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カテゴリー: 人間

子ども受容のすすめ

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 関根 正明 、 出版  学陽書房
ながく中学校の教師として生徒に接してきた体験にもとづくものだけに説得力があります。
こちらの気持ちをそのまま受け取ってくれること。それを受容という。器量の大きな人は、とにかくはじめに受容してくれる。こちらの話を最後まで聞いてくれ、その後、自分の感じたことを静かに話す。こちらが話している途中で、話の腰を折ったりせず、はじめは、ともかく受容してくれる。
上手に付きあうことの根本が、この相手を受容することにある。
人間とは不思議な存在である。自分のことでありながら、自分のことがまるで分からない。
人間の成長する過程で、よくやった、えらい、ほう、なかなかうまいね、たいしたものだ、よくやるもんだ、感心だなあ、アタマいいねえ、うまいものだ、そんな言葉を多くかけてもらえた人ほど幸福だ。反対に、なんだ、そのやり方は、何、やってるんだ、へただなあ、もう少しマトモに出来ないのか、何だ、こりゃあ、さっぱり分からんよ、なんて言葉ばかり与えられて育った人は、マイナスの自己概念、潜在意識、潜在観念を植えつけられるので、不幸だ。
受容は、人の心を安定させる。自分の心が安定しているから、相手を受容できる。許容に比べて、受容は大きい。受容が全面的なのに対して、許容は部分的。
子どもは、幼いときには、それなりに親の期待に応えようとする。自分が無理をしても親の期待にそって親を喜ばせようとする。そのとき、子どもは心理的に無理している。しかし、子ども本人は無理しているとは考えていない。
親の情緒不安、穏やかな表情は、子どもにとっての安定感となる。逆に、親の情緒不安定、険しい表情は、子どもにとって落ち着いていられないものになる。
人は、一般に、広く深く世の中のことを知り、いろいろな体験をしていくうちに角がとれ、丸みができてくる。自己受容して自分が情緒的に安定するうえでも重要なこと。そのためには、多くの分野の本を読み、音楽、美術、芸能に親しむこと、多くの人々とつきあう必要がある。
人間は、所属している集団のなかで自分を何らかの形で表現したいという欲求をもっている。これを自己表出欲求という。そして、その集団に自己の存在を認めてもらいたいという欲求をもっている。これを社会的承認欲求という。この二つの基本的欲求が充足されて人間は情緒的に安定する。
実は、この本は25年以上も前の本なのです。書棚の奥に眠っていた積ん読く本をタイトルに惹かれて読んでみたのでした。読んで良かったと思いました。
(1999年3月刊。1359円+税)

みんなが笑顔になる認知症の話

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 竹田 伸也 、 出版  遠見書房
ガンという病気も身近な存在ですが、同じように認知症も恐ろしく身近にある病気ですよね。
現在、65歳以上の人のうち、7人に1人、500万人が認知症。これからますます増え、2025年には65歳以上の人の5人に1人が認知症になると予想されている。認知症の一番のリスクは、「年をとること」にある。認知症は、脳の老化がもとで起こる脳の病気。
大脳が壊れてうまく働かなくなり、日常生活に支障が出てしまう病気。
脳の奥深くにある大脳基底核や小脳は認知症によって障害を受けにくい場所なので、動作として覚えた記憶は残る。
認知症でもっとも多いのは、アルツハイマー型認知症。
ヒントを与えられると思い出せることは「再認」といい、これが出来ないのが病的なモノ忘れ。
認知症になると、それまで当たり前のように出来ていたことが、当たり前でなくなる。
認知症は死因となりうる病気。
認知症は、長い時間をかけて、少しずつ症状があらわれる。認知症と診断されたあとも、しばらくのあいだ一人暮らしをしている人は多い。
認知症は早目に見つけることができると、薬によって進行を遅らせることができる。
認知症の予防は、認知症になりにくい生活習慣を送ることが大切。ストレスをためるのは認知症にとって良くない。
認知症の人への対応の基本は「安心」を届けること。
相手が怒り出したら、ほとぼりが冷めるまで、しばらく相手から離れていること。まずは相手の訴えをよく聴く。そして否定も肯定もしない対応をする。相手の尊厳を支えるコミュニケーションをする。
読んでるとチョッピリ安心も出来る、認知症についての本です。
(2016年11月刊。1400円+税)

息子カムは今日もゆく

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 しおり 、 出版  セブン&アイ出版
難聴のため話せない、そのうえ発達障害、睡眠障害をもつ息子との日々の「格闘」が、ほのぼの系のマンガに描かれています。
母親になった女性の偉大さには、まったく頭が下がるばかりです。毎日毎日、本当に大変だと思うのですが、この4コマ、マンガに描かれているカム君は、まさしく愛すべき存在です。ママとの毎日のかかわりは、ほほえましいエピソードにみちみちています。なるほど、こうやってマンガのネタになるといいものですね・・・。
カム君は胎児のときにサイトメガロウィルスによって、生まれつき耳が聞こえません。そして、話せません。発達障害、睡眠障害、摂食障害があります。感覚過敏で、強いこだわりがあります。10歳になっても、まだオムツがとれないようです。それでも親は、カム君と一緒に大笑いしたり、喜びや楽しみがあり、こうやってマンガに描ける幸せがあるのです。これはこれで、本当に人間らしい素晴らしい生き方だと私は思いました。
インスタグラムで2万人がフォローしているということですが、なるほど、それだけの価値はあります。ほのぼの系のマンガ(絵)なので、なんだか見ている人の気持ちが、ほっこり、ゆったりしてくるのです。
実際の日常生活は、なにかと大変だろうと思いますが、こうやって幸せ感を世の中に広めてくれる「ママ」の力は偉大です。
一人でも多くの人の目に触れてほしいマンガです。
(2017年5月刊。1000円+税)

アンのゆりかご、村岡花子の生涯

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 村岡 恵理 、 出版  新潮文庫
「赤毛のアン」は、私も昔よみました。カナダのプリンス・エドワード島の大自然の描写に心が強く惹かれたことを覚えています。その訳者の村岡花子の生涯を孫娘にあたる著者が時代背景をきちんとふまえて丹念に文章化していて読ませます。
村岡花子が「赤毛のアン」を翻訳したのは戦前だったのですね。そして、出版されたのは、敗戦後7年たった1952年(昭和27年)5月のこと。1冊250円の本が圧倒的に人気を集めたのでした。日本中の若い女性たちの心をつかんだのです。それには訳文の素晴らしさもありました。なにしろ村岡花子はカナダ人教師たちから徹底して教育され、英語が抜群にできたうえ、実は日本語の素養も深かったのです。
翻訳するには単に英語ができるだけではダメ。日本の古典文学や短歌俳句に触れておくことも大切。季節や自然、色彩、情感を表現する日本語の豊かな歴史を体得しておく必要がある。豊富な語彙(ごい)をもち、そのなかの微妙なニュアンスを汲んで言葉を選ぶ感受性は、英語の語学力と同じくらい、いや、それ以上に大切な要素である。
村岡花子は、7歳のときに大病をした。そのとき、次のような辞世の歌を詠(よ)んでいる。
まだまだとおもいてすごしおるうちに はや死のみちへむかうものなり
す、すごいですね。これが7歳の少女の辞世の句ですか・・・。
幸い病気が治って学校に戻ったときに、次の歌を詠んだ。
まなびやにかえりてみればさくら花 今をさかりにさきほこるなり
村岡花子の父親は社会主義者だったとのこと。勉強のよく出来た花子をミッション・スクー
ルの寄宿舎へ入れたのでした。華族の娘たちのたくさん通う学校に入って、初めのうちは気遅れしていた花子は猛勉強し、英語力を身につけました。
東洋英和女学校時代の花子の友人に、柳原白蓮(燁子・あきこ)がいました。炭鉱玉と結
婚し、東大生の宮崎青年と駆け落ちしたことで有名な白蓮です。
 英語がとてもよく出来た村岡花子ですが、実はアメリカにもカナダにも行ってなかったとのこと。これには驚きました。そしてプリンス・エドワード島には娘たちとともに行く機会があったものの、「現実を目にすれば、心の中で慈(いつく)しんでいた想像の世界が失われてしまう恐れ」があるとして、「夢を夢のままで置いておく」ために結局、行かなかったというのです。これまた、すごい決断です。
 花子を取り巻く家庭と社会状況の変遷が大変よく分かる本になっています。
 クリスチャンだった実母が死んだとき、仏式の葬式を営んだということにも驚かされました。形式ではなく、実質を尊重したのですね・・・。
 「赤毛のアン」シリーズを再読してみたくなりました。
(2014年6月刊。750円+税)

死ぬほど読書

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 丹羽 宇一郎 、 出版  幻冬舎新書
ビジネス界きっての読書家だというのは私も知っていましたので、同好の先輩に敬意を表して読んでみました。私がうらやましく、また、ねたましいのは本書が13万部も売れているということです。私だって、いつかは「万冊」が売れないものかと願っているのです。それまでは、しがない、「売れないモノカキ」と称するほかありません。トホホ・・・。
著者は私より10歳ほど年長で、名古屋大学法学部を卒業しています。学生のころは学生運動に熱中し、マルクス・エンゲルス、そしてレーニンを読みふけったとのこと。私にも共通するところがあります。私には、マルクスの文章は少し難しく、レーニンのほうが日本語の訳文が良かったのか、明快で理解できました。
伊藤忠商事に入り、アメリカ駐在員として大損を出したり苦労しながらも、同社の社長、そして会長をつとめています。その後は、中国大使もつとめています。対中国との交流についての発言には私も共感することが多いです。
読書は、まがいものでない、真に自由な世界へと導いてくれる。「何でもあり」の世界は一見すると、自由のようだけど、自分の軸がないと、実はとても不自由。前へ進むための羅針盤や地図がないのと同じだから。自分の軸をもつには、読書で「知」を鍛えるしかない。
人間にとって一番大切なことは、自分は何も知らないということを自覚すること。何も知らないという自覚は、人を謙虚にさせる。
まったく、そのとおりです。私がこうやって年間500冊の単行本を読み、毎日、書評を載せているのは、世の中にいかに知らないことが多いか、日々、驚き、発見しているからです。本を読めば読むほど、いかに知らないことが多いかを実感させられます。
本は人間力を磨くための栄養。これは草木にとっての水と同じもの。
教養を磨くものは、仕事と読書と人だ。私も、まったく同感です。弁護士の仕事だけでは足りません。本を読んでいるだけでも足りません。そして、人と対話しないと分かりません。
想像力は現実を生きていくうえで、とても大切なこと。そうなんですよ。想像力がないと人間は豊かに生きていくことができないのです。
私はヒマを見つけて書店に行きます。そこにはわくわくする出会いがあるからです。著者も同じことを言っています。ネットで検索するだけでは足りません。やはり、町の本屋まで足を運んで、彼氏、彼女との出会いを求めるべきです。
私は本を読んで、これはと思うと、ためらうことなく、赤エンピツで棒線を引きます。そして、あとで読み返して、こうやって書評として書き写します。それで記憶に定着させ、次いで安心して忘れます。
読書は感情をも磨いてくれる。
まさにそのとおりです。いい本に出会うと、私は人知れず涙を流し、胸をときめかします。よかった、こんな本に出会えて・・・。その感動、感激を書評に反映させたくて、もう15年以上も、この毎日の書評を続けています。たまに(たまーに、というのが残念なのですが・・・)、反応を聞くと、うれしいのです。著者のますますのご活躍を心より祈念します。
(2017年8月刊。780円+税)

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