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カルトと対決する国

カテゴリー:フランス

(霧山昴)
著者 広岡 裕児 、 出版 同時代社
 フランスに住んで30年来、カルト問題を追跡してきた著者による報告、そして問題提起の本です。
 フランスにも文鮮明の統一協会(著者も本当は統一協会と表記すべきだとしながら、日本の一般マスコミにあわせて統一教会としています。私は統一協会とします)が進出しました。それでも1980年8月が最後のようです。
 フランスには1905年に制定された政教分離法があります。ちなみに、フランスでは、統一協会とあわせて創価学会も真光もセクト(カルト)とされています。
 現在のセクト問題について、アメリカとフランスは対立している。考え方が違うのです。アメリカは、まだセクト問題は宗教問題だとしているからです。フランスではセクト問題は宗教問題とは切り離されています。
2001年5月に成立したアブー・ピカール法は、セクト問題と宗教問題を切り離している。これは宗教規正法ではない。マインド・コントロール(精神操作・精神支配)をはじめて法律で定義した。
 今や、社会の基盤は宗教ではなく、人権になった。かつては宗教であったが、今は、それが人権になった。つまり、かつては宗教の教義に照らして判断されたが、今では人権を侵害するかどうかが判断の基準とされている。
主導者(グル)は、巧妙な詐欺師であり、悪賢いマネージャーで、誘惑の才能にたけている。
 勧誘される人は、はじめは普通の人たちと同じ。だが、少しずつ変化させられたあと、従属した、服従した、ロボット化され、また狂信的な人物となる。
 セクトは、まずはあたかも王子様のように優しく扱う。その人は、温かい集団を見つけ、混乱から逃れ、奇跡的に病気が治ったりする。セクトは、新人に対して、優しさと親近感を惜しみなく降りそそぐ。家族や友人より理解され、歓迎されているように感じさせられる。愛の爆撃(ラブボンビング)。社会と家族については、ことさら悪しざまに言って衝突を起こさせる(憎しみの爆撃)もある。
アブー・ピカール法の対象は宗教ではない。あくまで、精神操作・精神支配で人権侵害すること。そして、この法律は宗教を対象とした特別法ではなく、一般法である。
 アブー・ピカール法の施行以来、セクト的団体を解散させたという実績はない。だからといって、政策が失敗したのではない。そもそも団体の解散は目的ではない。
 統一協会などのセクトの信者は、常に「自分の意思」で「自発的に」している。その意思そのものが操作されていることに気がつかない。
 セクトでは、服従と引き換えに弟子たちに、少数の選民の一員であり、他の人は不完全なのに、自分たちは完全だという救済を与える。セクトの信者は法外な金銭的要求をされると、「喜んで」出す。脅迫されて恐怖におののいてお金を出すのではない。
 アイデンティティを喪失する。これは優柔不断とは違う。すべてを他人(グル)の判断に従ってしか行動しない。
 その姿勢は、いかめしく、顔の筋肉はこわばっている。その目は無表情、冷たい、どんよりという印象を家族に与える。人々を通り越して、向こうのほうを見つめているように見える。
 脱会カウンセリングでは、脱会は新しい出発的にたったにすぎない。
セクト(破壊的カルト)の第一の犠牲者は信者だけど、第二の犠牲者は社会である。
 宗教と宗教団体とはまったく違った別物。
 フランスでは人権侵害という点で統一協会を考えているところがすごいと思いました。
 そして、カルト(セクト)は「信者」の人格破壊までするわけです。日本もフランスに学ぶべきだと思います。
(2024年8月刊。1870円+税)

トランプ、再熱狂の正体

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 辻 浩平 、 出版 新潮新書
 トランプがアメリカの大統領に返り咲くなんて、まさかの出来事が起きました。まさしく地球の未来にとっての悪夢です。多くの心ある人たちが、この先に何が起きるのか大いなる不安を感じています。私もその一人です。
この本は、トランプ本人ではなく、トランプを熱狂的に支持しているアメリカ国民をNHK記者として取材したレポートです。
 アメリカを再び偉大に。
 Make America Great Again  これをMAGA(マガ)と呼ぶ。
 保守的なトランプ支持者の中には、自分たちが慣れ親しんできたアメリカが変わっていくことへの反発や焦り、不安を覚える人が少なくない。
 トランプ支持者の中には、日常生活で白い目で見られたり、陰口を叩かれたり、疎外感を感じている人もいる。
 トランプ支持の理由の一つが、公的機関という社会を構成するシステムへの信頼の低下にある。
 アメリカではミドルクラス(中産階級)の地盤沈下が顕著だ。トランプのナラティブ(話)は「被害者の物語」であり、支持者は、そこに自分自身を重ねることで引き寄せられている。
陰謀論を信じている人々にとって、いくら政府機関や裁判所が否定したところで、まったく意味をなさない。同じことが日本でも兵庫県知事選挙で起きました。パワハラ自殺なんて嘘だと信じてしまったのです。
共和党の議員がトランプに反旗を翻(ひるがえ)したとき、殺害予告をふくめた脅迫が相次ぎ、果ては落選させられる。
アメリカは車社会なので、ラジオは今も影響力のあるメディアだ。
アメリカの一つのメディアの実際が紹介されています。驚くべき実情です。そこは毎日500万本という大量の記事を配信しているのですが、記事1本を作成するのにかけるのは、わずか7分ほど。記者は70人しかいない。読者(外部の人)が投稿してきたらAIがニュース記事のスタイルに仕上げる。いやはや、そこではフェイクニュースかどうか、まるで問題になりません。まさしく砂をかむようなニュース砂漠です。
 アメリカ社会が極端なまでの分断に行きついているようで、本当に怖いです。
(2024年8月刊。840円+税)
 日曜日、庭のサツマイモを全部掘り上げました。前に試し掘りをしたとき、立派なイモが出てきたので、安心して掘り進めました。見事に大きなサツマイモが次々に土の中から姿を現してくれました。いくらか小ぶりのものもありましたが、大人のふくらませた両手をあわせたのよりも大きいイモが30個ほどもとれました。大豊作です。これまでサツマイモは失敗ばかりでした。なにしろ小さかったのです。しかも、数もちょっとでした。今年豊作だったのは、11月も半ばまで待ったこともあるのでしょう。昨年までは10月に入ってすぐ掘り上げていました。早すぎたのです。
 そして、今年は、チューリップ畑のあとに植えたのが良かったと思います。サツマイモは栄養満点の土地ではよく育たないというのです。不思議ですが、どうやら本当のようです。昨年までは、専用の区画に苗を植えつけていました。この区画には何度も生(なま)ゴミをすき込んでいますので、黒々としてフカフカの土地、つまり申し分のない栄養土だったのです。
 早速、イモを食べてみました。本当は何日か放っておいたほうが甘味が増すということなんですが、ともかく我が家の味を知りたかったのです。
 鳴門金時ほどの甘さはありませんでした。まあ、それでもイモはイモです。とても美味しく食べることができました。

人間らしく働くための九州セミナー

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 現地実行委員会 、 出版 左同
 11月16日、17日に大牟田市で開かれた第34回セミナーの報告集。筑波大学人文社会系の田中洋子名誉教授の講演はドイツとの対比させて、日本がいかに遅れているかを明らかにするもので、驚くと同時に胸をうたれました。
 ドイツにもパートで働く労働者はいる。しかし、日本と違って非正規ではなく、働く時間が短いという正社員(短時間正社員)。ドイツの労働者は働く時間を自由に選べるし、そのことで処遇に差別されることはない。そもそも、正規と非正規という処遇格差がない。なので、裁判官や検察官、そして官僚から企業の管理職に至るまで、パート勤務の人々は多い。家族と自分の都合・希望により、働く時間を短くしたり、長くしたりできる。ドイツでもかつては主婦のパートが多く、パートの社会的評価は低かった。しかし、2001年のパート法によってそれが変わった。いやあ、これは日本と全然違いますね。うらやましい限りです。日本では、パートは正社員と雇用身分が別で、別体系の低い処遇ですよね…。
スーパーや外食チェーン店だけでなく、公共サービスでも非正規が急増している。
看護師の給与がドイツでは平均で月60万円といいますから、日本の倍くらいです。それでも、病院経営は黒字だというのですから、日本人としては信じられない、の一言です。日本では残念なことに労働条件が悪いうえに低賃金なので、看護師になりたいという若者が減少しています。ドイツに学ぶところ、大ですね。
 韓国から非正規労働センターとして活動しているナム・ウグン氏、キ・ホウン氏を招いて、韓国における非正規労働者の現状だと対策について報告してもらいました。
 すると、2020年9月、ソウル市のソンドン(城東)区で「必須労働者の保護及び支援条例」が制定され、翌2021年5月、必須業務従事者法が制定された。エッセンシャルワーカーを保護する条例であり、法律です。これによって、必須労働者は、コロナ対策ワクチンを優先してうてるようになりましたし、防疫マスクも1人あたり30枚が交付されました。
 支援内容は決して十分とはいえないようですが、条例そして法律によってエッセンシャルワーカー保護のため、市や国が取り組んでいることには敬意を表したいと思いました。
(2024年11月刊。非売品)

司法試験に受かったら

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 伊藤 建 ・ 國富 さとみ 、 出版 現代人文社
 11月6日、司法試験の合格発表がありました。合格者は1592人で、政府目標の1500人に合致した人数です。私が驚いたのは、最年少は17歳というのです。高校を卒業していなくても高校在学中に合格するような人がいるのですね。信じられません。
順位1番の慶応大ロースクールの合格率は6割です。わが九大は3人に1人の合格率でしかありません。聞くところでは、六本松を維持できずに伊都に移るそうです。ますます志願者が減るとみられています。合格者の東京集中を加速させることでしょう。心配です。
 ロースクールの在学生に対して五大事務所の勧誘は激しいとも聞きました。五大事務所は、まだまだ規模を拡大しようとしているのですね。それほど日本企業は弁護士を必要としているわけです。この本は、司法試験に合格した人が、その後どんな復習生活を過すのかというオリエンテーションが内容になっています。
 弁護士、裁判官、検察官、そして企業内弁護士や裁判所内部の動きも紹介されています。弁護士の平均所得は減っているとよく言われますが、この本では、2020年の弁護士の所得の平均値と中央値は2018年に比べて上昇したとしています。五大事務所の高給優遇が押し上げているのかもしれません。
 いま司法修習生がもらう給料(収集給付金)は13万5000円です。これは明らかに低すぎます。もっと引き上げるべきだと思います。
弁護士が司法修習生を評価するときの2つ。その一は、法曹になる動機や目標が明確かどうか。その二は、問題の解決に向けてズルしたり、手を抜いたりはしないか。そして、周囲にいる弁護士や事務局と適切なコミュニケーションが出来ることです。
 刑事弁護人として、あまりにも有名な神山啓史弁護士が司法研修所の刑事弁護教官になったのは画期的とのこと。きっと、そうなのでしょう。
 この本に登場する先輩弁護士のなかに川辺賢一郎という現役のプロレスラーがいます。信じられません。福岡にも現役の弁護士でありながら、吉本興業に登録している、お笑い芸人がいます。すごいことですよね…。
 このプロレスラーの弁護士は独立開業して以来の8年間、朝、目覚めたとき、「今日は仕事に行きたくない」と思ったことがないのを自慢に思っているとのこと。それは弁護士生活50年になる私も同じです。
 企業内弁護士(インハウスロイヤー)として大切なことは、主担当として自分で判断できること、判断できないことを見極めること。適切な権限者に判断を任せる必要がある。
インハウスロイヤーの重要性を私も否定しませんが、自由業にあこがれた私は組織のなかでの生活なんかしたくはありません。なので、私は大企業相手の企業法務だけが弁護士の仕事・活躍分野ではない、このように声を大にして強調せざるをえません。
(2024年7月刊。2900円+税)

裏山の奇人

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 小松 貴 、 出版 幻冬舎新書
 新書版としては新刊なのですが、実は10年前に東海大学出版会から同じタイトルで出版されていて、その復刊本(新書)なのです。カラー印刷なので、見てるだけでも楽しい新書になっています。
10年前は九大につとめていた著者は、関東に移り、また、結婚して、2人の息子がいるとのこと。奥様のコトバがすばらしいです。
 「コマツは組織に飼われたら絶対ダメ。自由におやり、私が養ってあげる」
 そのコトバのおかげで、著者は相変わらず、裏山で自由に生き物(昆虫)たちとの悦楽の時間を過ごしているようです。すごいですね。幼いころから昆虫好きだったとのこと。私もアリの行列に見とれ、その行き先をたどった記憶はありますが、石をひっくり返し、巣穴をのぞいたことはありません。そして、著者はなんと、アリに寄生する虫を発見したらしいのです。好蟻性昆虫と呼びます。このアリヅカコオロギの研究で20数年後に、飯を食うなど想像もしていなかったとのこと。そりゃあ、そうでしょう…。
 昆虫観察を成功させるコツは地元の人を決して敵にまわさないこと。いかに地元の人たちに赦(ゆる)されるかが肝心。要するに、変な奴と警戒されないようにすることなんですね。
 わが家の庭にはモグラが棲みついています。先日もチューリップの球根を植えたところが大きく盛り上がっていて、球根が地上に放り出されていました。トンネル内にあった泥を地上に押し出した後です。モグラはミミズを食べて生きていますので、決して球根なんか食べませんが、球根を邪魔者扱いにして地上に放り出すので困ります。
 このモグラの小型をヒミズと呼び、著者はずっと観察しました。
 ヒミズは、ある面ではとても賢いけれど、別の面ではとてもバカな生き物らしい。
 著者は森の中で、野ネズミを観察しようと夜に待ち伏せした。たった1人、暗い夜の森にじっと座って待つ。足を動かすと地面を振動が伝わるので、足は動かせない。鼻水が流れてもすすると、その音で警戒されるので垂れ流しのまま…。いやあ、寒い中、大変な作業ですね。おかげで動かず、音を出さないと、人慣れしていない野生動物でも至近で観察できることを学んだそうです。
いま、西日本新聞に連載中の昆虫博士・九山宗利先生に手ほどきしてもらい、今は尊敬しているとのことですが、初対象の印象は次のとおり。
 その見た目の胡散(うさん)臭さ、まがまがしさ…。いやはや、なんということでしょう。でも、恐ろしく博識で頭が切れるというホメコトバが続くのです。
 好蟻性昆虫の研究なんかして何の役に立つのか、そんなもの研究する価値があるのか…。よくある疑問です。でもでも、すぐに役に立たなくても、ひょっとして何かの役に立つかもしれないし…。学問って、すぐ目の前の役に立つ者ばかりではありませんよね。
 好蟻性生物は、いずれもアリに寄り添い、利用するために特殊な進化を遂げた、選りすぐりの精鋭ぞろい。アルゼンチンアリのようなアリの放浪種には、1コロニー内に女王が何十匹もいるので、たった1匹でも女王を駆除しそうになったら、すぐに増えてしまう。
天敵というのは、害虫の密度を抑えるのには役立つけれど、滅ぼすことはできない。
ツノゼミは、アリに守られた状態でよく見つかる。ツノガミが排泄する甘露をなめるため、アリがたかるのだ。
 奇人・変人がいるからこそ世の中の進化はあるのです。常識人ばかりでは困るのですよね。そのことがよく分かる本でもありました。
(2024年7月刊。1400円+税)

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