(霧山昴)
著者 佐藤卓己 、 出版 NHKブックス
大学受験の通信添削にオリオンなるものがあったことを、私はこの本を読んで初めて知りました。
京大ならオリオン、東大ならZ会と言われていた。
私はZ会です。高校生から3年間続けたと思います。通信添削で成績上位の氏名が毎号のっていて、常連の名前は今でも覚えています。駒場豊とか。
オリオンを利用した人をオリオニストと呼ぶそうですが、そのなかには鳩山邦夫と舛添要一の名前があります。東京都知事をつとめ、そのせこい行状でひんしゅくを買って辞職した舛添要一は東大駒場で同じクラスでした。お互いまったくそりが合いませんでしたので、親しく話したこともありません。
鳩山邦夫は東大法学部を首席で卒業したそうですが、遠くから見ていただけで、まったく垢抜けしない人だという印象しかなく、とても秀才だとは思えませんでした。
京大文学部に入った上野千鶴子もオリオニストだったそうです。とかく話題の人ですよね…。
オリオン通信添削の最大の魅力は、添削者を指名できるシステム。Z会の通信添削にはそのようなものはありませんでした。もちろん、赤ペンでいろいろ書いてはもらいました。それが励みになっていたことは間違いありません。でも、オリオンのような「信紙」とか「文通」のようなやり取りなんてものはありませんでした。
私は、田舎(地方)の県立高校(三池高校)から東大を受けましたが、一つ上の学年の2人が現役合格し、私の学年は現役2人、一浪2人の計4人、下の学年は現役2人が東大に合格しました。つまり、私の学年は東大4人、京大2人だったと思います(九大合格者の数は知りません)。
私は高校時代は予備校に行くこともなく、受験参考書とZ会、それに年に2回ほどの旺文社全国模試に参加したくらいです。
Z会は会員数の拡大路線で生き残り、今も健在のようですが、オリオンのほうは1991年に廃業しています。
この本によると、今日では大学生の過半数が一般入試を受験せず入学している、とあります。受験はもはや国民総動員の総力戦ではなく、限られた大学での限られた参加者による局地戦となっている、とのことです。ええっ、そうなんですか…、知りませんでした。
私は予備校に行っていませんので知りませんでしたが、教室で缶ビールを飲みながら講義する名物(人気)講師がいたそうです。呆気にとられます。
教師(講師)の言葉にもっとも真剣に食いつくのが予備校生。その眼差しが違う。そりゃあ、そうでしょうね、きっと……。
そもそも受験勉強も大学教育も、実社会ではあまり役に立つものではない。しかし、企業は自ら選んだ競争を勝ち抜いたという自信、それにともなう自己肯定感を基準にして採用する。やれば出来るという自信をもっている者こそ、組織が必要とする人材だから。だとすると、入試で試されているのは闘争心や克己心ということになる。なるほど、そういうことなんですか……。
受験勉強は楽しいとか、勉強しながらでも青春は満喫できるなどという無責任なことは書きたくないという合格体験記が紹介されていますが、まったくそのとおりです。ひとり孤独に勉強するしかありません。
私は、司法試験の勉強のときにも同じことを感じました。それで、徹底して合理的な勉強法を心がけたのです。そして、幸い1年足らずで合格できました。その苦闘の状況を再現したのが『小説・司法試験』(花伝社)です。
大変勉強になりました。自分のことも振り返ってみることができました。
(2026年7月刊。2090円)


