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デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 針貝 有佳 、 出版 PHPビジネス新書
 デンマークっていう国は、九州ほどの面積に590万人が住む。千葉県より人口は少ない。
 そして、カフェーでカフェラテ1杯とサンドイッチを注文すると2500円もする。そして、この2500円は最低ラインの時給でもある。消費税は25%、給料の半分を税金でもっていかれる。いやあ、これって、びっくりする高率ですよね。
 ところが、教育費はタダだし、医療費も無料。老後も心配いらない。人生何とかなるという安心感がある。ふむふむ、それだったら、高率の税金でもいいかな…と思いますね。
そして、デンマークは、国際競争力もデジタル競争力も、ともに1位。今後5年間のビジネス環境は3位。では、日本というと…。ビジネス効率性はなんと47位。国際競争力も日本はどんどん低下していますよね。独創性を喪い、インターネット産業(とくに半導体)では台湾にも韓国にも大きく遅れをとっていますよね、残念ながら…。
 この本を読むと、日本人は本当に大切なことを見失っている気がしてなりませんでした。
 デンマーク人にとって、第一に優先するのは家族。なので、夕食を家族ともどもとるのは当然のこと。子どもを学校や保育園にお迎えに行くのも母親とは限らず、父親だって行く。保護者会に出席するのも当然、父親も参加する。第二に優先が仕事で、第三に娯楽や自分のしたいことが来る。なので、友達に会ったりするのは優先順位が低い。
デンマーク人は、仕事のつきあいはしない。仕事帰りに同僚と「一杯」なんて習慣はデンマークにはないのです。
仕事は午後4時に終了するのが一般的。その後はフリータイム。金曜日は午後2時には退社する。
 生産性の高い源泉は「仕事への喜び」。いつだってリフレッシュしているから、生産性が高く、成果を出せる。社員は心から仕事に喜びを感じている。
 会議で発言しない人は、次からは会議に参加しない。いても意味がないから…。
 デンマークの組織は、少人数かつ実践的で、意思決定のスピードが速い。
ランチタイムは日本より少し早くて午前11時半に始まり、30分間。帰宅時間が早いからだ。ただし、仕事を家に持ち帰って、夜に仕事をするデンマーク人が少なくない。
 デンマークでは、部下が上司の指示に従わないのは、よくあること。部下は上司の指示に、ただ使うのではなく、指示された仕事が本当にやる意味があるのかどうか判断する。
 デンマークの組織は無理しない、無理させない関係で成り立っている。
 デンマーク人は、初対面で職業を訊く。それは会社名ではなく、どんな仕事をしているのかを尋ねる。
 デンマーク社会では、数年ごとに転職する人のほうが評価され、長く同じ職場にいると、「変化を受け入れられない人」と判断されて採用されにくい。同じ会社に10年以上いると、「このままではいけない」と感じてしまう。
 デンマークの会社は、日本のような新卒を一括採用するということはしない。
 湧き出る意欲と意志が「高い生産性」を生み出す。これはこれは、とんでもない違いですね。日本は、今のような詰め込みの学校教育をやめて、もっと自由に自分の頭で自主的に考える力を伸ばす教育に切り換えた方がいいと思います。一部のエリートを養成すればいいというのは、古い誤った教育感だと私は思います。
 この新書がわずか1年近くで、すでに11刷だというのは、私と同じように考える日本人も少なくないということを意味しているように思いました。いかがでしょうか…。お勧めの新書です。
(2024年9月刊。990円)

検証  政治とカネ

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 上脇 博之 、 出版 岩波新書
 自民党とは、まさしく裏金まみれの違法行為を平然とし続ける政党だということがよくよく分かる本です。問題は、それを知ってもなお自民党に平然と投票する人にある。というより、そんなこと自分には何の関係もない、こううそぶいて投票所に足を運ばない人がなんと多いことか・・・、そこにあります。今や投票率の低さこそが裏金まみれの自民党を辛うじて支えていると言えると思います。
 裏金は簡単につくれる。企業が政治資金パーティー券を購入しても、誰が、いくら購入したのかは明らかにできない。自民党本部は、合法的に使途不明金(裏金)をつくることができる。
 政党に支払われる政党交付金は全額が税金。毎年300億円以上の税金が自民党などに支払われている(共産党は受け取り拒否)。自民党は250億円の収入のうち7割の170億円が政党交付金なので、国営政党のようなもの。
政治資金パーティーは政治家の資金集めを最大の目的としていて、その利益率は8~9割。参加者は寄付するつもりでパーティーに参加しているので、その実質は限りなく寄付に近い。1人20万円をこえたときのみ、収支報告書に明細を記載すればよいとされている。ホテルの会場の収容人員が最大1000人であっても、パーティー券はその何倍もの数千人分が売られていることは少なくない。
政党から政治家個人への寄付が許されていて、裏金となっている。
 自民党の政治家は複数の政治団体をもっているので、一人が年間150万円という制限を簡単に突破できる。
裏金は何に使われているのか・・・。一つには買収資金。自民党の総裁選挙は、もちろん公職選挙法の適用はありませんので、裏金が大活躍していることでしょうが、違法にはなりません。
私たちの税金を充てる政党助成金は、企業献金を廃止するので、その代わりのものとしてスタートした。しかし、企業献金は禁止されなかったので、政党助成金は、「泥棒に追い銭」となった。
著者は政党助成金は憲法違反だとしています。国会議員5人以上という要件は、少数者を不当に排除している。ドイツでは、政党助成制度は1960年代に憲法違反だとした判決が出ている。1月1日現在で交付対象とされているので、年末になると、5人以上の国会議員が新党をつくっている。
自民党の党員は547万人いた(1990年代初め)のが、今では109万人(2023年)しかいない。5分の1になっている。
小選挙区制は、与党の過剰代表を生み出すおかしな制度。大量の「死票」が出ている。自民党は4割しか得票していないのに議席は8割もとっている。そして、この「上げ底」に応じて政党交付金まで過剰にもらっている。小選挙区制になって、自民党の国会議員も「イエスマン」ばかり。内閣や党役員のポストを狙って、打算と利権だけの集団と化してしまった。
これだけ自民党の裏金づくりに対する国民の批判、いや怒りが湧き立っているのに、総裁選の9人の候補者は誰も裏金づくりを止めるとは言いません。そして、NHKなど、マスコミも、それを弾劾しないのです。摩訶不思議な日本そのものです。そんな世相に対する頂門の一針というべき新書です。ぜひ、お読みください。
(2024年7月刊。990円+税)

宇宙はいかに始まったのか

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者 浅田 秀樹 、 出版 講談社ブルーバックス新書
 読んでもよく分からないなりに、宇宙論の本はつい手にとって読んでみたくなります。
 何光年も先の星が今、見えていることの不思議さ、奇怪さがあります。
宇宙に始まりがあるとしたら、終わりもあるのか…。宇宙の始まりの前には何があったのか。何もなかったとしたら、なぜ急に誕生したのか、できたのか…。謎は次々にふくらんでいきます。
 1ナノヘルツで振動するのは、1回振動するのに30年もかかるということ。日本人の平均寿命のあいだに3回しか振動しない。
 ナノヘルツの重力波というのは、数十年にわたって観測しても、1回の振動を見ることが出来るかどうかというスケールのもの。重力波は光速で伝わる。30年間で1回振動する波の波長は、30光年。
 波長は、波が1回振動するあいだの長さ。周波数とは、1秒間に何回振動するのかをあらわすもの。
周波数1ヘルツとは、1秒間に1回振動すること。電波は、波長が1ミリメートルより長い電磁波のこと。X線が可視光と同じ電磁波にもかかわらず、19世紀末まで人類が気づかなかった理由は、それが1000万度にも相当する高エネルギーの電磁波だったため。
 パルサーは宇宙の精密時計。パルサーからの電波パルスは、きわめて正確に周期的に地球に届く。
 アメリカのLEGOが初めて検出した重力波は、ブラックホールの合体によるもので、周波数が1ナノヘルツ、波長にして数光年という、途方もないもの。
宇宙が誕生してから有限時間しか経過していないため、私たちは宇宙の全体を見ることは不可能。有限時間内では、光は有限の距離しか到達できないから。この限界を「地平線」と呼ぶ。つまり、宇宙の地平線が存在する理由は、光速が物質の速度の上限だから。
宇宙には地平線があって、向こう側は見えないんだと言われると、なんだかとても残念な気がします。それって、山のあなたの空遠く…の世界ですよね。どうしても見たい、見たいと思っても、見ることはできないというわけなんですね…。残念ですが仕方ありません。本を読んで想像してみることにしましょう。
(2024年6月刊。1100円)

脳は眠りで大進化する

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 上田 泰己 、 出版 文春新書
 睡眠は人間の成長、とくに脳の神経細胞の成長に必要不可欠、きわめて大切な時間だ。
 これは、私の実感にもぴったりあります。私は、生まれてこのかた、完全徹夜なるものをしたことが高校生のとき、実験してみようと思ってした1回だけしかありません。まるで効果が悪いと思いました。徹夜明けは何も考えられない、脳細胞がまったく働かないことを実感しました。
 2回目は、夏合宿のとき、彼女と二人で話していて、朝を迎えたので、そのまま二人とも寝入ってしましました(ちょっとでも仮眠すれば、なんとかなることも体感しましたが、やはり、それだけのことです)。
 日本は睡眠時間が先進国のなかでもっとも短い。1日あたり1時間も短い。そして、これは労働生産性が低いことにつながっている。日本の長時間労働は低い労働生産性に直結しているというのです。経営者は経団連は反省したほうがいいでしょう。
 睡眠は削ってもいい、ムダな時間ではない。むしろ絶対に必要な時間だ。睡眠中の神経細胞は、一時期かなり強く活性化して一休み、また強く活性化して一休み、というリズミカルな動きをしている。
 生物には体内時計がある。これは地球の外側の時間軸を、生物それぞれが内側にインストールしたもの。
 ヒトゲノム計画から判明したのは、ヒトは2万数千もの遺伝子をもつこと。研究のスピードを上げるため、世代をまたがずに遺伝子を改案する技術を開発した。何やらすごい技術ですよね、きっと…。
 睡眠で面白いのは、睡眠と覚醒を繰り返すこと。レム睡眠のときに夢を見るが、ノンレム睡眠時にも夢を見ることがある。
 レム睡眠時は、完全に眠っているみたいにおとなしい。つまり、脳は活発なのに、身体は非常に不活発。ヒトは、必ずノンレム睡眠から入って、その後レム睡眠になる。
 トカゲのような爬虫類もレム睡眠をとっているようだ。ヒトでも、部分的に脳が眠る。
細胞を起こす、覚醒させるときに必ず働くのがカルシウムイオン。カルシウムが欠乏すると、睡眠に影響がある。
 ヒトは、睡眠時に、神経細胞同士の新しいつながりを獲得し、次の日に少しだけ新しい自分になっている。
 ヒトは、基本的に覚醒時には平均的には忘れていってしまう。
 覚醒は探索することに最適化された状態。
ノンレム睡眠が、シナプスを強くしたり新しく生み出したりするためには最適だ。
脳は、ヒトの体の時間的分業を統括するリーダーである。脳と心臓は驚くほど似ている。脳波と鼓動する心臓の仕組みには共通性がある。脳は第二の心臓だ。
キリンやラクダはあまり眠らない。キリンは細切れの睡眠で、あわせても1日に1時間以内。
 トナカイは、眠らないで、目を開けてモグモグとかんでいる。それは、脳波の周波数に近い。
ヒトの脳と睡眠の大切さを強く実感させられる新書です。著者は、福岡県生まれ、久留米大学附設高校から東大医学部に進学して、ずっと脳研究にいそしんでいるようです。
(2024年6月刊。980円+税)

アリの巣をめぐる冒険

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 丸山 宗利 、 出版 幻冬舎新書
 アリの大群そしてアリの行列をよくよく観察すると、いろんなことが分かるという、面白い新書です。
生き物の発見は、視点がすべて。知識にもとづく独自の視点をもたなければ、新しい発見はできない。確固たる才がなければ、多くの生き物の存在を簡単に見落としてしまうのが野外調査の怖さ。
アリと多少とも共生あるいは依存することを好蟻(こうぎ)性という。
 アリの好む物質を出してアリから口移しに給餌を受けるもの、アリの巣にまぎれこんで餌の残りを食べるもの、アリの巣の周辺に住んで弱ったアリを食べるもの、アリの背中に乗って生活するもの、実にさまざまいる。
 分類学の研究では、写真技術の発達した今でも、絵描きのほうが有用な手段である。重要な部分だけを絵で示したり、強調できるから。
 アリの死骸がまとまって巣から出されるのは、年1回の早春に限られる。そこで、クサアリハネカクシは、この早春に産みつけられた卵は、わずか数日で孵化する。
アリはきわめて排他的で、他種に対しては強い敵対行動をとる。
 ヒメサスライアリは、アリを専門に食べるアリ。ほかのアリの巣を襲って、成虫や幼虫を狩って食べる。2~5ミリの小さなアリだけど、毒針を使って、自分よりはるかに大きなアリを仕留める。しかし、ヒメサスライアリは放浪性のアリなので、見つけるには偶然の出会いを求めるしかない。そして、基本的に毎晩、引っ越す。その引っ越しには、8時間も10時間もかかることがある。
ジャングルでは、ハチもヘビも怖いが、一番怖いのは蚊。マラリアにかかると大変。
 ヒメサスライアリの観察中、怒ったアリに刺されると、毒針なので強烈な痛さ。
 面白い、面白いと著者は書いていますが、なにしろジャングル(密林)の中なので、ともかく大変な現地探求の日々です。いやあ、学者って大変な苦労をするものですよね。とても真似できません。
(2024年4月刊。1040円+税)

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