弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

恐竜

2024年3月17日

最強の恐竜


(霧山昴)
著者 田中 康平 、 出版 新潮新書

 「子ども科学電話相談」では思いもよらない質問が寄せられるとのこと。たとえば、「ティラノサウルスのオスとメスは、どちらが強いの?」です。ええっ、恐竜にもオスとメスがいるのは当然ですが、そのどっちが強いか、なんて私は考えたこともない疑問です。
 人間(ヒト)なら、女性が強いに決まっています。カマキリだって、オスは交尾中にメスから食べられてしまうのですからね・・・。著者も、気迫でメス(母親)が勝つとしています。
 メスのティラノサウルスは史上最大の恐竜であるアルゼンチノサウルスと戦っても勝つだろうと著者は言っています。図体が出かければ争いに勝つというものではありませんよね。
 アルゼンチノサウルスは、全長40メートル、体重100トンだとみられています。ボーイング737型は80トンないそうですから、ジャンボジェット機より重たいというのです。すさまじいでかさです。
 恐竜がどれくらいのスピードで歩き、また走れたのかは足跡化石から推測できる。それによると、時速10キロほどで歩いていたが、時速40キロ前後で走っていたと推測される足跡化石がある。ずいぶん速いですよね。
 恐竜のウンコ化石もたくさん見つかっていて、ティラノサウルスのウンコ化石には骨のかけらが大量に含まれていて、その割合は30~50%に達している。つまり、ティラノサウルスは餌の骨を砕き、骨まで飲み込んでいた。
 マイアサウラのウンコを丸めて糞玉をつくると、直径24センチ、バスケットボールと同じくらいの大きさになる。
 著者は、かの小林快次先生の弟子です。師匠は、「ファルコン・アイ」(ハヤブサの目)として名高い存在だが、最近では「ローガン・アイ」、つまり小さなものを見るのが滅法弱くなったので・・・。ところが、どっこい、まだまだ師匠にはかなわないと、著者が泣いて悔しがる場面も多数登場してきます。
 子どもたちの意表をついた質問をいかに切り抜けるかを念頭に置いた、楽しい恐竜の本です。
(2024年1月刊。820円+税)

2023年12月 9日

恐竜がもっと好きになる化石の話


(霧山昴)
著者 木村 由莉 、 出版 岩波書店

 中学生向けの本ですが、老齢人口の私も十分に楽しめました。
 著者は東京・上野にある国立科学博物館で化石を研究している生物学者。私は、上京したとき、ちょっと時間があれば、この科学博物館に行ってみます。いつも驚きの発見があり、ワクワクします。
 著者は化石に触れると、何千万年前にタイムスリップしたような不思議な感覚になる。これが面白くて古生物学者を続けている。
 7歳の女の子のとき、1億年前の化石を手にして以来、恐竜が大好きで、そのまま研究者の道を歩んでいるというのですから、たいしたものです。
 化石が見つけ出せるかどうかは、運次第。この冒険のようなワクワク感が古生物学のロマン。探検に必要なものは、「十分な準備」。何が起きるのか、予測を立ててしっかりと準備する。
古生物学者になるのは女性でも不利ではないと著者は強調しています。何より好きだという気持ちがいちばん大事だ。
 アメリカの有名な古生物学者のなかには盲目の人もいるそうです。「手でみる」のです。いやあ、信じられませんよね...。
 肉食の動物のフンのほうが化石として残りやすい。それはフンの中に「リン酸」が多く含まれるから。リン酸はカルシウムなどと結合して硬い石になるから、化石になりやすい。
 恐竜が速く走れるかどうかは、足の骨の長さの比率から推測できる。太ももの骨に比べて、すねの骨や足の甲の骨が相対的に長ければ、足が速い。
 歯のない恐竜は、胃の中に石を吞み込んで胃石とし、食物をすりつぶしていた。
 地中や地表面から小さな化石を見つけて、それが恐竜の骨のどの部分かを当て、さらに、その恐竜を全体として想像できるなんて、とてもすばらしいことですよね。
 福井県にある恐竜博物館は一見の価値があります。わざわざ行ってみる価値は十分にあります。そのスケール感が半端ではありません。
 まだ天草にある恐竜資料館には残念ながら行ったことがありません。ぜひ行ってみたいです。中学生向の100頁ほどの恐竜本です。楽しく、ロマンを感じました。
(2023年8月刊。1450円+税)

2023年7月17日

羽毛恐竜完全ガイド


(霧山昴)
著者 BIRDER編集部 、 出版 文一総合出版

 鳥は恐竜である。
 今や、定説になっています。でも、地上を駆ける恐竜と空を飛ぶ鳥と、どこに共通点があるのか、一見しただけでは分かりません。
 鳥と恐竜は、どちらも直立二足歩行で、趾行(しこう)性。直立二足歩行するのは、鳥と恐竜以外には、ヒトとカンガルーくらい。
 趾行性というのは、かかとを地面から上げ、つま先立ちで歩くこと。鳥のあしに膝のように見えるのは、実はかかと。
鳥の羽は、うろこが変形したもの。なので、全身がうろこで覆われている恐竜と、羽をまとっている鳥とは共通している。羽毛の起源はウロコが変化したもの。羽毛には断熱材の役割があった。恐竜は内温性だった。
 恐竜はカラフルと一般に考えられているが、鳥も身近な鳥ほど派手ではなく、恐竜も鳥と同じでは...。
 現在、恐竜の定義は、「トリケラトプスとスズメのもっとも新しい共通祖先とその子孫すべて」。
 恐竜は2億3千万年前から6600万年前まで、長期にわたって繁栄した。このうち鳥類に進化したのは獣脚類。
 羽毛が確認された恐竜のなかで最大種なのが、マラティラヌスで、中国で発見された。体長9メートル。羽毛はディスプレイ用の飾りだったと考えられている。
 カラフルな羽毛恐竜が紹介されている楽しい図鑑のような本です。わが家の庭にいつもやってくるヒヨドリやカササギ、そしてスズメが恐竜の仲間だなんて、ちょっと信じられませんが...。
(2023年3月刊。2750円)

2023年6月24日

ティラノサウルス解体新書


(霧山昴)
著者 小林 快次 、 出版 講談社

 「なぜ恐竜図鑑の表紙はティラノサウルスばかりですか?」
 その答えは、よく売れるから。なるほど、ティラノサウルスなら、子どもも大人もみんな知ってますよね。映画『ジュラシック・パーク』もやはりティラノサウルスが登場してこそのド迫力でした。ところが、この本によると、ティラノサウルスが登場したのは恐竜時代の最終期、巨大隕石(直径10キロ)が地球に衝突して恐竜が絶滅するまでの200万年間だけだというのです。それは長い恐竜時代を1年にたとえてみたら、12月28日に現れて31日には姿を消した、このたった3日間しか暴れることはなかったというのです。不思議ですよね...。
 そして、このティラノサウルスは、日本では化石が発見されていませんが、ティラノサウルス類は、九州でも熊本県と長崎県で化石が見つかっています。熊本県は御船(みふね)町と天草市で、御船町恐竜博物館があります。天草では大きさ4センチ、太さ2センチの歯が見つかり、全長7メートルのティラノサウルス科の恐竜と推定されています。ぜひ近いうちに行って見てみましょう。
 著者は、ティラノサウルス・レックスは日本にいなかったとしても、ティラノサウルスの仲間はいたと考えています。すごいことですよね、これって...。
 今や恐竜はカラフルな生き物だったとして、図鑑は、それこそびっくりするほど奇抜な極彩色で描かれています。なぜ恐竜の色が判明するのか...。メラニン色素はメラノソームという袋のようなものに貯められ、その形によって色が異なることが分かっている。このメラノソームという構造が化石となって残っていると、これを応用して恐竜の色が分かる。たとえば、球形に近いとオレンジ系で、長細いと黒系の色。こうやって恐竜の色、とくに羽毛の色が判明した。
 ティラノサウルスのように巨大化すると、多少の気温の変化は、羽毛に頼らなくても、日中に体内で貯められた熱を慣性的に維持することができる。
 今では、ティラノサウルスの体は羽毛ではなくウロコに覆われていて、背中に毛のような羽毛が生えていたと考えられている。そして、頭にトサカのような装飾をつけて自己アピールをしていた可能性がある。
 ティラノサウルスの巨大な糞が1点だけカナダで発見されている。長さ44センチ、幅16センチ、高さ13センチ、重さ7キロ。これはすごいですね。この塊に骨が含まれていて、その巨大さからティラノサウルスの糞だと考えられています。まさしく肉食恐竜でした。
ティラノサウルスも卵生のはずですが、まだティラノサウルスの卵は発見されていません。鳥類のように抱卵していたとは考えられないようです。
 ティラノサウルスの寿命は28歳くらいではないかと著者は推測しています。
恐竜は完全に絶滅したのではなく、鳥類は恐竜の生き残りだというのが定説です。そして、その証拠の一つが、羽毛恐竜の発見でした。たしかに、恐竜に羽毛があるなんて、そんな化石が見つからなかったら、とても考えられないことですよね。
ティラノサウルスを中心として、恐竜学の最新情報を得ることのできる楽しい本です。
(2023年5月刊。1700円+税)

2023年6月19日

世界一美しい恐竜図鑑


(霧山昴)
著者 ライリー・ブラック 、 出版 日経ナショナル・ジオグラフィック

 タイトルにあるように世界一美しいと言えるかどうかは別として、恐竜がこんなにもカラフルな存在だったとは...。あまりに衝撃的な図鑑としか言いようがありません。
私は恐竜には格別の関心をもっていて、福井の恐竜博物館にも足を運び、その巨大すぎるスケールに圧倒されました。といっても、近くは天草の恐竜博物館、遠くは北海道の恐竜博物館にも行ったことがありません。先日も中国の砂漢での恐竜発掘現場を同行取材したテレビ番組を録画してみました。すごいですよね、素人には砂漢の単なる岩石でしかないのが、実は恐竜の歯だったり、頭骨そして足(脚)の化石だったりするのですよね...。「ファルコン・アイ」の異称をもつ北大の小林快次教授が学生を引き連れて現地調査に出かけた情景なのですが、まさしく幸運にも貴重な恐竜化石を相次いで発見していくのでした。見てるだけでも心が躍ってきます。
恐竜たちの全部かどうかは知りませんが、恐竜は恒温動物であり、体毛も発達しているので寒冷期をも恐竜は生き残った。
 それにしても、恐竜の全身骨格がそのまま残ったような化石もあるんですね。不思議そのものです。すると、体毛まであることが判明しますし、胃の中の構成物を調べると、恐竜が何を食べていたかも分かるわけです。
 ティラノサウルスも、初期には大型犬ほどの大きさでしかなかったというのにも驚きました。そして、歯の形(断面図)から、食習慣が分かるというのも、少しばかり理解できます。
肉食だった恐竜が草食に変わったのもあるという解説を読んで、なぜ、と疑問が湧いてきました。その答えは、エサの問題なのです。動物をつかまえるのは大変な苦労と困難を伴います。でも植物なら、すぐそこに、どこにでもあるのです。あとは消化して自分の血肉にできるかどうかだけなのです。なーるほど、そう言われてみれば、そのとおりですよね。
恐竜の身体の色については、化石の羽毛に含まれるメラノソール(色素を蓄える小さな塊)によって、識別できるとのこと。これって、すごいですよね。
 恐竜の胃の中には、胃石という小さな石がたくさん詰まっていた。
 羽毛は恐竜の体温を保つのに役立っているとのこと。
 いやあ、まあ、しびれる図鑑でした...。あなたも、ぜひ手にとってじっくり眺めてみて下さい。
(2023年1月刊。3300円+税)

2022年6月 6日

「いまさら恐竜入門」


(霧山昴)
著者 田中 康平 、 出版 西東社

恐竜学の進化は恐ろしいものがあります。今では、鳥は恐竜そのものだというのは世間の常識です。
恐竜は変温動物ばかりでもないようです。卵を食べると思われた恐竜が、実は卵をふ化させようと卵を抱いていたことも分かりました。
日本には恐竜なんていないと思われていたのに、北海道では恐竜の前身の骨が発見されました。近くにある天草の恐竜博物館には、まだ行っていません。
恐竜の定義は、トリケラトプスとイエスズメのもっとも近い共通祖先から生まれた子孫すべて。なので、鳥は恐竜の子孫ではなく、恐竜そのものになる。すべての鳥は、竜盤類の獣脚類という恐竜の1グループから進化したもの。獣脚類は、おもに肉食恐竜のグループ。
この本には、全部の見開きにマンガがあって、よくよく理解できます。
恐竜には、羽毛もあり、膚には色もついていました。
名前のついた恐竜は1100種ほど。しかし、1億7千万年も進化を続けていた恐竜がわずか1100種だけであるはずがない。化石として見つかっているのは、実はごくわずか、ほんの一部にすぎない。なーるほど、そういうことなんですね...。
プロトケラトプスとヴェロチラプトルとが、がっぷり組みあって戦っている様子がそのまま化石になって残っているものがあるそうです。すごいです。よく見つかり(見つけ)ました。
恐竜の寿命は、ティラノサウルスで30歳、ブラキオサウルスは最長100年では...。案外、長生きしてたんですね。
地球に隕石が衝突したことから、地球環境に大変動が起き、恐竜は絶滅したという説が有力です。でも、このとき、一部の恐竜は生きのびたようです。そして、もちろん、鳥は今も存在します。
哺乳類は絶滅したのは23%でしかない。
恐竜の話は、いつ読んでも楽しいですね。もし目の前にいたら恐ろしいばかりの存在でしょうが...。
恐竜のDNAを取りだして復元できないか...。DNAに521年の半減期がある。なので、たとえ、マイナス5度Cという理想的な保存状態であっても、680万年後には、すべて壊れる。それより早い6600万年前には恐竜がいないから、恐竜のDNAを取り出すのは無理だということ。いやはや、夢はもちたいのですが...。
(2020年12月刊。税込1320円)

2021年11月29日

恐竜学者は止まらない


(霧山昴)
著者 田中 康平 、 出版 創元社

恐竜学者になるには、オール優(A)の成績をとらなければいけないのだというのを初めて知りました。そして、その理由もしっかり理解しました。
御師である高名な恐竜学者の小林快次教授は学生の著者に対して、こう言った。
「恐竜を研究したいんだったら、授業すべてで優をとること。テストでは一番をとること」
なぜか...。成績が良くないと、奨学金にしろ、大学院進学にしろ、申請ができない。申請しても、認めてもらえない。
恐竜を研究している学生の生活費は奨学金に頼るしかない。それも給付型。すると、成績が良くなければ、もらえない。大学院に進学し、研究室に入りたければ、日頃の成績がモノをいう。なーるほど、そういうことなんですね...。
それから恐竜を研究するには、隣接科学の勉強も必要になる。恐竜の卵を知るためには、現生動物、たとえばワニの卵との比較が必要だ。なので、ワニの卵の研究もしないと、十分な比較ができない。
著者の主たる研究対象は恐竜の卵殻(らんかく)。小指のツメよりも小さな破片は、8400万年も前に恐竜たちが生きていた証(あかし)。卵殻は、恐竜の赤ちゃんが最初に触れるもの。
完全な形状を保った卵でも、卵の中身は、土砂に埋まって化石化する過程でなくなってしまう。卵化石は、骨化石とは別に、独立した命名法がある。恐竜の卵殻外表面には、こった装飾模様のついているものがある。これって、本当に不思議ですよね。誰が見るというわけでもないのに、模様が種によって違うのですから...。
卵の両端を極と呼ぶ。鋭くとがっている端を鋭極(えいきょく)、鈍い端は鈍極(どんきょく)。卵の一番太い部分は「赤道」。
オヴィラプトロサウルス類の恐竜は、1かいに2コずつ卵を産んだ。鳥のように、毎日か数日おきに卵を産み、巣を完成させた。
そもそも抱卵の起源は、親が卵を守る行動から徐々に進化したのではないか。巣の上で捕食者から卵を守る行動が誕生し、その後、翼を使って雨風や直射日光から卵を保護する行動へと変化し、最終的に親の体温を使って直接卵を温める行動になったのではないか...。
著者たちは、兵庫県丹波市での卵化石発掘調査において世界最小の恐竜卵ヒメウーリサスを発見しました。生きていた当時は10グラム、100円玉2個分の重さ。幅2センチ、長さ4.5センチの大きさ。いやはや、本当に小さな恐竜の卵です。よく見つけましたね...。
恩師の小林快次教授は恐竜の骨化石、そして著者は恐竜の卵化石と、同じ恐竜化石でも少し対象を異にしています。ところが、二人とも文章の面白さでは共通しています。この師にして、この弟子あり、というところです。恐竜に関心のある人には見逃せない本ですよ。
(2021年10月刊。税込1980円)

 「大コメ騒動」という面白い映画をみました。
 戦前、富山の女性たちが米価の暴騰に怒って米屋に提供を求めて押しかけたという米騒動を取りあげた映画です。
 女性たちが立ち上がったものの、分裂策動によって仲間割れが起きたり、首謀者が警察に捕まったりして、いったん下火になったものの、シベリヤ出兵のあおりで再び米価が値上がりしたもので、もう一回押しかけ、ついに目的を達したのでした。
 日本社会を動かしているのは、実は女性なんだということを改めて認識しました。

2021年11月27日

うんち化石学入門


(霧山昴)
著者 泉 賢太郎 、 出版 インターナショナル新書

ティラノサウルスといえば恐竜界の人気ナンバーワンでしょう。そのウンチの化石が見つかっているというのです。驚きました。
ティラノサウルスは白亜紀(1億4500万年前から6600万年前)の後期に陸上生態系の頂上に君臨した史上最大規模の肉食恐竜です。
鋭い歯をもつ、体長10メートルをえる超巨大な肉食恐竜。そのウンチは幅15センチ、長さ44センチという巨大サイズ。このウンチ化石を分析すると、骨の化石のカケラが見つかった。つまり他の脊髄動物を食べていたということ。
ウンチ化石としては、ハドロサウルスのほかにも、首長竜(恐竜とは別)のウンチ化石ではないかと調査中のものもある。
化石は、体化石と生痕化石の二つに大別される。
生痕化石とは、古生物の行動の痕跡が地層中に保存されたもののことをいう。足跡の化石も、その一つだ。
脊髄動物のウンチは鉱物化する。それは、ウンチが砂や泥に埋没したあと、かなり早く微生物の作用によって鉱物化するということ。
ウンチ化石は、化石の宝庫なのだ。
生痕化石は、肉眼で観察できるという魅力がある。しかし、漠然と眺めていてもダメ。
恐竜のウンチ化石を専門に研究している学者がいるっていうこと自体に驚いてしまいました。でも、もちろん、必要な研究ですよね...。
(2021年4月刊。税込880円)

2019年10月 7日

恐竜の世界史


(霧山昴)
著者 スティーブ・ブルサッテ 、 出版  みすず書房

福井県にある恐竜博物館は、遠くからはるばる行くだけの価値があります。
残念なことに、私はまだ天草の恐竜博物館には行っていません。ぜひ一度行ってみたいと思います。そして、北海道のムカワリュウの全身骨格復元の実物も拝みたいものです。
恐竜の本が出たとなれば、見逃すわけにはいきません。かの小林快次センセイ(北大教授)のおすみつきとあれば、これは読まなくてはいけません。
1億年以上も続いた恐竜の時代、地球上には一つの大陸、パンゲア大陸しかなかったというのを初めて認識しました。アフリカも南北アメリカ大陸も、みんなひとかたまりだった時期から恐竜はいたのです。もちろん、それらの大陸は、やがて離れていき、今のようになりました。
そして、気候と気温についても、今のような温暖な気候の下で恐竜がずっといたわけではないようなんです。ええっ、そ、そうだったの・・・、と驚いてしまいました。
さらに、今や新種の恐竜が週に1度のペースで発見されていて、毎年50種ずつ新しい恐竜が見つかっている。うっそー、うそでしょ。そう叫びたくなります。
エオラプトルなど初期の恐竜が活動していた2億4000万年前から2億3000万年前のころ、現在の諸大陸はなかった。あったのは、「超大陸」(パンゲア)と呼びひとつながりの広大な陸地。
そして、最初期の恐竜はサウナにすんでいたようなもの。三畳紀の地球は、現在よりはるかに暑かった。大気中の二酸化炭素濃度は今より高かった。
最初期の恐竜は、湿潤地帯に目立たないように引っ込んだ存在だった。負け犬と言ってよいほど。ところが、ジュラ紀になると恐竜は多様化し、多種多様な新種が次々に生まれていった。
肉食恐竜T・レックスは、速く走ることだけは出来なかった。なぜか・・・。そして、このT・レックスは世界的な恐竜ではなく、北アメリカ、その西部に限られていた。
鳥は、1億6000万年以上に及んだ恐竜の治世のなごりである。鳥は恐竜なのである。
恐竜の絶滅が唐突におきたことは、疑いようがない。1億年以上も繁栄を謳歌していた恐竜が、数千年間の、あっというまに絶滅してしまった。
小惑星は飛来しなければ、恐竜も絶滅しなかった。恐竜の帝国は滅びてしまったが、恐竜は鳥として今に生きながらえている。
いやあ、恐竜について知ると、胸がワクワクしてきます。
(2019年8月刊。3500円+税)

2019年8月19日

恐竜まみれ


(霧山昴)
著者 小林 快次 、 出版  新潮社

子どもも大人も、恐竜が大好きだというのは世界共通だと思っていました。だって『ジュラシック・パーク』はアメリカ映画ですし、世界的に大人気だったわけでしょ。
でも、著者によると日本は世界のなかでも飛び抜けて恐竜ファンが多いのだそうです。
私も恐竜ファンの一人です。現代に生きる恐竜が鳥類だなんて、不思議そのものです。
そして、恐竜時代にわが人類の原型(祖先)は深夜だけウロチョロしていたネズミのような哺乳類だったというのです。うひゃあ、恐竜が絶滅しなければ、人類だって、昼間おおっぴらに活動できなかったというわけです。
著者はアンモナイト少年から長じて恐竜博士になりました。
恐竜発掘のため、危うい目に何度もあっています。巨大なグリズリー(ハイイログマ)に襲われそうになったり、ヘリコプターで墜落寸前になったり、ゴビ砂漠では道に迷って転落死寸前、ガラガラヘビを目前に見たり・・・。それでも無事に研究生活を続けているのですから、たいしたものです。
発掘体験記を読むと、まさしく恐竜発掘の大変さと楽しさがビンビン伝わってきて、ともに感動の余韻(よいん)に浸ることができるのです。これだけでも一読の価値があります。
化石の発掘調査。じつは発掘というのは、恐竜研究の一部にすぎない。だが、結論を言えば、恐竜研究の醍醐味はここにある。自分の足と手、目を使って発見する。抜群の面白さだ。
姿を消してしまった恐竜を研究する面白さは、恐竜そのものに挑むことにある。圧倒的に少ないデータを、自分の力で増やしていくのだ。
現在まで1000種類の恐竜に名前がついている。その75%は、たった6ヶ国から発見されている。アメリカ、カナダ、アルゼンチン、イギリス、中国そしてモンゴル。残念ながら、日本は入っていない。
恐竜の化石を見つけるには、人の歩いた形跡のないところ、歩きづらいところをあえて歩く。どんなに疲れていても、あえて違う道を歩くように心がけ、常に化石が落ちていないか目を配る。
大発見は、予期せぬ形で起きる。最終日の夕方に・・・。
絶滅した恐竜の祖先系がワニ類で、末裔(まつえい)が鳥類だ。そこで、恐竜の行動や姿形を推測するためには、ワニ類と鳥類の両方を見比べる。
化石は日本の研究室へもち帰ることはしない。化石は、それが埋まっていた町や村、市の宝なのだ。
フィールドに到着すると、ひたすら歩く。今日も歩いて、明日も歩く。とにかく気力と体力の勝負。ほとんど土砂をショベルで掻(か)いている。
恐竜の研究者は、骨の形と体で覚えている。
いま、東京・上野の国立科学博物館で開催中の「恐竜博2019」には「むかわ竜」の全身骨格が復元展示してあるとのこと。ぜひみてみたいものです。
そして、中国からも全身骨格が届いているそうです。
実際に恐竜がいたら怖くてたまりませんが、夢とロマンの対象として恐竜には限りなく関心があります。小林先生の次の本が楽しみです。
(2019年6月刊。1450円+税)

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