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カテゴリー: 中国

兄弟(上)

カテゴリー:中国

著者 余 華、 出版 文芸春秋
 狂乱の文化大革命を生き抜く少年の話から始まります。母親はその前に北京の病院に入院しています。父親は文化大革命を歓迎していたのに、地主の子として、糾弾の対象とされてしまいます。地主といっても、ほんとに大した地主ではなかったのに、仕事を奪われ、収容所に入れられ、妻に会いに行こうとして、路上で殴る蹴るの暴行を受けて、ついに死んでしまいます。哀れ、子どもたちは、どうやったら生きていけるのか……。
 あまりに猥雑な出だしですので、とても女性にはおすすめできません。紅衛兵運動というのが、いかに理不尽なものであったのか、その体験が生かされているのでしょう。文化大革命の美名のもとで、中国古来の文化を台無しにしていった事実は消し去ることができません。今では、文化大革命というのは、要するに、失脚したも同然だった毛沢東による権力奪還闘争だったことがはっきりしています。
 それを新しい文化を創造する試み、そのために古い文化を破壊してもかまわないんだという理屈付けがなされていました。日本人の中にも、毛沢東の言うことならなんでも信じるという人々がいましたが、今となっては信じられない現象です。
 下巻は欲望の開放済のなかで主人公たちが生き抜いていくというのですから、楽しみです。
 それにしても、本当に中国は社会主義国なんでしょうかね。私も中国には何回か行ったことがありますが、とても社会主義国とは思えませんでした。観光客である私の前には、まさしく資本主義国家として登場していました。
 アメリカと違って、中国の治安は抜群に良かったし、今もいいようです。これも、アメリカの方が貧富の格差の増大が一歩先んじて際限もなく続いていることによるのでしょうね。
 
(2008年6月刊。1905円+税)

甲骨文字に歴史を読む

カテゴリー:中国

著者:落合 淳思、 発行:ちくま新書
 中国の殷(いん)王朝は、今から3000年以上も前に存在した実在の王朝である。文字史料である甲骨文字によって、殷王朝の社会、税や戦争などを知ることが出来る。甲骨文字は、形こそ大きく違うが、現在の漢字と同じ構造をしている。甲骨文字は、亀甲や牛骨に記されている。
 当時の中国には、黄河中流域にも象が生息していた。占いだけでなく、殷墟遺跡から象の骨も発見されている。
 甲骨文字でつかわれた数字は十進法であり、桁(けた)の概念も存在している。
 殷代には、工業や土木建築の技術が進んでおり、数千人の人員を動員することがあるため、数字を使う機会も多かった。
甲骨文字には時刻の表記も見られる。ただし、時刻というより、時間帯といった方がいいだろう。殷代には季節は春と秋のみ。1年はあったが、季節が循環するものとみていた。ただし、暦は正確なものがあった。
 中国の殷代に、奴隷は社会階層をなすほど存在しておらず、戦争捕虜しかいなかった。
 殷代の王は、祭祀権、軍事権、徴税権、徴発権を持っていた。
 巨大な城壁の建築は、一般の農民を徴発して行った公共事業によって作られた。
 殷の最後の紂王は、暴君の代表とされていて、酒池肉林で有名だ。しかし、甲骨文字によって殷の歴史を見ても、紂王が暴君であったという証拠は見つからない。
 殷が滅びた原因は、実際には酒ではないのだが、そのあとの周王朝は酒によるものと主張した。事実よりも、戦勝国である周王朝の宣伝が「歴史」として定着したのだ。それに何百年もかかって尾ひれがついて、最終的に「酒池肉林」という伝説が形成された。
 ふむふむ、そういうことだったのですか。なるほど、なるほど、これって、よくあることですよね。それにしても3000年も前の甲骨文字をスラスラと解読し、それを歴史の事実に当てはめていくという作業は大変なことだろうと思います。学者って、すごいですよね。いつものことながら、感心してしまいます。
(2008年7月刊。720円+税)

中国社会はどこへ行くか

カテゴリー:中国

著者:園田 茂人、 発行:岩波書店
 中国の階層形成にとって、教育はもっとも重要な要素の一つになっている。幼稚園や小学校のレベルでも階層分化の問題が顕在化している。幼稚園や小学校のあいだで序列化が進んでいる。よい幼稚園や小学校は、しばしば政府機関の肝いりでできる。政府部門から支援されているため、設備や教員の資質がきわめて高いものの、学費は安く抑えられている。一種の特権である。
 最近、経済力と学歴取得が結びつつある。
 生活費や住宅費が上昇しているので、中産階級では子どもに教育を与えるのが徐々に苦しくなっている。農村では、子どもが中学や高校に通っているときには、世帯収入の半分が教育費にかけられている。
 中国政府は、みずからの政治理念を広く普及させようとしているが、共産主義教育は明らかに失敗してしまった。文革中の理念を紹介しても、誰も聞こうとはしない。中国の多くの市民は、社会主義の理念を信じていない。
中国の三大問題は、教育費の高騰、不動産価格の上昇、医療費の高額化である。これにもっとも敏感に反応しているのが、中産階級である。なかでも、もっとも深刻なのは不動産価格の上昇だと考えられている。
 インターネットでの議論をリードしている若者たちは、一定の教育水準があり、中産階級予備軍である。
人々の多くは現在の中国の指導者である胡錦濤、温家主の悪口を言うことはほとんどない。なぜか、大変に良いイメージをもっている。
 私営企業家は、共産党員にならなくても政治に参加できるルートが広がっている。現在の中国で、富を生み出す最大の源泉は土地である。
 中国の今の青少年は、労働者になりたがらない。若者たちは、お金持ちになりたい気持ちと、金持ちになるのはいけないことだという気持ちを同時に抱いている。つまり、ニューリッチは裕福な人として人々の羨望の対象となっている。しかし、同時に、人々には「金持ちは汚い」という感情が渦巻いている。
 家庭教育の貧困がもっとも深刻な問題である。汚職でも、住宅問題でもない。受験勉強しか生み出さない家庭教育こそ、中国社会のかかえる最大のアキレス腱である。
 イデオロギーとしてのマルクス主義は生命を失ってしまった。一般庶民も共産主義の理念を信じていない。だからといって、共産党は自由主義的価値観を受け入れることはできない。となると、どうしても伝統的な価値観を利用せざるをえない。そこで、儒教が登場してくる。共産党の統治を正当化するイデオロギーは儒教しかあり得ない。儒教抜きに共産党の存続は不可能である。
 中国の行方を中国人の若手学者がいろんな角度から指摘している本です。いろいろ考えさせられました。
(2008年5月刊。1800円+税)

中国、静かなる革命

カテゴリー:中国

著者:呉 軍華、 発行:日本経済新聞出版社
 著者は、2022年までに中国は共産党一党支配の現体制から民主主義的な政治に移行するが、それは、農民・大衆の反乱という下からの革命に触発されてではなく、中国共産党のイニシアチブによって粛々と進められていくとみる。その理由が詳細に述べられていますが、なるほどとうなずくところが多くありました。でも、まだ中国は一応は社会主義社会を目ざしているのだと思うのですが……。
 旧ソ連の社会主義体制の崩壊は、ソ連邦の解体とともに進んで行った。これは、伝統的に「中国は一つ」という思想の影響を強く受けてきた中国人、とりわけ知識人をふくむ人口人の絶対多数を占める漢民族(全人口の92%)の人々にとって、感情的にとても受け入れがたいことだった。
 そこで、共産党体制に対する人々の考え方は、共産党に強い不満と怒りを持ちながらも、とりあえず共産党体制のままほうが無難だという方向に大きく変わった。
 現在の中国においては、金銭的なゆとりを持っている層が予想を超えてはるかに大きくなっており、その生活実態は、裕福さが日本の平均的サラリーマンと比較して決して遜色のない水準にまで達している。
 中国では、中産階層は現体制の安定を支える大きな柱の一つとして期待されている。
 2007年現在、中国の中産階層は、人口の1割を超える1億5000万人以上に達しているとみられている。2020年には、全人口に占める中産階層の比率が45%に達するという予測がある。中国は、いまや、アメリカに次いで世界でもっとも多くの億万長者を輩出する国になっている。
 程度の差こそあれ、中産階層入りしたほとんどの人は、所得を増やし、富を蓄積する段階において、共産党一党支配体制の恩恵を受けてきた。つまり、中国の中産階層は、共産党の「育成」があってはじめて、ほぼ皆無の状態から短期間に、ここまで急拡大することができた。
 1990年代に入って、北京、上海、広州といった大都市だけでなく、地方都市まで不動産開発ブームが巻き起こった。中国は、いまや世界の土建国家となった。
 中国の富豪の多くは、不動産業に携わっている。不動産業が蓄財産業となったのには、まさしく権力と資本の結託があった。
 経済的利益を上げるに際しての国民の自由度は大きく拡大された。これを受けて、中国社会は劇的に変化した。
 政権の維持が至上命題になったのに伴い、政党としての共産党の政治的目標と行政の目標との一体化が急速に進み、政治は実質的に行政化した。
 そして、中国社会は脱政治化に向けて大きく動き出した。
 政府レベルでGDP至上主義、個人レベルで拝金主義が蔓延した結果、中国社会の脱政治化は急速にすすんだ。
北京オリンピックを成功させることによって、長い文明の歴史を有しながらも、アヘン戦争以降、列強に蹂躙された過程で鬱積してきた中国の人びとは、その民族的屈辱感をかなり晴らすことができた。
 かつての共産党は、上層部から末端までの利益が一致していたが、今は、こうした構造が大きく変わった。党員数7730万人という巨大組織のうち、ほとんどの人は党員であっても、自らの専門知識・技能をベースに官僚やエンジニア・教師などの職業についた専門家、または労働者、農民である。共産党という組織の一員になることは、彼らにとって、よりよい出世につながるキャリアパスになりえても、生活に不可欠な要件ではない。
 共産党は、一見するとひとつの利益集団になっているが、その内部では利益の多元化が急速に進んでいる。
中国社会の現状分析として、なるほど、と思うところの多い本でした。私も中国には何回か言っていますが、行くたびに、その近代化、大変貌ぶりに驚かされます。 
(2008年8月刊。2000円+税)

不平等国家、中国

カテゴリー:中国

著者:園田 茂人、 発行:中公新書
 中国の不平等現象には、市場経済を導入しているすべての地域で見られる普遍的な現象と、社会主義で顕著に見られる特殊な現象が複雑に絡んでいる。
 中国で腐敗が深刻化しているのは、中国が党の幹部や官僚を中心とした社会主義的国家運営をし、彼らに巨大な権力が与えられていることと無関係ではない。
 1992年の中国で下海(シアハイ)という言葉が流行した。党や政府の幹部や学者、技術者などがその職を辞め、経済界に身を投じることを意味している。1992年に「下海」した官僚は12万人に達する。
 1991年に10万社だった私営企業は2004年に365万社となった。1990年代半ばからは、それまでの国有企業が私営企業へと転換していった。
 社会主義の中核部分から市場経済の担い手が現れたことは、それだけ市場経済化が本格化したことを意味する。同時に、共産党員が市場経済の中核に位置するようになり、経済的資源の多くを手にする可能性が高くなったことも意味している。国有企業の民営化や「下海」を通じて、1990年代半ば以降、多くの共産党員が私営企業のオーナー経営者になっていった。
 それまで共産党への入党が認められていなかった私営企業家を先進的な生産力を支える階層とみなし、彼らを取り込むことで広範な人民の利益を代表しうるというメッセージを送った。これは私営企業は資本家であり、階級敵だといった公式的階級制と決別したことを意味している。
 党員比率の点で、中国共産党は、もはや農民労働者を基盤としていない。2000年初めに党中央組織が極秘のうちに党員対象で質問した結果、共産主義を信じるか、という問いに対して、7割以上が「信じない」と回答した。4分の1以上の党員が「もう一度入党の誘いを受けても入党しない」と回答した。
 中国の人々がチベット問題について冷淡なのは、民族や宗教が不平等の原因になっているという意識が薄いからだ。
 中国には、日本語で死語になりつつある「立身出世」の観念が依然として生きている。子どもの教育費かせぎのための農村からの大量の出稼ぎ者、子どもの学費捻出のために親は自分の食費を切り詰めている。
 一般家庭の支出における教育費の割合は3分の1に達している。現在の中国における過酷なまでの学歴獲得競争は、さまざまな理由で大学に進学することが出来なかった親たちの「リターンマッチ指向」の現れである。
 中国の人々は、学歴によって所得が決まることに異議を唱えるどころか、それを公正なものとして認めている。権力を利用した高収入の獲得には批判的だが、学歴など業績主義的要因の高収入には肯定的なのが中国人の一般的な傾向だ。
 中国の高学歴者は外資系企業(18%)で一番高く、国有事業体(16%)、国家機関(16%)で働く人がこれに続く。国家機関で働く者の57%、国有事業体で働く者の26%が党員資格を持っている。国家機関や国有事業体といった、共産党の幹部が集中する職場の平均年収は高い。
 私は、マスコミがときとして振りまく「中国・脅威論」にはまったく根拠がないと考えています。 
(2008年5月刊。740円+税)

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