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ポッキーは、なぜフランス人に愛されるのか?

カテゴリー:社会

                               (霧山昴)
著者  三田村 蕗子 、 出版  日本実業出版社
 この本を読むまで、日本のスナック菓子が、世界中で愛されているなんて、ちっとも知りませんでした。
香港の即席麺市場の6割を「出前一丁」が占めている。香港人の舌にあわせて現地化された「出前一丁」だ。いま世界では年間1050億食の即席麺が生産されている。そのうち2割の200億食を生産しているのが、サンヨー食品。あの「サッポロ一番」だ。
 原料調達から商品が店頭に並ぶまで安心安全を追及し、大量生産で味をムラなく均質に保ち、使い勝手のいいパッケージに包む一連のプロセスは、世界のどの国にも真似できない日本の強みだ。お菓子ほど、日本の製造業の良さが、凝縮された産業はない。
 なくても決して死にはしないが、あればうれしい。手にしたら楽しい。おいしいお菓子を食べていると思わず顔がほころび、幸せな気分にみたされる。
 スナック菓子には面白さや楽しさ、新鮮さが絶えず求められるのが日本だ。
 2009年、カルビーは、オーナー経営の会社から、外資系の経営手法を取り入れた企業へ変身した。カルビーが年間に使用するジャガイモの量は、日本全体の収穫量の10%にあたる。これをカルビーは日本国内契約栽培農家から調達している。
 アメリカでは、カルビーは、豆をつかったスナック菓子を売り出している。
 森永製菓の「ハイチュウ」は、キャラメルでもなく、ガムでもない。日本で生まれた不思議な食感のソフトキャンディー「ハイチュウ」はアメリカで大人気だ。「ハイチュウ」はアメリカの野球選手たちが、チューインガムの代わりに口に入れている。ガムのように捨てる手間がいらないのだ。
 江崎グリコの「ポッキー」は、グローバルブランドとして堂々たる王道を歩いている。「ポッキー」の全世界販売個数は年間5億箱。売上高4億ドル。そのうち3億箱が日本で、残り2億箱をヨーロッパとアジアなど海外30ヶ国で売っている。フランスでは、「ポッキー」は「ミカド」として売られている。
 「ポッキー」は、食べながらおしゃべりできる。しかも、手が汚れない。
 ロイズの生チョコも海外で売られている。商品は、すべて日本で製造して冷凍コンテナをつかって輸出している。
 「柿の種」は、アメリカではわさび味で売られている。
日本のお菓子が世界で、こんなに愛され、売れているのですね。もちろん、それには現地のヒトの舌になじめる工夫もされているわけです。あまりに面白くて、ついついひきこまれてしまいました。
(2015年4月刊。1500円+税)
 きのうの日曜日(21日)、仏検(一級)を受けてきました。午後2時から5時まで3時間、みっちり絞られました。大甘の自己採点で70点(150点満点)です。
 前回3割だったのが、4割越したように思います。合格するには6割ですから、まだまだです。
 文法関係はほぼ全滅し、長文読解と書き取り、聴き取りで点を稼ぎます。
 予習として、過去問をするのですが、何と1995年から受験してるのでした。もう20年も一級に挑戦しているのです。我ながら、すごいことです。ですから、過去問の仏作文を全部やり直すのに、相当の時間がかかりました。頭のボケ防止に必死なのです。

サイエンス・インポッシブル

カテゴリー:社会

                                (霧山昴)
著者  ミチオ・カク 、 出版 NHK出版 
 科学の進歩が、毎日の生活にどのような影響をもたらすのかを論じた本です。なるほど、なるほど、と思いながら読みすすめました。
 ウソ発見器は、自分の行為に何らの罪悪感を覚えない異常人格者には通用しない。
 たとえば、CIAにいた二重スパイのオールドリッチ・エイムズは、数十年にわたってCIAのウソ発見器による検査を何度もくぐり抜けている。
 また、50人近い女性を殺した連続殺人犯のゲーリー・リッジウェイも検査をうまくすり抜けている。ウソ発見器は、不安の程度しか測れないのだ。
 長期間の宇宙旅行をすると、身体から貴重なミネラルや化学物質が予想以上に早く失われてしまう。厳しい運動の日課をこなしても、宇宙ステーションに1年も滞在したロシア人宇宙飛行士は、骨や筋肉が大幅に衰え、骨の劣化、赤血球生成量の減少、免疫反応の低下、心血管系の機能低下が避けられない。
 本書では、セブンデー・アドベンチスト教会、そしてエホバの証人についても触れられています。
 アメリカで、ウィリアム・ミラーが1,843年4月3日に最後の審判の日が訪れると予言した。1833年に最大級の流量雨が華々しく夜空を照らしたので、ミラーの予言は、威力を高めた。
 しかし、なにごとも起きなかった。そこで、次には1874年、さらに1914年、そして、今は・・・?
 セブンスデー・アドベンテスト教会の信者は1400万人、エホバの証人は600万人もいる。その分派は、1993年、FBIと対決して、27人の子どもをふくむ76人の信者と教祖のデイヴィッド・コレシュが焼死した。
 世界は不思議にみちみちています。しかし、それがカルト(宗教)とつながるかと言えば、それは違うでしょう。不可能なことを可能にするのも限度がありますよね・・・。
(2012年11月刊。2400円+税)

荒木飛呂彦の漫画術

カテゴリー:社会

                               (霧山昴)
著者  荒木 飛呂彦 、 出版  集英社新書
 私は、目下、40年以上も前の弁護士見習い(司法修習生)のころを小説にすべく挑戦中なのです。これは「法服の王国」に触発され、また、江上武幸弁護士(久留米)にけしかけられて思いたったのです。
 小説というからには、読まれなくてはなりません。毎年500冊以上の単行本を読んでいる私ですので、読み手の気持ちは、しっかり理解しているつもりです。やっぱり、なんといっても、ハラハラドキドキ感が必要です。この次は、どんな展開になるのだろうか・・・という緊張感をもって頁をめくる楽しさが欠かせません。そして、読み終わったときのホッとする安堵感が大切なのです・・・。
 とは言っても、それを文字にするのは大変です。口で言うほど、やさしくはありません。
 この本は、漫画家が、その企業秘密を惜しげもなく公表しているので、とても勉強になりました。
 キャラクターを作る時には、絵になる前に、必ず身上調査書を書く。これによって、キャラクター造型に矛盾を感じさせる事態を防ぐことができる。
 身上調査書は、キャラクターの属性という、あいまいで目に見えないものを可視化する。
 私も、7巻ものの長編小説を書くときには、私なりの身上調査書をつくっていました。しかし、書いているうちに、どんどん話が発展していって、矛盾は避けられませんでした。それが、プロとアマの違いなのかもしれません・・・。
 ストーリーつくりの鉄則は、主人公をなるべく早く登場させること。
読者が求めているのは、アゲアゲのプラス・ストーリーである。がんばっても、がんばっても勝てないという、マイナス続きの本は、誰だって読み続けたくはない。
 そうか、そうなんだ・・・、と反省せられました。読み手の気分や感情にあった本を書こうと思いました。
 セリフは、自然体であること、これに尽きる。
 モノカキを自称する私にとって、とても役立つアドバイス満載の新書でした。
(2015年4月刊。780円+税)

遊楽としての近世天皇即位式

カテゴリー:日本史(江戸)

(霧山昴)
著者  森田 登代子 、 出版  ミネルヴァ書房
 私は、制度としての天皇制には賛成することができません。人間に無用な差別を固定化させるシステムだからです。でも、今の天皇は、心から尊敬しています。象徴天皇としての限界を守りながら、平和憲法の世界的意義を身体をはって訴えかけているからです。そこは、自民・公明の安倍内閣と真逆です。
 この本は、江戸時代の天皇即位式が庶民の楽しみの対象だったことを明らかにしています。天皇即位式のすべてではありませんが、庶民が弁当たべながら見て楽しめる儀式だったというのです。驚きました。「厳粛な儀式」とは、ほど遠い現実があったのです。やっぱり、本は読むものです。
天皇即位式を庶民が見物していた。それは絵図でも証明されている。九条兼実の日記「玉葉」には、即位式には、僧・尼と服喪者が入場禁止と書かれているから、逆に言うと、それ以外は入場できたということ。
 後醍醐天皇の即位式(1318年)にも、庶民が多く見物していた。
 このように、天皇即位式には、禁裏内に大勢の庶民が見物していた。これは公家の日記から裏付けられる。当時の天皇即位式を「厳粛な儀式」だと現代人の感覚で憶測すると、それは間違いなのだ。
江戸時代、庶民は天皇即位式の見物が許されていて、即位式で使われた調度品を見物して楽しんでいた。
 前天皇が皇位を譲り、新天皇が即位することを受禅(じゅぜん)という。前天皇は上皇となって新天皇を保佐する。前天皇が崩御(死亡)し、その結果、新天皇が皇位を継承するのを践称(せんそ)という。江戸時代より前は、天皇は生前に譲位し、上皇や法皇となって、院政を敷くのが慣例だった。
 天皇即位式のみは庶民が見物できる儀式であり、それ以外は、一般の人々には見せない秘儀とされていた。すなわち、天皇即位式は、公開することが基本中の基本だった。むしろ、「見せつける」行事だった。公家たちは、唐風装束に礼服を着ていた。その異形の服装が庶民の興味を大いに引いた。即位式の見物入場券が発行された。入場者は300人。男性100人、女性200人。
 ええっ、なぜ、女性が男性の2倍なの・・・?
 見物する庶民にとって、天皇即位式は、芝居と遊楽の一つだった。弁当を食べながら見て楽しむものだった。
 ところが、明治天皇の即位式から庶民の見物を排除してしまったのです。
 日本古来の伝統なるものは、実は、明治以来のものでしかないということです。
 それにしても、江戸時代の人々にとって、天皇とはいったいどういう存在だったのでしょうね。政権担当者でないことは明らかだったでしょうから。いわば、「象徴」天皇のようなものだったのでしょうか・・・。
(2015年3月刊。2800円+税)

清張映画にかけた男たち

カテゴリー:社会

                               (霧山昴)
著者  西村 雄一郎 、 出版  新潮社
 面白い本でした。というか、映画好きな人には、たまらない魅力あふれる本です。そして、九州は佐賀に少しでも関わりがあれば、読みはじめたら止まらない本なのです。
 たとえば、私の幼いころの映画館での記憶です。「クラマ天狗」の映画です。シューサク少年が危機に陥ったとき、「クラマ天狗」のおじさんが白馬に乗って街道を走って少年を助けようと駆けていく場面になると、映画館にいる人々が総立ちになります。走れ、走れ、がんばれー・・・。そのあふれる熱気は、今も忘れることが出来ません。画面上の人々と映画館内の人々は一体だったのです。
ですから、私が弁護士になってまもなくのとき、東京の銀座で、映画「男はつらいよ」を静かな雰囲気で観て、ええっ、違うんじゃないの、これはっ・・・と、すごい違和感がありました。
 それはともかく、この本は松本清張原作の「張り込み」を佐賀でロケしたときのことが中心に書かれています。なにしろ、佐賀ロケを観ようとして、3万人もの人々が佐賀市内に押し寄せたというのです。
 私より少しだけ年齢(とし)下の著者ですが、私も、そのころの時代雰囲気はよく分かります。テレビなんてありませんから、映画をみるというのは最高のぜいたくです。その映画をとる現場が観れるというのであれば、みんなが観に行くのも当然です。
 著者は、その佐賀ロケのときに映画スタッフが泊まった旅館の子どもだったのです。
 松本清張の妻の実家は、佐賀県の吉野ヶ里に近い神崎(かんざき)駅の近くにあった。
 このあたりの情景をよく知っているから、清張は「張り込み」の情景描写につかった。
「張り込み」の女優は、あの有名な高峰秀子なんですね。「24の瞳」の高峰秀子が、「張り込み」にも主演していたとは、知りませんでした。
 この映画「張り込み」の監督は、野村芳太郎。当時38歳。「絶対に妥協しない」と高言して撮りはじめた。撮影期間は3ヶ月のはずだったのに、なんと7ヶ月も遅れた。その間、撮影「中止」に2回もなっている。
 「張り込み」のときには、山田洋次も、フォース助監督だった。
 野村芳太郎は、早撮りの監督と思われていた。ところが、この「張り込み」では、まったく違った。
 映画の「張り込み」の撮影にあたっては、佐賀県と佐賀市が全面的に協力した。
 佐賀警察署の場面を撮るシーンではクレーンが使われた。このとき、それを観ようとやってきた野次馬は、なんと1万人。観光バスを仕立ててやってきた。おかげで、佐賀市内は臨時に商品が大いに売れた。
 野村芳太郎監督は酒はダメ。甘いものもダメ。タバコとコーヒー党。
 山田洋次監督も、師匠の野村監督と同じで酒を飲まず、コーヒー党。
 九州ロケは、当初は、わずか10日間のはずだった。それが1ヶ月半をこえていた。佐賀だけでなく、熊本の温泉にまで足を延ばしていた。
 映画人の映画にかけている愛情の深さがよく分かる本です。
 それにしても、佐賀市内のロケ現場に1万人とか3万人の見物人が集まっていたなんて、今では想像もできませんよね・・・。
 映画好きな人、清張の本なら一通り読んだという人には欠かせない本だと思います。
(2015年11月刊。2000円+税)

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