鳴き声を披露してくれました。何度聞いても心が洗われる気のする、妙なるさえずりです。春到来を実感します。
2012年3月 3日
ベテルギウスの超新星爆発
著者 野本 陽代 、 出版 幻冬舎新書
オリオン座に輝く一等星のベテルギウスが今にも爆発しそうだというのです。
ベテルギウスは、地球からわずか640光年という近距離にある赤色長巨星です。質量は太陽の20倍、直径は太陽の100倍です。
ベテルギウスが爆発すれば、史上最大級の宇宙ショーとなる。満月と同じくらいの明るさ、途方もなく明るい点が突如として天空に出現し、数ヶ月のあいだは昼間でも見えるほどギラギラと輝く。
しかし、爆発から2年たつと、ベテルギウスは今より暗くなってしまい、あとは暗くなる一方で、やがて姿を消す。そして、冬の大三角形は見られなくなり、オリオンらしさも失う。
太陽にも寿命があり、その寿命は100億年。現在は、半ばにさしかかったところ。太陽の2倍の質量をもつ星は太陽の10倍の明るさで輝き、20億年で寿命を迎える。逆に太陽の半分の質量の星は1799億年の寿命がある。
いま身近にある元素は、星と最後を飾る大爆発超新星によってつくられたもの。その意味で人間はスターダスト(星くず)、星の子であると言える。
星くずから人は生まれ、また星くずへと帰っていく存在なのですね。
悠久に生きたいと願ってもせんないことではあります。だって、あとに生まれてきた人にとっては先人はいずれ邪魔な存在になってしまうのですからね。先人が消えてはじめて、俊人の活躍する場所は開かれます。複雑な心境です。いつまでも若いと思っていたのですが・・・。たまには何万年どころか、何億年という単位で世の中のことをとらえてみるのは俗世に生きる私たちに必要なことだと、弁護士である私はいつも紛争をかかえて、つくづく実感します。
(2011年11月刊。780円+税)
2012年1月30日
宇宙飛行
著者 若田 光一 、 出版 日本実業出版社
写真もたくさんあって、宇宙ステーションに乗った宇宙飛行士の実際がよく分かる楽しい本です。
著者は、もう3回も宇宙飛行しているのですね。そして、これから4回目にチャレンジするというのです。すごいですね。そのがんばりを見習いたいものです。
宇宙とは、人間にとって、まだまだ分からないことがたくさんある時空の広がり。
国際宇宙ステーションの窓から宇宙を眺めると、そこには未知の世界が広がっていることを実感する。国際宇宙ステーションは、地上から高度400キロの軌道上で飛行する。日光があたると120度、あたらないときにはマイナス150度になる。気圧は、10億分の1、ほぼ真空に近い。太陽は、強く突き刺すような白い光を放って見える。
宇宙にある銀河の数は1000億個。人間の脳の中にあるニューロンの数も1000億個。不思議な偶然で一致する。
宇宙飛行士になるには身長158センチ以上190センチ以下。この点は、私は何とか大丈夫のようです。
水着そして着衣で75メートルを泳げ、10分間の立ち泳ぎが出来ることも条件です。珍しい条件ですが、これも私はなんとかクリアーできそうです。
しかし、語学がダメです。英語、そしてロシア語が自由自在でないとコミュニケーションがとれません。著者は英語で苦労したようです。
宇宙飛行士に求められるのは、確実な状況判断能力と適切な行動力。もちろん、協調性も大切である。そして、何より宇宙へいきたいという情熱がなければいけない。
アメリカの宇宙飛行士の61人のうち、女性が11人いる。船長にも女性2人になった。
スペースシャトルの打ち上げは135回、のべ355人が搭乗した。
アメリカのスペースシャトルを1回打ち上げると500億円かかる。ロシアのソユーズは150億円ですむ。
国際宇宙ステーションは時速2万8000キロ。1日で地球を16周する。90分ごとに、日の出、日の入りがやってくる。
尿を飲料できる水にかえるのに150億円かけた。酸素は水からつくる。
船長にまでなった著者は、とてもおおらかな性格なのだろうと推察します。引き続き、無理なくがんばってくださいね。
(2011年10月刊。1500円+税)
2012年1月21日
宇宙で最初の星はどうやって生まれたのか
著者 吉田直記 、 出版 宝島社新書
宇宙誕生から38万年後、宇宙の温度が3000度Cに下がったとき、原子核と電子が結合し、原子が出来た。水素原子とヘリウム原子である。これが最初の星の材料となった。
最初の星が生まれたのは、宇宙が誕生して3億年たったとき。
宇宙にあるダークマターという物質のもとに、水素やヘリウムのガスが集まってきた。次第に凝縮していき、濃密なガスの魂となり、その中心部で核融合反応が起き、いくつもの重い原子を合成しはじめる。この核融合が始まると、ガスの魂は明るく光り輝き出し、宇宙を照らす量となる。
1万光年立方の空間に1個の割合でファーストスターは誕生した。現在、10万光年サイズの銀河の中に星は1000億個もある。それに比べると、ファーストスターはずい分と少ない。
ファーストスターの寿命は300万年ほど。寿命を終えると、超新星爆発を起こす。そのとき、星の内部の核融合で作られた元素、酸素や炭素や窒素を宇宙にばらまく。
このファーストスターの超新星爆発によって、はじめて宇宙に水素とヘリウム以外の元素が存在し、広がるようになった。そして、それが次の世代の星の材料となり、やがて人間の生命を形づくる素となっていった。
私たちの宇宙には、金や銀、銅、ウランなど鉄より重い重元素にあふれている。これらは、第2世代の星の内部で作られ、第2世代の星が超新星爆発を起こした時に宇宙にばらまかれたと考えられる。
重元素を吐き出す星の寿命は長くて1000万年。1000万年を10回くり返すと1億年。宇宙の歴史は137億年なので、1000世代は交代しているということになる。
宇宙には果てもなく、形もない。無限に平坦な空間が広がっているとしか言いようがない。
たまには無限の宇宙空間に思いをはせてみるのもいいものですね。
(2011年10月刊。667円+税)
2012年1月 2日
すごい実験
著者 多田 将 、 出版 イースト・プレス
茶髪(金髪かな?)の先生が高校生を相手にニュートリノ実験について解説する本です。とても分かりやすくて、私も理解できました。いえ、もちろん全部というわけではありません。でも、科学の実験の壮大な展望は見えてきましたね、たしかに・・・。
茨城県東海村にある研究所からニュートリノをビーム状に発射して、295キロ先の岐阜県神岡村にあるスーパーカミオカンデでキャッチ検出する。
ニュートリノを発射させる前に研究所のトラック(1周1.6キロ)を30万回まわらせる。たったの2秒で・・・。
このような素粒子実験に耐えうる大規模な加速器をつくれるのは、世界で、日本とアメリカとヨーロッパの3ヶ所だけ。中国はあと30年たっても無理だ。日本には、世界最強・最高の加速器がある。
日本でノーベル賞をもらった18人のうち、物理学賞が化学賞と同じで7人。そのうち6人が素粒子物理学者。日本は素粒子物理学で世界最先端を行っている。
粒子(陽子や電子)を砕くと、まず出てくるのがπ(パイ)中間子。これは寿命がとても短くて、数十メートル飛んだだけで勝手に壊れる。そして、つぶれて現れるのがニュートリノ。
つくばの加速器はフルパワーで動かすと、1秒間に1000兆個のニュートリノを作ることができる。
日本は加速器技術でも世界一。研究所は、夏7,8,9月の3ヵ月は止まっている。電気代が高いから。電気代は1年間で50億円もかかる。電子は急カーブを曲がるとき、放射光を出す。ここが電子と陽子の違いだ。
電子は原子核のまわりを1秒間に6600兆回もまわる。あまりにも速いから、「どこにいる」という瞬間が見つけられない。
原子は陽子と中核子の組み合わせから出来ている。だから、この組み合わせを変えたら、まったく異なる元素をつくることができる。すなわち、錬金術って、実は可能なのだ。しかし、とてつもない時間とお金がかかるので、錬金術は意味がない(採算がとれない)。
宇宙みたいに大きな世界だと、1億年なんて短い時間である。素粒子の世界では、何分かというと、めちゃくちゃ長い時間なのである。
太陽は光とともにニュートリノも大量に出す。光は地球上に1平方メートルあたり1.37キロワット。これに対して電子ニュートリノは1平方米あたり600兆個来ている。人間の身体は1秒あたり600兆個のニュートリノを浴びている。この世の中に、ニュートリノは光に次いで多い。
カミオカンデは、1980年代に作られているので、もう30年ほどたっている。
光の伝わる媒質は何らかの物質ではなかった。それは電磁場そのものだった。
ニュートリノを研究して、それが今後の日本にどう役に立つのか。分からないとしか言いようがない。そうなんですね、いつ、どこで、どのように役立つのか分からないものって、世の中にはかなり多いですよね。
高校生に分かるのなら、私だって・・・と思いましたが、現実はそんなに甘い話ではありませんでした。それでも、最後まで面白く、読み通しました。
(2011年10月刊。1600円+税)
2011年12月30日
わたしを宇宙に連れてって
著者 メアリー・ローチ 、 出版 NHK出版
質問。宇宙遊泳の最中に、船外に出ている宇宙飛行士の生命を救える可能性がゼロに近い事態のとき、どうしますか?
回答。その飛行士を宇宙船から切り離す。
こんな答えをためらうことなく出すなんて、とても常人にはできませんよね。でも、正解はこれしかないというのです。他の飛行士の生命を危険にさらすわけにはいかないからです。いやはや、残酷なことですね。
宇宙探査は、次第に特別なものではなくなっていた。退屈なものでもある。
短気で、いいかげんな作業をして平然としているような人物は宇宙飛行士には向かない。
宇宙飛行士は、人並み外れて有能で優秀な人々でなくてはならないことは今も変わらないが、必ずしも人並み外れて勇敢である必要はなくなっている。推奨される特性は、大惨事に直面しても冷静に行動できること。何かあったとき、パニックになる乗員は、ただの一人もいてはならない。
宇宙は、フラストレーションばかり押しつけてくる情け容赦ない環境であり、宇宙飛行士は、そこで事実上、監禁状態に置かれる。そこに長いあいだ囚まわれていると、フラストレーションはやがて怒りに変わる。怒りは、はけ口とターゲットを求める。
宇宙飛行士は、他のお友だちと仲よく遊べる子でなくてはいけない。英語をつかって、円滑にコミュニケーションが取れるかどうかは飛行士になるための大きな要素になる。
無重力状態のなかで、臓器は胴体の内側で浮揚する。宇宙飛行士の50~75%が宇宙酔いのさまざまな症状に苦しめられている。
宇宙船にシャワーはない。宇宙飛行士は濡れタオルやドライシャンプーを使っている。
下半身不随の人は、最終的に下半身の骨の3分の1から2分の1を失う。宇宙ステーションに6ヵ月間滞在すると、出発前と比べて骨量の15~20%は減少している。
無重力空間での排泄は単に面白おかしいだけの問題ではない。おしっこするというごく単純な行為が、重力がないというだけで、カテーテル挿入やら緊急事態に発展することがある。宇宙空間では、尿意の仕方が異なる。重力があると、膀胱のなかに液体廃棄物を膀胱の底に引き寄せる。限界が近づくにつれ、伸長受容体が刺激される。ところが、無重力空間では、尿は膀胱を刺激しないから、尿意がない。時間を決めて排尿するしかない。
糞便バッグを用意しておく。バッグを丸めて封をし、不愉快なモンスターを永遠に閉じ込めるのに、殺菌剤の小袋を破り、中身をバッグに絞り入れ、殺菌剤がまんべんなく行き渡るよう、手でよくよくもまなくてはいけない。
女性の宇宙飛行士が少ないのは、プライバシーの守られない宇宙トイレ開発が遅れているのも原因になっている。なんとまあ、宇宙ステーションって、大変なんですね。
(2011年6月刊。760円+税)
2011年9月 5日
宇宙は本当にひとつなのか
著者 村山 斉 、 出版 講談社ブルーバックス新書
衝撃的なタイトルの本です。ええーっ、宇宙って一つじゃないの・・・。宇宙が二つも三つもあったら、いったい世の中どうなっているのか、ますます雲をつかむような、わけの分からない話になってしまいますやんか・・・。急に慣れない関西弁になってしまいました。
いま古川さんが現にいる国際宇宙ステーションまでは、ロシアのソユーズで24時間、アメリカのスペースシャトルで45時間かかる。地球から400キロメートルも離れている。ところが、地球を桃くらいの大きさだと仮定すると、国際宇宙ステーションは桃の皮一枚の暑さのところに位置している。つまり、宇宙から見ると、地球とほとんど変わらない程度の距離しか宇宙には進出していない。
うひゃあ、そうなんですか・・・。宇宙ステーションというので、宇宙空間の遠い彼方に浮かんでいるとばかり思っていました。たった桃の皮一枚ほど離れているだけだなんて・・・。
太陽系のなかで、太陽の次に近い恒星(光の速さで42年かかる)まで秒速10キロのスピードで飛んでいるボイジャーでは、10万年以上かかる。光速と秒速で動く物体の違いというのが、いかに桁違いなのかがよく分かります。
太陽系は銀河系のなかで秒速220キロメートルのスピードで動いている。私たちは、まったく体感しませんけどね・・・。
宇宙でビックバンがあったのは、今から137億年前のこと。ビックバン直後の宇宙は物質が振動していて、音に満ちていた。
宇宙ができたのは137億年前だというのに、300億光年先の銀河まで見えるのはなぜか。光源となる銀河はその場にとどまっているのではなく、離れているからである。350億光年より先は星も銀河もなく、暗黒時代といわれている。
暗黒物質は周りのものと反応しないので、何もなかったように星や銀河を通り抜けていく。暗黒物質の正体は、まだ分かっていない。暗黒物質は電気をもっていてはいけない。なぜなら、ほとんど反応しない、お化けのような粒子だから。
暗黒物質は、宇宙が誕生した直後から現在まで存在しているので、宇宙年齢の137億年かそれ以上の寿命をもっている。暗黒物質は普通の物質とめったに反応しない。1年に数回、10年で10回くらい反応が見られたら大発見。それほど忍耐力のいるもの。
ニュートリノは、実は宇宙のなかでは一番たくさんある物質素粒子である。この宇宙には、1立方メートルの空間に3億個のニュートリノがある。何もないような空っぽの宇宙空間であっても、角砂糖の大きさのなかに300個のニュートリノがある。このニュートリノには重さがある。
全宇宙エネルギーの73%を占めると考えられている暗黒エネルギーも正体不明である。重力とは、空間を曲げるもの。重力は空間の性質として説明できる。
宇宙は実はたった一つではなく、いくつもあるものではないか・・・。
これまで電子などの素粒子は大きさをもたない点として考えられてきた。しかし、素粒子をただの点として考えるとつじつまの合わないことが出てくるようになってきた。そこで考えられたのが、素粒子は実はひもだったと考えられる理論。超ひも理論では、私たちが素粒子だったと思っていたものは、実は振動して広がっているひもなのだが、あまりに小さいので点だと思い込んでいたということ。この超ひも理論によると、宇宙の姿も大きく変わってくる。まず、宇宙は10億次元でなければいけないことになる・・・。最近のひも理論の考えによると、宇宙はいわば試行錯誤だということになる。
うひゃあ、なんと私たちのいるこの宇宙は試行錯誤の存在だったとは・・・。そうであれば
個々の私たちが試行錯誤するのも当然のことですね。
そんな気宇壮大な宇宙の話でした。
(2011年8月刊。820円+税)
2011年8月 8日
宇宙誕生
著者 マーカス・チャウン 、 出版 筑摩書房
かつては宇宙の年齢は90億歳から150億歳のあいだだと言われてきた。いまは、137億年プラスマイナス1%と突き止められている。
宇宙誕生の直後に起こった超高速膨張、インフレーションはとても速い、それは光より速い。宇宙はごくごく小さい領域からインフレーションによって膨らんだため、初めはすべてが接触しあっていた。
ええっ、光速より速い膨張があったなんて、どういうことなんでしょうか。形ある物体が光より速く動いたなんて素人の私には考えられないのですが・・・・。
COBEは、宇宙背景放射の温度が方角によってごくわずかに異なることを発見した。空にはホットスポットとコールドスポットがあって、それはよくさざ波にたとえられる。ホットスポットは、空の平均温度に比べてわずか10万分の3度高いだけなので、発見されるのに四半世紀以上かかったのも不思議ではない。ホットスポットは、初期宇宙において平均よりわずかに密度が低い領域に相当する。他方、コールドスポットは、密度の高い領域、つまり塊に相当する。塊りはとてつもなく大きく、さしわたしが1億光年から25億光年にも及ぶ。宇宙でもっとも古く、もっとも大きな構造で、今日の宇宙に存在する巨大銀河団の「種」である。
COBEが初期宇宙に見つけた物質の塊はあまり大きくなく、その重力によって物質が引き寄せられ、ビッグバンから137億年間で銀河や銀河団ができるのは、不可能だから、大量のダークマターの助けが必要である。
天文学者は宇宙の物質の85%が「光を発しない」ダークマターであって、それは目に見える恒星や銀河の軌道を曲げる重力の効果を通じてしか検出できないと考えられている。天文学者にとってさらに厄介なのは、ダークマターが何から出来ているかについて、何もないアイデアがないことだ。
宇宙がいまの3倍の年齢に達すると、宇宙背景放射の温度は今日の3分の1になる。
4倍の年齢になると、温度は4分の1だ。ビッグバンから1370億年たったときには、火の玉の名残はほとんど消えているだろう。絶対零度から0.3度上でしかない。いまから 1370億年のちに知的生命が存在するとしても、彼らはいまの我々ほど幸運ではないだろう。そのときの宇宙では、万物創造の残光は、基本的に検出不可能で、その秘密には永遠に手が届かないだろう。はるか未来に、火の玉放射がどんな運命を迎えるかは、宇宙の膨張がいつか息切れして反転するかどうかにかかっている。
もし、そのようなことが起こらず、宇宙は永遠に膨張するとしたら、どんどん広がっていく空間の海の中で、死にゆく銀河の島はますます孤立し、放射は薄まって消えていくだけだろう。逆に、もし宇宙の膨張が止まって暴走的な収縮を始めるなら名残の放射はそのような屈辱的な最期から救い出されることになる。
なんだか気の遠くなるような話ですね、これって。
光は、空間を進んでいるときには波のように振舞うが、物質と作用しあうと弾丸に似た粒子の流れのように振る舞うという奇妙な性質をもっている。
この本には、夜空がなぜ暗いのかという疑問が投げかけられています。星が夜空に無数にあったとしたら、至るところが星から来る光で埋め尽くされ、暗くなるすき間はないはずだという疑問です。これを打ち破るのは、光の速さが有限であること、そのため宇宙にはそこから先は、見えないという地平面があるからだということになります。
夜空が暗いのは、宇宙が有限の年齢をもつため、そして宇宙が膨張しているためなのだ。時の始まりがなく、その後の膨張もなかったら宇宙は存在しえなかった。
これって有名なパラドックスです。
夏は夜空を観察する絶好のシーズンです。さあ、今夜もベランダで月を眺めましょう。
(2011年4月刊。1600円+税)
2011年4月11日
観測的宇宙論への招待
著者 池内 了、 出版 日経BP社
宇宙の果てはいったいどうなっているんだろう。137億年前に宇宙が誕生したって、どういうことなのかな。人が死んだら宇宙のかけらになるって言うけど、いったいどこに存在するんだろう・・・・。不思議なことだらけの地球と星、そして宇宙の話は昔からとても興味があります。
1970年代に観測できるのは1億光年だった。1980年代には50億光年への拡大し、今や130億光年の彼方まで及ぼうとしている。すごいですよね。今では人類の目は130億光年をこえた銀河宇宙の果てに及ぶようになったというのですからね。
今から410年前のころの信長時代には人生50年と歌っていたわけですが、今でも人生80年くらいのものですよね。それなのに1億年とかいうのですから、気も遠くなって見当もつきませんね。
宇宙の年齢は137億年とされている。最初に生まれた銀河は宇宙の誕生後2億年ころと考えられている。現在、人類は130億光年の彼方の天体に迫っている。つまり、今では銀河宇宙の果てに迫っているわけだ。
SDSSという日本共同研究は、夜空の4分の1を、およそ50億光年の遠くまでの銀河1億個を調べ尽くすという壮大なプロジェクトである。30年前、星が夜空に無数にあるから、どこを向いても光にあふれているはずなのに、なぜ夜空が暗いのかという面白い本を読みました。
アインシュタインという天才であっても、宇宙の永遠性を信じていた。しかし宇宙は次々と生まれていると予測できる。すなわち、宇宙は一つだけと考えるのがむしろ不自然なのだ。宇宙は多重に存在すると考えられている。といっても、各々の宇宙は独立していて、お互いに交信することはありえない。
うむむ、なんだか、分かったようで分からない話ですよ、これって・・・・。宇宙がいくつもあるなんて、どういうことでしょうか。
クェーサー(準恒星状天体)は現在では3万個も発見されている。このクェーサーは地球の近くにはなく、50億光年から120億光年までという遠い距離に集中して存在している。これは恐竜のように過去に大繁栄したが、現在では絶滅して姿を消してしまったということでもある。
ほとんどの銀河の中心部には巨大なブラックホールがあり、かつては大量のエネルギーを放出するクェーサーとして激しく活動していた。やがて、ブラックホールへのガス供給がなくなったため、クェーサーとしての輝きを失い、現在は普通の銀河として輝いている。
ダークマターとは、電磁波では観測できないが質量をもって重力を及ぼす物質のこと。ダークマターは、光とは直接に相互作用はしない。また、ダークマターは、熱エネルギーを放出できない。ダークマターは必ず存在している。しかし、その正体が何であるのか、20年先まで残された難問だ。これまた、なんだかよく分かりません。そして次は・・・。
ダークエネルギーは空間に付随している。空間が増えれば、その分だけダークエネルギー増加する。その正体はとらえようがない。こうなると、宇宙って不思議だらけです。
宇宙がいくつもあるなんて、一体どういうことなんでしょうね・・・・?!
(2011年1月刊。2000円+税)