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バッタ博士の異常な愛情

カテゴリー:人間

(霧山昴)

著者 前野ウルド浩太郎 、 出版 光文社新書

 累計37万部という大変なベストセターになった『バッタを倒しにアフリカへ』の著者がバッタの婚活の研究も面白いけれど、自分の婚活は失敗の連続で、45歳の今に至るまで結婚へゴールインできていないことを告白した本です。

「異常な愛情」とありますので、著者は変態なのかと疑いたくなりますが、「恋愛と婚活の失敗学」というサブタイトルがついているように、中味は至って真面目で、そうか、そこでもう一押しだったんだけどな…と、つい思ってしまったりします。

今や婚活の主流はネットです。私の知る弁護士も、私の娘もネットで婚活して、成功しています。もちろん、うまくいく人ばかりではなく、失敗する人の方も多いのでしょうが…。

 昔のように、お見合いをセットしようという人は断然少ない世の中になっているのですから、ネットに頼らざるをえない現実があるわけです。

アプリには利点と欠点がある。相手の条件を重視するのなら、アプリのほうが使い勝手がよい。しかし、パネマジには要注意。パネマジってコトバを初めて知りました。お見合い用の写真を修正するのは戦前の日本にもあり、東京の有名な写真店には、地方からもわざわざ上京してきたのでした。

パネマジとは、パネルマジックの略で、写真を加工修正し、容姿を変えて良く見せる行為のこと。女性は朝でもスッピンではいけないそうですね。でも、私なんかスッピンのほうがいいと思うのですが…。

「今度みんなで行きましょう」と、「みんな」というコトバが使われたら、先方は警戒しているということ。なーるほど、ですね…。

デートまでこぎつけたあと、メールが送って返事が来なかったときは…。返事がないのが返事。これまた、そうなんですよね。

浮気をする人は、こりずに繰り返す。この点は、弁護士を長くしている私の経験からして、その確率は高いように思います。

この本によると、日本人男性の平均年収は570万円で、年収1000万円をこえるのは1割以下とのこと。私の住む街でいうと、この平均月収にはほど遠い状況にあります。なので、結婚したら「嫁を養う」なんて言う自信は出て来ません。女性が働いていたら大丈夫というわけにもいきません。子どもが産まれたら、妻はしばらく働けず、無収入になるからです。その点、著者は、ベストセラーによる印税収入があるから心配はないはず。でも、それでも女性はやはり心配するのでしょうね…。

婚活のネックは、女性は年齢、男性は収入。うむむ、なるほど、なるほど、難しいものです。結婚相談所を利用すると、お金をつぎこむほど確率は高まるとはいうものの、本当にマッチングできるか実は分かたないという不安もあります。いやあ悩ましい限りです。

私の場合は、大学生のときに交際していた女性とうまくいくかと思っていたら、結局、ふられてしまい、傷心しているとき、大学の先輩から紹介された彼女と結婚しました。紹介されてプロポーズまで3ケ月もあったでしょうか…。結婚は決心なのです。あれこれ悩むことはありませんでした。おかげさまで、子どもが生まれ、今では孫もいますので、嫁さんにはひたすら感謝するばかりです。

(2025年11月刊。990円)

天までのぼれ

カテゴリー:日本史(江戸)

(霧山昴)

著者 中脇 初枝 、 出版 ポプラ社

 幕末の高知県(土佐)に生まれ育ち、明治維新になって女性に参政権がないのはおかしいと声を上げた楠瀬喜多の生涯を小説で見事に描いている本です。

 正月休みの人のいない事務所で、私は一心に読みふけりました。

 板垣退助、植本枝盛などの勤王派から自由民権運動家になった人たちとの交流が主たる流れです。そして戦前の日本で右翼の大物として有名な頭山満も少しだけ登場してきます。福岡から土佐に自由民権運動を学びに来たというのです。

 幕末のころ、女性は何かと制限がありました。寺子屋で勉強するにしても漢文の四書五経は必要ないとか、せいぜい「女大学」をやっていたらいい、とかです。

 そして、士分(武士)には格があって、一律ではなく、上下関係は厳しいのです。町人の娘なら、裁縫ができればいいとか…。

 また、娘は19歳までに嫁に行かないと変な目で見られるのです。さらには、貧乏な親がお金欲しさに娘を売り飛ばすのも決して珍しくはありませんでした。結婚相手はなかなか自由に選べない。そんななかでも好きな男女が結ばれることもあったのでした。

 そして、いよいよ江戸の将軍からの朝廷に政治の中心が移っていきます。板垣退助は西郷隆盛らとともに朝廷側の官軍で活躍します。ところが、新政府のなかで、結局、板垣たちははじき出されてしまいます。

 そこで、有司専制とたたかう動きが始まるのです。自由民権運動です。そのとき、女性が政談説会に参加して聞こうとすると、「女性はダメ」と排除されそうになります。それはおかしいと喜多はがんばります。

 また、女性に参政権がないのも許せません。それなら、喜多は納めるべき税金を支払いません。権利を行使できないのなら、義務のほうだって返上するというのです。

 勇気ある喜多の行動は多くの女性に賛同され、支持を得て少しずつ前進していきます。高知での議会に女性を排除しないというのも実現したのでした(全国的なものとなったときには排除されました)。

 めげず、くじけず、あくまであきらめないと道は開けてくるという、元気の出る話でした。実話がとても読みやすい話として展開していきます。

 私もこんな読み物を書いてみたいと思いました。

 

(2025年7月刊。2420円+税)

動物たちのインターネット

カテゴリー:生物

(霧山昴)

著者 アーティン・ヴィクルスキ 、 出版 山と渓谷社

 今やイカロスという極小の発信機を大きな動物から小さな昆虫にまで身体につけることが出来ます。世界中の動物の移動パターンが、リアルタイムで地図上に表示できるのです。

 さまざまな動物から毎日データを集めている。野生生物と地球、そして人類を守るのに役立てている。もちろん、こんな貴重なデータを戦争のためなんかに使ってほしくありません。それにしても、トンボ、キリギリス、シタバチに小さな小さなタグをつけている写真があります。驚異的な小ささです。野生の動物たちと人間との関わりにまつわるエピソードがいくつも紹介されていて、はっと驚かされます。

 渡りの途中で仲間からはぐれてしまったコウノトリがドイツ南部で地元の農家の家族の一員として迎えられてハンジという名前をつけられ、特製のひき肉をごちそうになったり、寒い冬には温かい足湯に入れてもらっていた話は感動的です。

 鳥たちはくちばしを閉じたままささやいてコミュニケーションをとっている。鳴く鳥には鳴管という発生器官がある。人間には何も聞こえず、声を出している様子も見えないけれど、鳥たちは会話をしている。

渡り鳥のシロハラコツグミを捕まえて、1.5グラムもしない超小型の発信機を背中に装着する。すると、ツグミたちは飛行中だけでなく、地上でも互いにささやきあっていることが判明した。

 それでも、受信機が鳥から5キロ以上離れると、信号が受信できなくなってしまう。

トンボにも装着できるサイズの初のナノ無線発信機をつくり上げ、トンボの背に取りつけた。

 ツグミに1.5グラムの重さの発信機を取りつけると、35グラムの自分の体重に加算されないよう、食べるエサの量を減らす。つまり、個体ごとに最適な離陸時と着陸時の体重があり、それにあわせて調整している。

 動物たちも遊ぶ。人間の子どもと同じように、走りまわったり、追いかけっこをしたりする。余剰のエネルギーがあれば遊ぶことができる。

 野生のホッキョクギツネが小枝を拾って目の前に置く。それを遠くに投げてやると、空中で小枝をキャッチする。ちょうど飼い犬と同じようにした。これは遊びだ。

牛は、震源地が半径20キロ以内のものなら地震を予知できる。ただし、本震のあとの余震でないと、観察して証明することは難しい。そもそも地震がいつ起きるかは分からないからだ。余震なら、確実に起きるのは間違いないので、観察できる。

今や動物たちに超小型の発信機を取りつけて彼らの行動を探ることが出来るのです。それにしても、鳥だけでなく、トンボにまで取り付けられるとは、すごいものです。

(2025年10月刊。2420円)

パレスチナ占領

カテゴリー:中近東

(霧山昴)

著者 平野 雄吾 、 出版 ちくま新書

 一応の停戦合意が成立したあと、日本でガザの実情が報道されることはほとんどなくなりましたね。ウクライナのほうは、停戦が成立しておらず戦争が続いていることもあって、少しは報道されていますが、それでも、戦争がなぜ起きたのか、戦争を支えている軍事産業がボロもうけしていることなど、本質的な報道が極端に少ないように思います。

 ハマスがガザ地区の地下に張り巡らせたトンネル網は、全長数百キロに及ぶそうです。深さは最大80メートルとのこと。私は少なくない人質がこのトンネル内で2年も生き永らえたことにハマスの底力と、ハマスを支える民衆の意思を実感しました。トンネル内の檻に単に入れっぱなしにしておいたら、地上に出てきたとき人質は歩くことも出来なかったと思うのです。でも、映像を見るかぎりしっかりした足取りで歩いていましたし、骨皮筋右衛門ではない人を見ました。これは多勢の人々の、公然あるいは暗黙の支持がなければ、とても出来ないことです。

 いったいなぜハマスはこんなにガザの人々に支えられているのか、私たちはよくよく考える必要があると思うのです。念のため言っておきますが、私はハマスの2023年10月7日の奇襲攻撃を支持していません。どんなに苦しくても平和的な外交交渉以外に問題の根本的解決はありえないと確信しています。そして、ネタニヤフ首相の指揮下のイスラエル軍のガザ侵攻も許せません。既に罪なきガザの人々が6万人以上も殺されているのです。イスラエル軍は即時、無条件で撤退すべきです。

 ガザの人口は220万人(2023年推定)で、東京と同じくらいの人口密度。イスラエルの侵攻によって、高層ビルを含めて、地上部分はどこもかしこもボロボロの惨状です。この復興事業でまた金儲けする企業がいるのでしょうね。まぁ、それでもアメリカのロッキードや日本の三菱重工業のような「死の商人」よりは、断然ましです。

 パレスチナ自治政府に対する住民の信頼は、とても低いようです。それは、アッバス議長とその息子たちがビジネスマンとして不当に収益を上げている、つまり、汚職・腐敗があまりにもひどいことからというのです。残念です。EUからの支援金もアッバスとその側近に流れているとされると、本当に嫌になってしまいます。

 ハマスがパレスチナ人のなかで一定の支持を受けているのには、腐敗した無能な自治政府への反発の裏返しだ。いやぁ、これは困ったことです。こんなことでは、ガザ地区に住むパレスチナ人の統一と団結は困難ですよね…。

 そして、イスラエル。ネタニヤフ首相も汚職の渦中にあり、刑事裁判を抱えているとのこと。

 私は見ていませんが、「ネタニヤフ」という映画のなかで、ネタニヤフ首相の職権濫用が白日の下にさらけ出されているようです。

イスラエル社会も右傾化と分断が進んでいる。ネタニヤフは、安反保障を口実として敵を設定し、社会の分断を政治的に利用してきた。

 私は一刻も早くウクライナとガザの戦争が完全に終結すること、そして復興事業が着手されることを心より願っています。勉強になる本でした。

(2025年9月刊。960円+税)

学校では教えてくれないシェイクスピア

カテゴリー:イギリス

(霧山昴)

著者 北村紗衣、 出版 朝日出版社

 著者は北海道の旭川東高校から東大に入って、今は武蔵大学の教授。 専門の一つがシェイクスピア。なんと、映画と演劇を年に100本ずつ見ているとのこと。

 私は劇を見ることはまったくありませんが、映画は大好きで、2ヵ月に1本の割合で見ようとしています。でも、なかなか時間がとれません。

さて、シェイクスピアです。私は、いつシェイクスピアを読んだのか、忘れたほど昔のことです。そもそも本当に読んだのか、確信をもっては言うことが出来ません。

 シェイクスピアが活躍したのは、中世ではなく、16世紀末から17世紀はじめ、つまり近世。エリザベス一世のころです。

 シェイクスピアは小説をまったく書いていない。なので、小説家とはいえない。お芝居の台本を書いていた。

 シェイクスピアの生没年は、1564年から1616年。これは「人殺しの話をいろいろ書いた人」として覚える。

 シェイクスピアの書いた台本の自筆原稿はまったく残っていない。当時はコピー機があるわけもないので、劇団員全員分の台本はつくらなかった。また、ほかの劇作家と共同して台本を書いた可能性がある、

 シェイクスピアの書いた台本の内容には、学問的に間違っているところが少なくない。たとえば、内陸部にあるボヘミアを海岸があるとしたり、ヴェローナからミラノへ船では行けないのに、船で行ったように書いている。

 シェイクスピアは大学には通っていない。ラテン語も、それほど流暢ではない。

 イングランド演劇は、トーンが多様で、悲劇でも必ず笑うところがあるし、喜劇でもびっくりするようなショッキングな描写があったりする。

 シェイクスピアは、50歳過ぎまで、元気で長生きした。そのためキャリアが長く、作風が成熟した。

 シェイクスピアの時代には、専門の演出家はいない。役者が自分で考えて演じていた。演出家が登場したのは、19世紀も後半になってからのこと。

当時の劇場は、舞台が客席に囲まれ、両脇にも客が入る。幕がないので、その種の背景転換は出来ない。

シェイクスピアの時代は、劇場に行けば、毎日違い芝居が見れるという前提で運営されていた。

シェイクスピアの戯曲は、基本的にすべて役者を想定した「あて書き」になっている。

シェイクスピアの戯曲による映画、演劇を見てみたいと思いました。でも、なかなか難しそうです。

(2025年10月刊。2090円+税)

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