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カテゴリー: 中国

三国志入門

カテゴリー:中国

(霧山昴)
著者 宮城谷 昌光、 出版 文春新書
中国でもっとも多くの人々に読まれた小説は『三国志演義』。漢と明のあいだにあった三国時代の変遷、政争を扱った小説です。
私は、『三国志』よりも『水滸伝』のほうが、よりより胸がワクワクして好きでした。どちらも中学生のころに読んだのだと思います。なので、ダイジェスト版だったのかもしれません。
『三国志』には、劉備と関羽、張飛の三人が桃園で兄弟のちぎりを結ぶというシーンがあります。これも、史実とは違い、小説の世界のことのようです。
日本は中国から多くの制度や物を輸入したが、不思議なことに宦官(かんがん)と馬車は導入しなかった。
古代中国の戦場では兵車戦が大きな主役となっていたが、日本では歩兵戦と騎馬戦がおもになった。これは太平原のある中国と、山あり谷あり川ありというチマチマした地形での戦闘がほとんどだったことの違いによるものではないか。戦国時代の長篠の戦いも、それほど大きくはない川をはさんでの戦いでしたし、関ヶ原の戦いにも、現地に2度、私も行きましたが、平坦な土地はごくわずかしかありませんので、兵車が活躍できたはずもありません。
なぜ日本に宦官が登場しなかったのか、この本に答えはありません。ただ、明治までの日本の馬は去勢しないことで有名です。人間と馬は違いますが、なんだか似てませんかね…。
関羽を祀(まつ)る関帝廟(びょう)は、日本にも東西にあるそうです。関羽は武神だったのに、今では商売の神様になっています。
中国の美女は「国色(こくしょく)」といいます。国のなかで、もっともすぐれた容色のこと。
赤壁の戦い。208年に曹操と孫権が戦い、曹操軍が大敗してしまいます。さすがにスケールの大きな中国映画で、それを映像としてみました。
諸葛孔明(しょかつ・こうめい)は、私も大好きなヒーローです。実戦で活かせる兵法を考え出し、活用していったのです。兵糧不足と軍需物資の輸送のむずかしさに悩み、それを克服していったのでした。
三国志の世界を知ることは、宝の山に踏み込むようなものかもしれない。
中国モノの文学作品の第一人者による『三国志』の入門の手ほどきがされている新書です。
(2021年3月刊。税込1045円)

始皇帝の地下宮殿

カテゴリー:中国

(霧山昴)
著者 鶴間 和幸 、 出版 山川出版社
私は幸いなことに兵馬俑(へいばよう)を2回も現地で見学しています。ともかくすごいのです。等身大の兵士と将軍の彫像が何千体も発掘され、展示してあるのです。実に壮観です。そして、当時の壮麗な馬車もあります。よくぞこんな壮大なものを構想し、実現したものです。実物の前では息を呑むばかりで、言葉になりません。
始皇帝(前259~前210)は、中国最初の皇帝。はじめは秦王(しんおう)として即位し26年間、東方の六国を併合してからは皇帝として12年のあいだ君臨した。陵墓の建設は、秦王に即位した翌年から。実に37年におよぶ治世のあいだ罪人(刑徒)72万人を動員して建設工事を続けた。始皇帝は50歳のとき、病気のため急死した。始皇帝の肖像は残されていない。今あるのは、17世紀の明の時代の肖像なので、完全に想像図。
兵馬俑坑が発見されたのは1974年のこと。始皇帝陵のすぐ近くにあります。
秦が滅びたあと、三国時代に楚王の項羽が30万人を動員して30日間かけて始皇帝陵から物を運びだした。また、失火から始皇帝の地下宮殿が90日間も燃え続けたという。
私も、それは知っていましたので、始皇帝陵はもはやカラッポになった状態だとばかり思っていました。ところが、本書は、地下5メートルほどの兵馬俑坑なら火災にあうかもしれないが、地下30メートルの地下宮殿が焼失したはずはないとしています。
始皇帝の墓室は、深さ30メートル、東西80メートル、南北50メートル。そして、地下宮殿は、東西170メートル、南北145メートル、高さ15メートル。
墓道は埋められているので、地下世界に入るのは不可能。
始皇帝は地下宮殿で金縷(きんる)玉衣をまとっている可能性が高い。
科学技術の発達によって、今では、実際に地下を掘らなくても、地下宮殿をイメージすることができるのです。驚きますね…。
そして、地下宮殿には、大量の行政文書や書籍が搬入されているはず。いやあ、すごいことですよね。これらの文書が発掘されたら、古代中国の実態が今よりはるかに鮮明になることでしょう。それは私の生きているうちには恐らく無理でしょうが、私は、あの世から戻ってきても、ぜひぜひ知りたいです。
兵馬俑も1回目と2回目とでは、ずいぶんと展示の仕方が異なっていました。コロナ禍の心配をしなくてすむようになったら、もう一度ぜひ行ってみたいです。万里の長城は行ってしまえば2度も行かなくていいところですが、兵馬俑はそんなものでは決してありません。
久しぶりに中国古代文明のすごさを少しばかり実感し、ゾクゾク興奮してしまいました。
(2021年9月刊。税込1760円)

網内人

カテゴリー:中国

(霧山昴)
著者 陳 浩基 、 出版 文芸春秋
インターネットの中にひそむ悪魔をあぶり出せ、というキャッチ・コピーがオビについています。
スマホも持たず、とんとネット社会に無縁の私には縁のなさそうではありますが…。私の名前、霧山昴の本名をネットで調べた人がいて、簡単に分かったそうです。いやはや…。でも、この本は、そんなレベルではありません。ネットで攻撃した人をつきとめるのは朝飯前(あさめしまえ)。なりすましをふくめて、ネット上で考えられる犯罪のすべてが手にとるように解説されていきます。
いやあ、これでは、本人以上に第三者が本人のことを知ることができるというわけです。
この本は今ホットなホンコンを舞台としています。もちろん、目下の激しい自由をめぐる闘争はまったく出てきません。「チョンキン・マンション」の世界とも無縁です。
地下鉄の痴漢犯罪のぬれぎぬ、学校での深刻ないじめ、…、まさしく、現代社会のかかえる問題点を、名探偵の明智小五郎よろしく解決していきます。それは、ネットを駆使する女性(『ドラゴン・タトゥーの女』のリスベット・サランデル)を連想させる展開です。
年に2度の、人間ドッグのとき、就寝時間を気にしながらも、結末を知りたくて、もどかしい思いでページをめくりました。それほど面白かった本だということです。
(2020年9月刊。税込2530円)

台湾海峡1949

カテゴリー:中国

(霧山昴)
著者 龍  應台、 出版 白水社
中国に進攻していた日本軍が敗戦したあと、蒋介石の国民党軍と中共の解放軍とのあいだで国共内戦が始まり、ついに腐敗した指導部をかかえた国民党軍は敗退して、中国本土から台湾へ渡ります。でも、台湾にも中国人はいたわけですから、そんな国府軍をみんなが喜んで迎え入れたわけではありません。
そこを武力で抑えつけて、矛盾・衝突が起きました。台湾にとって、1949年というのは、そんな大変な時代の始まりでもあったのです。
この本は、小説のような、ノンフィクションのようなもので、歴史が行きつ戻りつしながら、中国と台湾の歴史が語られます。
国共内戦のもとで、教師が高校生の集団を引率して戦火を逃れてさまよう状況も紹介されます。タイトルは忘れてしまいましたが、そんな本を読み、このコーナーでも紹介したと思います。
そのころ、高校教師は生徒との人間的結びつきが強く、父母も教師と一緒ならいいだろうと考えていたのでした。なにしろ、逃亡先でも、信じられないことに、ずっと授業していたというのですから、驚嘆します。
国府軍も中共軍も兵士を補充するため、村の若者たちを軍にむりやりでも組み込んだ。そのなかには、6歳の少年までいた。彼らは写真を撮られるときだって、決して笑顔を示さなかった。
「軍隊では、笑ってはいけないんだ…」
日本軍が「敵」軍の捕虜を大量殺害していたころの証拠文書が残されている。
捕虜は、一人のこらず、殲(せん)滅してしまい、その痕跡が残らないようにせよという帝国陸軍の指針をふまえていた。
いやあ、ひどい証拠ですね。捕虜を残すことがなかったのです。そして、日本軍の蛮行は、内地に無事に帰ってきてから、ほとんどの人が沈黙を守り、日本社会には広く知られることはありませんでした。教科書の書き換えが横行しているのは、ここに根拠があります。
(2021年7月刊。税込3300円)

「セレモニー」

カテゴリー:中国

(霧山昴)
著者 王 力雄 、 出版 藤原書店
店のレジでお金を支払うとき、必ず、「○○カードは持っていませんか?」とたずねられる。そして、多くの人は訊かれる前にカードかスマホを差し出している。私はスマホも○○カードも持っていない。
○○カードを使うと、70代の男性が、○○日の○○時(雨あるいは晴れ、湿度23度)に○○を○○で買ったということが永久に消えない記録として残る。それを1週間、1ヶ月そして1年間も分析の対象とすると、その人のいろんな傾向が判明する。何を好んでいるのか、何にお金を使うのか、どんなものを好んでいるのか、友人はいるのか、どんな人なのか…、ビッグデータも駆使して、すべてを究明し尽くす。そんなことにならないように、尾っぽをつかまれたくないので、スマホをもたず、○○カードも持たない私です。もちろんマイナンバーカードなんて申請する気はありません。
中国では、「維穏費」として1兆4千億元が国家予算の5.9%を占めている。国防予算のほうは、それより少ない1兆2千億元だった。維穏費とは、警察等をつかって社会の安定を維持する費用のこと。この維穏費は、2013年の7700億元に比べて、5年間に倍増した。
この本では、人々を個別に監視する方法として靴にネットのタグが取り付けられているという想定になっています。個人の行動がそれで識別され、実のところ性生活の微細な行動まで当局は手にとるように分かる仕掛けだというのです。
最近の国産の靴も外国産の靴にも、すべてにSID(セキュリティ識別子)が取り付けられている。すべての靴が、移動中通信ネットワークに紛れている高周波によって、認識と追跡が可能になっている。いやあ、たまりませんね。国家が個々の人々の生活行動のすべてを把握できるというのです。
いま日本政府が鳴物入りでマイナンバーカードを人々にもたせようと笛を必死に吹いていますが、そんなのに乗せられたら、丸裸同然です。私は嫌です。ご免こうむりたいです。
何も悪いことしていないんだったら、いいじゃないか…、とは思いません。政府とは、たとえば今のスガ政権です。まともな日本語の会話も国会で出来ないような首相の下で、私の私生活が握られているなんて気色悪すぎます。
著者はあとがきで、テクノロジーによる独裁が外部から崩壊させることが不可能なことを描いたと語っています。テクノロジー、インターネットの発達が必ずしも人々の個人としての生活を豊かにするものでは決してないことをほんの少しだけですが、実感した気分に浸りました。近未来の怖い話を予測する小説ではありますが…。
(2019年5月刊。税込3080円)

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