弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2025年4月12日
ニセコ化するニッポン
社会
(霧山昴)
著者 谷頭 和希 、 出版 KADOKAWA
私はスキーしませんので、ニセコのパウダースノーの良さが実感できません。ところが、ニセコの近くのペンションに泊まったことがありました。かなり前のことです。
今や人口2万人のニセコ町あたりに外国人観光客が160万人も来ていて、1泊が最低でも10万円とか15万円で、なんと1泊170万円というホテルもあるそうです。ニセコの公用語は英語で、富裕層の外国人観光客によってニセコは占められている。うひゃあ、そうなんですか...。そして、ニセコのコンビニ(北海道ローカルのセイコーマート)には、1万3千円の高級シャンパンが並んでいる。いやはや、こんな町にはとても近づけませんよね...。ニセコは、富裕層以外には敷居の高い観光地になってしまった。しかし、それでいいのだ。誰でも行けるニセコではない。それを求めたら、富裕層は逃げていく。
今の世の中は「選択と集中」が求められているというのが著者の主張です。なるほどなるほど、そうなんでしょうね...。
ニセコが成功した秘訣は、「選択と集中」によるテーマパーク化にある。「ニセコ化」に成功するとそこはにぎわう。そして、その陰で「静かな排除」が起きている。
東京の豊洲市場にある「千客万来」では「インバウン丼」(海鮮丼)は、なんと1万5千円もする。うに丼だと1万8千円。大阪の日本橋にある商店街「黒門市場」にも、神戸牛の串焼きは1本4千円、カニの足は4本で3万円という。目の玉が飛び出るほどの高さに呆れます。
東京・渋谷は、インバウンド観光客の7割近くが訪問するところ。大々的な再開発が進行中で、高級ホテルがなかったのに、つくられつつある。かつて渋谷は学生を含む若者の町だったのですが...。渋谷は、もう若者の街ではない。ターゲットが変わったのだ。
東京の新大久保は、「韓国テーマパーク」化している。「韓流の街」なのだ。
スタバとは、テーマパークである。私もスタバは利用しますが、他のコーヒーチェーン店よりカフェラテが出てくるのが遅くて、いつも少しだけイラっとしています。
マック、すき家に次いでスタバの店は日本に多いそうです。かつて鳥取県にはスナバはあってもスタバはなかったのですが、今はあるようですね。
ブレンドコーヒーは、ドトール250円、タリーズ360円、スタバ380円。いやあ、こんなに違うのですね。私は、外に出て本を読むために入りますので、1時間すわれたら、250円であろうと380円であろうと気にしません。タバコをすわないのですから、1日にそれくらいの出費を気にする必要はありません。
「びっくりドンキー」という日本人向けハンバーグに特化された飲食店チェーンが紹介されていますが、私は入ったことがありません。九州にもあるのでしょうか...。
そして、丸亀製麺。ここは、「粉から手づくり」をモットーとし、それを客によく見えるようにしています。そして、トッピングをいろいろ選べますので、子どもは大いに喜びます。私も孫と一緒に入ったので、分かるのです。
失敗したテーマパークとして、日光・鬼怒川にあった「ウェスタン村」、そして夕張市の観光施設が紹介されています。私の住む町にもちゃちなテーマパークがオープンし、わずか4年で倒産・閉園しました。その結果、30億円もの負債をかかえ、10年間、毎年3億円ずつ市は返済していきました。始める前にコンサルタント会社が一致して「赤字化必至」だと警告していたのに、それを市民に隠して市長たちは始めたのです。そして、たちまち赤字になって倒産しました。住民訴訟で市長の責任を追及しましたが、勇気のない裁判官たちは、市長の責任を弾劾しませんでした。今も思い出すたびに怒りがこみ上げてきます。
たまには、こんな本を読んで、世の中の動きを知らないといけないと思ったことでした。
(2025年1月刊。1650円)