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沖縄フェイクの見破り方

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 琉球新報社編集局 、 出版  高文研
アメリカのトランプ大統領が平然と嘘を言うことから、どれが本当なのか世間をごまかす言論が目立ちます。
そのターゲットにされている一つが沖縄です。沖縄経済は基地でもっているとか、沖縄にアメリカ軍の海兵隊がいるから日本の平和は守られているといった言説です。沖縄の地元新聞社が総力をあげて、いずれも事実でないことを実証しています。
沖縄からアメリカ軍の基地がなくなったら、それこそ沖縄経済は見違えるように発展すると思います。私も沖縄の新都心のにぎわいぶりを見ていますので、実感できます。
アメリカ軍の基地が返還された跡地は、どこも例外なく市街地として大きく発展している。いずれも雇用は数十倍から数万倍に増え、域内総生産は数十倍になった。
那覇新都心地区では、返還前の雇用者はわずか168人、それが返還後はなんと1万5560人と、93倍になった。経済効果も、返還前は年間52億円だったのが、返還後は年間1634億円になった。31倍だ。
沖縄の経済が基地に依存していた時代は確かにあったが、それは、1950年代、1960年代の話だ。今から50年も前のこと。今では基地関連収入は県民総所得の5%ほどでしかない。
政府の「沖縄振興予算」なるものは、特別の予算でもなんでもない。その総額は日本全体の予算の0.4%にすぎず、沖縄の人口が全国の1%をこえることを考えたら、極端に少ない。
東京MXテレビで沖縄に関して事実に反する番組が放映されたが、これは化粧品会社DHC系列の会社が制作したもの。このDHCという会社は超右翼に偏向していると指摘されていますが、テレビで「嘘」をされ流すなんて許せません。先日、川端和治弁護士を委員長とする放送倫理機構(BPO)が、その偏向をたしなめましたが、東京MXテレビはまったく反省していないようです。
日本にいるアメリカ軍は沖縄をふくめて日本を守るために駐留しているのではない。それは日本の責任だ。アメリカ軍は、韓国、台湾およびト東南アジアの戦略的防衛のために駐留している。沖縄を拠点とするアメリカ軍海兵隊の主力戦闘部隊は、年間の半分以上は沖縄にはいない。太平洋地域を巡回展開している。
やはり、なんといってもマスコミは真実をあくまで報道すべきですよね。その点、沖縄の地元紙は偉いと思います。広く読まれるべき本です。
(2017年10月刊。1500円+税)

ビッグデータの支配とプライバシー危機

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  宮下 紘 、 出版  集英社新書
完全なネット社会になった現在、私たちのプライバシーは丸裸も同然という気がしてなりません。
2010年10月、警視庁公安部の日本に居住するイスラム教徒に関するデータが外部に流出しました。ターゲットにされたイスラム教徒は1万2677人。その氏名・生年月日、住所、電話番号、身長、体重、ひげ、メガネ着用の有無、交友関係のデータでした。
2013年5月から12月にかけて大阪府警は令状なしに容疑者の車両19台にGPSを取り付け、3ヶ月で1200回以上も検索した。
丸善ジュンク堂書店では、店舗における万引き対策として、顔認証カメラが導入されている。
ビッグデータは、単なる個人データの集合体としての統計データではなく、その統計から導き出された、パーソナライズされ、カスタマイズされた情報。監視の対象は人ではなく、データであって、特定のターゲットではなく、あらゆるデータをかき集める。そして、事後的な検証ではなく、事前の分析予測によってビッグデータは成り立っている。
ビックデータの典型例は、アマゾンの「おすすめの本」があげられる。
同窓会の名簿買取価格は1冊7000円から3万円。展示会入場者データは1件あたり50円。ベネッセの流出リストは、5万から16万円の値段で800万件の個人情報の売り込みがなされた。
単純な個人情報の漏えい事案における賠償金額は1人5000円から1万円というのが相場。
防犯カメラの設置と犯罪の増減の動向には相関関係はない。
人は忘れる。しかし、インターネットは忘れない。忘れられる権利は、EUが主導している。
この本を読むと、マイナンバー登録なんて、プライバシー丸裸を手助けするものでしかないと痛感させられます。タイムリーな新書です。
(2017年3月刊。760円+税)

粉飾決算VS会計基準

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者  細野 祐二 、 出版  日経BP社
 この本を読むと、大企業の経理って、本当にいいかげんなものだと思いました。また、大手の監査法人も大企業の言いなり、その召使でしかない存在だと痛感します。これじゃあ真面目に税務申告して税金を払っているのがバカらしくなってきます。まあ、国税庁の長官が例の佐川ですから、「アベ友」優先の税務行政はひどくなるばかりでしょうね・・・。それにしても、公認会計士って、実に哀れな職業なんですね。みんな何のために苦労して資格をとったんだろうかと信じられない思いがしました。
 360頁もある大作ですし、会計学のことは分かっていませんので、誤解しているところも多々あるかもしれませんが、ともかく最後まで読んでみました。
 公正なる会計慣行は常に二つ以上ありうる。アメリカに上場している日本の大企業は、日本の会計基準ではなく、アメリカの会計基準にしたがった財務諸表を作成して開示している。目的による優劣に差のある複数の公正なる会計慣行のなかで、さらに目的により優劣に差のある複数の会計処理の方法が並存可能であり、それは会計の常識であって、社会はこれを許容している。ところが、日本の裁判所は最高裁も含めて、「公正なる会計慣行は唯一だ」としている。これは、そもそも前提が間違っている。
税法基準とは、税務上損金処理できるものが計上されてさえいれば、あとは何をやってもいいということで、このようなふざけた会計慣行が、当時の大蔵省銀行統一経理基準において、公正なる会計慣行として立派に認められていた。
 粉飾決算とは、事実と異なる重要な財務情報を悪意をもって財務諸表に表示する決算行為をいう。悪意がなければ、たとえ重要な虚偽表示があろうと、それを粉飾決算とは言わない。悪意が経営者にあったかどうかは、経営者の心の中の問題である。外形的かつ客観的にこれを判別することはできない。会計基準の錯誤は、故意を阻却する。
監査報告書の製品差別化ができない監査業界において、監査法人が営業努力により新規の監査契約をとるのは難しい。しかし、監査法人がいったんとった監査契約を解約するのは、それ以上に難しい。上場会社の監査契約は適正意見を暗黙の前提として継続されるというのが社会的通念となっている。監査法人が交代するというのは、世間には言えないのっぴきならない事情があると考えられる。監査法人により不正会計処理が発見されるのは、監査法人が交代したあとの、新しい監査法人による新年度監査のときが圧倒的に多い。
 日本の4大監査法人のうち最大級の2監査法人(あずさと新日本)がこのざまでは、他の監査法人も推し知るべしで、社会は粉飾決算の発見防止機能について、もはや何の選択の余地も残されていない。日本の公認会計士監査制度については、抜本的な検討がおこなわれるべきだ。
ほとんどの日本の監査法人は、監査調書のドキュメンテーションと、有価証券報告書の作成補助に汲々としており、会社の内部統制から独立した会計監査などできもしなければ、事実としてやっていない。日本社会は、この現実を直視すべきである。
東芝は、監査法人にとってまことに良い顧客で、結果として何の意味もなかった例年の監査において、新日本監査法人に10億円、EYに17億円という、美味しい監査報酬を支払っていた。しかも、粉飾への共謀が明らかとなった2016年3月期には、粉飾訂正のためという口実で、新日本監査法人に53億円、EYに26億円、合計79億円の報酬を支払っている。ちなみに金融庁が、東芝の粉飾決算に対する監査について新日本監査法人に課した課徴金は21億円あまり。これでは新日本監査法人は焼け太りで、金融庁の課徴金など、たいた意味をもたない。
 今では公認会計士ではない著書の一連の鋭い指摘について、公認会計士側からの反論があれば、それもぜひ読んでみたいと思いました。
(2017年10月刊。2400円+税)

明るい失敗

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 原 和良 、 出版  クロスメディア・パブリッシング
 いい本です。読んでいるときから、気持ちが軽くなっていき、読み終わったときには、さっぱりした気持ちになって、さあ、あすはどんなあしたが待っているかなと期待できるようになります。軽い本です。200頁の本に明日から明るく生きていくヒントが満載です。そうか、そういうことだったのか、自分を振り返ることができます。
 忙しいとは、心をなくすと書く。充実した人生を送ろうとすると、人生は本当に時間がない。人は、世の中で大切にされていない、と感じたとき、やり甲斐や充実感を失い、同時に自分の生きている時間を奪われていると感じ、忙しいという感情をもってしまう。
忙しい人に仕事が集中する。なぜか・・・。本当に忙しい人は、短時間で質の良い仕事を仕上げる努力をする。
 忙しい人が忙しいなかで、長期にわたって効率的に仕事を続けるには必要条件がある。それは心身の健康状態を常に最高レベルに保つこと。
 忙しいと思うときこそ、適当なリフレッシュや休息が必要。
 ビジネスで一番大事なのは、貯金ではなく、他者からの信頼の貯金である。
 大なり小なり、人生には思いがけない災難がふりかかってくる。どんな災難がふってかかろうとも、前進するためには、いったんその災難を受け入れ、そこから前に進むしかない。
 他人(ひと)に助けを求めることが必要なときもある。しかし、自分自身に乗り越える覚悟がなければ、他人は助けようがない。
 弁護士である著者は、離婚事件を見ていて、何が幸福かを決めるのは、社会や他人ではなく、その当事者本人であることをつくづく感じると言います。私も、それは同感です。
 そしてまた、著者は弁護士として、たくさんの逆境を見てきた。弁護士の仕事は逆境を引き受け業とも言える、と言います。
逆境は永遠に続くものではない。どんな嵐も時間の経過とともに過ぎ去っていき、乗り越えることができる。
 まったく私も同感です。私は、付け加えると、辛い思いをした依頼者には、しばらく旅に出たらどうですかと進めています。時と場所を変えてみると、なあんだ・・・、なんで、あんなに苦しんでいたのだろう・・・と、自分を客観的にとらえ直すきっかけをつくってくれることがあるのです。
 失敗したときこそ笑いましょう。著者のこの呼び替えに私は大賛成です。人生には笑いが必要です。辛さや悔しさを乗り越えるためには、笑い飛ばす力が欠かせません。
 佐賀県出身で、東京で大活躍している弁護士の本です。映画『それでもボクはやっていない』のモデル事件となった痴漢冤罪事件の弁護人でもありました。一読を強くおすすめします。
(2017年10月刊。1380円+税)

いくさの底

カテゴリー:ヨーロッパ / 日本史(戦後)

(霧山昴)
著者 古処 誠二 、 出版  角川書店
 福岡県に生まれ、自衛隊にもいた若手の作家です。前に『中尉』という本を書いていて、私はその描写の迫力に圧倒されました。それなりに戦記物を読んでいる私ですが、存在感あふれる細やかな描写のなかに、忍び寄ってくる不気味さに心が震えてしまったのでした。
 『中尉』の紹介文は、こう書かれています。「敗戦間近のビルマ戦線にペスト囲い込みのため派遣された軍医・伊与田中尉。護衛の任に就いたわたしは、風采のあからぬ怠惰な軍医に苛立ちを隠せずにいた。しかし、駐屯する部落では若者の脱走と中尉の誘拐事件が起こるに及んで事情は一変する。誰かスパイと通じていたのか。あの男は、いったい何者だったのか・・・」
 今度の部隊も、ビルマルートを東へ外れた山の中。中国・重慶軍の侵入が見られる一帯というのですから、日本軍は中共軍ではなく、国民党軍と戦っていたわけです。そして、山の中の小さな村に駐屯します。村長が出てきて、それなりに愛想よく応対しますが、村人は冷淡です。そして、日本軍の隊長がある晩に殺されます。現地の人が使う刀によって、音もなく死んだのでした。犯人は分かりません。日本兵かもしれません。
 そして、次の殺人事件の被害者は、なんと村長。同じ手口です。
 戦場ミステリーとしても、本当によく出来ていると感嘆しながら一気に読みあげました。だって、結末を知らないでは、安心して眠ることなんか出来ませんからね・・・。
(2017年11月刊。1600円+税)

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