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カテゴリー: 人間

ソウルフード探訪

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者  中川明紀 、 出版  平凡社
 東京では、諸外国のソウルフード(魂食)が食べられるんですね。
現在、日本には255万人もの在留外国人がいる。これからもっともっと増えることでしょう。安倍首相のように「美しい国・日本」とか「日本古来の伝統を守れ」なんて言っていると、それはヘイト・スピーチにつながり、嫌韓・嫌中そして排外主義に結びつきます。テニスの大坂なおみさんの活躍は目を見張るものがありましたが、それまで少なくない日本人がハーフだとか言って、日本人だとは認めてこなかったようにも思いますが、いかがでしょうか・・・。でも、日本に住む人は昔から決して単一民族ではなかったのですから、認識を改めるべきなのです。
最新の新聞(2018年9月25日の日経)によると、東京に住む外国人は54万人近くで、この5年間に4割も増えた。一番多い新宿区には4万2千人もの外国人がいる。大久保1丁目の住民の半分は外国人。東京都下で外国人の住民がいないのは、八丈島の隣の青ヶ島村だけ。江戸川区の西葛西あたりにはインド人が4千人近く居住しているし、新宿区の高田馬場あたりにはミャンマー人が2千人をこえる。北区の東十条にはバングラデシュ人が1千人をこえ、横田基地のある福生市にはベトナム人が9百人近く住んでいる。葛飾区にはエチオピア人が70人以上いる。
となると、東京都内にそれぞれのお国自慢の料理があって、何も不思議ではありません。著者は、その一つ一つを食べ歩きます。楽しいソウルフード探訪記です。
それにしても、南米原産の唐辛子が、はるか遠いブータンの人々の料理に欠かせないものだなんて、驚かされます。唐辛子は韓国料理とばかり思っていました。ピラフはフランス語だそうです。そして、そのルーツはトルコ料理のピラウにあるとか。
今、日本には2300人ものヴズベキスタン人がいるそうです。ロシア料理の定番のボルシチは、実はウクライナ料理。ウクライナ語でボルシチは草を意味し、転じて薬草の煮汁を表しているとのこと。
著者が東京で食べた異国のソウルフードは60ヶ国にのぼるそうです。胃腸が相当丈夫でないとやっていけませんね、きっと・・・。
(2018年5月刊。1600円+税)

佐藤ママの子育てバイブル

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 佐藤 亮子 、 出版  朝日新聞出版
学びの黄金ルール42。これがこの本のサブ・タイトルです。
佐藤ママの本は、その配偶者よりいつも贈呈されて読ませていただいていますが、さすが子育てのプロだと、いつも感嘆・驚嘆しています。
この本の「はじめに」を読んで、私は思わず、のけぞりそうになりました。いえ、これは単なるたとえではなくて、本当に机の前から腰を浮かして、うしろにそりくり返ったのです。そこに、いったい何が書いてあったのか・・・。これを知るだけでも、この本を読む価値があるというものです。
長男が生まれるとき、わが子が生きていく社会を具体的に把握するため、小学1年生から6年生までの、体育、家庭科、美術まで、すべての学科の教科書を購入し、その教科書をじっくり読み、わが子がこれから生きていく学校教育の世界を理解することが出来た。
いやはや、これって、並の人間の発想ではありませんよね・・・。小学6年間の全教科の教科書を母親が買って読んだ、そんなこと聞いたことはありませんし、考えられもしません。
著者は高校の英語教員だったのを止めて育児に専念する主婦になることを選択したとのこと。ものすごい決断です。
子育てのスタートは、童謡と絵本。IT化がすすみ、SNSが発達するなかで、人間らしさはますます大切になるという発想もすばらしいです。
子どもは、すぐには賢くならない。人間の脳力を開花させるのは積み重ねなのだ。絵本を読み聞かせるときには、読み手も心から楽しんでいること、親が読み聞かせる。機会にまかせてはいけない。
佐藤ママの配偶者は、私もよく知る弁護士です。結婚当初の若々しい青年弁護士の写真も載っていますが、日本共産党の国会議員候補になったこともあります。映画『男はつらいよ』の主題歌もよく歌います。
父親が朝早く、駅頭で街頭宣伝している前を通学途中の息子たちが手を振って行ったという光景もあったそうです。
なかなか、そこまではとてもやれないと思えますが、大変参考になる、ヒント満載の本です。買って読んで損をすることは絶対にないと思います。それより何より、元気が出ますよ。ぜひ、手にとってみてください。
(2018年7月刊。1500円+税)

分かちあう心の進化

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 松沢 哲郎 、 出版  岩波書店
有名なチンパンジーのアイをパートナーとして40年以上も研究をしている学者の本ですから、面白くないはずがありません。しかも、NHKのラジオ放送をもとにしていますので、分かりやすく語りかけていて、最初から最後まで知的好奇心をすっかり満足させてくれました。2017年10月から12月にかけて、13回にわたって、毎回40分間、1万字ほどの原稿をもとに話したのです。それにさらに手を加えていますので、充実した内容は文句なしです。
研究の狙いは、人間とそれ以外の動物の心を操ることで、「人間とは何か?」という問いを自らに投げかけて考察することにある。
人間とチンパンジーのゲノムは98,8%が共通していて、違いはわずか12%。
チンパンジーには人間とりも優れた記憶能力がある。一瞬に数字を記憶することができる。
チンパンジーには石器を使う文化がある。
チンパンジーは、目の前にない物に思いをはせることは苦手。ことばの学習もむずかしい。
チンパンジーは、人間と同じように色が見えている。視力は両眼で1,5。
逆さま顔写真の認識は、人間は苦手だが、チンパンジーには簡単。
チンパンジーは、人間と目と目を合わせるし、物のやりとりができる。
霊長類学は日本が世界のなかで常に先頭を走ってきた。今も先頭集団にいて、その拠点が京都大学。山極寿一・京都大学総長もゴリラ研究の権威者である。
チンパンジーにも利き手があり、3人に2人(チンパンジーは1頭とは言いません)は右利き。
チンパンジーは、石器をつかうほか、アリを木の枝で釣って食べる。
アフリカの村では、チンパンジーは祖先とあがめる信仰の対象であり、恐ろしい生き物だ。チンパンジーは村のパパイヤの木にのぼって、パパイヤの実をもぎとる。2個を両手にして持ち去ると、うちの1個は必ず女性(チンパンジー)にあげる。相手は母親か、お尻がピンク色に腫れた魅力的な女性(チンパンジー)。
チンパンジーの平均寿命は50年。女性の初潮は8歳で、子どもを産みはじめるのは13歳前後。出産間隔は5年。
野生のチンパンジーは、女性全員が無事に赤ん坊を産んで母親になる。野生だと、日々の暮らしのなかで、出産や子育てを見たり、参加したりしている。
チンパンジーは、235日で赤ん坊が生まれる。そして、赤ん坊が母親にしがみつくので、母親は赤ん坊を抱き、母性が発動する。
チンパンジーには、おばあさんはいない。女性は生涯、現役で子どもを産み続ける。
チンパンジーの赤ん坊は、決して夜泣きをしない。する必要がない。なぜなら、母親はいつもそばにいるから。
サルは真似をしない。「サル真似」というコトバは事実と違う。サルは教え込まれた動作しかしない。
チンパンジーは、鏡にうつった像が自分だと分かる。人間がする動作を見ただけで真似ることも、ある程度はできる。でも、何でもできるというのではない。
チンパンジーでは、互恵的な利他性が成立するのは難しい。つまり、お互いに相手のために働くのは難しい。
チンパンジーは、子どもに教えることはしない。教えない教育、見習う学習がある。
チンパンジーは、うなずくこともしない。子どもをほめることもしない。
チンパンジーも笑う。しかし、身体的な接触がないと、笑い声をたてることはない。
チンパンジーは薬草を利用している。下痢をしたときだけに食べる葉(ボンレー)がある。
チンパンジーになく、人間にあるのが想像するちから、そして希望をもつこと。その想像するちからによって、人間は心に愛を育んできた。
200頁あまりの本ですが、人間にとって大切なことがぎっしり詰まっていると思いました。ご一読を強くおすすめします。
(2018年8月刊。1800円+税)

手塚番、神様の伴走者

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 佐藤 敏幸 、 出版  小学館文庫
手塚治虫とは、天才というより神様ですよね。60歳で亡くなったのが、本当に残念でたまりません。
この本は、手塚治虫を担当した編集者たちへのインタビューから成っています。いわば、天才というか神様の実像をあばき出したような本なのですが、本当に憎めない神様の実体の一面を知ることができます。車中で読みふけってしまい、乗り過ごしを警戒しました。
横で見ていると、手塚さん、わがままだし、やきもち焼きだし、原稿遅いし、約束守んないし、「こんな野郎とは、1日でも早く別れたい」と思う。でも、遠く離れてしまうと、富士山ではないけれど、その高さ、姿の美しさが分かる。
手塚さんの記憶力は、直感像という、デジカメと同じで、思い出そうとすると、原稿のどの場面でも、瞬時に、たぶん見開き単位で頭の中に出てくるのだろう。
原稿の催促のために、そばに編集者が山ほどいてくれるというのが、手塚さんのベストコンディションなのだ。
手塚さんは、平気でウソつくところがある。まあ、可愛げのあるウソなんだけど・・・。
手塚さんは、寂しがり屋だね。ずーっと自分のことを思っていて欲しい人なんだよね。
すべて自分の思いどおりに持っていくんだけど、ものすごく心の弱い人なので、担当者に相談する。「これでいいです」というコトバを聞きたいんだ。担当者がいいと言わない限り、できない。必ず聞いてくる。
原稿が遅いと、テヅカオソムシ。それでも着かないと、テヅカウソムシ。これが、デンポーの文言だった。うひゃあ、そ、そうだったんですか・・・。
手塚さんにしてみると、担当編集者がいないと、「何なんだ、ぼくだけ働かしておいて・・・」という気持ちになる。寝ずにやっていると、被害者意識が出てくる。だから手塚番は、手塚さんが起きているときは、絶対に起きている必要がある。
編集者は、描き手に気持ち良く描かせるのが、絶対条件だ。
手塚先生は、宇宙のかなたから地球にきて、使命を終えて帰っていったんだ・・・。
こんな弔電があったそうです。60歳にして、かぐや姫のように月世界か宇宙の果てに帰っていったのでしょうね。残念です・・・。
とても面白い文庫本でした。ありがとうございました。
(2018年6月刊。610円+税)

世界一美しい人体の教科書

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 坂井 建雄 、 出版  ちくまプリマ―新書
私は1990年から1泊の人間ドッグを利用しています。平日に2日間、読書ざんまいの時間を過ごすのです。日頃は、なかなか読めない大部の本を持参し、必死で読みふけります。そして、なんとか6冊を完読します。その入院のおまけとして持ち帰るのが、私の内臓のカラー写真です。胃と腸が見事にうつっていて感動します。もちろん、日頃の仕事のストレスから来る異変も見つかります。
人間は、結局のところ管(くだ)から成り立っていると喝破した人がいますが、私も、人間って、本当にそういう存在なんだなと思います。
人間の身体は、37兆個の細胞でできている。唾液(だえき)腺を備えているのは哺乳類だけ。唾液腺をもたない動物は、そしゃくできない。唇(くちびる)は、哺乳類だけがもつ筋性のヒダで、乳を吸うためのもの。
筋肉で出来たチューブのような食道は、ふだんは前後につぶれて閉じているが、食物が通過するときには、蠕動(ぜんどう)運動によって、先へ先へと送っていく。
胃は、ビール瓶2本分に相当する1600ミリリットルの量を貯めておける。胃液にふくまれている塩酸は、強い酸性をもっているが、この働きによって食物を殺菌消毒し、腐敗や発酵を防いでいる。そして、胃粘膜から特殊な粘液も出ていて、この粘液が胃を保護している。
ピロリ菌は、私も除去しましたが、しばし苦しい思いをしました。
ピロリ菌は、ウレアーゼという酵素を出して自分の周りをアルカリ性のアンモニアに変えることで中和して生きのびるので、除去するしかない。そうなんですか・・・。
小腸の消化器は、効率よく栄養を吸収するために、他の臓器よりも細胞の入れ替わりが早い。腸上皮細胞は、栄養の吸収力を維持するため、24時間と、人体でもっとも寿命の短い細胞だ。腸壁からは、毎日200~300グラムの細胞が新陳代謝によって脱落していく。
24時間しか寿命のない細胞が、私たちの身体にあるのですね。まったく感謝、ひたすら感謝するしかありません。
肝臓は、体内で最大、最重量、最高温の臓器で、栄養素の分解と合成、貯蔵、有害物質の解毒、胆汁の生成などを行っている。50万個といわれる肝細胞によって構成される、いわば化学工場だ。そして、この肝臓は、4分の3を切除しても生命が維持でき、数ヶ月後には、肝細胞が増殖して元の大きさに戻るほど、再生能力の高い臓器である。
人間の身体は不思議そのものです。その身体が細胞レベルまでカラー写真で見せつけられると、いったい人間とは、いかなる存在なのか、それこそ考えさせられます。
新書版ですので、手軽に読めますが、その人体内部のカラー写真には、思わず息を吞むほど圧倒されます。
(2018年4月刊。1800円+税)

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