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カテゴリー: 人間

極夜行

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 角幡 唯介 、 出版  文芸春秋
太陽が昇らない、暗い冬の北極を犬とともに命をかけて歩いた極限の体験記です。
いわば、『空白の五マイル』の続編なのですが、この冒険旅行も次々に必殺パンチが繰り出されてきて衝撃度は極大です。
ところはカナダより北のグリーンランド。ここは、太陽が地平線の下に沈んで姿を見せない、長い長い漆黒の夜、極夜(きょくや)がある。
世界最北の村であるシオラパルクは、世界で一番暗い村でもある。
極夜という異常環境の下では、白熊対策の番犬として、犬は絶対に必要。犬なしで極夜の旅をするのは、目隠しで地雷原を歩くようなもの。シオラパルクでは、各家庭で10頭から20頭の犬を飼っていて、日常的に犬ゾリを移動の手段としている。
極夜病というものがある。関心の欠如、不脈、かんしゃくなどの心理的な症状が特徴だ。
人間は、あまりに暗い環境が長々とつづくと憂うつになり、何もする気がなくなってしまう。著者は、この極夜行に4年間もの歳月をかけて準備した。
冒険旅行では、GPSを使いたくない。機械の判断に自分の命をまかせたくないからだ。
極夜行のときには、身体に脂肪分をたくわえるように努力する。72キロの体重を80キロ近くにまで太らせた。
テントは、冬の極地の旅では、コンロとならぶ最重要装備だ。風で飛ばされることのないようにする。したがって、強風時のテント設営は、手順を守って慎重にすすめる。
氷点下20度台と30度台とでは、かなり明確な断絶がある。氷点下30度台は、明らかに人間の生理的限度をこえていて、このままでは肉体が消耗して、そのうち死ぬなという予感を無理なく持つようになる。氷点下30度の壁を乗りこえるには、1週間ほどの期間が必要だった。
1日の行動を終えてテントに入ると、必ずコンロに火をつけた。コンロで手を温めてから、防寒衣の内側にこびりついた霜をたわしでこそぎ落とし、毛皮靴についている雪を丹念に払い落す。
食糧は1日5千キロカロリーの摂取を目安とした。
極夜では、毎日しっかり乾かさないと衣類は濡れていく一方となる。衣類が濡れると生活のストレスが非常に大きくなってしまう。
1頭の犬を連れて歩いているうちに、目標を見失い、食料の補充の可能性がなくなり、犬はガリガリにやせ、自分が生きのびるためには、その犬を食べてしまおうと考えたほどに追い詰められます。
その迫力のすさまじさは、ただただ声も出せずに、くいいるように目を近づけて一気に読了したのでした。それにしても極寒の地を生き抜くためには鉄砲でウサギを撃ち、 解体して食べる技(ワザ)が必要なのです。生半可にやれる旅ではありません。
また、こんな極夜の地にも日本人男性が長く現地で生活をしているということに驚いてしまいます。
(2018年4月刊。1750円+税)

私は6歳まで子どもをこう育てました

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 佐藤 亮子 、 出版  中央公論新社
子育ては大変ですよね。若いときに夢中になって過ごした日々が、楽しくもあり、思い出すと後悔の日々でもあります。ついカッとなって、冷静さを失い手を出してしまったり、理詰めで説明しきれずにごまかしてしまったり・・・。思い出すと、冷や汗がどっと出てきます。でも、膝の上に乗せて、もみじのような手を握って、手をあわせて歌をうたったり、くすぐって無理にでも笑わせたり、そして、絵本を一緒に読んで、話の展開に読み手のほうが声に詰まってしまったり、楽しい思い出もたくさん、たくさんあり、みんな宝物です。
4人の子どもをみんな東大理Ⅲに送り出したサトーのママって、スパルタ・ママなんじゃないか、そんな決めつけを見事に裏切ってしまう6歳までの読んで楽しくなる子育て論です。
これは読まないと損しますね・・・。
著者が子育てのなかで、一貫して最優先してきたことは、子どもが笑顔で過ごすこと。そして、自分自身を笑顔にするためにも、しっかりと手を抜いた。
これは、これは、とてもすごいことです。何度読んでも、この考えには、ぐぐっと惹きつけられます。
肩の力を抜き、子育てを120%楽しむ。
振り返ったときに後悔しない。
子どもたちを目一杯大切にして、気持ちよく巣立たせる。
著者は長男が1歳4ヶ月のときに「公文」(くもん)を始めさせました。
三男は3歳でプールの水泳教室に。三男は、はじめの3ヶ月は、わんわん泣いてばかり。それでも著者はあせらず、あきらめずプールに連れていったのです。すごいです。
子どもの健康管理のため、小学2年生までは「うんちチェック」。子どもたちにうんちを流させずにチェックして健康状態を確認していたといいます。
これは皇室でもやられていることのようですね・・・。
子どもの歯、箸(はし)、鉛筆は一生モノの習慣。
 歯は3ヶ月に1回の歯科検診を欠かさない。いやあ、これにはまいりました。4人の子どもは、全員、ピカピカの歯だそうです。ちなみに、私も虫歯でさし歯をしているのが一本だけです。あとは、全部、自前の歯です。そして毎日、合計して9分ほどの歯みがきを励行しています。
箸と鉛筆のもち方は、私も子どもたちにはうるさく言いました。ただし、字のほうは、私と似て、子どもたちの字はあまり美しい字とは言えません。残念です。
子どもには叱られた経験より、たくさんの成功体験や自己肯定感を植えつけることこそ大切。これがあると、自分は大丈夫だという精神的な支えをもてる。
これは大切なことです。やっぱり自分は何をしてもダメなんだ。子どもにそう思わせてはいけないのです。
兄弟はみんな平等に扱う。いま「争族」事件が多くて、いわばそれで「メシを食っている」弁護士なのですが、その大きな原因として、親が子どもたちを平等に扱わなかったことがあるとのだと痛感しています。
著者は、みんな「ちゃん」と呼び、「お兄ちゃん」とか呼びません。お菓子を分けるときだって、みんな一人前で平等に扱うのです。これはすばらしい。
子育ての発想を転換させてくれ、励ましてくれる本です。ぜひ、子どもを持つ親だったら手にとって読んでみてください。
(2018年4月刊。1300円+税)

古稀のリアル

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 勢古 浩爾 、 出版  草思社文庫
私と同じ団塊世代の著者が、70歳になって何が変わったか、これからどう生きていくのかを、他者との比較で、あれこれ考察している愉快な本です。私自身はまだ古希にはなっていません。60代なのです。といっても目前に迫ってはいるのです。
すでに少なからぬ同級生がこの世とおさらばしています。現役弁護士として、それほど深刻ではありませんが、頭をふくめて老化現象を痛感することはしばしばです。
著者はさかなクンの天真爛漫ぶりを大いに評価しています。ハコフグの帽子をかぶってテレビ(たとえば『ダーウィンが来た』)にしばしば登場します。「好きなこと、夢中になれる何かがあると、毎日がワクワクでいっぱいになる。もっと知りたいという探究心が出てくる」。ほんとうにさかなクンの言うとおりですよね。
そして、二人目は前野ウルド浩太郎(『バッタを倒しにアフリカへ』の著者)です。秋田育ちの昆虫少年がアフリカ大陸でバッタ退治に乗り出す様子には著者だけでなく、私も言葉を失うほど圧倒されました。昆虫オタクの香川照之もいますよね。この人もまたすごいです。
本好きの人のなかに、いま読んでいる本を読み終わりたくないという人がいる。その気持ちは、よく分かる。本は読んでいるあいだが愉しい。その物語のなかにいる時間こそ、何物にも代えがたい。だから、またすぐに最初から2回目を読むという人もいる。しかし、著者は、そんなことはしない。別の新たな愉しみを求め、別の本を読む。
そうなんです。絶えず新しい出会いを求めるのです。その出会いがときにあるからこそ、世知がらい世の中を生きていられるのです。
読みかけている、その先を早く読みたい。これが面白い本の条件である。まったくもって、そのとおりです。
著者は私とちがってテレビ好きだそうです。ところがドラマはほとんど見ていません。もっともらしく、わざとらしく、ウソくさく、あざとくて、うっとうしいからだ・・・。
私は、テレビのドラマは全然みません。そのため「おしん」とか「大地の子」など、見逃してしまった残念な番組がいくつもあります。
70歳になったからといって大騒ぎする必要はまったくありません。それでも、いよいよ終末期を迎えようとしていることを自覚させられる本ではありました。
(2018年2月刊。700円+税)

私の少女マンガ講義

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 萩尾 望都 、 出版  新潮社
福岡県大牟田市出身の、今では世界的にも有名なマンガ家です。
私自身は直接には著者と面識ありませんが、母親同士が親しく交際していて、私の記憶に残る著者の母親は、まさしく著者そっくりです。ところが、著者と母親とのあいだには、大変厳しい葛藤があったようです。要するに、いつもマンガを描いている娘を母親は認めることが出来なかったのです。まあ、無理もないことでしょうね・・・。
さすがに少女マンガの第一人者ですから、著者の話は大変説得力があります。
この本は、著者がイタリアの大学で講演したときの話と質疑応答をまとめたものが主となっていますので、大変読みやすく、また、読者の知りたいことを明らかにしていて読みごたえがあります。
少女マンガとは、少女の、少女による、少女のためのメディア。
30年以上も続いている少女マンガの作品がある。読者も大きくなっていくけれど、少女マンガを読むときには、心が少女に戻る。男は、いくつになっても少年の心を持っているというけれど、女も、いくつになっても少女の心を持っているのだ。
「リボンの騎士」を描いた手塚治虫は、かけがえのない贈り物を作品として少女たちに手渡した。それは、女の子にも自由はある、ということ。
著者は高校2年生のとき、手塚治虫の「新撰組」というマンガを読んで大変なショックを受けた。そして、こんなにショックを受けたのだから自分も誰かにショックを返したいと思い、それでマンガ家になると決心した。
今いる場所がすべてではないと考えると、脳が活性化する。
ふだん、気になっていることをずっとずっと考えているうちに、ある日突然、ストーリーがぱっと浮かぶ。
マンガ家の世界では、気が合う人、作品が好きな人同士で、おつきあいをする。
三度の出会いがあった。デビューできたこと、描ける場があったこと、よい編集担当に出会ったこと。
あっ、これが運だ。そう思ったときに、それを逃さないようにキャッチする。これが大切だ。
すごく面白いマンガには、コマのリズム、構図のリズム、台詞(セリフ)のリズムが三位一体となって感情を動かしてくる。
マンガのオーソドックスの基本を描いているのは、横山光輝、手塚治虫、そしてちばてつやの三人。この3人の技法をおさえておけば、マンガの基本は描ける。
「ポーの一族」、「11人いる!」はその発想に圧倒されました。「残酷な神が支配する」には、私の想像できない世界を見て、言葉が出ませんでした。とても同世代とは思えない思考の深さに感嘆します。
(2018年4月刊。1500円+税)

佐藤ママの強運子育て心得帖

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 佐藤 亮子 、 出版  小学館
著者の本は、どれを読んでも、じんわり心が温まる思いがします。同時に、自らの子育てを振り返ると、ああ、そうか、あれは良くなかったんだなあと、反省することしきりです。でも、まあ、3人の子がそれなりに元気に生きていることで、それほど大きな間違いはしてないよね、と自らを慰めています。
そもそも、子どもには、親の恩なんて感じさせないように育てるのが一番いい子育てだ。
ともに笑ったり、泣いたり、かわいいころを一緒に過ごせる幸せに感謝。
まったく、そのとおりです。でも、その幸せに気がつくのは、たいてい過ぎ去ってから何年も何十年もたってからのことなんですよね・・・。
ケアレスミスという言葉をつかってはダメ。間違いは、すべて間違い。
人間はみな、基本的に怠け者である。
子どもの泣き声が耳障りなのは、生きていくために親の注意をひく目的があるから。
そうなんです。サルやチンパンジーの赤ちゃんは泣かない。なぜか・・・。赤ちゃんは母親にぴったり密着しているから、泣く必要がない。人間の赤ちゃんは母親と密着していないので、泣いて母親の注意を喚起する必要があるのです。
隣の子に言えないような言葉は自分の子にも決して言ってはならない。
アドバイスを受けたら、まず、感謝する。「だけどね・・・」と言うべきではない。
子どもから相談をされたら、何を差しおいても、ふたつ返事で引き受ける。
うーん、これって簡単そうで、実際には難しいですよね。親にも都合があり、気分の変化もありますからね・・・。それでも、ということなんですよね。
家庭のなかで、みんなが明るく生きていけるように演じてみる。
自分の心に毒になってしまいそうなことはスルーしてしまう。
そうですよね、ストレスもためこまない工夫が必要です。
子どもにとって、親は絶対的な存在であって、相対的なものではない。
親が何ごとにも好奇心旺盛で積極的に行動していると、子どもは伸びる。
子育てにおいて一番大切なことは余裕をもつこと。そして、十分な睡眠は集中力に欠かせない。
4人の子(男3人、女1人)を全員、東大理Ⅲに合格させた佐藤ママの言葉は、どれをとってもなるほどと思わせるものばかりです。あとは、ひとつひとつ実行していくことですね。
わずか130頁たらずの小さな新書ですが、子育て途中のパパ・ママには価値ある1000円に間違いありません。
(2018年4月刊。1000円+税)

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