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カテゴリー: 社会

崩れた原発「経済神話」

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 新潟日報原発問題取材班 、 出版  明石書店
世の中には不思議な、信じられないような現象が多々ありますが、今なお「原発」がなければ日本経済は成り立たないと信じ込んでいる(信じ込まされている)人が少なくないのには驚き、かつ呆れてしまいます。
3.11のあと、「福一」の原子炉は今なおまったく手つかずで放射能を出し続けていて、人間が近づくのを許しません。たまる一方の放射能廃棄物は地下に埋めようもないのです。
原発をつくるときには地元は景気が良かった。しかし、その恩恵は一過性にすぎなかった。原発が出来ても、思ったほど人口は増えなかった。原発は装置産業なので、装置をつくってしまえば、その後は保守管理に関わる雇用しか生まれない。原発誘致で地域経済が活性化するというのは幻想だ。
大都市に原発は今もない。なぜか・・・。大量の冷却水を得られるような海岸地域に未開発地はほとんどない。要は、事故が起きたとき、大都会の住民に補償なんてとても出来ないからだ。つまりは、原発の危険性を電力会社も国も承知のうえなのです。知らない(知らされていない)のは、「田舎」の住民だけ。
3.11福島事故で東電が被災者に支払った賠償額は、5年間で6兆円をこえた。でも、自分の家に住めないときに、たとえ1000万円もらってもどうしようもありませんよね。それが何十万円だったら話にもなりません。
そして、日本は原発に頼る必要はないのです。火力発電所では、LNGが52%、石炭が37%、石油が8%。LNGの中東依存度は29%でしかない。LNGの輸入先は、オーストラリア、マレーシア、インドネシアと分散している。アメリカ産シェールガス由来のLNGも日本は輸入しはじめている。
ひとたび事故がおきたら人間の手の及ばない原発は経済的に見合わない。
私は、一刻も早く、ドイツのように政府は脱原発宣言をして、全面的廃炉に向けて着実に手をうつべきだと思います。
東電の柏崎刈羽原発をかかえる地元新聞社として、原発「神話」に真正面から取り組んだ力作です。
(2017年6月刊。2000円+税)

暴走する自衛隊

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 纐纈 厚 、 出版  ちくま新書
自衛隊は今日、世界有数の実力をもつ武力組織にまで成長している。24万人の自衛官から構成される自衛隊は、高度に組織化された専門職能集団でもある。自衛官は国家防衛を目標とし、きわめて強固な団結心で結ばれている。自衛隊を特徴づける高度な技術性・一体性という性質は、日本国内における諸組織のなかでも際だっている。
安倍首相は、本来なら「自衛隊は・・・」と言うべきところ、思わず「わが軍は・・・」と国会(参議院予算委員会)で答弁した。安倍首相は、自衛隊が名実ともに軍隊以外の何ものでもないと捉えていると思わせるに十分な発言だった。
自衛隊の正面装備を外観すれば、先進諸国の軍事大国の軍と肩を並べるに十分な質と量を備えていて、国際社会ではすでに「軍隊」として通用している。
2007年1月に、防衛庁が防衛省に昇格した。これは単独予算編成権を獲得したということ。
そして、事実上の文官統制廃止が実現した。
シビリアン・コントロールといっても、シビリアンなるものが稲田朋美のような、政治による統制に積極的に服従する、軍人以上のミリタリズムへの信奉者であったり、非妥協的で露骨な軍事政策を強行しようとする政治家であれば、ほとんど意味がない。
海上自衛隊は、陸上自衛隊と違って、旧日本軍の組織論や教育論がストレートに持ち込まれた。したがって、文民統制という政治による統制には、強い抵抗感を示してきた。
田母神論文は、自衛隊の国防軍化への強い要求があることを意味している。自主防衛・自主独立の志向がある。つまり脱アメリカへの転換を目ざす。
現行憲法を正確に読めば、自衛隊は明らかに憲法違反の存在である。
安倍首相の加憲論は、自衛隊の違憲性を払拭するだけだと言いつつ、実質的な国防軍化を目ざすものですから、まさしくアベ流ごまかし政治です。
自衛隊の本質は、効率的な大量人殺しを任務とする軍隊です。ところが、世間一般がそう思ってはいません。大災害のときにいち早く出動して被災者を救助する救助隊という善意のイメージが本質を見えにくくしています。そして、見えないものは存在しないことになるのです・・・。
(2016年2月刊。820円+税)

日本の夜の公共圏

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 谷口 功一 、 出版  白水社
スナックについての本格研究書です。もちろん、私もスナックには行ったことがあります。でも、カラオケ嫌いの私には、あまり近寄りたくない場所でしかありません。うるわしき美女との出会いを期待したい気持ちは少なからずあるのですが、むくつけきおっさんの下手なカラオケの蛮声を聞かされるかと思うと、足が遠のいてしまいます。
スナックは、今では都市部ではなく、地方においてこそ身近な存在となっている。
先輩が後輩を連れてスナックへ行くという文化は、70年代生まれの世代の前後で断絶している。
ガールズバーは、女の子のドリンク代に店側の実入りは大きく依存している。
スナックは、時間無制限で、女性(ママ)は、若くても30代以上。
スナックの名称は、軽食(スナック)による。スナックの前身はスタンドバー。
現在、スナックは10万軒、美容院23万店、不動産屋12万軒、居酒屋8万店。
人口比でのスナック軒数は、上から順に①宮崎、②青森、③沖縄、④長崎、⑤高知、⑥大分、⑦鳥取、⑧秋田、⑨山口、⑩佐賀。つまり、九州方面が圧倒的に多い。最下位は奈良。なぜ・・・。
田舎では、どんな小さいところにも、スナックとフラダンススタジオがある。うひゃあ、そ、そうなんですか・・・。
スナックは始めるのは簡単で、やめるのも難しくない。大きくもうかることは期待できないけれど、ほそぼそとやるにはいい。
スナックのママが女をウリにしていると、案外にうまくいかない。おっさんたちがライバル同士になってしまうから。ウリは、ママかマスターの人柄だけ。
スナックにとって恐るべきは、警察とあわせて税務署。ただし、これも、はやっている店に限る。税務署がおしのびでやってきて、領収書をもらい、あとで台帳に載っているかチェックする。
スナックでは階級差がない。基本は飲んで歌うこと。社長もサラリーマンも、いろんな人が混交している。
私は、見知らぬ土地に行って、ふらっと食べ物屋に入る元気はあるのですが、夜のまちに、知らないスナックに入る勇気はもちあわせていません。カラオケが歌えないからだとは思いますが・・・。
それにしても、なぜ、スナックが九州、西日本にそんなにかたよっているのでしょうか・・・。不思議でなりません。学者の先生方による、真面目なのか、本気なのか、よく分からなくなってくる貴重な研究書です。
(2017年7月刊。1900円+税)

いつも子どもを真ん中に

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 上田 精一 、 出版  青風舎
私と同じ団塊世代はだいたい定年退職し、嘱託として学校教員を続けている人がいるくらいになってしまいました。
著者は、私たちよりさらにひとまわり上の世代になります。中学校の教員(国語)として、子どもたちと格闘していた日々の出来事が昨日おきたことかのように語られているのに驚かされます。
学級通信では、子どもたちの言葉、それに2行か3行そえたコメント、そして親の反応が紹介されています。そして、大切なものは製本して保存してあり、昔の生徒たちが10年、20年して集まったときに贈呈して喜ばれているというのです。こんな教師にめぐりあえた生徒は幸せです。
学級運営で、口を開かなかった子と交流できるようになった話、つっぱっていた生徒との対話、そして、女子生徒たちから、差別しないように申し入れられた経験・・・。どれをとっても、子どもたちを主人公として大切にしてきた教師としての貴重な体験談です。
さらに、沖縄へ修学旅行に行ったときの様子、平和をテーマとして子どもたちが文化祭で劇に取り組み、成功させた様子など、教師冥利に尽きる話のオンパレードで、読んでる私の心を熱くしてくれました。
やっぱり、教師って、人の生き方を変える力をもっている。これって聖職だよね、そう思わせる本でした。
著者は八代市に生まれ、長く人吉の中学校につとめていました。学校教育の現場に関心のある人には強く一読をおすすめします。
(2017年5月刊。2000円+税)

女性と労働

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 日本弁護士連合会 、 出版  旬報社
2015年10月に千葉の幕張で開かれた日弁連人権擁護大会のシンポジウムの報告書を要約・加筆して出来あがった本です。
シンポジウム実行委員会はオランダへ現地調査をしたようで、巻末資料として、その報告書がのっています。アムステルダム市はセックスワーカーの権利保護に乗り出しているというのが、私には目新しい話でした。写真で見たことしかなく、現地に行ったこともありませんが、アムステルダムには「飾り窓」で有名な地域があります。そこで働くセックスワーカーは全市5000人から8000人のうち、2000人。今は東欧出身の女性が多い。顧客は年間20万人に近く、アムステルダム在住者は3分の1以下で、半分以上が独身、5人のうち2人はパートナーがいると推測されている。
アムステルダム市の売春政策は①合法的な売春をノーマル化する、②非合法の売春を察知する、③ワーカーのエンパワーメントとケア、④予防という4つの目的がある。ライセンスがなくても、自宅で週に何回か売春することは合法扱いされている。そして、18歳以下の子どもがセックスワーカーになるのは禁止されている。
では、日本はどうなっているか。売買春はもちろん法で禁止されているが、現実には、女性が性的サービスをしている性産業の営業所数は2万2千ケ所ほどあり、1ケ所平均20人として、40万人以上の女性が働いている。ここは、他の職業とは比較にならないほど生命・身体に危害を及ぼすリスクの高い特殊な労働である。
学費が高く、奨学金が貸与制のために、大学生(女性)が性産業で働くケースが多いことは前から指摘されている。
それにしても日本の「人づくり」政策は根本的に間違っていますよね。大学の入学金が国立大学で82万円、私立大学で132万円するなんて、信じられません。
私のときは月1000円でした。ヨーロッパでは学資はタダどころか、学生に生活補助しています。これこそまさしく「人づくり」ですし、「国づくり」です。大型ハコモノづくりとかムダな軍事予算を削って、人材養成にこそ国はお金をつかうべきです。
女性が働きながら子育てしようとするときに直面するのが保育園の確保です。この本によると、保育士の資格をもちながら働いていない潜在保育士が60万人もいるとのこと。もったいない話です。それほど、保育現場の労働環境は劣悪なのです。
そして、教員にも非正規が年々増えている。2005年にして、3%だったのが、2011年には16%になった。
看護師は9割以上が女性で、深刻な過重労働が横行している。
では、日弁連はどうしたらよいと考えているのか・・・。この本では、いろいろ、たくさん問題提起されていますので、かえって要点、ポイントが分かりにくくなっている気がしました。
もっと、男も女も、個性ある人間として社会が大切にしていることを実感させてくれる世の中にしたいものです。そのための貴重な現状告発と問題提起の本です。
委員長の中村和雄先生、よくぞ本にまとめられました。お疲れさまです。
(2017年4月刊。2000円+税)

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