法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: 社会

日本のタクシー産業

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 太田 和博・青木 亮・後藤 孝夫 、 出版  慶應義塾大学出版会
私も毎日のように利用しているタクシーについての総合的な研究書です。
タクシーの利用者が減っていること、タクシー運転手の減少はその低賃金が原因であること、65歳以上の運転手が増えていて、事故もそれに伴って増えていることなどを知ることができました。
私の知っているタクシー運転手の多くは月収(手取り)10万円台であり、20万円をこえる人は多くありません。その変則勤務は苛酷なものだと思うのですが、それに見合うだけの給料にはなっていません。
タクシー会社は果たしてもうけているのか、全国展開している会社はもうかっているのか、自動車事故に備えて任意保険には加入しているのか、事故処理はどうなっているのか、いろいろ知りたいことが生まれてきます。
タクシー利用者数は、1990年度の32億2300万人から、2009年度は19億4800万人へと4割も減っている。1987年度の33億4200万人がピーク。営業収入も1991年度の2兆7570億円をピークに減少しており、2013年度は1兆7357億円と4割減になっている。個人タクシーは4万7077台から3万6962台へ2割以上も減っている。
タクシー業界には小規模事業者が多い。車両数10両までの事業者が1万1001社(70.3%)、30両までの事業者が2540社(16.2%)で、86.5%という圧倒的多数が車両数30両までの事業者で占められている。84.6%が資本金1000万円までの事業者である。
過去には、ハンカチタクシー、書籍タクシー、共済組合タクシー、赤帽タクシーというものが存在した。私は知らないことです。
東京のタクシーについてみると、輸送人員はピーク時の1987年に4億4500万人だったのが、2014年には2億8300万人とピーク時の3分の2にまで減少している。そして、運送収入はピーク時の2007年の4770億円から2014年位3870億円と2割ほど減った。
東京では流し営業が90%と、圧倒的に多い。
戦前の1983年に8000台のタクシーがいたのが、空襲に焼け出されて、1944年には4700台になっていた。
タクシー運転手に女性は少なく、2.5%でしかない。タクシー運転手の高齢化は著しい。60歳以上が3分の2を占め、全体の4割は65歳以上となっている。
タクシー運転手の賃金水準は低く、月に24万円、年収にして310万円。これは、全産業の平均年収548万円と比べて、238万円も低い。
単純オール歩合制のタクシー会社が増えている。
タクシーでは労働時間が長いことを見逃してはならない。
かつてのタクシー業界は失業した人の受け皿として機能していた。今では、そうなってはいない。何でも規制緩和だなんて、とんでもないことです。
タクシー料金の決め方についても触れられています。
タクシーの社会経済的な実態を明るみに出した画期的な本だと思いました。タクシー業界に関心をもっている人には一読をおすすめします。
(2017年7月刊。4000円+税)

老人一年生

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 副島 隆彦 、 出版  幻冬社新書
私たち団塊の世代が古稀の世代に突入しつつあるなかで、身体のあちこちが悲鳴をあげている人が目立ちます。私も、ほんのちょっとしたことで先日来、膝が痛くてたまりません。
この本は、私たちより少し年齢(とし)下の著者が老人とは何かを端的に表現していて、なるほど、そうだよねと深く大きくうなずいてしまいました。
老人とは何か。それは、痛いということ。老人は痛いのだ。
としをとると、あちこち体が痛くなる。老人になるとは、体があちこち順番に痛くなることなのだ。誰もが老人痛になる。それが運命だ。老人病は治らない。体のどこが悪くなるかは、その人の運命だ。その運命を運命として引き受けるしかない。自分の体を医師に丸投げせずに、病気と向き合いながら、その時その時、自分自身で対処していくしかない。
著者はビールを飲むのをやめて焼酎党になったとのこと。私も同じです。ビールはもう5年以上も前に飲むのを止めました。今も、焼酎の水割りを飲みながら書いています。20度の焼酎を10倍以上に水がわりに薄めて飲んでいるのです。もちろん冬は、お湯割りです。
著者は鍼灸師に月に2回通っているとのことです。子どもが身近にいたら、私も鍼灸をしてもらいます。ツボに温灸をすえるのも気持ちのよいものです。すっきり、しゃきっとした効果があります。そして、膝の痛みには全身マッサージをしてもらいます。血行を良くするのです。昔、膝にヒアルロサンの注射を打ってもらったことがありますが、注射は怖いので、1回だけでやめました。
虫歯はありませんが、一本だけ差し歯にしています。目は白内障の徴候があると診断されています。耳は聞こえにくくなりました。
著者の薬嫌いは徹底していて、高血圧なのに血圧を下げる薬を飲んでいないそうです。私も基本的に薬は飲みません。皮膚科の軟こうはすぐに塗りますし、目薬もよく目にさしますが、飲む薬はほとんど飲みません。
老人になるとは、どういうことなのかを同世代の人々に分かりやすく説明した本でした。
(2017年5月刊。760円+税)

あの会社は、こうして潰れた

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 藤森 徹 、 出版  日経プレミアムシリーズ
日本の中小企業がどんどん倒産・閉鎖しています。弁護士の業界でも苦戦している人が多いのは、これまで弁護士にとっての主要な取引先だった中小零細企業や商店が半減してしまったことにもよる。私はそう考えています。
ゲームセンターは苦戦している。ゲームセンターの市場規模は2007年がピークで6780億円あったのが、2015年には4050円と、4割減だ。これは、ネットを使ったオンライン・ソーシャルゲームの影響だ。2015年には、ゲームセンターの2、4倍、9630億円にまで拡大している。
消費者の呉服離れが続いている。呉服の購入額は、この10年間で半減した。
建設業界やサービス業界では、人手不足が想定以上に深刻になっている。
財テクが恐ろしい理由は・・・。もうかったら、人には絶対に言わない。ましてや、損をしたら、絶対に外部には言わない。
100年以上も続く老舗企業には3つの特徴がある。
①事業継承(社長交代)の重要性
②取引先との良好な関係
③番頭の存在
会社にも寿命があるように、つぶれる会社には、何かしら理由があったということのようです。
(2017年5月刊。850円+税)

倍賞千恵子の現場

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 倍賞 千恵子 、 出版  PHP新書
「男はつらいよ」「幸福の黄色いハンカチ」、「家族」「故郷」・・・みんな、すごくいい映画でした。倍賞千恵子が出てくると、何かしらほっとして安心してしまうのです。不思議な女優さんです。美人だと思いますが、決して絶世の美女ではない、なんとなく声かけやすい美女です。
渥美清っていう役者は、山田洋次監督の書いた台本をもうひとひねりしていたのですね。そして、それを山田監督が取り入れて、台本を修正する。それが号外として登場するのだそうです。
渥美清は衣装に着換えるとき、いつもと同じ担当者と軽口をたたきながらしていた。それが、寅さんになるときに必要な儀式だった。なるほど、ですね。ただ衣装を着たらいいというものではないのです。やはり、寅さんそのものになり切っていくための儀式があったのでした。
渥美清は、自分の私生活を最後まで語らなかった。代官山に家族とは別のマンションを構えていたが、それも知る人ぞ知る私生活の秘密だった。
精神をいつも鉛筆の先のように尖らせておく。だから一人でいたいんだよ。
「役者は役名でよばれるうちが花だよ」
渥美清が著者に言った言葉です。著者が周囲から「さくらさん」と呼ばれることをうとましく思っていると語ったときの反応でした。
渥美清は、余計なことをせず、必要なときに必要なことだけをする。そんな人間だった。「男はつらいよ」第一作は1969年に第一作でした。そのとき渥美清は41歳、著者は26歳でした。それ以来、26年間にわたって、兄と妹を一緒に演じたのです。すごいですね。
そして、渥美清は今から20年も前の1996年8月4日に、68歳で亡くなりました。最終作(1995年)の「寅次郎の花」では、おいちゃんの家の居間で横になっています。きっと体がきつかったのでしょう・・・。
著者は山田洋次監督について、一生懸命なあまり、すごくせっかちになったり、非常識だったり、ちぐはぐだったりすると評しています。そこが面白いとも言うのです。
山田監督は、自分の意図したイメージのほうへ強引に芝居をもっていくのではなく、役者のもっているいろいろな引き出しを開けて、「台本とは、ここの部分で合わなかったから、今度は違う引き出しを開けてみよう」と台本を手直ししたり、場合によっては、カメラの位置を変えたりする。
やっぱり映画は、お金を払って、映画館で見なくては・・・。照明がずっと落ちたあと、目の前いっぱいに広がる映像。劇場空間を満たす音。そして客席から一斉にわき起こる笑い声、すすり泣き。
本当にそうなんです。子どものころよくみていた西部劇の初めに出てくる大草原、そこにあらわれるヒーローのガンマン・・・。格好よかったですね、しびれましたね。いい本でした。渥美清の雄姿をまた映画でみたいものです。
(2017年7月刊。920円+税)

他人をバカにしたがる男たち

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 河合 薫 、 出版  日経プレミア新書
自戒をこめて謹んで読んだ新書です。
日本企業に「ジジイの壁」は不滅だ。ジジイは肩書きや属性で人を見る。自分より上なのか、下なのか、で判断する。
自分の知っていることがすべてと信じ込んでいるので、どこの馬の骨か分からない人をバカにする。相手への敬意もへったくれもない。
ジジイとは、自分の保身のためだけを考えている人のこと。組織内で権力をもち、その権力を組織のためではなく、自分のために使う。会社のため、キミのためというウソを自分のためにつき、自己の正当化に長けている。
だから、50代でもジジイではない男性はいるし、女性や若い人の中にもジジイはいる。
社内的に残念な人ほど、社外では偉そうにふるまう。それは自尊心を守るため。
日本のサラリーマン社会は、見て見ないふり症候群の輩(やから)であふれている。人を見下したり、バカにしたり、攻撃する行為の裏側には、他者から評価されたい、認められたいという自己愛が存在している。
次の3つの条件を満たす人が会社では出世する。一に、失敗もしないけれど、成功もしない。二に、よく動くけど、勝手には動かない。三は、下には意見するけど、上には意見しない。
イギリスでの調査によると、階層の最下段にいる公務員は、トップにいる人々と比べて死亡率が4倍も高い。トップが長生きするのは、彼らは裁量権をもっているから。責任感や几帳面さはマイナスに作用する。
日本では管理職の自殺率が5年で7割も増加した。管理職の自殺率は1980年から2005年の25年内で271%も増えた。
かつての日本企業の強みは、従業員が私は会社から大切にされていると思える関係性があったことによる。ところが、それが薄れている。多くの企業が危機に直面しているのは、成果主義とか人件費切り捨て策で非正規ばかりに頼ってしまう企業体質からなのだと思います。
それにしても、つい昔の自慢話をしてしまうというのは要注意なんですよね。本人としては自分の経験を教訓として伝えたいという気持ちがあるのですが・・・。難しいところです。
(2017年8月刊。850円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.