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カテゴリー: ヨーロッパ

スウェーデンの税金は本当に高いのか

カテゴリー:ヨーロッパ

著者 竹﨑 孜、 出版 あけび書房
 スウェーデンに長く住んでいる日本の大学教授の本です。スウェーデンの実情を紹介する本をたくさん書いています。
 スウェーデンでは、社会保険料が企業によって全額支払われるので、家計は税金さえ支払えば、社会保険費と固定家計費はまったく不要である。そのため、日本の家計の方が、消費力や生活力では劣ってしまう。
 スウェーデンでは酒は高い。これは税金を搾り取るためというより、過度な飲酒による病気を減らすためのもの。酒は国営会社の独占専売方式である。
 小学校では、成績表も成績をあおるものだという理由から、廃止された。宿題もない。生徒20人という少人数学級に、教員が1.5人配置されている。もちろん、税金で全部まかなわれる。高校でも給食費を含めて、家計による負担はない。そして、大学への進学率は30%。大学進学率30%といっても、社会人の大学Uターンが普通であり、高校を出たら、まずは働きながらの社会勉強を優先させるのが習慣となっていることによる。大学の学費はまったく不要。生活費のほうは、国の用意する教育資金ローンを利用する。
 スウェーデンの消費税率は最高25%で、課税対象外、6%、12%、25%というような4段階になっている。医療関係はゼロ。6%は新聞や本、12%は食料品、25%はレストランでの食事。このように、課税が国民の痛みにならないように配慮されている。
 スウェーデンの人口900万人のうち、労働人口は380万人。うち、国・県・コミューンで働く公務員が3分の1を占める。公務員の職種のうち、最大グループはコミューンの介護職。女性によって占められており、給与が最も低い。
 スウェーデンの労働者が労働組合に加入する組織率は、きわめて高い。ブルーカラーで85%、ホワイトカラーでも75%。この10年間に、わずかではあるが労組への加入率は増えた。
 医師やその他の専門職も、独自の労働組合をつくっており、51万人の加入者があり、労働者のほとんどが加入している。
 失業しても、失業手当金は賃金の80%が支給される。
 スウェーデンでは、社会は誰のためにあるのか、最優先すべきは生活なのか、経済なのかが問われている。教育・医療・介護の3分野について、スウェーデンでは、必要ならば増税してでもこの3分野を守りぬくという国民の固い意思がある。
政治は国民の意欲のあらわれ。まことにそのとおりです。日本人も投票率80%を目ざして、医療・介護・教育の3つの分野を政治の最優先課題にしないといけませんよね。来る総選挙を、そのための一里塚にしたいものです。
 
(2005年8月刊。1700円+税)

スレブレニツァ

カテゴリー:ヨーロッパ

著者 長 有紀枝、 出版 東信堂
 1995年7月、ボスニア東部の小都市スレブレニツァはセルビア軍に攻められて陥落し、その後の10日間にムスリム人男性6000人が処刑された。犠牲者は今なお埋設場所さえ分からず、その半数が行方不明のままである。第二次世界大戦以来のヨーロッパ最悪の虐殺とされている。
 著者は、この事件発生当時、日本のNGOの職員として現地に駐在していました。その時の痛苦の体験もふまえて、学術的な考察を加えて出来上がった貴重な本です。
 2007年、スレブレニツァは、国際司法裁判所(ICJ)において、史上はじめてジェノサイドと認定された。ジェノサイドには、2つの局面がある。被支配集団の国民的パターンの破壊と、支配集団の国民的パターンの強制の2つである。
 ジェノサイドの語源は、民族・部族を意味する古代ギリシャ語ジェノスと、殺害を言いするラテン語サイドを組み合わせたもの。
 ユーゴスラビアは、次のような子どもの数え唄に象徴される複合国家であった。
 ユーゴスラビアは、7つの国と国境を接し、6つの共和国(スロヴェニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、モンテネグロ、マケドニア)に、5つの民族(スロヴェニア人、クロアチア人、セルビア人、モンテネグロ人、マケドニア人)が住み、4つの言語(スロヴェニア語、クロアチア語、セルビア語、マケドニア語)を話し、3つの宗教(カトリック、ギリシャ正教、イスラム教)を信じ、2つの文字(キリル文字とローマ字)をつかう。だけど、一つの国なんだ。
 紛争前のボスニア・ヘルツェゴビナ共和国には、イスラム教のムスリム人(44%)、ギリシア正教のセルビア人(31%)、カトリックのクロアチア人(17%)が特定地域に偏在せず、あらゆる場所で混在しており、政治的にも物理的にも単純な3分割は不可能だった。
 ボスニア紛争時の国連軍の犠牲者117人のうち、フランス49人、イギリス25人となっている。
 メディアにおいては、ボスニア政府がアメリカの広告会社と契約を結んで、広報活動を旺盛にしたため、「セルビア悪玉説」が強い影響力をもち、そのことがセルビア人勢力を一層かたくなにさせていった。
 スレブレニツァにいた国連軍オランダ大隊430人は、3回にわたって航空支援を要請したが、いずれも却下され、セルビア軍の進攻を許してしまった。
 スレブレニツァにおけるジェノサイドの特徴は、国際社会の眼前での大量殺害の実行である。6000人にも及ぶムスリム人の殺害と遺体の埋設、時間をおいた発掘と大がかりな再埋設が組織的に実行されたことは、スレブレニツァの大きな特徴をなしている。
 犠牲者、行方不明者をかかえる遺族にとって、スレブレニツァは今もなお国際社会に見捨てられ、裏切られたという感情とともに慟哭の記憶が生々しい。
 セルビアの指導者(ムラディチ)は、スレブレニツァの陥落という予想外の事態を最大限に利用しつつ、スレブレニツァのムスリム人住民の追放を開始し、同時にムスリム兵の一掃を図ろうとした。その過程で発生した偶発的な事象の積み重ねが、ジェノサイドに発展したと推定される。スレブレニツァ・ジェノサイドは、事前の計画がなかった犯罪行為である。
 いったん発生したジェノサイドを、軍事力を行使して停止させる事には大変な困難がつきまとう。だから、ジェノサイドが発生する前の予防措置や早期の警戒が最重要の課題なのである。
 人道の敵は、利己心、無関心、認識不足、想像力の欠如にある。無関心は、長期的には弾丸と同じく、確実に人を殺すものである。
 この最後の指摘を、私たちは重く受け止めるべきですね。400頁ほどもあって、形も内容もずっしり重たい本でした。
 
(2009年1月刊。3800円+税)

ミレニアム2 火と戯れる女(上・下)

カテゴリー:ヨーロッパ

著者 スティーグ・ラーソン、 出版 早川書房
 スウェーデンの暗部をえぐり取る画期的なミステリー小説です。すでにスウェーデンでは第1部が映画化されているそうですので、一日も早く日本でも上映してほしいものです。上下巻の2巻を3日間、片時も離さず読みふけった、と言いたいところですが、そうもいきませんでした。それでも、3日間、片道1時間の電車がいつもよりずい分と早く目的地に着いてしまったと思わせるほど、本の世界にのめりこんでいて、時のたつのを忘れていました。目的地に着いて、なお読み終わっていないのです。そのまま喫茶店に入って、好きなカフェラテでも味わいながら、じっくり読みふけりたかったのですが、そうもいきません。何しろ、メシの種である裁判を放っぽらかすわけにもいきませんでしたし、主宰すべき会議もあったのです。それで、泣く泣くカバンの底に本を沈めて、真心を入れ替えて正業に就いたのでした。トホホ・・・男はやっぱりつらい。
 開巻有得(かいかんゆうとく)
 本を読めば、得るところがある。確かに、この本を読んで小説とはかくあるべしと思いました。いたるところに張られている伏線が、次々に生きて動きだし、話に膨らみを持たせるのです。
 容貌魁偉(ようぼうかいい)
 顔つきが大きく、立派なさま。この本でも、金髪の巨人、という男性が登場します。
 勇猛果敢(ゆうもうかかん)
 猛猛しく、大胆に事を行うさま。主人公の一人として名探偵カッレくんが登場し、大胆に犯人捜しにふみこみ、危険にさらされます。
 駑馬十駕(どばじゅうが)
 才能の乏しいものも、努力を怠らなければ、才能あるものと同じ実績をあげることができる。惜しくも若くして死んでしまった著者の才能は、まさしく天才的なものがあります。複雑に入り組んだ謎をひとつひとつ、無理なく、しかもスピード感たっぷりに解明していくのです。次の頁をめくるのがもどかしくなったほどです。私には、とてもこんな才能はありませんが、それでも、目下挑戦中の小説については、この様式を取り入れるべく、必死に挑戦しているところです。
 嚝日弥久(こうじつびきゅう)
 無駄に日をすごすこと。私も還暦を迎えた身ですので、これからは一日一日を大切にして、無駄に日をすごすことのないようにしたいと考えています。もちろん、たまに息抜きするのは当然のことです。それって、決してムダな時間の使い方ではありませんからね。
 スリラーものの性格上、この本のアラスジを書くわけにもいきませんでしたので、手元にあって日頃あまり使っていない『四字熟語辞典』をパラパラとめくり、目についたものを引用してみました。今年最大の収穫となりそうな本に出会った気がします。
 火曜日午後、一泊の人間ドッグを終えて雨の中を帰宅していると、あちこちで田植えそして田のすき起こし作業がすすんでいました。今年は雨が少なくてカラ梅雨になるのかなと心配していましたが、久しぶりに雨らしい雨が降ってくれました。
 雨に打たれて一段と美しく映えるのがアガパンサスの青い花火のような花です。紫陽花の花とは少し趣が違って、うっとうしい梅雨を心軽やかにしてくれる大好きな花です。
 
(2009年5月刊。1619円+税)

アイヒマン調書

カテゴリー:ヨーロッパ

著者 ヨッヘン・フォン・ラング、 出版 岩波書店
 ナチス・ドイツが何百万人ものユダヤ人を強制収容所へ連行して、ガス室などで抹殺していった過程で、アイヒマンは実務的な官僚としてそれに深く関わり、遂行していた。
 アイヒマンは、アウシュヴィッツとマイダネック強制収容所を視察し、そこでのユダヤ人抹殺工程を考えだした人物である。ただし、アイヒマンは他人が苦しむのを見て快楽を覚えるサディストではなかった。
 アイヒマンは、ほとんど事務所の中で自らの仕事に専念し、結果として数百万の人間を死に追いやった。一官僚として、アイヒマンは死に追いやられる人間の苦痛に対して、何の感情も想像力も有してはいなかった。
 アイヒマンはドイツの敗戦後、1950年春まで偽名と偽の身分証明書でドイツ国内に潜伏していた。アメリカ軍の捕虜となったこともあったが、2度も逃走に成功した。逃亡資金を貯め、バチカンルートでアルゼンチンへ逃亡した。バチカンのカトリック関係者によって元ナチ戦犯の海外逃亡支援が行われていたのだ。多くの元ナチ親衛隊員がこれによって旅券の交付を受けた。アイヒマンを支援したのは、ローマのカトリック司祭、アントン・ヴェーバーだった。1950年から、アイヒマンはアルゼンチンに居住し、偽名で働いていた。そこでは、ユダヤ人の大家に助けられていた。なんという皮肉でしょうか……。
 1960年5月。アイヒマンはイスラエルのモサドの手によって、イスラエルへ連行され、警察による取り調べが始まった。このとき取り調べにあたった警察官の第一印象は、次のようなものでした。
 目の前に現れた人物は、自分より少し背が高いだけの、細身というよりやせぎすで、頭の禿げあがった平凡な男に過ぎなかった。フランケンシュタインでも、角の生えたびっこの悪魔でもなかった。外見だけでなく、そのきわめて事務的な供述は、事前に抱いていたイメージとかけ離れたものだった。
 アイヒマンにはユーモアが完全に欠如していた。その薄い唇に何回か笑いが浮かんだことはあったが、目は決して笑わない。その眼は、いつも嘲笑的で、同時に攻撃的だった。
 とくに印象的だったのは、アイヒマンが自分の犯した凄惨な罪に対して明らかに何の感情も持っておらず、まったく悔恨の情を示さないことだった。自分のなした行為について、まったく鈍感だった。ふむふむ、ユダヤ人を大量殺害する機構の歯車は、こんな人物だったのですね。ということは、隣人がいつ大量殺人鬼になるかもしれないということです。
 アイヒマンは、取調の途中、いつも食欲旺盛だった。アイヒマンは、ヒトラーの主張に賛成はしていたが、『わが闘争』を通読したことは一度もなかった。実のところ、アイヒマンは読書をしない人間だった。犯罪小説も恋愛小説も読んだことがなかった。
 アイヒマンは、自分はユダヤ人の殺害とは何の関係もない、一人のユダヤ人も殺していない。ただ、ユダヤ人の移送に関与していただけだと言い張った。アイヒマンは、ユダヤ人を安住の地へと移住させることに専念していたと何度となく主張した。
 実際には、アイヒマンは当時30代であり、非常に活動的でエネルギッシュな人物だった、ユダヤ人絶滅のために常に新しい計画を考案し、方法の改良に熱意を示した極めて勤勉な男だった。アイヒマンは、ユダヤ人問題の最終解決に関する命令を受けていた。
アイヒマンの尋問はすべて録音され、その反訳調書は本人がチェックして間違いないことを確認した。275時間、3564枚の調書がある。その一部が再現されていて、大変興味深い内容となっています。日本でも、戦犯に対しこのような責任追及がきちんとなされたのか、心配になりました。
 
(2009年3月刊。3400円+税)

フランスの子育てが日本より10倍楽な理由

カテゴリー:ヨーロッパ

著者 横田 増生、 出版 洋泉社
 子どもにとって、きちんとした食事や十分な睡眠が成長に不可欠であるのと同じように、大人の注目や時間もまた、子どもの大切な栄養分なのだ。3歳までの子どもにとっては、身近にいる人間の注意や愛情を十分に受け取ることが必要なのだ。
 私も弁護士になってから35年が過ぎましたが、表情の乏しい大人の顔を見ると、きっと子どものころに親の愛情に満ちた声かけが少なかったのだろうな、と思うようになりました。親から愛情をたっぷり注ぎこまれた子どもは、大人になっても断然、その表情、とりわけ眼の輝きが違います。
 日本と違って、フランスでは出生率が再上昇している。それには3つの理由がある。一つは所得格差が小さいこと。二つは職場における男女格差が小さいため、女性が仕事か子育てかの二者択一を迫られることがないこと。三つには、週35時間労働にあらわれているように、労働時間が短いため、男女とも育児や家事に参加できること。
 ふむふむ、これはなるほど日本とは大違いです。
 フランスでは、女性が難なく仕事と子どもの両方を選ぶことが出来る。女性が子どもを産んでも、それまでとほとんど変わらない生き方をしていけるのがフランスなのである。
 うむむ、な、なるほど、ですね。さすがフランスです。
 フランスで子育てが前向きにとらえられる理由の一つに、政府の支援策によって子育ての負担が大きく軽減されることがある。とくに子どもが3人以上いる家族は、大家族として手厚い支援を受ける仕組みがある。家族手当の額が増えるだけでなく、交通機関や動物園、美術館、博物館などで割引を受けられる。うひゃあ、うらやましいですよ、これって。
 フランスでは、3歳から公立の学校に通える。
 ええーっ、保育園ではなく、学校なのですか…?
 フランスでは、ほぼ100%の子どもが3歳からエコル・マテルネルに通う。8時半から4時半まで、学費は無料。ちなみに、公立学校なら、大学卒業まで学費はタダ。
 うへーっ、なんと…タダ。しかも、今、2歳からにしたらどうかと議論されているというのです。これには、さすがにまいりました。
 フランスでは、日本のように夫が給料袋をそっくり妻に渡すようなことはしない。フランスの男性は、自分で稼いだお金は自分で管理する。だから、専業主婦になると、自分の自由になるお金がないことになる。ふむふむ、だからフランスの女性は働きたいのですね。
 子どもに対して支払われる養育手当の財源は、企業が労働者の賃金に5%を上乗せして納める税金である。つまり、労働者に年100万円の賃金を支払っていると、5万円を企業は国に支払うことになる。これって、日本でも考えていい制度ですよね。
 フランスの大統領選挙の投票率は、80%を超す。
ここですよね、日本との違いの決定的なところです。日本人の多くが、政治にあきらめてしまっています。フランスでは、そんなことはありません。政府の方針がおかしいと思うと、女子高生が一人で街頭でプラカードを手にしてデモ行進をして意思表示します。やがて、賛同者が増えて、いつのまにか道路を埋めるデモ行進になるのです。日本のような、連帯心の欠如というものがありません。みんな、明日は我が身と考えるのです。デモ行進で一時的な迷惑は受けるけれど、それよりもっと肝心なことがあるので、そちらを考えて連帯するわけです。
 私の事務所のホームページのブログで、「私の本棚」シリーズを始めました。私の読んだ本をジャンル別に本棚の写真をあわせて、順次、公開していきます。ぜひ、あわせてアクセスしてみてください。
(2009年3月刊。1400円+税)

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