弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

宇宙

2020年12月 7日

宇宙に行くことは地球を知ること


(霧山昴)
著者 野口 聡一、矢野 顕子、林 公代 、 出版 光分社新書

野口聡一さんは今、宇宙船に乗っていますよね。半年間は宇宙にいるのでしょう。健康維持が大変だと思います。
野口さんをインタビューしている矢野顕子さんはニューヨーク在住のミュージシャン。なんと、大学どころか高校2年の夏休み以来、学校というものに通ったことがないといいます。その矢野さんが宇宙に強い関心をもって、野口さんにインタビューを申し込んだのでした。
国際宇宙ステーション(ISS)は、地球の上空400キロメートルを、秒速7、8キロメートルで飛行している。この速さは、なんとライフル銃の弾丸より、数倍も速いというのです。これはすごい。そして、わずか90分、1時間半で地球を一周するといいます。いやはや...。すると、どうなるか。昼と夜の270度以上もの激しい温度変化が、45分おきに訪れる過酷な世界。
宇宙空間は、空気のない真空。昼は120度以上、夜はマイナス150度以下になる。そして、スペースデプリと呼ばれる宇宙ゴミや放射線が飛びかっている。
重力情報がない、視覚情報がない、耳からの情報も限られる。これが宇宙空間。なので、船外活動中には感覚遮断が起きやすい。
宇宙飛行士の生命を守るための宇宙服には、宇宙飛行士の感覚を遮断する働きがある。宇宙空間では手すりを伝って移動する。
宇宙服の手袋には、指先にヒーターがついていて、昼間の120度の熱さも夜のマイナス150度の冷たさも感じないようになっている。でも、手袋はシリコン製なので、温度によって硬さが違う。夜はカチカチに硬くて、昼はだんだん柔らかくなる。なので、この手袋の硬さの変化で、温度を感じる。つまり、手のひらが太陽を感じる。
宇宙飛行士は、眠るときは寝袋に入る。空間にポツンと浮かぶよりも寝袋で軽く拘束したほうが安眠できるのだ。
チャレンジャー号の事故(7人死亡)は1986年1月28日に起きました。私が37歳のときのことで、大変なショックを受けました。だって、打ち上げられたかと思うと、目の前で爆発してしまったのですから...。コロンビア号の事故(同じく7人死亡)は、申し訳ないことに印象が薄いのです。2003年2月1日、帰還するとき、着陸寸前にロサンゼルス上空で空中分解したのですよね...。こちらはチャレンジャー号のような映像がないので、記憶が薄れてしまいました。あれから33年、17年もたってしまったのですね...。
野口さんが3度目、宇宙に行くのは、人類の可能性を広げること、自分が生きている証として挑戦した結果を子どもたちに見せたい、次世代につなげたいと考えたからだそうです。
宇宙服は14層の生地で構成され、120キログラムある。素肌に身に着けているのは冷却下着。ここには、長さ84メートルものチューブが縫い込まれていて、チューブに水を流して体温の上昇を防ぐ。そして、宇宙服の内部には、0.3気圧の純酸素を満たしている。
宇宙船の船外活動中は、誰も助けてはくれない。無限に広がる宇宙の闇の中で、何が起きてもたった2人ですべての作業を完遂しなければならない。もし通信機が故障して交信が途絶えたら、究極の孤立状態になる。指先は死の世界に触れている。
もし、酸欠が起きたとしても苦しくはない。身体が弱るより先に、意識がなくなってしまうから...。
ロシアの宇宙船ミールでも、実は火災も起きたし、貨物船との衝突事故も起きた。また、空気汚染もあった。ISSでは、火災・空気漏れ、汚染が三大緊急事態と言われているが、ミールはすべて経験している。だけど、非常事態にあっても、ミールでは死者を一人も出していない。
うむむ、これは実にすごいことだと思います。立派です。
宇宙空間は、絶対的な闇。「何もない黒」。一切の生を根絶するような闇。逆に、宇宙は光に満ちている。地球の昼のあいだは、地球のまぶしさが半端でないので、人間の目の限界から、宇宙空間は真っ暗闇に見えてしまう。
野口さんには、ぜひとも半年後、元気に地球に生還していただき、さらに大いに語ってほしいものだと心から願っています。
(2020年9月刊。900円+税)

2020年11月 2日

アインシュタインの影


(霧山昴)
著者 セス・フレッチャー 、 出版 三省堂

見えないブラックホールの撮影についに成功した天文学者たちの苦闘を紹介しています。地上の浮き世(憂き世)のゴミゴミした紛争から一時のがれて、宇宙の彼方に飛んでいってみましょう。
地球は天の川銀河の中心から2万6千光年ほど離れている。なので、銀河の中心を目指して光速ロケットに乗ってすすむとおよそ2万光年で銀河中央の膨らみ(ドルジ)に出会う。ここは、宇宙誕生の直後にできたような古い星が集まる場所で、ピーナツの形をしている。そして、さらに何千光年か進むと、いて座のB2がある。これは、私たちの太陽系の1千倍ほどはある黒雲で、そこには、シリコンやアンモニア、シアン化水素、ラズベリーみたいな香りの蟻酸エチル、そして誰にも飲み干せない量のアルコールが満ちている。
そこからさらに390光年ほど行くと、恐怖の内部領域に入る。銀河の中心までは、あと3光年ほどだが、そこでは、コズミック・フィラメントと呼ばれる雷光が空を引き裂き、遠い昔に爆発した星の名残りのガスが漂い、中心へと吸い込まれていくガス流が不気味に輝く。動力は巨大な渦潮のように何でも呑み込む。太陽よりもはるかに巨大な星が猛スピードで飛びかう。空間には放射線が満ち、原子は引き裂かれてもっと小さな粒子の霧となる。さらに近づく、この霧が光り輝く超特大の円盤と化して、ほとんど光と同じ速さで飛びまわっている。その中心にある真っ暗な領域こそ、巨大ブラックホール、わが銀河の中心にある不動の点だ。これをいて座スターAと呼ぶ。
宇宙の果てに、太陽の何億倍もの質量をもつブラックホールがあることは知られている。
いて座スターA(ブラックホール)の質量は、太陽の400万倍。このブラックホールには太陽400万個分の物質が詰め込まれている。ところが、アインシュタインの方程式によれば、ブラックホールの中は空っぽであり、そこに落ち込んだすべての物質は、ブラックホールの中心にあって、無限大の密度をもつ一点(特異点)に吸いこまれているはず...。では、この特異点では、何が起きているのか...。
まだ誰も一度も見たことがないのに、科学者たちは、ブラックホールの存在を信じ、その様子について長年にわたって議論してきた。
この本は、ブラックホールの写真を撮るという難題に挑んだ天文学者たちの物語です。
アインシュタインは、動力は力ではなく、時空のゆがみだと考えた。1960年代の後半、パラボラアンテナを使って、太陽のすぐ近くを通るタイミングで金星と火星に電波を送り、それが戻ってくるのに要する時間を測定した。すると、太陽の動力のせいで、曲げられた電波は千分の1秒の10分の2だけ遅れて戻ってきた。これはアインシュタインの予言どおりだった。
ブラックホールは、物質ではなく、純粋な動力だ。モノではなく、一連のプロセスと考えたほうがいい。ブラックホールの温度は絶対零度だ。そして、ブラックホールは、完全に真っ暗だ。ほとんどのブラックホールは、光速に近いスピードで回転している。
およそ銀河と呼ばれるものの中心には、巨大ブラックホールが必ずある...。
2017年4月、ついに天文学舎のチームは、ブラックホールを囲むような明るい星々の真ん中に黒いもの(ブラックホール)の存在を認め、写真に残した。どの写真にも、オレンジ色の輪がうつっていて、輪のなかは真っ黒い巨大な穴。穴の下に見える明るいレモン色の三日月型は、ブラックホールのまわりを猛スピードで周回する物質から放たれた光だろう。
アインシュタインの一般相対性理論は、ブラックホールには真っ黒な影があるという予想の正しさを証明した写真だった。
地球規模で天体観察していることもよく分かる本です。地上でコロナ対策をめぐって、ケンカなんかしているときじゃないですよね。コロナ対策が不十分なまま、GO TOトラベルなんて、経済対策に走っているスガ君を叱ってやりたいです。
(2020年4月刊。2000円+税)

2020年7月18日

地磁気逆転と「チバニアン」


(霧山昴)
著者 菅沼 悠介 、 出版 講談社ブルーバックス新書

地球の磁場(地磁気)が180度ひっくり返る現象は過去に何度も起きていた。そして、いちばん最近(77万年前から13万年前まで)に起きた地磁気逆転の証拠が「チバニアン」なのだ。
そもそも、地磁気は、地球内部を源として、大気圏を遠く離れた宇宙空間まで張り出し、太陽からの放射線や太陽風だけでなく、遠い銀河から飛来する銀河宇宙線などからも地球の表層を守るバリアの役割を果たしている。もし地球に地磁気が存在していなかったら、地球の大気は太陽風によって剥ぎとられてしまい、地球に生命は誕生しなかった可能性がある。
金星や火星には、地磁気に匹敵する大規模な磁場は存在しない。かつて火星には地磁気に匹敵する強力な磁場が存在したが、40億年前に消滅してしまった。そのため、火星の大気は太陽風にさらされ、剥ぎとられて、水も蒸発してしまい、生命が存在する環境でなくなった。
金星も同じで、太陽風によって大気、ときに水が散逸してしまった。それによって、大気中の二酸化炭素が吸収できなくなって、現在のような灼熱(しゃくねつ)の環境となった。
ヨーロッパコマドリは地磁気を感知して北欧から地中海へ飛行する。目の中に地磁気に反応する受容体があり、生化学反応して、それを視覚的に感知できるようになっている。つまり、地磁気を視て飛んでいる。
いま地磁気の強度が弱まっている。このまま地磁気が低下したら、1000年から2000年後にはゼロになってしまう。そうすると、人工衛星は故障し、世界の送電網や携帯電話などの通信網、GPSにも大きな影響が出る。
地球は一つの大きな磁石であり、球体の永久磁石ではなく、揺れ動く磁石なのだ。
地球はまさしく揺れ動いている天体の一つなんだということを実感させてくれる話です。そして、人類をふくめた生物が、この地球上に存在しうるのも、貴重かつ幸運な確率の産物だということも自覚させられます。要するに、もっと足元の地球を大切にしようということです。コロナ禍のゴールデンウィーク中に読んだ面白い本の一つでした。
(2020年4月刊。1100円+税)

2020年7月13日

銀河の片隅で科学夜話


(霧山昴)
著者 全 卓樹 、 出版 朝日出版社

コロナ・ウィルスのせいで、毎日、気が滅入ってしまいそうですが、そんなときには、宇宙のスケールで考えてみるのもいいことですよね。
1日の長さは、1年に、0.000017秒ずつ伸びている。0がコンマの下に4つ並んでいます。
3億5千万年前は1年は385日だった。このとき1日は23時間。6億年前は1日が22時間、9億年前だと20時間しかなかった。
今から500億年すると、地球がまだあるとして、1日の長さは今の45日になってしまう。
もちろん、そんなころには、あなたも私も星のくずの彼方を原子にでもなって浮遊しているだけなんでしょうが...。
天の川銀河の中心には太陽を2千の2千倍、400万倍集めて、極限まで縮めたような、想像を絶する怪物、超巨大ブラックホールが鎮座している。あらゆる存在の中心に暗黒が棲んでいるのだ。しかも、この暗黒はただの虚無ではない。なんともはや、想像を絶する世界です。
宇宙飛行の費用は、今のところ、1回68億円。10年後には20億円にまで下がる見込み。いやはや、そんな大金を出せる超大金持ちが世界にも日本にもいるというのが信じられません。
この本は東大のなかでも難関で天才たちの集まるところと言われる理物(りぶつ。理学部物理学科)卒の著者が縦横無尽に語っているのですが、最後に紹介されるアリの話にもっとも心打たれました。なんと、奴隷になったアリたちも反乱をすることがあるというのです。
アリも人間と同じく、自由を愛し、そのために命さえ投げ出すのだ。
こんなことを知ることができるのも多読しているからのことです。なので、本読みはやめられません...。
(2020年4月刊。1600円+税)

2020年3月16日

宇宙は無限か有限か


(霧山昴)
著者  松原隆彦 、 出版  光文社新書

 宇宙って広いんだから無限に決まってるだろ...。私の直観です。でも、そうすると大変なことになると著者は脅します。いえ、説明します。
 無限に宇宙が続くとすると、空間が無限に広いことになる。もし無限に広い宇宙が私たちのまわりと同じように続いているとしたら、その中にある星や銀河の数も無限個ということ、星のまわりに惑星が回っているのはありふれたことなので、惑星の数も無限個となる。その中には、地球のような惑星があるだろう。つまり、星や惑星が無限個あれば、どこかに必ず地球とまったく同じ環境になっていると確認される惑星があるはずだ。そこに生命が誕生している確率はゼロではない。どんなに小さな確率でも、そこに無限をかけあわせれば、無限になる。宇宙人の住む惑星が無限個あるならば、その中には地球とほとんど同じような惑星も無限個あり、人間と同じような姿形をした宇宙人がどこかにいるだろう。そんな確率はとんでもなく小さいだろうが、無限の宇宙では、どんなに小さな可能性でも必ず起きる。つまり、第2、第3の地球がいくらでもあるのだ。
なんだか怖い話になってきましたね...。
本当に宇宙が無限に続いているとすると、このほかにも奇妙な宇宙像に導かれてしまいます。つまり、「無限」という言葉は「無知」と隣り合わせなのです。
宇宙の年齢は138億年と考えられている。ところが、宇宙の広さは470億光年とみられている。これは、光の速度より、宇宙空間の膨張の速さが上回っているということを意味する。
ええっ、光速より速いものなんてないと信じていました。
ところが、宇宙空間の膨張の速さについては、光速度を超えてはいけないという規則は適用されない。宇宙空間が一様に膨張すれば、必然的に距離に比例して遠ざかる速さが増える。十分に遠方の宇宙を考えたら、いずれ必ず光速度を超える。そうでないとつじつまが合わなくなる。
こうして宇宙の地平線までの距離は470億光年となる。それより先の宇宙がどうなっているのか、現在の私たちは知ることができない。つまり、470億光年が観測可能な宇宙の果てとなる。
しかし、この観測可能な宇宙の果ては、本当の果てとは言い難い。
オルバースのパラドックスは、夜空の星がなぜ見るのかということでもあります。星が無限にあるとしたら、夜に空を見上げたらと、必ずどこかにある星の表面に視線はぶち当たるため、夜空全体が星の表面と同じ明るさで輝くはず...。
光の速さが有限であること、宇宙に始まりがあること、この二つにより夜空が星で覆いつくされるのに必要なほど遠くまで見通すことができない。オルバースのパラドックスは、宇宙が無限の過去から存在していないという理由で説明できる。
たまには、こんな浮世離れした議論に加わって、頭のほてりを冷ましたいものです。
あなたもぜひ、ご一読ください。
(2020年1月刊。800円+税)

 すっかり春めいてきました。道の両側に白いこぶしの花が咲きほこっています。ヒヨドリが花の蜜を吸っているのを見かけました。昨年うえたチューリップの花が咲きはじめました。春到来です。
 コロナウィルスのため、世界中が大変な状況となっています。全国一斉に学校が休校にするなんて、とんでもないことです。本当に子どもの健康を考えての措置だとは、とても思えません。人の流れだけでなく、モノづくりも止まっていて、営業と生活が成り立たなくなっています。日本政府はパニックをあおるようなやり方ではなく、情報を適切に開示して、きちんとした医療体制を確立してもらいたいところです。

2020年3月 9日

星宙(ほしぞら)の飛行士


(霧山昴)
著者 油井 亀美也 、 出版  実務教育出版

宇宙飛行士が語る宇宙の絶景と夢。これがサブタイトルです。宇宙飛行士として飛行中に撮った地球と星を見事なカラー写真で紹介してくれる楽しい本です。
親から、家にお金がないので防衛大学校に行ってくれと頼まれて入学。自分に向かないと思ったところで、ひょんなことから戦闘機パイロットとなり、教官もつとめているうちに宇宙飛行士に応募して採用されたという経歴です。
自衛隊時代はソ連を「敵」だとしっかり思い込んでいたのが、ロシアで宇宙飛行士として訓練を受けているうちに誤解は解けていったといいます。
宇宙飛行士に選ばれたときは既に39歳になっていました。それから厳しい訓練を経て、実際に宇宙を飛んだときには40歳でした。そして、今もまた宇宙に飛び出そうとしているそうです。すごいですね・・・。
宇宙は常に快晴。
流れ星は、天から降ってくるのではなく、眼下に広がる大気圏の中を地上に向かって流れていく。
オーロラは、寄せては返す波のようなもの。
オーロラの緑は大気中にある酸素原子、ピンクや紫は窒素原子の色。
オーロラが美しく光るほど、危険のサインとも言える。
エネルギーの塊である太陽を一瞬でも直に見ると失明してしまう。なので、ISS(国際宇宙ステーション)の窓には、太陽からの紫外線をカットするフィルターが貼られている。
快適な船内から防寒対策することなく、大好きな冬の星座を見続けられるというのは、ISSの特典だ。
地上では、惑星は瞬かず、恒星は瞬く。しかし、宇宙では、どちらも瞬かず、鋭い輝きを放つ。なので、両者は見分けにくい。
ISSは、全体としてサッカー場ほどの大きさのある巨大な構造物だ。空気の満たされた10ほどの部屋がある。この部屋を全部あわせると、ジャンボジェット機1.5倍くらいの容積がある。そこに宇宙飛行士6人が生活している。
日本は、ISSで一番大きく静かで機能美にあふれた「きぼう」という部屋をもっている。
宇宙飛行士には、筋力を保つために、1日2時間半の運動が義務づけられている。
夜景の撮影が難しいのは、ISSが秒速8キロで移動しているから。この秒速8キロというのは、拳銃の弾の20倍もの速さ。これは、東京と大阪間を1分で飛ぶという猛スピードだ。
ISSにいるあいだは、どんなに疲れていても、緊急事態に対処できるだけの余力は残しておかなければならない。うむむ、なるほど、そこまで徹底しているのですね・・・。
子どものころの夢を見事にかなえたという話でもあります。すごいですね
(2019年11月刊。1600円+税)

2020年1月 4日

宇宙から帰ってきた日本人


(霧山昴)
著者 稲泉 連 、 出版  文芸春秋

ずいぶん前に、このコーナーでアメリカの宇宙飛行士たちは実際には月面着陸していないという本(いわゆるトンデモ本)を紹介して、叱られたことがあります。トンデモ本を真に受けてしまったわけです。9.11についても陰謀論があるようで、フェイクニュースが横行する世の中ですので、なかなか真実を見抜くのは大変です。
宇宙に飛び出した人類は、今では国際ステーションをつくって長期滞在していますし、日本人も、そのなかで頑張っているのですよね・・・。でも、私は、例のチャレンジャー爆発事故を「目撃」して以来、宇宙旅行なんて、ますます怖いと思うばかりです。
その点、ロシア(旧ソ連)の宇宙船ソユーズ号は大変な安心感があります。
ソユーズは、1957年のスプートニク1号の打ち上げに使われたR-7Aを改良したもの。ソユーズは2000回近くの打ち上げに使用されており、その成功率は97%をこえる。現在も年間10機以上が打ち上げられるほど、信頼性には定評がある。ただし、2018年10月に打ち上げに失敗し、発射直後に緊急着陸するという事故も起こしている。
ソ連時代に爆発事故を起こして公表されなかったという事故もあるようですので、手放しで安全だと評価できないのかもしれませんが、この分野ではアメリカよりソ連時代をふくめてロシアのほうが宇宙船の安全性は確保されているようです。
それにしても、宇宙から地球の公害による汚染がはっきり見えるという指摘には、そんなにひどいのかと驚きました。なにしろ、ベトナム戦争のとき、地上の戦火まで見えたというのですから、宇宙船から地球は驚くほど、よく見えるのですよね・・・。
1990年にソ連の宇宙船ソユーズに乗って日本人として初めて宇宙旅行した秋山豊寛氏は、地球の青さというのは、地球自体は青いのではなく、地球と宇宙との境目の美しさを指していると語っています。
このとき、TBSはソ連に50億円支払ったとのこと。まさにバブル現象でした。1986年にチャレンジャー爆発事故が起きて、毛利衛氏が日本人初の宇宙飛行士になるはずだったのが、順番が入れかわったのです。秋山氏は、ひどい宇宙酔いに悩まされたとのこと。
地球に帰還した直後は、動力酔いに悩まされる。これは筋力が弱ったのではなく、三半規管によるバランス感覚がなくなり、まっすぐ歩けない、ふらふらと千鳥足になってしまう現象が起きる。
宇宙船内では、上下の概念がなくなってしまう。それに慣れた人が、地球に戻ってくると、危ない目にあってしまう。
宇宙船のなかでは、無動状態なので、ニュートンの作用、反作用の法則、つまり押せば押されるという法則を身体で実感・理解できる。
毛利衛氏は、私と同じ団塊世代。1992年にスペースシャトルで宇宙に行った。このときの地球の人口は55億人。2度目は2000年、NASA宇宙飛行士として行ったとき、地球人口は61億人。そして今や77億人。2050年には100億人になると予測されている。はたして、地球は人間をそんなにかかえこめるのか・・・。
(2019年11月刊。1650円+税)

2019年10月15日

2つの粒子で世界がわかる


(霧山昴)
著者 森 弘之 、 出版  講談社ブルーバックス新書

私の特技の一つは、よく理解できない本であっても、なんとか最後の頁まで読み通し、ところどころ分かることで良しと思い切れることです。この本も、まさにそうでした。まったく理解は出来ないのですが、うすぼんやり分かるところがあり、世の中の仕組みについて考えるきっかけの一つをつかむことができました。
私たち人間の身体も、地球も、本の活字のインクも、素粒子が集まって出来ている。もっとも早く見つかった素粒子は、電子。1897年にイギリスの物理学者ジョゼフ・ジョン・トムソンが発見した。
素粒子には、物質をつくりあげている粒子と、力を伝える粒子の二つがある。
光子には質量がない。運動エネルギーは持っていない。しかし、エネルギーがないわけではなく、別の種類のエネルギーを持っている。光は光子から構成され、光子が多いほど強い光であり、光子のエネルギーは光の波長で決まる。
これは、エインシュタインの立てた仮説。
光は、粒子と波の両方の性質を持っていて、場面に応じてその一方の姿を見せる。これを粒子と波の二重性という。ところが、実は、光だけでなく、あらゆるものが、波と粒子の2つの性質をあわせ持っている。
電子や原子も、波としての姿を隠し持っている。量子力学は、その波としての性質にとくに注目し、波の形や運動について記述した理論。
このように、あらゆる粒子は波でもあり、波は粒子でもある。粒子と思われていた電子は波としての姿も時おり見せ、波と思われていた光も粒子としての性質がある。
世の中のあらゆる粒子は、ボーズ粒子かフェルミ粒子のどちらか。世界の粒子は、この2種類に大別できる。
ボーズとは、インドの物理学者サティエンドラ・ボーズに由来する。
フェルミは、イタリアの物理学者エンリコ・フェルミに由来する。
原子核の大きさは、原子全体の10万分の1ほどでしかない。原子核は原子を図に示したとき、点として表すことができないほど小さい。電子にいたっては、大きさを持つのかどうかもはっきりしていない。つまり、原子は、ほとんどスカスカなのだ。
以上、私が少し分かったかな・・・、と思ったところだけを引用・紹介してみました。
私の身体が、そんなスカスカの原子の寄り集まりだからこそ、ミューオンとかが通過していくのでしょうね。でも、そうすると、私が小さな脳で考えているというのは、どんな現象になるのでしょうか・・・。これも宇宙の神秘の一つですよね。
(2019年5月刊。1000円+税)

2019年5月 7日

地球一やさしい宇宙の話

(霧山昴)
著者 吉田 直紀 、 出版  小学館

久しぶりに宇宙についての本を読みました。たまには、こういう本を読んで気宇壮大な気分に浸るのもいいことですし、必要です。宇宙に関する最新の知見が盛り沢山で、知らなかったことばかりでした。
地球が月に及ぼす力によって、月の内部は現在も温められ続けている。
月の地下には巨大な空洞がある。幅100メートルの空洞が50キロにわたって続いている。これは、かつての火山活動で流れた溶岩がつくった空洞。内部には、氷や水が存在する可能性がある。月は活火山なのかもしれない。
月の誕生には諸説あるが、生まれたばかりの地球に、火星ほどの小天体がぶつかり、地球の一部と小天体の残骸が集まって月が生まれたという説が今は最有力。
月は地球から少しずつ遠ざかっている。毎年、3.8センチという速度で離れていっている。月は潮汐によって地球の自転を遅らせ、自らは地球から離れていっている。
月がいなくなると、月は地球の自転を遅くする働きをしているので、そのタガが外れて地球の自転速度が速まり、1日が8時間になる。すると、月のおかげで安定していた地球の大気は、バランスが崩れて、常に大嵐が吹き荒れる状態になり、生命が存続し続けられるか怪しくなる。
宇宙にも色がある。若いときには青緑色をしていて、年齢を重ねて、138億歳になるとベージュ色になった。
宇宙はいまから138億年前に無から生まれた。宇宙は、広がりのない一点、つまり何もないところから生まれた。
GPSは、相対性理論にもとづいている。物体の速度や重力によって、時間の進み方が変わるという理論にもとづいて、GPS衛星の時計を調整し、位置情報を正しく保っている。
宇宙が始まったころ、まだ星のない「暗黒時代」があった。このころは水素やヘリウムの「ガス」と「ダークマター」が薄く漂い、ビッグバンの名残である「弱い電磁波」が飛び交うだけだった。そして、ガスは一様に広がっていたのではなく、少しだけ濃い部分も薄い部分もあった。濃いガス雲は、やがて薄い円盤をつくり、回転しながらさらに中心に集まる。中心部は高温・高密度になり、やがて赤外線を放出しはじめる。小さな小さな星の赤ちゃん「原始星」が誕生した。この原始星の質量は、太陽の100分の1、中心の温度は1万度をこえ、密度は1立方センチあたり、0.001グラムほど、水と空気の中間くらい。ぷよぷよしている感じ。
太陽質量の100分の1ほどだった原始星は、太陽の20倍ほどの重さになったとき、核融合反応を始めて、太陽の10万倍もの明るさで輝きはじめた。
「ファーストスター」をコンピューター・シュミレーションでつくってみたというのです。すごいです。とても面白い本でした。
(2018年12月刊。1300円+税)

2019年3月 4日

時間と時計の歴史

(霧山昴)
著者 ジェームズ・ジェスパーセンほか 、 出版  原書房

この本の第一版は、今から40年も前の1977年に出版されたそうです。この本は、最新(2018年5月)の内容に改訂されていますので、まったく最新の知識が得られます。
時間って、あるようで、ないようで、とても不思議なものですよね。
時間は使えるし、節約したり、無駄にしたりすることはできるけれど、壊せないし、変えることもできない。
時間はどこにでもあるけれど、空間を占めることはない。
時間は、はかれるけれど、見れないし、触ることも、除くことも、箱に入れることもできない。
誰もが毎日、時間を利用しているけれど、誰も時間とは何かをきちんと定義することができない。
時間は物理量だ。なので、観測でき、機械式時計や電気時計その他の物理現象をつかった時計ではかることができる。
万物は振動するが、一定の率で振動するものは、時間の間隔をはかるための標準として利用できる。
日時計で1日の長さをはかると、2月と11月とでは、15分もちがってしまう。
現存している最古の時計はエジプトでつくられた。日時計も水時計も、エジプト人の手でつくられた。
地球の自転は徐々に遅くなっていて、1日は1000年前よりおよそ16ミリ秒だけ長くなっている。これは、主として月が地球の海に及ぼす摩擦による潮汐作用のためである。6億年前の地球では1日は21時間だった。
うるう年の1972年には、2秒のうるう秒が加えられた。
すべての基本単位のなかで、時間はもっとも正確にはかることのできる量である。これは、すべての基本測定を可能な限り時間測定に近づけるべきだということを意味する。
1メートルの定義は、1983年にパリで開かれた国際度量衡総会は次のように定めた。
1メートルは、光が2億9979万2458分の1秒に進む距離である。
時間って何だろうと思いながら、ついつい最後の頁まで、さっぱり理解できないことが多々あるのを身にしみて自覚しつつ読了しました。
ありがとうございました。
(2018年11月刊。2800円+税)

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