弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

宇宙

2019年2月11日

太平洋

(霧山昴)
著者 蒲生 俊敬 、 出版  講談社ブルーバックス新書

太平洋も動いているのですよね。その海底が少しずつ移動していて、地球の奥深く沈み込んでいくプレートテクトニクス理論は、初めはウェゲナーの大陸移動説と同じで、信じられませんでしたが、どちらも今では定説になっています。
日本に地震が多いのは、そのせいです。そんなところに原発をつくったり、使用ずみ核燃料の最終処分場を地底深くに置いておこうなんて、いずれもとんでもありません。
この本に、地球上の海について、その表面だけでなく、深いところでも海流があると書かれていて、驚きました。
北大西洋から始まった深層流が最後に北太平洋まで到達するのに、約2000年かかる。この階層海流のおかげで地球の高緯度域と低緯度域との温度差がやわらげられている。つまり、深層海流は、地球にとってエアコンのようなありがたい存在だ。
深層海流の速さは、1時間に40キロメートル、つまり時速5キロ。
地球が受けている潮汐力の7割は月による。月という衛星のあるおかげで、海洋の熱塩循環が続き、そのエアコン機能によって、地球の温和な環境がたもたれている。
POPsとは、難分解性有機汚染物質。海洋生物に取り込まれたPCBsの一部は、やがて生物の死骸の断片とともに、海洋表層から深層へと沈降していく。世界でもっとも深い、西太平洋のマリアナ海溝のなかにあるチャレンジャー海淵(水深1万920メートル)で採取されたエビ類の体内から、高濃度のPCBsが検出された。恐るべきことだ。
海水中では、光と音は、対照的だ。海水中で、光はほとんど通らない。これは、水の分子が光のエネルギーをさかんに吸収してしまうからだ。音については、海水はきわめて優れた伝導体となる。海中では、空気中に比べて4倍以上の速さ、毎秒1500メートルだ。
宇宙を飛行した人類は全世界に550人をこえた。これに対して、水深1万メートル以上の深海底に到達した人類はわずか3人のみ。
調べてみると、深海の海溝水は豊富に酸素を含んでいることから、海溝の内部と海溝の外側とで、海水の入れ替わりがひんぱんに起こっていた。
地球も海も、まさに生きているのですよね・・・。宗教家は、それでも、地球も海も、神がつくったと説明するのでしょうか、不思議です。
(2018年9月刊。1000円+税)

2018年11月 8日

フォッサマグナ

(霧山昴)
著者 藤岡 換太郎 、 出版  講談社ブルーバックス新書

フォッサマグナって、地理の教科書に載っていましたので、今はどんなものなのか、すべて判明していると思って手にとって読んでみました。すると、驚くべきことに、今も謎に包まれていて、よく分かっていないというのです。
この本を読んで、門外漢の私がしっかり認識できたことは、地球は生きていて、絶えず流動していること、そして日本列島も移動しているということです。
ですから、日本列島のあちこちで大地震が起きるのも自然の摂理なんですよね。そんな日本に原子力発電所(原発)をつくるなんて、土台まちがっています。
九州にしても、いずれ大分の別府と島原あたりを結んだ線で2分されると言われています。まあ、明日おきる話ではありませんので、今を生きる私たちが心配するようなことではありませんが・・・。
それにしても、南海トラフの大地震予想というのは、近いうちに間違いなく起きることなのでしょう。そのとき、原発や新幹線は本当に大丈夫なのでしょうか。また、全国各地、いたるところにタワーマンションをぼこぼこ建てて、見晴らしの良さにうけにいってる住民の皆さんの生活は大丈夫なのでしょうか。私は本当に心配です。
フォッサマグナとは、本州の中央部の火山が南北に並んで、本州を横断している細長い地帯のことを言う。この東西では、地層や岩石などの地質がまったく異なっている。フォッサマグナ地域の東西では、1億年から3億年前の古い岩石が分布しているのに対して、フォッサマグナ地裁の内部は2000万年前以降の珍しい岩石でできている。
フォッサマグナは地下6千メートル以上の溝であることが判明しているが、実は、どれくらい深いのかは、まだ分かっていない。したがって、日本アルプスの3千メートル級の山の頂上との落差は1万メートルもある。
フォッサマグナがなぜ出来たのかは、いろいろな説があるものの、定説はなく、謎に包まれている。その論争の一つは、そもそも日本の本州は、最初から一つの島弧だったのが、二つの島弧が合体したものなのかという未決着の議論につながっている。
今から40年ほど前、ウェゲナーの大陸移動説というものが提唱されたとき、冷笑する学者が多かったように覚えています。あんな重たい大陸が動くはずがないという考えで、これは地球が動くなんて間違いだというのと似た考えです。
ところが、その後、プレートテクトニクス理論なるものが出てきて、地球内部のある高温高熱のマグマが地表へ噴き出してくるので、大陸も海も動いているという学説でした。これが今ではすっかり定着しています。
それにしても、明治の初めにドイツからやってきたナウマン博士がわずか10年ほどの滞日期間中にフォッサマグナを発見し、あわせて日本列島の地質図を完成させたというのは、大変な偉業だと改めて思いました。生きている地球に無事に住んでいるって、つくづくありがたいことなんですね・・・。
(2018年9月刊。1000円+税)

2018年8月 6日

天文学者が宇宙人を本気で探しています!


(霧山昴)
著者 鳴沢 真也 、 出版  洋泉社

この広い広い宇宙のどこかには、きっと地球の私たちのような高等生命体がいることでしょう。そして、そのうちに交信できることになるでしょう。でも、それが今すぐに実現できるとは思えませんし、今すぐだったら、免疫体系の違いなどから、下手に接触したらお互いに生命を維持できないかもしれませんよね・・・。
この本は、天文学者が真面目に真剣に学問として宇宙のどこかにいる生命体を探索している取り組みをレポートしています。
著者は結論として、宇宙のどこかに、きっと知的生命体はいるとしつつも、それは地球に既に来ているとか、来れるほどの近距離にはいないとしています。
知的生命体は、かなりレアな存在である。その最大の理由は、進化の偶然性にある。著者は、知的生命体はいるにしても、銀河100個に1文明、あるいは1000個に1文明ではないかとしています。どんなに楽観的に考えても天の川銀河に10も存在していないというのです。ということは、地球までUFOに乗ってはるばるやって来る可能性はほとんどないということですよね・・・。
この宇宙には、1000億の桁で銀河が存在していて、それぞれの銀河に1000億の桁で恒星が存在する。1000億かける1000億の星が宇宙にいるというのは、地球上のあらゆる海岸に存在する砂粒の数よりまだ多いだけの星があるということ。これだけ星があれば、知的生命体がどこかにいても何ら不思議ではない。ほとんどの天文学者が、そう考えている。
天文学者は、そのため大型の電波天文台を設置して探索にいそしんでいるのです。4光年という距離は、東京に1コのビー玉を置き、兵庫県に別のビー玉を置いておく。これがケンタウルス座アルファ星と太陽との距離である4光年を感覚的にあらわしたもの。
夏になると、夜に寝る前にベランダに出て、天体望遠鏡で月の素顔を眺めるのが私の習慣の一つです。夏の楽しみでもあります。ベランダにゴザを敷いて寝たこともありますが、さすがに今はできません。月の運河をくっきりと眺めていると、クラゲのような形をした宇宙人の存在を信じていた少年のころをなつかしく思いだします。
たまにはスケールの大きい宇宙の話に浸るのもいいものですよ。
(2018年4月刊。1600円+税)

 テレビを見ない私ですが、ロボコンを録画して見るのは大好きです。高専ロボコンも大学ロボコンも、どちらも楽しみにしています。
 先日は大学ロボコンがあり、東大が優勝しましたが、豊橋技術大学が東大キラーとして奮闘していました。高専ロボコンより大学ロボコンのほうが技術的には数段上だと実感しますが、素朴な面白さという点では高専ロボコンも捨てたものではありません。

2018年1月13日

重力波で見える宇宙のはじまり


(霧山昴)
著者  ピエール・ヒネトリュイ 、 出版  講談社ブルーバックス新書

 フランスの理論物理学者による解説書です。よく分からないなりに、宇宙のなりたちを知りたくて読んでみました。手にとって軽い新書だからといって、内容まで軽いとは限りません。
これまで人類が宇宙を観測してきたのは、まずは可視光のおかげであり、次にはあらゆる波長帯の電磁波のおかげだ。
重力波は、質量の大きな物体が、すばやく動くときに発生する。重力波は、観測可能な宇宙の大きさほどの脅威的な長距離を伝わる。重力波は非常に弱い力のため、重力波が途中にある物質に乱されることはほとんどなく、宇宙全体に届く。そのため、重力波は重力を起因する現象(ブラックホール)や重力波によって支配されている宇宙全体を観測する非常に有効な手段となる。
この重力波を検出するのは難しく、重力波を直接検出するまでに100年もの年月がかかった。重力波も光速で移動する。
合体した二つのブラックホールの質量を調べてみると、太陽の29個分と、36個分だったのが、合体したのだから、65個分のはずだったけれど、実際には62個分しかない。
重力波は、基本的な力のなかでも、最も弱いものだったが、今ではシンデレラのように主役におどり出ている。
重力波という、つかまえどころのないテーマを分かりやすく(実際には難しすぎたと反省しています)解説してくれる著者に感謝します。
たまには俗世間の憂さを忘れて星空でもながめないと毎日やっていけませんよね。
(2017年10月刊。1200円+税)

2017年8月20日

時空のからくり


(霧山昴)
著者 山田 克哉 、 出版  講談社ブルーバックス

宇宙の話です。理解できないまま、ともかく、何か分からないまま必死に最後まで読み通しました。
光は質量をもっていない。光の質量は、正確にゼロ。質量をもたない光がなぜ重力場に反応するのか。重力場が空間を曲げるために、光線はその空間の曲がりにそって進む。道筋が曲がっているのに光が進むのは最短距離になる。光は、必ず最短距離を選んで突きすすむ。
光速度不変の原理。何に対しても、光の速度はまったく同じで、常に秒速30万キロメートル。光の速度は、誰がどう測ろうとも、観測者が動きながら測定しようと、光源が動いていようと、はたまた観測者も光源もどちらがどちらの方向に動いていようと、観測者が測定する光速は、秒速30万キロという、たった一つの値しか示さない。
ええっ、これって、不思議ですよね。世の中に「絶対」は存在しないはずなのに・・・。
高さ450メートルの東京スカイツリーの展望回廊にいつまでもいると、時間が速く過ぎるため、地上にいるより早く年齢(とし)をとる。太平洋を横断する飛行機は上空1万メートルを飛ぶので、地上にいる人よりは早く年齢をとる。高いところほど時間は速く進む。
では、どれだけ早く年齢をとるのか・・・。100年につき、100万分の1秒ほど早く。
なあんだ、まったく心配するような時間の速さじゃないんだ・・・。
質量が時空を曲げるという「時空のゆがみ」こそが重力波の発生原因となる。質量がなぜ時空をゆがませるのか、その根本原因は今もなお分かっていない。しかし、重力波の検出が成功したことによって、間違いなく時空がゆがんでいることが確認された。
この重力波の検出に、100年もの時間がかかったのは、ひとえに重力波があまりにも微弱すぎて、そのわずかな空間の伸び縮みを観測することがきわめて困難だったから。
地球で観測された時空のゆがみは、長さ1メートルに対して、10のマイナス19乗センチという気の遠くなるような小ささだった。
この本を読んで、私が理解したということは何ひとつありません。でも、たったひとつだけ、世の中は不思議にみちていること。そして、もう一つ。学者が果敢にそれを究明していて、私には理解不能な数式で「証明」しているということです。
まあ、分からない分野があることを知るだけでも意味があると思いましょう・・・。
(2017年7月刊。1080円+税)

2016年10月31日

人はなぜ星を見上げるのか

(霧山昴)
著者 髙橋真理 、 出版  新日本出版社

最近はあまり行っていませんが、プラネタリウムは私の好きな場所です。広大な宇宙にいること、ちっぽけな存在であることを実感させてくれる貴重なひとときがそこにあるからです。
そのプラネタリウムや星・宇宙というのを20年も仕事のパートナーとしている女性が書いたロマンあふれる本です。うらやましいですよね、高校生のころの夢を実現できるっていうことは・・・。
北海道大学に入ったときには、オーロラ研究をすると意気込んでいたとのこと。でも、北大はオーロラの研究はしていなかったのでした・・・。そして、アラスカにいる星野道夫に会いに大学2年生のときアラスカへ飛び、ついに蛇のように激しく上空を舞う緑色のオーロラに出会いました。
 私の身近にもアラスカまでオーロラの写真を撮りにいってきた人がいますし、これから行きたいところとしてオーロラをあげている知人もいます。私自身はマイナス40度の寒さに耐えられそうもありませんので、写真で我慢します。
 そして、著者はオーロラの研究ではなく、ミュージアムをつくることを思いたったのでした。それからの行動力がすばらしいのです。好きなことをやって生きていこうという敢闘精神にあふれています。私も、こうやって本を読んで、本を書き、好きなことばかりをして生きています。
 プラネタリウムで星などを見た子どもたちの疑問が面白いのです。はっとさせられる内容です。太陽は沈んだあと、どこに行くのか・・・。地球がまわっているというのになぜ私は落っこちもせず、立っていられるのか・・・。きわめつけは、星は、何のためにあるのか・・・。これって、自分は何のために存在しているのかに通じる疑問ですよね。
小学4年生のとき質問を書いて送ってきた女の子に答えていると、その後も今日まで交流が続いているというのです。すごいことです。
 では、時間はどうか・・・。時間というのは、不思議な存在である。えっ、時間は存在するもの、なのでしょうか。過去というのは、いったいどこへ行ってしまうものか。過去は、どこかへ行ってしまうものなんですか・・・。時間は、無限の過去から無限の未来に向かって一直線に伸びていくものなのか。
プラネタリウムにうつしだされた星空を見て、ある人が天国っていうのは、あそこにあるのかねえ、とつぶやいた。
「きっとそうですよね、たぶん、すごく美しいところだと思います」と答えた。すると、その人は、「そうだよなあ、みんな行ったきり帰ってこねえもんな。いいところなんだよな」と、小さい声で言った。
 そうなんですね。夜の星空の向こうにこそ天国があるんでしょうね。
 宇宙のことを考えていると、その年齢が138億年とか聞かされると、わずか100年も生きていない人間のちっぽけさを感じずにはおれません。
 プラネタリウムに、また行きたいなと思いました。

 
(2016年8月刊。1800円+税)

2016年3月20日

ニュートリノで探る宇宙と素粒子

(霧山昴)
著者  梶田 隆幸 、 出版  平月社

 よくは理解できないながら、宇宙の成り立ちが少しでもつかめたらという思いで読みすすめてみました。
 ニュートリノは、電子と同じく素粒子の仲間。ニュートリノは、電子から電荷と重さをはぎとったようなもの。ニュートリノの大きさは分かっていない。
 私たちは、ニュートリノを触ったり、目で見たりして直接感じることはできない。
 しかし、ニュートリノがなければ私たち人類は存在できない。なぜか・・・。地球上の生物は、すべて太陽の光と熱によって生かされている。もしも太陽がなかったら、地球表面の温度は太陽系のいちばん外側にある冥王星よりも下がり、生物はまず生きていかれない。
 大要のエネルギーは、核融合反応によってつくられている。太陽中心の水素原子核が4個くっついてヘリウム原子核になるときに、膨大なエネルギーを放出する。もし、ニュートリノがなかったら、この反応はおこらない。最初の核融合反応が点火しないから・・・。
 ニュートリノがないと、太陽だって光り輝くことができないというのです。なんだか、ニュートリノを身近に感じることができました。
ニュートリノは観測するのが、とてもむずかしい。なにかにぶつかっても、曲がったりせず、地球すら貫通して飛んでいってしまう。
 太陽からやってくるニュートリノ1個を物質と反応させるには、地球を100億個ほどタテに並べてニュートリノを通す必要がある。そのくらい大量の物質があってはじめて、反応が起こる。逆に言うと、1個の地球を100億個のニュートリノが通り抜ければ、そのうちの1個がたまたま地球の内部のどこかで反応することになる。
 ニュートリノは、雨あられと地球に降りそそいでいて、太陽から地上にやってくるものだけでも、1平方センチメートルあたり毎秒660億個もある。
 こんなにすさまじい量のニュートリノって、一体どこへ行くのでしょうか・・・。
 スーパーカミオカンデは、直径40メートル、高さ40メートルの水槽を5万トンの水で満たしている。
 ニュートリノが一番たくさんつくられたのは、宇宙の始まり、つまり「ビッグバン」のとき。宇宙は始まって以来、ニュートリノに隅々まで満たされている。
 ニュートリノは、宇宙で一番たくさんある、もっともありふれた粒子である。
 ニュートリノは、電気的に中性で、物質とほとんど反応しない。ニュートリノは、物質と相互作用する力が弱い。弱い力とは、陽子の大きさの1000分の1くらいの距離にしか力が及ばない。
大気ニュートリノは、人間の身体にあらゆる方向から入射し、ほとんどそのまま空き抜けていく。
ニュートリノに質量があることは、現在では素粒子物理学の定理となっている。
 岐阜の山中にあるスーパーカミオカンデのほか、南極にも観測点があるそうです。すごいな、すごいな、と思いつつ、宇宙の起源と構成って今でも不思議なことだらけだということは、よく分かりました(分かったような気がしました)。
(2015年11月刊。800円+税)

2016年3月 7日

オーロラ!

(霧山昴)
著者  片岡 龍峰 、 出版  岩波科学ライブラリー

  私は残念ながら現物のオーロラを見たことはありません。映像のみです。
オーロラほど不思議な光はない。冷たい炎のような光が色を変え、形を変え、音もたてずに空を舞う姿の圧倒的な不思議さには、驚きと畏怖の言葉が尽きない。
100年前、ノルウェーの科学者(ステルマー)が電話をつかって30キロ離れたところで写真を同時に撮影し、オーロラの高さの精密な三角測量を繰り返した。その写真乾板は4万枚をこえる。その結果、オーロラが地上100キロ、高いものだと1000キロで光っていることを突きとめた。
オーロラの緑や赤は、酸素原子がエネルギーを受けたときに自然に出てくる色。緑の光を放つには0.7秒かかるが、赤の光を放つには110秒の時間がかかる。したがって、オーロラの赤は、緑が光る場所よりももっと真空に近い、110秒ほど励起状態のまま仲間と会わずに漂うことのできるほど空気が薄い状況、つまりより高い場所でないと光ることができない。上が赤く、下が緑という、あのオーロラのクリスマスカラーは、酸素原子がつくり出したグラデーションなのだ。
北極の近くでは、オーロラは見えない。オーロラは、地球規模で「輪」を形づくっている。
地球が磁場をまとっていることによって、電子は磁場気に捕らえられ、オーロラオーバルの近くに輪のように電子が流れこみやすい状況になっている。そこで、猛スピードで大気へ流れ込んだ電子が、空の終わりの酸素原子と衝突して、オーロラを光らせている。
オーロラの全体像は、今ではほとんど明らかになった。でも、今なお、電子と陽子の動きの違いや細かなプラズマの構造など、分からないことは多い。
オーロラの解説が十分に理解できたということはありません。それでも、オーロラの生成・構造が単純なものではないことだけはよく分かりました。宇宙には不思議なことだらけですね・・・。
それにしても、マイナス40度とかいう世界でオーロラを観察しようとは思いません。やっぱり、ぬくぬくとしながら、映像でガマンしておくことにします。
  
(2015年10月刊。1300円+税)

2016年2月 1日

銀河系惑星学の兆戦

(霧山昴)
著者  松井 孝典 、 出版  NHK出版新書

 真夏は、夜寝る前にベランダから天体望遠鏡をのぞいて月の素顔を見るのを私は楽しみにしています。その月面にたくさんある「あばた」(クレーター)は、なんと天体衝突によって生まれたというのです。
物質科学的に超高速の天体衝突で生じるような、超高圧下でつくられたような鉱物が発見された。これらのクレーターの多くは、40億年以上も前にできたもの。
 それが無数にあるということは、40億年前の月では、無数に天体衝突が起きていたことになる。
 そして、月のマントルには、地球のマントルと同じくらいの水が含まれている。最古の結晶化年代は44.17億年である。
 地球に降ってくる隕石の多くは、宇宙空間に漂っていた塵やガスが凝縮してつくられた鉱物が単に集まっただけの集合体である。隕石の多くは、今から45億年以上前にできた。いちばん古い隕石は、1969年2月(例の東大・安田講堂攻防戦の翌月です)にメキシコに落下した。推定5万トン。ただし、大気中で爆発した。粒子が直径100キロメートルほどの天体になるまでに数百万年かかる。
 太陽系は、45億6600万円前に誕生したことが分っている。
 ブラックホールは「穴」ではなく、きわめて密度の高い天体である。周囲の物質をとり込みながら、無限の重力崩壊を続けているようなもの。
 銀河の中心には太陽の1億倍もの物質をもち、超巨大ブラックホールが存在している。
 冥王星が惑星ではないとされたのは、2006年に太陽系の惑星の定義が定められたから。惑星の定義は三つ。
 ① 太陽を回る軌道上にある天体
 ② 重力が物体の強度を上まわるだけの質量を持ち、静水圧平衡に近い形をしている天体。
 ③ その軌道の近くには、ほかの大きな天体が存在しない。
 冥王星は、この条件を満たしていないので、「準惑星」とされた。
 地球上にある広大な海を形成するほど大量の水はいったいどこから来たのか・・・?
 実は、それは彗星によって運ばれてきた可能性がある。
 えーえっ、ななんという不思議なことでしょう。想像できません・・・。
 最初の原始的微生物、あるいはウィルスも、宇宙から来た可能性が否定できない。地球が誕生する以前に、宇宙には生命の萌芽があったのではないか・・・。
 生命は宇宙で誕生し、それが彗星によって育まれ、運ばれ、彗星が地球に衝突することで地球に生命がもたらされた。
 むひゃあ、そんな、そんなことがあるのでしょうか・・・。ところが、著者は、この仮説を否定できないというのです。
 いやはや、宇宙にハテは果たしてあるのかと同様、無限の難問が宇宙には満ちみちています。

(2015年12月刊。780円+税)

 先週、私の町は断水騒ぎで大変でした。マイナス7度になって水道管が凍結し、破裂してしまったのです。水が使えないとトイレも風呂もダメです。コンビニやスーパーから水やパン、弁当がたちまち姿を消してしまいました。水のありがたさを改めて実感したと会う人ごとに話したものです。電気より、灯油やガスより、何より水が生活の基本なのですよね。本当に大変でした。
 それにしても、都市生活って、案外もろいのですよね。これで原発事故が起きたら、どうしようもありませんね・・・。

2016年1月 1日

ブラックホール・膨張宇宙・重力波

(霧山昴)
著者  真貝寿明 、 出版  光文社新書

 光陰、矢の如しです。一年の過ぎるのが本当に早いです。人生の折り返し点をとっくに過ぎている今、この先、地球と宇宙そして人類がどうなっていくのか、ちっぽけな存在である私の死後、いったい意識が消失したあと、何が待ち受けているのか・・・。ぜひ、知りたいところです。
 ブラックホールとは、光さえも脱出することができない重い天体。だったら、ブラックホールなんか私たちは見えないはず。ところがブラックホールは観測されている。なぜ?
 実は、ブラックホールそのものが見えているわけではない。それでも、ブラックホールの存在が分るのは、ブラックホールに吸い込まれているガスの分子同士がぶつかりあってX線などの電磁波を強力に放射するから。ガスが「明るく光る」ため、ブラックホールに吸い込まれていく姿が見える。だから、ブラックホールは、天文学的には「明るい天体」とも言える。ええっ、そうなんだ・・・。
 銀河系の中心部分にも、超巨大なブラックホールが存在している。太陽の実に300万倍以上の質量と見積もられている。
 ここで、クエスチョン。鏡を手にもって自分の顔を見ている人が、光速で動いたとすると、鏡に顔は映るのか?
 その答えは、鏡に顔は映る。なぜなら、光速で人間が動いていたとしても、光はその人から見て光速で動くから。
 なんとなく、分ったようで分らない話です。
 時間の進み方は、観測する人によって変わる。ロケットの速度が速ければ速いほど、地球の1秒に比べてロケットの1秒は遅くなる。だから未来に行くタイムマシンは可能だ。光速に近いロケットで宇宙のどこかに飛び、そして戻ってくればよい。浦島太郎の話は竜宮城が光速近いスピードで移動していたとすれば、ありうる。ただし、過去に戻るタイムマシンは不可能。
現時点での宇宙像は次のとおり。宇宙は何らかのメカニズムによって誕生し、インフレーションと呼ばれる急激な真空の膨張を起こした。インフレーションは、当時の地平線スケールをはるかに超える大きさまで引き延ばし、現在我々が観測している範囲を超えてほぼ一様な宇宙を実現した。インフレーションは、膨張領域同士が衝突する現像で終了し、高温高密度の「火の玉」となり、ビックバン宇宙モデルに引き継がれる。火の玉は、宇宙の膨張にしたがって温度を下げ、宇宙全体の大規模構造ができていった。宇宙は現在なお加速膨張を続けている。
 重力波とは、時空に生じた「ゆがみ」が波となって伝わる現象である。これまで地球上で重力波をとらえたことはない。重力波は、とてつもなく弱い波だから。
 そこで、日本は岐阜県神岡の山中に長さ3キロのトンネルを2本掘って、大型低温重力波望遠鏡「カグラ」を建設中である。人工的に重力波を作り出すことはできない。宇宙でつくられる重力波を観測するしかない。
 連星パルサーの発見により、重力波の存在が間接的にせよ確かめられた。
 重力波の観測が現実すると、中性子星の軌道パラメーターが分るだけでなく、これまで不明だった原子核の状態方程式が決まり、ブラックホールが形成される直接の証拠を得ることになる。また、銀河中心のブラックホールの形成過程や初期宇宙の解明、あるいは重力理論の検証にもつながっていく。
 宇宙に涯があるといいます。では、その外側は、いったいどうなっているのでしょうか・・・。暗黒かつ真空の世界なのでしょうか?
宇宙の話ほど、ロマンをかきたて、日頃のこせこせした悩みを忘れさせるものはありません。


(2015年9月刊。900円+税)

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