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現代戦争論

カテゴリー:社会

(霧山昴)

著者 小泉 悠 、 出版 ちくま新書

ロシアのウクライナ侵攻戦争が始まって2年が経過しています。これを見て、日本にも継続戦能力が必要だと考えている人が少なくありません。著者もその一人です。

でも、待ってください。継続戦能力 というのは、日本がウクライナのように何年も戦争が続けられるようにしようということでしょう。だったら、ミサイルや弾薬をたくさん持つという前に考えることがあるでしょう。食べ物とエネルギーの確保です。

食料自給率は38%です。日本は輸入に頼っている国 です。しかも、「敵」と想定している中国は大きな比重を占めています。

そしてエネルギーもです。再生エネルギーを軽視しているのが自民党政府の日本ですよ。原油が入ってこなくなったら、たちまちすべてがストップします。 高市首相の言うような、どこかで「目詰まり」なんてものではありません。

そのうえ、日本海に面してたくさんの原発(原子力発電所)が林立しています。その一つでもミサイル攻撃されたら、日本はたちまち破滅です。「継続戦」どころではありません。

この本を読んで、ロシア国民の「継戦意欲」が低下しない理由を私は初めて認識しました。ウクライナ侵攻戦争に従軍して莫大な戦死傷者が出ているのに、モスクワ出身者は意外に少ないというのです。戦死傷者の多くはシベリアなど辺境出身者なのです。

ロシアの戦争は、あから様な侵略そのもの。著者の主張は明快です。この点、まことに異議ありません。プーチンに大義はまったくありません。

ロシア軍は、戦死者を「貨物200」と呼ぶ。アフガニスタン以来の隠語。ロシアはこれまでに17万人の死者、 70万人の死傷者を出しているとみられている。28万人の戦死者という見方もある。

これに対し、ウクライナ軍の戦死者は7万人とされる。いや、もっと多くて、8万人から14万に及ぶという見方もある。ロシア兵の戦死者のうち志願兵は28%、受刑者は14%とみられている。

そして、モスクワ出身者は、10万人あたり4.4人の戦死者であるのに比べて、地方では36.1人となっている。この戦争は地方の人の命でまかなわれている。

ロシアの兵力は90万人に対して、ウクライナは70万人。しかし、ウクライナ軍の士気は高い。

ロシアもウクライナも、ドローンをそれぞれ大量に投入している。この戦争でのドローンは、一方が他を圧倒する手段とはなっていない。お互いに、敵のやっていることをみんな見ている。

ウクライナ軍は、ロシア領内奥深く攻撃できる(中長距離弾道)ミサイルを今もなお保有していない。

ロシアの兵力は、それぞれ待遇と引きかえに志願した契約兵か、民間軍事会社のコントラクター(契約戦闘員)が占めている。

ロシアがウクライナ侵攻に動員したときの15万人の兵力は、徴兵を動員しないで出来る上限だった。 ロシア軍は、すでに兵力不足となった。

ロシア人の妻をもつ著者はロシア政府から無期限の入国禁止措置を受けているそうです。ロシア政府に都合の悪いことを書いているからです。

高市首相の今やっていることもスパイ防止法など、同じことです。

今年2月に発刊されて、すでに四刷、4万部突破とのこと。ロシアの戦争の内情を知りたい人に読まれているのでしょうね。私も読んで大変勉強になりました。

(2065年4月刊。980円+税)

裁判官が見た人間の本性

カテゴリー:司法

(霧山昴)

著者 瀬木比呂志 、 出版 ちくま新書

私より6歳だけ年下の元裁判官の書いた本です。同じ著者の本は、以前も読んでいます。かなり共感できるところが多いのですが、一部には同意できないところがあります。まあ、これも当然ですよね。まったく考えが一致してしまうほうが珍しいことでしょう。

東大法学部に入ったのは、両親の「強制」によるものというのには驚きました。私は決してそんなことはありませんが、世の中には、そういうケースが珍しくないと今の私は思っています。子どもの足をひっぱるばかりの親がいるかと思う反面、子どもに親の思いを押しつけ、ぐいぐい引っぱっていく親も大勢いるのが現実です。

東大に入っても駒場寮という地方出身の学生ばかりが集まるところで生活していましたので、私はとても気分的に楽でした。しかし、それがなかったら、地方の「無名」の高校を出た出身の学生は、シティボーイだらけのクラスで浮いてしまって、孤独感をひしひしと感じたことでしょう。さらに寮のほか、セツルメントサークルに入って、多くの他大学の学生と日常的にまじわっていましたので、授業でシティボーイたちとまじわっても臆する必要もありませんでした。本当に幸せな出会いがありました。

著者は、1年間の勉強で司法試験に大学4年生で合格しています。ということは大学3年生のときから勉強を始めたわけです。私は大学2年生のときに東大闘争が始まって授業がなくなり(ラッキーと思いました)、法律の勉強なんて全然せず、ひたすらセツルメント活動と東大闘争に全力投球しました。授業が再開して本郷へ進学すると、みんな一斉に勉強を始めました。おかげで、私と一緒に東大生(在学生)が90人も司法試験に合格しました。これは、たぶん空前絶後の記録だと思います。私は司法試験に合格したら、労働者と市民のために働く弁護士になるという確固たる目標がありました。大企業のための弁護士になるなんて考えたこともありません。裁判官は自分に向かないことはよく分かっていました。

裁判所の内側にいて著者がつかんだことは…。

日本の裁判所は権力補充機構という性格が強すぎ、権力チェック機構としての性格が弱すぎる。この点、私はまったく同感です。

うつになり、死を間近に体験した著者は死についても語ります。

人間は、本来的には、自分だけのために生きているわけではない。人間は、種としての、類としての存在である。ほかの人間たちとの関係なくして、個人はありえない。

人間は、まぎれもなく宇宙の一部であり、宇宙のうちの「相当に高度な意識をもった特殊な部分」ということができ、それが、宇宙のような「意識を欠く部分、生命活動を欠く部分」に移行すると、死である。

死は、あとに続く生命に道を譲ることであり、それは自然である。

なるほど、そうなんですよね……。勉強になります。

(2026年2月刊。1012円)

タンパク質とは何か

カテゴリー:人間

(霧山昴)

著者 山本啓一 、 出版 インターナショナル新書

髪も骨も筋肉も、私たちはタンパク質でできている。 そのことを実感させてくれる本です。

ヒトの身体を構成している物質で一番多いのは水(60%)で、脂質(20%)、タンパク質(16%)と続く。 次にミネラル(4%)、炭水化物(1%)。

脂質と炭水化物の主要な役割はエネルギーの供給。 そのエネルギーをさまざまな生命活動に変換するという重要な働きをしているのがタンパク質。 タンパク質が人の身体の中でいろいろな働きをすることができるのは、さまざまな状況に対応して自由自在に構造をつくることができるから。 タンパク質はアミノ酸が多数つながったもの。

タンパク質をつくるアミノ酸は20種類。 タンパク質は、20種類あるアミノ酸を適切に配列させることで、さまざまな構造をつくり出すことができる。

ヒトの身体の中には2万種類ものタンパク質がある。 タンパク質の中で最も大量に存在するのがコラーゲン。 タンパク質総重量の30%を占める。

コラーゲンは、細胞どうしを接着するタンパク質。 コラーゲンの構造は単純で、そのアミノ酸配列は、ほとんどの動物で同じ。

カルシウムイオンは、シグナル物質。 エネルギーを使って細胞の外に排出しているため、細胞内のカルシウムイオン濃度は非常に低く抑えられている。 そのため、ごくわずかなカルシウムイオンの流入でも強いシグナルとなる。 カルシウムイオンがシグナルとして使われる代表的な場所が神経伝達と筋収縮。

酵素は化学反応の進行を促す触媒として働くタンパク質。

ビタミンCを体内でつくれないのは人間、一部の猿、モルモット、コウモリだけ。 その他の動物は自分で作ることができる。

食べた酵素がそのままヒトの身体の中で働くことはほとんどない。 ヒトの体内のタンパク質は、毎日、少しずつ分解され、新しいものに置き換えられる。 その量は1日に300〜400グラム。

コラーゲンは、半分が置き換わる時間は、若い人で95年、高齢者だと215年。 一生をかけても、半分も置き換わらない。

アミノ酸はエネルギー源にもなってしまうため、タンパク質の分解で生じたアミノ酸の一部は細胞内で使われている。 タンパク質の量を維持するためには、日60〜80グラムのタンパク質を毎日、食事によってとらなければいけない。 元気な老後を過ごすには、一日体重1キロあたり、1.2グラムほどのタンパク質をとったほうがよい。 年をとると消化吸収能力が落ちるため、少し多めにタンパク質をとったほうがよい。 高くて質の良い肉を毎日少しずつ食べたほうがよさそうなのです。

あとがきを読んで、著者は私と同年に生まれ、東大闘争も同じような体験をしていることが分かりました。

(2025年12月刊。970円+税)

マダガスカル島へ

カテゴリー:アフリカ

(霧山昴)

著者 今森光彦 、 出版 偕成社

マダガスカル島は、アフリカ大陸の東側にある世界で4番目に大きな島。

なんと、この島に人間が住みはじめたのは今から1300年ほど前という。それは不思議ですね。しかも、最初にやって来たのはアフリカ大陸ではなく、インドネシアのボルネオ島から船に乗ってやってきた。いったいどうしてそんなことが分かるのでしょうか…。

船の外に張り出してつける浮きが発明された(アウトトリガー)ので、転覆することなく航海が出来たというのです。なので、マダガスカルの島人は、アジアとアフリカの両方の血をひく人たちが住んでいる。ライチの実をもっている3人の少年の写真がありますが、なるほど、アフリカ人にアジアの血も混じっている表情をしています。

ディディエレアという10メートルもある大きな植物は、サボテンとは似ても似つかぬ形をしていますが、びっしりトゲがあって、とても痛そうです。

もちろんバオバブの木もあります。ずんどうの太い幹は、まるで大地を支えているかのようです。

マダガスカル島に固有の固有種が多いのは、アフリカ大陸から1億8千万年前に切り離され、さらに9千万年前にインド半島から分離して、単独の島になったことにある。しかも、アフリカ大陸にいるライオンのような大型肉食獣がいないので、哺乳類が多様に進化できた。

NHKの「ダーウィンが来た!」で紹介されたワオキツネザルもここにすんでいます。

そして、子どもたちの格好の遊び相手になっているのがカメレオン。100種類もいるそうです。カメレオンが獲物を長い舌を伸ばして捕まえる瞬間の写真があります。カメレオンも著者も、どちらもすごい早技(はやわざ)です。

カエルもたくさんの種類がいます。体の色がカラフルすぎます。

そして森にすむ昆虫たちは形も色も、目を奪うほど、奇抜です。オオベニハゴロモという紅い花にしか見えない昆虫は、思わずあっと言うほど珍しい形と色をしています。

ガもすごいです。まさに素抜な形と色をしています。目玉が2個、いや4個あるガがいます。そして、それを見事に写真にとらえているのです。さすが、です。

エレファントバードという、絶滅した大型鳥の卵が紹介されています。卵の大きさは、なんと30センチもあります。表紙の少年は、その巨大な卵を両手で抱えています。

すごい島だということが実感できる貴重な写真集です。

(2026年4月刊。1760円)

ニホンザルですが、このたび転職します

カテゴリー:

(霧山昴)

著者 都丸 亜希子 、 出版 祥伝社

ニホンザルのサル吉くんが、おしゃべりして、自分たちの生活を紹介するというユニークな本です。 最後まで面白く一気に読み通しました。 こんな工夫もいいですね…。

サルの寿命は25年ほど。20歳すぎたら急速に老化現象がすすむそうです。

メスはずっと群れに残りますが、オスは4歳くらいで群れを出なければいけません。 ところが主人公のサル吉は7歳にもなるのに、まだ群れにのほほんと残っています。もちろん、群れのメスたちはサル吉を相手にしてくれません。ところが、群れのアルファメスである姉ちゃんがサル吉に対して群れから出ていくように求めるのです。さあ、どうしたらいいでしょうか…。 

サルたちは群れで放浪生活をする。 一ヶ所に定住することはない。 寝るときは、仲良し同士が肩を寄せあって眠る。 「寝るぞー」と呼びかわしながら寝る。 でも、しばらくすると誰かが起きだし、ゴソゴソしだすから、騒がしい。

サルは、人間のように汗をかけないので、暑い夏は、涼しいところにいて、なるべく動かない。

セミは、高カロリー食品なので食べ物として最高。

サルの社会では、親子であっても、食べ物を分け与えることはない。

サルの群れでは、誰と誰の仲が良いのか、誰がどの家系にいるのか、というのが重要。 それで、ムダな争いごとを避けられる。新しいことを始めるのは、いつだって子どもサル。 大人のオスザルは保守的。

ニホンザルは、2~3歳のころから、オスはオス、メスはメスのグループをつくる。 寝るときも、オス同士、メス同士で固まって寝る。

ニホンザルの群れは母系なので、群れを維持するのはメスの役目。

オスが必ず群れから出ていくとも限らない。オスであっても、心も行動もメスという存在もいる。

ニホンザルのルールは、アルファメスの家系の一番若いメスが後を継ぐ。オスの順位決定にはメスの承認が必要。

メスザルは3歳の交尾期(秋から冬)に、性皮がピンクにふくらむ。 オスザルよりメスザルのほうが少しだけ早く成熟する。

もてるメスザルは、何頭か子どもを産んだ、いわゆるベテランメス。 赤ちゃんを育てた 経験がモノを言う。

相手のメスが承知しないと交尾はできない。 強姦はありえないようです。

メスザルは、発情期になると、群れで数年一緒に過ごしていた仲のよいオスザルの前から、スーッと消える。

今はボスザルとは呼ばない。リーダーでもない。集団をリードしているわけではないから。 それでアルファ(α)オス・メスと呼ぶ。

ニホンザルは日本に一種のみ。ヤクシマザルはニホンザルの亜種。オナガザル科マカク属で、旧世界ザル。

ニホンザルが最少となったのは、戦後1950年ころ。山に木がなく、杉林ばかりだったから、食べるものがなかったから。針葉樹林は食べ物の役目を果たさない。

サルの身体は薬にも、食用にもなっていた。 「孫ザルは婆に食わすな」という言い伝えがあったそうです。それくらいぜいたく品でした。

ニホンザルの生態が写真もイラストもたくさんあって楽しく学べる本です。

(2026年4月刊。2970円)

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