法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: 社会

日本再生は生産性向上しかない

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 デービッド・アトキンソン 、 出版  飛鳥新社
著者の提言には思わず首を傾けてしまうものが多々あります。たとえば、日本にはヨーロッパの大富豪が泊まるような超高級ホテルがない。1泊なんと500万円とか600万円という部屋をもつホテルがないのを著者は問題にしているのです。ええっ、これ以上、日本を超格差社会にしようというのかいな・・・、そう思ってしまいました。
またカジノ主体のIRについても、著者は積極的に導入せよと断言しています。カジノとパチンコを比べるのは、懐石料理の店と牛丼の立喰い店を比較するようなもので、サービスも客層も全然ちがうのだから、比較すること自体が間違いだとします。
著者は、海外のチョー大金持ちをもっと日本に来させるようにすべきだ、それが日本の観光立国につながるというのです。本当でしょうか・・・。日本国内に沖縄の米軍基地のような治外法権の地域をつくるだけのような気がしてなりません。
著者の指摘に納得できない内容ばかりなら、このコーナーで私は紹介しません。実は、なるほど、そうだよね、という点がいくつもあるので、こうやって紹介したいのです。
著者の会社は、文化財保護に関わっていますが、そこで大切なことは、安定的な技術の伝承だというのです。そのときの修理も大事だけど、30年後、50年後の修理も大事なので、ベテラン職員は頼もしいけれど、長く見てくれる若い職人が来てくれると、それもうれしいと言います。なるほど、そういうことなんですね・・・。
日本に来た外国人が日本食をみな好むとは限らないという指摘も、なるほどと思いました。日本人だって、いつも和食を食べているわけではありません。
和食は、みな同じような味だし、満腹できないというのです。
高級な寿司店で、マグロとサーモンだけをひたすら食べている外国人の例も紹介されています。日本人の私からすると信じられない話ですが、そこはやはり食習慣の違いなのでしょうね。
著者は、日本人の心の狭さが目立っているとも指摘しています。これって、ヘイトスピーチの横行に端的にあらわれていますよね。経済状況が悪くなると、心が貧しく、狭くなるのでしょう。これも、例の「アベノミクス」なるものの「成果」(結果)です。貧すれば、鈍す、なのです。
日本は、かつては笑顔の国だったのに、今では、すっかり「暗い印象の国」になってしまったという指摘には、私も正直いって、ドキリとしてしまいました。
日本人は、「日本はすべてにおいて世界のトップ」という思い込みがあるため、日本に欠けているところがあることを認めようとしない。実績を伴っていない、現実認識が欠けている。
これは本当に耳の痛い指摘です。日本が世界で一番だなんて、ネトウヨの世界でしょうね。やはり、謙虚に反省すべきです。どこかの国の首相のようね、うわべだけのポーズではなくて・・・。
(2017年6月刊。1296円+税)

商売は地域とともに

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 NPO法人神田学会 、 出版  東京堂出版
神田百年企業の足跡、というサブタイトルのついた本です。
私は神田の古本屋街を年に何回かは歩いています。送られてくる古書のカタログも楽しみの一つです。
そんな神田には創業100年をこす社会や商店がいくつもあるというのです。どんな会社なのか、100年も生き残れる秘訣は何なのか、それを知りたくて読んでみました。
冒頭に、世界最古企業ベスト10が紹介されていて、あっと驚きます。なんとなんと、ベスト10のうち7社までが日本の起業であり、トップからベスト6位まで全部が日本の企業なのです。これって、信じられますか・・・。トップ(1位)は、あの社寺建築の奈良の金鋼組です。2、3、4位は、旅館なのです。2位は山梨の西山温泉慶雲館。ギネスが認定する世界最古の旅館だそうです。3位は兵庫県城崎温泉の「古まん」という旅館、4位は、石川県粟津温泉の法師旅館です。す、すごいですね。そんな古い、古い、伝統ある旅館が連綿と生き続けているとは・・・。
ものづくりの企業が日本には多いから老舗企業が多いとのこと。サービスを売る商業組織では、中世にまでさかのぼるのはまず存在しない。
神田は、日本橋に次いで老舗が多い。創業100年をこえる老舗が神田には170軒もある。もっとも古いのは慶長元年(1596年)創業の酒店、豊島屋本店。白酒の製造販売で有名なこの店は関ヶ原の戦い(1600年)より前の創業なのです。つまりは、江戸時代より前からということになります。そして、宇津救命丸も慶長2年(1597年)です。はじめは、下野(しもつけ)の国でしたが、江戸に出てきて、神田の地に根をおろしました。
現在の神田は「住むまち」ではなくなりつつある。その象徴が浴場の減少。今は3店のみ。理容室、美容室、クリーニング店も神田から少なくなりつつある。
神田っ子の特徴は、見栄とやせ我慢。なるほど、江戸っ子ですね・・・。
神田に中華料理店が多いのは、中国から日本へやって来た留学生が多かったことによる。明治37年には日本への留学生は1000人をこえ、明治後期には5万人もの留学生が日本にいた。
揚子江菜館の五目涼拌麺(ごもくひやしそば)が写真つきで紹介されています。ぜひ食べてみたいです。ぬきすし総本店の笹巻鮨は美味しそうですね。いちど食べてみましょう。
神田の古書街には160軒以上の古書店があり、世界最大。そこで売られている本は1千万冊だといいます。
ちなみに、私の東京の定宿の一つは山の上ホテルです。すぐ近くのイタリアン・レストランが美味しくて、最近の行きつけの店です。
神田の歴史の一端を知ることが出来ました。
(2017年5月刊。2800円+税)

象徴天皇制の成立

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 茶谷 誠一 、 出版  NHKブックス
今の天皇は象徴天皇制をまさしく慎み深く実践していると思いますが、昭和天皇は戦前の延長線上の考えを最後まで捨て切れなかったようです。
昭和天皇は首相や大臣から内奏(ないそう)と称する政治報告を受け、感想と称して自分の考えを述べ、政治への影響力を保持しようとしていたのでした。驚くべき事実です。
昭和天皇は、「立憲君主」としての自覚のもと、安全保障問題と治安問題に対して関心を示し続け、積極的な姿勢をとっていく。昭和天皇の安保と治安への関心は、反共主義(対ソ脅威論)にもとづく政治信条に由来していた。
昭和天皇は、象徴天皇を実質的な国家元首として認識していたようだ。
昭和天皇は、憲法施行後も、首相や外相などの主要閣僚に対して必要に応じて政務報告を求めた。内奏は、大臣から相談を受ける権利にあたる。天皇からの指摘を受けて再考を迫られることがあった。激励する権利、警告を発する権利をも行使していた。
戦前・戦後の国家指導者層のなかには、天皇制の存続(皇統の維持)と昭和天皇の戦争責任問題を切り離し、前者を後者に優先させる者たちもいた。東久邇宮、高松宮、三笠宮らの皇族や重臣の近衛も天皇制の存続を最優先事項とし、場合によっては昭和天皇を退位させて戦争責任を一身に負ってもらい、皇統の維持をはかるという案を考慮していた。
これに対して昭和天皇は、幼い息子を天皇にしたときに摂政となるべき弟たちを信用できず、退位は出来ないと考えていた。
昭和天皇はアメリカ軍によって日本の安全保障を確保するというのが持論だった。その結果、在沖米軍による日本防衛という形式を考慮し、その意見をGHQ最高司令官のマッカーサーではなく、GHQ外交局長のシーボルトに伝えていた。
そして、天皇の「沖縄メッセージ」は、アメリカの意思決定に影響を与えた。
昭和天皇は、日本国内での共産党の言動にも敏感に反応していた。昭和天皇は、野坂参三の巧妙な宣伝街に不気味さを感じ、潜在的な脅威として警戒心を募らせていた。
昭和天皇と明仁天皇との間には、国民との接し方において違いがある。
昭和天皇は、戦前からの伝統にしたがい「上から」の仁慈の施しという側面が強い。明仁天皇は、国民とのより「対等」な視線での思いやりの施しがにじみ出ている。
昭和天皇は、国家の繁栄が前面に出てくるのに対し、明仁天皇は、国民の幸福を語る。真の意味での象徴天皇制の歴史は、まだ30年ほどでしかない。
今の天皇の生前退位をめぐって、象徴天皇とは何かを日本人はもっと大いに議論すべきだと思います。その点、この本は考えるべき手がかりをたくさん与えてくれます。一読してみて下さい。
(2017年5月刊。1600円+税)

「男はつらいよ」を旅する

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 川本 三郎 、 出版  新潮選書
1969年(昭和44年)夏、私が大学3年生のときにスタートした映画です。その年の1月に、東大安田講堂「攻防戦」があり、3月から授業が再開されました。
私の記憶では、東大の五月祭のとき、25番大教室でみたと思うのです。少なくとも翌年の五月祭です。大教室が学生の笑い声で揺れ、心の震える思いがしました。大学紛争(私たちは闘争と呼んでいました)で荒さんだ学内で、久しぶりに学生の笑いがはじけたのです。泣き笑いのある、ホロリとさせる人情話でもあります。
当初の観客は50万人。第8作(1971年)で100万人をこえ、第10作では200万人突破というのですから、そのすごさに声も出ません。
1年に、夏と正月に、律気に繰り返された寅さん映画の大半を私はみています(残念なことに全部ではありません)。
寅さん映画を「なまぬるい」と評する映画評論家がいるそうですが、私には理解できません。といっても、同世代の女性にも、「私はみないわ」と断言する人がいて驚きました。好きなら好きで、はっきりしてよ、私はどっちつかずのストーリーなんて見てられないのよ、というんです。なーるほどね。でも、その、うじうじしているところがまたいいんですけど・・・、と反論しようとして、思いとどまりました。
葛飾柴又には、最近行ってませんが、私も2回か3回は行ったことがあります。いかにも東京の下町風情だと思ったのですが、この本によると、柴又は決して下町ではなく、市中から遠く離れた「近所田舎」なのだそうです。つまり、郊外の行楽地なのです。下町ではないんですね・・・。
おいちゃんの店は、39作までは「とらや」、そのあと「くるまや」に変わっているとのこと。気がつきませんでした。現地に行くと、そっくりの草だんごを売っている店がありますよね。
さくらが博さんとアパートを出て、一戸建ての家に住むようになった家は、平成3年(1991年)、鉄道開通のときに撤去されて今はないそうです。
私は、弁護士になってまだ10年にもなっていないころ、NHKの朝の番組に出演し、おばちゃん(三崎千恵子)と話したことがあります。生放送(全国放送)でしたから緊張もしましたが、いい経験でした。
この本は、寅さん映画で登場している全国各地を著者が取材してまわってレポートしたものです。映画が撮影された当時にはあった線路や駅、そして商店街がなくなっていることが次々に伝えられ、物悲しくなってきます。
JR各社は金もうけ本位で、金持ち向けの七つ星とかナンタラには力を入れて、田舎のローカル線をどんどん廃線にしていきました。公共交通機関としての使命を投げ捨ててしまっていることに怒りを感じます。国労つぶしの負の遺産です。
先日の大雨で被害にあった日田市の小鹿田(おんだ)焼の里までロケ地だったなんて知りませんでした。第43作、「寅次郎の休日」です。後藤久美子が出ていて、宮崎美子も出演している映画なので、みているはずなのですが・・・。
寅さん映画48作の全作品に出演している女優がいるというのを初めて知りました。谷よしのという脇役専門の女優です(2006年に死去)。商人宿に寅が泊まって、「いらっしゃい」とお茶を運んでくる女中役です。「邪魔にならない。目立たない。まるで風景のように歩いたり、たたずんだりできる人」、というのは山田洋次監督のほめ言葉です。60年以上の女優生活で1000本の映画に出たというのですから、想像を絶します。
著者は、寅さんシリーズが長続きした理由のひとつに出演者の顔ぶれが固定していたことをあげています。おなじみの俳優が出演して、観客に、そこに家族がいるような安心感を与えた。この点は、私も、まったく同感です。そして、山田監督があきさせないマンネリズムから脱却し続けたという点に頭が下がります。
女優ナンバーワンは、なんといってもリリーさん(浅丘ルリ子)です。
「幸せにしてやる?大きなお世話だ。女が幸せになるには、男の力を借りなきゃいけないとでも思っているのかい?」
胸のすくタンカです。浅丘ルリ子は、これで女を上げた。
「寅さんロケ地ガイド」という本(DVDマガジン)があるそうですね。まだまだ日本全国には、行ったことのない、行ってみたいところがたくさんありますよね。それを知ることのできる本でもありました。いい本をありがとうございました。
(2017年5月刊。1400円+税)

在日米軍

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 梅林 宏道 、 出版  岩波新書
首都東京に巨大な外国軍の基地があって、アメリカ人が自由気ままに入出国しているなんて、まるで日本はアメリカの植民地です。しかも、その外国軍たるや日本を守るためにいるわけではありません。すべてはアメリカ本土の命令に従うだけです。
なんで、こんな巨大な外国軍が戦後70年以上も日本に居すわっているのか・・・。要するに、日本が至れり尽くせりの優遇をしているからです。例の「思いやり予算」です。日本の高速道路だって、アメリカ軍人はタダで走っているとのこと。ひどい話です。
諸外国では兵力を半減しているのに、日本は相変わらず、24万人の将兵をかかえています。そして、軍事予算が安倍政権になってから増え続け、今では5兆円を軽く超えています。例の北朝鮮ミサイルうち上げの「効果」です。
日本の高額支援のおかげで、アメリカ軍を配備するのに、日本はアメリカ国内まで含めて世界でもっとも安上がりの場所だ。
日本のアメリカ軍の駐留経費の負担率は74%をこえ、同盟国のうちでトップ。ドイツの32.6%、韓国の40%、イタリアの41%を大きく上回っている。
在日アメリカ軍は5万人で、海軍と海兵隊が、それぞれ2万人ずついる。
在韓アメリカ軍は3万人弱。
沖縄は、海兵隊の練度を退化させる。沖縄は利用できる訓練区域はとても少なく、スペースが小さい。地域の政治問題があるので、実弾砲弾射撃は許されていない。訓練の必要性をみたさないので、アメリカ本土で身につけた技術は徐々に退化してしまう。
アメリカ軍がアジアにいる結果、中国や北朝鮮の軍拡を推進してきたという側面は大きい。
横須賀を母港とする原子力空母、ジョージ・ワシントンは加圧水型軽水炉2基で動力をまかなっている。東京湾に原発が浮かんでいることのリスクは、きわめて大きい。
ロナルド・レーガンは3.11のあと「トモダチ作戦」に従事したが、多くの乗組員が被曝し、アメリカの裁判所で裁判が始まっている。
2001年(平成13年)の9.11のあと、根拠もなくイラク戦争に走ったアメリカは、国際法も無視した無法国家そのものだった。
日本にいるアメリカ軍が日米安保条約の取りきめにしたがって、日本を守るなんてことは絶対にありえないし、起こりえるはずもありません。
兵士の精神状態、士気を維持し、向上させるためには、使命感と特権意識を植えつける必要がある。なるほど、戦前、大坂で起きた「ゴー・ストップ事件」で、それが認められます。
トランプ大統領のSNSをみていると、アメリカこそ世界最大の「ならずもの国家」ではないかという気がしてなりません。あんな大統領が核のボタンを持っていることを考えると、北朝鮮なんて、まだかわいいと思えてしまうほどです。
そして、日本ではアベ首相がもっとも危険人物と考えるべきではないでしょうか・・・。
(2017年6月刊。880円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.