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拉致(上)

(霧山昴)

著者 高世仁+NK917 、 出版 旬報社

拉致は北朝鮮という国家が主導した犯罪であり、今なお問題が解決していないのは、ひとえに北朝鮮に責任がある。同時に、日本政府の姿勢にも疑問がある。拉致被害者である2人の日本人男性について生存しているとされているのに、日本政府は2人に面会を求めたりすることもなく、「見殺し」している。いやあ、これは知りませんでした。いかんでしょう、それは…。日本政府には日本人を守るべき義務があるのです。「見殺し」ではいけません。

横田めぐみさん(当時13歳)が拉致されたのは1977(昭和52)年11月15日のこと。私は弁護士になって3年目で、郷里に戻って弁護士を始めた年です。

中学1年生で、バドミントン部の練習を止めて帰宅していた6時30分ごろ、突然、行方不明になりました。海岸まで300メートルという近さですが、その海岸から船で運ばれたというより、車に乗せられてどこかに運ばれたあと、船に乗って北朝鮮に向かったと著者は推測しています。

めぐみさんは、北朝鮮に着いてから、ずっと泣き通しだったようです。そして、指導員から、朝鮮語がうまく出来るようになったら日本に帰れると言われて真面目に勉強に励んでいました。しかし、18歳のころ、日本に戻ることはあり得ないと知らされ、精神状態がおかしくなったのです。いわゆる「気が違った」のでしょうね。よく分かりますよね。13歳の勉強もスポーツもよく出来る女子が突然、見知らぬ国に一人ぼっちにされたのですから、気が狂わないほうが不思議です。

それでもめぐみさんは21歳のとき結婚しました。結婚記念写真が紹介されています。相手の男性は、なんとこれまた韓国から高校生のときに拉致されてきた人でした。めぐみさんは娘を産んだあと、再び病気がひどくなったようです。それでも、娘が1歳になったお祝いの写真も紹介されています。めぐみさんも幸せそうにうつっています。めぐみさんが生存していることが両親に伝えられたのは、失踪してから20年後のことでした。

当時の北朝鮮には日本人を拉致していることに罪の意識はなかったとのこと。これは、あたかも統一協会(文鮮明が教祖)が、日本は悪事ざんまいしてきたから、韓国に賠償するのは当たり前のことという説教をもっともらしく信者に押しつけ、大金を巻き上げてきたのと同じです。「朝鮮の統一事業のために日本人が犠牲になるのは当然のこと」そんな意識でした。

めぐみさんの生存を確信にまで高めたひとつが、めぐみさんにほくろがあるということでした。それは両親も気がついていない娘の顔の特徴だったのです。子どものころと大人になってからのめぐみさんの写真が同時に紹介されています。なるほどと納得できる写真です。それにしても本当に可愛い女の子でしたし、美人です。

めぐみさんは精神的に病んだうえ、2度も招待所から思いつきの脱走を図ったようです。もちろん、北朝鮮社会で脱走が成功するはずもありません。入院という名の隔離をされたのでした。めぐみさんが自殺したのは本当のようです。

めぐみさんの「遺骨」と称するものが日本側に渡されたなかに歯がまじっていた。しかし、火葬場で遺体を焼くと、歯は溶けてなくなってしまう。なぜ、歯が残ったというのか…。

北朝鮮は拉致被害者のうち8人が死亡していると発表。死因は、ガス中毒、交通事故、心臓マヒ、自殺とされている。しかし、その証明書は、みな「六九五病院」の発行なもの。

北朝鮮は、拉致した日本人を工作員として養成しようと考えていた。同じく13歳で拉致された日本人男性は今も北朝鮮で家族とともに生活している。北朝鮮で幹部となり、日本にも何回もやってきているが、もはや家族のいる北朝鮮を生活の本拠として定着している。この男性と同じように出来ると北朝鮮は考えていた可能性がある。

いやあ、知らなかったことがいくつも出てきましたので、大変興味深く読み通しました。下巻も楽しみです。

(2026年3月刊。2860円)

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