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カテゴリー: 生物

「おしどり夫婦」ではない鳥たち

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 濱尾 章二 、 出版  岩波科学ライブラリー
面白いこと、このうえない本です。鳥の本当の姿を知ることができるという以上に、生命とは何なのかについて考えさせられました。
人は見かけだけでは判断できない。その行動をよく見てから判断すべきだとよく言われます。そのとおりだと思うのですが、では鳥の場合には、どうやって行動を見て判断したらよいのか・・・。鳥を個体識別しないと何事も始まりません。でも、一羽一羽の鳥をどうやって識別するのでしょうか・・・。
ニホンザルやチンパンジー、そしてゴリラなら、じっと観察していたら一頭一頭(ゴリラは一人一人と数えます)の顔や体の違いが識別できるようになるそうです。でも、小鳥には無理ですよね。でも、不可能を可能にするのが学者の仕事です。絵の具を羽に吹きつけたりして、なんとか個体識別の努力をしているのです。頭が下がります。そうやって、一体、何が判明したか。驚くべきことが徐々に分かってきたのです。
オオヨシキリは一夫多妻。第1メスの子は58%がオスなのに、第2メスの子は46%がオスだった。第2メスは第1メスほどオスが子育てに協力してくれないので、質の高い子を育てられる保障がない。そこで、メスを産んでおけば一定の子は残せる。なので、第2メスになったら、産む卵はメスにしたほうがよい。
では、どうやって鳥はオスかメスかを産み分けることができるのか・・・。精子ではなく、卵細胞にメスになるものとオスになるものの2種類がある。しかし、それにしても、どうやって産み分けているのか、そのメカニズムの全貌はまだ解明されていない。
北米のツバメでは、巣立ちまでに死亡したヒナの1%が子殺しによるもの。それは、独身のオスがヒナをつついて殺して、被害者のメスを結婚相手として獲得しようとしている。繁殖に失敗したら、しばしばつがいを解消するからである。
鳥全体では一夫多妻の種は数%にすぎず、9%以上の種は一夫一妻で繁殖している。子育ての制約があるからだ。
一夫多妻といっても、一夫多妻のオスがいる一方で、メスを得られなかったオスがいるというのが実態。それはそうでしょうね。みんながみんな一夫多妻というのは、オスとメスの数に圧倒的な差がないと不可能ですから・・・。
鳥のオスは、つがい相手を得ることと、つがい外交尾を行うことの二つの手段を駆使して、自分の子を少しでも多く残そうとしている。
これって、人間の浮気にも通じる話ですよね、きっと・・・。
アマサギでは、34%の交尾が、つがい外のオスとメスによって起きていた。
一夫多妻のオスは、メスが「浮気」しないよう一瞬も気を抜かずにメスに張りついておかないといけない。体重が1割も減るほどの難苦です。
一部の種のオスは、メスが抱卵中につがい外交尾(一夫多妻)を目ざす。これって、人間の男のすることでもありますね。
鳥のメスは、少しでも優れたオス、たとえばよい縄張りをもつオス、捕食者から逃れる能力が高く、病気にも強いオスとつがいになろうとする。つまり、メスは繁殖に際してパートナーを厳選している。
アマサギのつがい外交尾は、メスはつがい相手より優位なオスだと交尾を受け入れ、劣位なオスだと攻撃して追い払う。
一夫多妻の鳥は少なく、全種の1%以下でしかない。
メスの死亡率は高い。それは、繁殖・子育ての負担。そして、捕食者に襲われやすいから。
托卵にしても、宿主となった鳥が卵を拒否することが20%ほどある。また、宿主が托卵鳥のヒナを拒絶することがあることも判明した。
こういうことが判明したのはDNA鑑定によって鳥の識別が可能になったからですが、しかし、その前に取りの識別が必要なことは言うまでもありません。そのためには、山中に何日も泊まり込んで観察を続けるなどの苦労を必要とするわけです。好きでないとやってられない仕事だと思います。でも、そのおかげで、居ながらにして、いろんな生命体の存在形態をこうやって知ることが出来るわけです。ありがたいことです。
(2018年8月刊。1200円+税)

愛と分子

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 菊水 健史 、 出版  化学同人
面白い本のつくりです。まずは写真。なかなか見事な、そして意味ありげな写真が続きます。その次に、文章で解説されると、なるほど、そういうことなのか・・・、と。
鳥のウズラの場合。オスは、大きな声でよく鳴き、メスにアピールする。オスの鳴き声にひきつけられたメスが、オスの目の前にひょっこり現れると、オスは瞬時に鳴きやんでメスに近づき、交尾を試みる。このとき、オスは、目の前にあらわれたメスの頭部と首を見て、その見た目の美しさに見ほれ、交尾行動を開始する。
男は目で恋し、女は耳で恋に落ちる。
ショウジョウバエの場合。メスはオスに出会ったときは逃げまわるが、オスの熱心な求愛歌を聞くと、うっとりしたかのようにゆっくり歩く。これはメスがオスを受け入れつつあるサインだ。
ハツカネズミの場合。オスはメスに出会うと、ヒトには聞こえない高い周波数の超音波で、鳥のさえずりのような歌をうたっている。そしてメスは、自分とは遺伝的に異なる系統のオスがうたう音声を好む。
メダカの場合。メスは、長くそばに寄り添ってくれたオスをパートナーとして選ぶ。以前からよく見かけていたオスを記憶し、視覚的に識別して、恋のパートナーとして選んでいる。
プレーリーハタネズミの場合。オスもメスも、親元から離れて巣立つと、一人で草原の探検を始める。そこで、見知らぬ異性と出会い、そこで交尾すると、そのまま妊娠し、夫婦としての絆を形成する。絆をつくった夫婦は、ともに食事に、ともに子育てし、パートナーが死ぬまで添いとげる。オスは、たとえ若いメスが縄張りに入ってきても、求愛するどころか、攻撃して追い払ってしまう。
ええっ、そうなのか、そうなんだ・・・と、思わず納得してしまった小冊子みたいな本でした。
(2018年3月刊。1500円+税)

トラ学のすすめ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 関 啓子 、 出版  三冬社
動物園の飼育員がホワイトタイガーにかまれて亡くなるという痛ましい事故が起きました。トラはやっぱり怖いですよね。でも、自然界で、トラが人間を襲うことはありません。人間を警戒して近づかないのです。ただ、お互い不意打ちのように出会ったりしたら不幸な事故は避けられないでしょうね。
ヒョウは人間になつかないが、トラは人間になつく。
動物園で通路に誤ってネコが入っても、トラは何もしない。
アムールトラは、ネコ科で最大の獰猛で優雅な生きもの。体長2メートル、体重250キロ。
アムールトラは、足の裏がやわらかで、音を出さずに歩けるので、獲物になる動物に気づかれずに近づける。川も泳ぎ渡る。
アムールトラの毛色は淡い黄金色で、そこに黒いしまもようが入る。えらく派手で目立ちそうだが、森のなかでは保護色となって見えなくなる。
アムールトラは長距離走は苦手で、瞬時にけりをつけるしかない。
アムールトラが傷ついて、走れなくなると、もう飢え死にするしかない。
メスのトラは、女手ひとつで子どもを3歳まで育てる。
トラの最大の敵はヒグマではなく、人間だ。
アムールトラは、温厚で、おっとりとしていて、うたたねが好きな、怠惰とも思える性格だ。
トラは、孤高の動物であり、強いけれど、孤立無援を生きる生きものだ。
アムールトラは、自然界に500頭、世界中の動物園に500頭、合計して地球上に1000頭しか生きていない。まさしく絶滅危惧種である。
生物多様性は、地球の生命線である。トラは、この生物多様性のバロメーターなのだ。
トラは、餌になる主として中・小の動物、それらの動物たちが食べる木の実やコケ類、それを育む森林などなど、総じて生息地(ロシア極東)の生態系が一定の条件で維持されていないと生きていくことができない。したがって、この生態系の保存は人間にとっても大切なものなのだ。
日本人がトラ好きなのは、トラさん映画をみても分かると指摘され、ああ、そうだったと我が身をふり返りました。読んで楽しいトラ学入門書です。
(2018年6月刊。1800円+税)

ハトと日本人

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 大田 眞也 、 出版  弦書房
身近にいるハトを豊富な写真とともに解説してくれる貴重な本です。
ハトと漢字で書くと鳩。九と鳥です。「九」は、手を曲げてぐっと引きしめた姿を描いた象形文字。つまり、ぐっとしぼって集まる鳥。仲間を引き寄せて群れる鳥、ということ。
ところが、漢字のはとはもう一つ、鴿とも書くそうです。合と鳥です。こちらは合わさる鳥。つまり、集まり合う鳥ということ。
ドバトは繁殖力が強く、平均寿命は飼育下で平均9年。15年以上も生きたドバトもいる。
ハトの抱卵は、昼間は雄がし、夜間は雌がする。雄は昼に8時間、雌は夜に16時間。
ハトのヒナに与える鳩乳(ピジョン・ミルク)は、雌だけでなく雄も分泌してヒナに与える。
ええっ、そうなんですか、父親も鳩乳をやるのですね・・・。
このピジョン・ミルクには乳糖やカゼインは含まれていない。黄色いカテージチーズのような粘り気のある濃厚な液体で、水分は65%、タンパク質や脂肪分に富み、ビタミン(A・B・B2)やミネラル(ナトリウム・カルシウム・リン)などが含まれていて、栄養価が高い。
鳩は、主として、果実や花など植物質を食べているが、ときにはミミズやカタツムリ、昆虫の幼虫なども食べる。
ドバトの羽色は一羽ごとにみな違っている。外見でオスとメスを見分けるのは難しい。
私は一度だけハトのラブシーンを見たことがあります。公園のフェンスに2羽のハトが並んでいました。すると、2羽は体をぴったりくっつけ、お互いのくちばしで、それこそ濃厚ラブシーンを展開するのです。前に、フランスの自然観察映画で、カタツムリのラブシーンを見たことがありましたので、すぐにそれを思い出しました。このときには交尾に至るのまでは目撃できませんでした(私が、途中で公園を離れたのです)が、きっと交尾までいったと思います。
日本には300種いるハト科の鳥が12種いるとのこと。身近なハトの生態をしっかり勉強することができました。
(2018年6月刊。1700円+税)

蜂と蟻に刺されてみた

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 ジャスティン・O・シュミット 、 出版  白揚社
ハチとアリに刺されると、どれくらい痛いのか、その痛さに等級をつけてみた。自分の身体を提供してのこと。いやはや、とんだ商売ですね、学者って・・・。
等級はレベル1からレベル4までの4段階。セイヨウミツバチに1回刺されたときの痛みの強さをレベル2とし、これを評価の基準とする。ミツバチは世界中にいて、ミツバチに刺された人は多いので、評価の基準にしやすい。
ミツバチに鼻や唇を刺されると、本当に痛い。しかも、唇を刺されると、必ず腫れあがる。
ミツバチの毒液は、昆虫の毒液のなかで最高レベルの殺傷力をもっているうえ、分泌される量も多い。コロニーとしての殺傷能力は非常に高く、全体を集めたら、10人あまりの人間の生命を脅かすのに十分だ。
ゾウを追い払うため、アフリカでは畑の周囲にミツバチの巣をかけておく。ミツバチは、ゾウの弱点である眼と胴の腹側を狙って刺針攻撃をしかける。ゾウはたまらず逃げ出し、もう近づいてはこない。
ミツバチはNASAの実験で1982年と1984年の2回、宇宙を旅行している。無重力の環境下でもミツバチは六角柱の並んだ正常な巣をつくった。無重力空間でも、方向や位置をミツバチが間違えることはなかった。
アマゾン川の流域では、アリに刺されて、その痛みを我慢できるのか成人になる通過儀式となっているところがあるそうです。男の子のほうが強い痛みに耐えなければいけませんが、女の子には少しレベルを落として痛みをガマンすることが求められるといいます。いやはや・・・。
日本にもヒアリが侵入しようとしていますが、北米ではヒアリが相当侵食しているようです。
ヒアリ退治のつもりで空から有毒な殺虫剤を大量にまいたところ、逆効果だったそうです。ヒアリ以外のアリが殺虫剤でやられてしまい、肝心なヒアリは生きのび、かえって競争相手のいなくなった草原に展開していった。
ヒアリを殺すには、10リットルの湯を沸かして、蟻塚の真ん中に熱湯をゆっくり流し込む。これで、幼虫だけでなく、女王までも殺すことができる。
庭仕事をしていると、ときに痛い目にあいます。ダニかなと思っていましたが、この本を読んで、ひょっとしてアリだったかもしれないと思い、はっとしました。
ハチとアリと人間の生活との関わりを考えた、とてもユニークな生物の本です。でも、まねして刺されてみようなんては、ちっとも思いませんでした。
(2018年7月刊。2500円+税)

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