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カテゴリー: 社会

「大東建託」商法の研究

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 三宅 勝久 、 出版 同時代社
「サブリースでアパート経営」に気をつけろ、というサブタイトルのついた本です。大東建託だけはなく、大和ハウス、東建コーポレーションそしてレオパレスも取りあげられています。この本を読むと、素人がアパート経営に手を出すと、それこそ火傷(やけど)で重傷を負うことが多いと思わされます。
実は、私も大東建託を相手として契約解除を求めて交渉したことがあります。なにしろ70歳代後半の素人の男性が1億円をこす建築費を借金してアパート経営に乗り出そうというのですから、初めから無謀というしかありません。その男性はストレスのあまり病気になりました。そのこともあってなんとか契約解除にこぎつき、家族からは大変喜ばれました。
たとえば大東建託は次のように提案します。
木造アパートを1億3000万円でつくる。毎月90万円の家賃収入があるから、銀行への返済分60万円を差し引いても、手取り25万円になる。
大東建託が一括借り上げて家賃を支払ってくれると思って安心していると、入居者が減るなか、途中から家賃収入が減額される。文句を言うと、会社から「将来の収入を約束したものではない」と冷たく事務的な文面が返ってくる。そして、一括借り上げ契約が解除されてしまう…。
これでは、トホホ…ですよね。
圧倒的に巨大な企業と銀行が、ほとんど無防備の一市民に高額かつ高リスクの商品を売りつけ、資金を貸しつけて高い利益をあげる。その結果、家主がどんな目にあおうと知ったことではない。あとは野となれ、山となれ…だ。
ランドセット方式なるものもある。第三者所有の土地をあらたに購入して、そこにアパートを建て、大東建託が一括借り上げて、経営するというもの。
アパート建築の総工費8000万円。家賃保証があり、毎月10万円の利益(手残り)が出る。家賃保証があると言って安心させる。しかし、1億円の借金で、月の手残りが10万円ということは、利回りでみると1%。そんな事業は初めから無理。木造アパートは22年で減価償却が終わる。すると、それ以降はそれより格段に高い所得税を支払わなくてはならなくなり、収支がマイナスに転じる。
高齢の土地所有者の息子が協力を断ったときには、身内を養子縁組させてまで借金させようとする。あまりにも無茶苦茶だ。
大東建託が建てたマンションが欠陥マンションだった話も紹介されている。
そして、大東建託内での社員に対する壮絶な社員教育に名をかりた「いじめ」も発生する。契約締結を大東建託では「一筆啓上」と呼ぶ。また、大東建託では、新規客に対して嘘も方便として平気だったが、社内でもパワハラ、セクハラが横行していて、病気になった社員も多い。
基本給28万円のうち、営業手当が11万円。これが6ヵ月無契約だと6万円減り、さらに無実績10ヶ月になると、トータルで11万円減って、手取りは10万円ほどとなる。
ハローワークの求人広告はウソ、インチキだった。
この本を読んで、アパート経営を口実とした新手(あらて)の詐欺商法だと私はますます確信しました。
(2020年3月刊。1500円+税)

探偵の現場

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 岡田 真弓 、 出版 角川新書
不倫の相談を受けたとき、私立探偵に頼みましたといって調査報告書なるものを示されることはしばしばです。
ちょっと前までは、それはひどいものでした。10万円単位ではなく、300万円も支払いましたといって馬鹿馬鹿しい作文しかない報告書を読ませられて腹の立つことが何度もありました。弁護士の着手金30万円を高いと言うような人が不倫調査のため私立探偵に支払った300万円は高いと考えていないようなので、この落差はいったい何なのだ…と怒ったということです。
でも、今では私立探偵の費用も、ネットが発達したこともあるのでしょうが、50万円以下のことがほとんどで、私からしてもリーズナブルだと思えますし、GPSなどを駆使して、証拠としてバッチリ使えそうなものが大半です。
探偵業界で売上ナンバーワンという会社の代表者をつとめる女性が探偵の現場を教えてくれる本として面白く読みました。
この本ではGPSをつかった調査が基本になっていること、スマホがいかに便利かということが紹介されています。スマホによる動画は、決定的に重要だというのは私もまったく同感です。ですから、バッテリーとメモリーの残量チェックが欠かせないというのも本当です。
この本では不倫調査の結果と、その後のアフターケアまで紹介されています。
不倫が発覚しても、7割は、夫婦関係を継続させていると書かれているのには、いささか驚きました。でも、たしかにそうかもしれないと弁護士生活を46年も続けて思うところはあります。
夫は不倫をしていると妻が疑っているケースでも、実は夫のほうは不能(インポ)で悩んでいるケースがあったり、夫はゲイだったり、話は必ずしも単純ではありません。
大会社の幹部社員はあまり不倫には走らないそうです。これも、これだけネット社会になると、そうかもしれないと思います。
それにしても、今はネット上のやりとりで、不倫していることがバレバレなのに、平気だということが少なくないのにも驚かされます。
いずれにしても、世の中が大きく変わろうとしていることを私立探偵の仕事を通じて教えてくれる新書になっています。
(2020年2月刊。880円+税)

歴史としての日教組(下巻)

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 広田 照幸 、 出版 名古屋大学出版会
日教組の実体をよく理解することができました。
まずは、1995年の日教組と文部省との「歴史的和解」です。
これは、村山内閣のとき、与謝野馨文部大臣が主導したものと言われています。その内実が、明らかにされていて、興味深い記述です。
 1994年6月、自民党と社会党が新党さきがけとともに連立政権をつくり、総理大臣に社会党委員長だった村山富市が就任した。このころの自民党は、小沢一郎の率いる新生党―新進党への対抗上、左にウィングを伸ばすことで政党としての党勢回復を図ろうとしていた。自民党がもっともリベラルになっていた時期だった。それで憲法改正を棚上げにし、日教組を含めた労働組合との良好な関係づくりに熱心な状況になっていた。
そして、日教組のほうは、内部に救援資金問題をかかえていた。日教組はストライキを構えて闘った時代の負の遺産として、巨額の救援資金が組合財政を深刻に圧迫する事態となっていた。年間78億円の予算のうち3分の2近くを処分された組合員の給与補填に充てていた。これを解決するには各地の教育委員会との話し合いが必要だが、そこへ自民党と文部省が圧力をかけていた。日教組の組織力を弱めるため、自民党と支部省は「兵糧攻め」までしていた。
和解の糸口を切り出したのは村山首相その人だった。そして与謝野文部大臣は慎重にことを進めた。最終的に文部省と日教組で合意した文書は今も公開されていないようです。信じられません…。
次に、「400日抗争」です。実は、私は知りませんでした。1986年(昭和61年)8月から翌87年3月までの間、日教組主流派の内部で主導権争いがあり、大会が開かれず、人事も予算も決まらなかったのでした。この対立は、ストライキも辞さないという左派と協議優先の右派。労線問題で、結局あとの連合へ合流していくのか、それに反対するのか…、など。発端は、日教組の田中委員長が自民党候補の激励会に参加したことでした。
このころ、反主流派の共産党と、左派の一部であり、中核である社会主義協会系とが「共協連合」をつくっていると非難されていたが、この「共協連合」なるものには何の実体もなく、いわば幻の存在でしかなかった。
結局、この「400日抗争」は終結したが、一般組合員の関心には薄く、むしろ多くの組合員は、失望し、不満をかきたてた。結局、日教組の弱体化につながっていた。
民主党政権下で自民党が大きく右に揺れるなか、ネット上で荒唐無稽な「日教組けしからん」論が横行するようになった。かつて右翼の街宣車が大きなスピーカーで「民族の敵、日教祖を撲滅しましょう」なんて叫んでまわっていたのを思い出します。今では、それがネット上の叫びに変わっているわけです。さらに、国会審議のなかで、突然、脈絡なしに安倍首相が「日教組…」と叫んだりするという茶番まで加わります。
そんなアベ首相と「ネトウヨ」が目の敵にする日教組の実体を知ることのできる貴重な学術書です。下巻だけでも300頁、3800円もしますが、全国の図書館にせめて一冊は備えておいてほしい貴重な文献です。
(2020年2月刊。3800円+税)

我が家に来た脱走兵

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 小山 帥人 、 出版 東方出版
50年前、私が大学生のころ、アメリカはベトナムに大量(最高時50万人)の兵隊を送り、ジャングルでベトナム解放民族戦線(ベトコン)と戦っていました。
アメリカのベトナム侵略戦争です。アメリカには共産主義が東南アジアに広まったら困るという「ドミノ理論」があるだけで、客観的には何の大義もありませんでした。要するに、アメリカの軍需産業がもうかる一方で、前途有為のアメリカ人青年が5万5千人も無駄に戦死させられたのです。そして、ベトナムでは何百万人もの罪なき人々が無残に殺されました。そんなベトナム戦争に疑問をもつアメリカ人青年がいて当然です。
ベ平連(ベトナムに平和を!市民連合)は、そんなアメリカ人青年がアメリカ軍から脱走してきたときの受け皿になっていました。この詳細は『となりに脱走兵がいた時代』(思想の科学社)で詳しく紹介されています。
この本は脱走兵の一人、19歳のキャルを3日間だけ京都の実家に迎えたNHK記者が、47年ぶりに再会したことを紹介しています。
キャルは北海道からソ連へレポ船で渡り、スウェーデンにたどり着きました。やがて結婚して子どもまでもうけたのですが、ついにアメリカに戻ったのでした。そして、麻薬中毒患者になったり、CIAに脱走当時のことを全部話したりしたのですが、今はホームレス支援の生活をしているのです。
脱走兵のなかにはCIAが送り込んだスパイもいました。これは、『となりに脱走兵がいた時代』にも紹介されています。
この本を読んで、見も知らないアメリカ人青年の脱走兵を受け入れた日本の家庭がたくさんあったことに改めて深く感動しました。ナチス・ドイツの支配するベルリンでもユダヤ人をかくまったドイツ市民が何百人もいたというのと同じことなのでしょうね…。やっぱり、いつの時代にも勇気ある人はいるものなんですよね。
著者がNHK記者だったこともあり、当時の映像が残っていて、それが毎日放送(テレビ)で2015年に放映されたとのことです。みてみたいです。
(2020年2月刊。1500円+税)

日本プラモデル、世界との激闘史

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  西花池 湖南 、 出版  河出書房新社
 日本のプラモデルは世界中から注目されているようですが、それでも日本の厚いファンで支えられているようです。そして、プラモデルに戦前の日本やドイツの戦車や戦艦などに日本人の人気があるのは、ドイツではまったく考えられないという指摘には、はっと驚かされました。
実は、私も中学生くらいまでは兵器モデルを愛好していましたし、雑誌『丸』を読んで軍事知識を仕入れていたのです。同世代の津留雅昭弁護士(故人)も私と同じようなことを言っていましたが、私より格段の軍事オタクでした。しかし、それも世間に反戦・平和を愛好する人々が増えてくると、軍事モデルは退潮していったようです。
プラモデルが発展したのは戦後のことです。初めはアメリカで盛んで、ここでも日本はアメリカの物真似からスタートしています。
現在、世界の模型の三大市場は、アメリカ、日本、中国だ。日本の模型市場は、ずっと日本の模型メーカーが支配していた。ところが、今では中国やロシア、そして東欧の模型メーカーの製品が押し寄せている。ただし、日本では、模型市場を日本の模型ファンが支えている。しかも、コアなファンが実に多い。
日本には、世界が呆れ、憧れもする部厚いオタク層が存在し、彼らのキャラクターへの愛が模型市場を隆盛させている。
「ロボット鉄人28号」は1960年に売り出され、累計で500万個も売れた。
静岡には、今なお老舗のプラモデルの会社が4社もある。
戦車のタミヤが「パンサー」や「ロンメル戦車」を売り出し、人気を集めた。そして「怪獣」キャラクターものが全盛となった。
1966年(昭和41年)の「サンダーバード」シリーズは、日本のプラモデル史上空前のメガヒットとなった。私が高校3年生のころのことです。テレビで私も「サンダーバード」はみていました。ところが、ブームが去ると、模型メーカーが次々に倒産していったのです。
1975年(昭和50年)には、スーパーカー・ブームが起きた。最盛期には、月に200万個も売れた。
「宇宙戦艦ヤマト」は1983年(昭和58年)までに、テレビアニメ3本、映画4本がつくられ、10年ほど人気は続いた。私も、長男が大好きだったので、これはよく覚えています。
コンピューターによるCAD/CAMの時代になる前は、優秀な金型(かながた)職人がプラモデル生産を支えていた。
このように日本でコアのファンがたくさんいるとしても、それはたいてい40歳以上の層であって、少年ファンを取り込めていない。今では、男子小学生で模型をつくったことがあるのは、わずか5%ほどでしかない。模型をつくる子はかつてのように多数派ではなく、「変わった趣味」扱いされるようになっている。いやあ、そ、そうなんですか。世の中、ずいぶん変わりましたよね…。
日本のプラモデルの変遷を知ることができましたし、なつかしく思い出しました。
(2019年12月刊。1600円+税)

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