(霧山昴)
著者 遠藤 哲人 、 出版 自治体研究社
いま全国各地で進行中の都市再開発において、住民の生活再建という点が抜け落ちていることを厳しく告発している本です。
超高層ビル(タワーマンション)群の乱立は、「今だけ、自分だけ、儲けだけ」という、近視眼的な企業の事業活動、儲け一辺倒の姿勢によるもの。都市はみんなのものという考えが忘れ去られ、「俺の土地だから俺の勝手」式の考えによって、地域に住んできた(いる)人々の暮らしに重大な困難をもたらしている。
公共事業に、デベロッパーが競争入札によらず、「参加組合員制度」を利用(悪用)し、共同開発者の一員として保留床を取得している。そしてデベロッパーの推進する再開発準備組合は、最後の最後までまた参加組合員に関する契約を定めず秘密にしたまま進めていく。
時代は変わった。50年たつと今とは全然違っている。今回の再開発の最大の特徴は「保留床最大化の法則」が強く働いていること。保留床こそが再開発の本命。今や、保留床が8割以上、権利床は2割以下。権利床が半分くらいはあるという予測は、まったくの誤解ないし錯覚でしかない。
いま全国で進められている大半の再開発は、地権者の行う事業ではない。形式はどうあれ、実質はデベロッパーの行う地上げ事業。
超高層再開発の巨大さは、ゼネコンの売り上げの巨大さを表している。事業費の3割をほぼ占める補助金は、デベロッパーやゼネコンの利益として吸いとられる。
派手な開発が進む陰に進行しているのは、市民生活を窮迫させている事実。熊本市は国保料が全国有数の高さ。滞納率も30%という高さにあり、市は強制執行をかけている。しかし、その一方で、中心部再開発のためには国とあわせて130億円もの補助金を出している。開発市政を推進するウラで市民福祉が削減されている。
再開発は、抜き足、差し足、忍び足でやってくる。暴力的な地上げは目立たなくなって、今や、強制執行権をバックとした地上げが横行している。
いま、各地で古い分譲マンションがデベロッパーに狙われている。
自治体に都市計画の決定をさせたら、「一敷地一人」の発言権しか与えられず、事実上、個々の区分所有者には組合設立に関する発言権はない。
著者は区画整理や再開発問題に住民の立場から長く関わってきましたので、その豊富な経験にもとづく、とても分かりやすい再開発問題に関するテキストになっています。関心のある方には必読です。
(2026年6月刊。2000円)


