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カテゴリー: 生物

お蚕さんから糸と綿と

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 大西 暢夫 、 出版 アリス館
私が中学生のころ、通学路の途中に桑畑がありました。桑の実も、ほんの少しだけとって食べたことがあります。あまり美味しいと思わなかったので、1回か2回だけです。桑畑があるということは、そこらで養蚕(ようさん)していたのでしょう。
生糸を産み出す蚕(かいこ)は、この本では「お蚕さん」と「さん」づけで呼ばれています。
お蚕さんに満足のいくまで桑の葉を食べさせるため、土作り、肥料など桑畑は手入れが欠かせない。
この本に登場する養蚕農家は春と秋の2回、お蚕さんを育て、糸とりまでしている。飼っているお蚕さんは1万頭以上。1匹とは数えないんですね…。敬意を表しているわけです。
春は桑の葉がやわらかく、秋の葉はかたい。なので、お蚕さんのはき出す繊維は、季節によって手触りが違う。春の糸と秋の糸、糸には季節による違いがある。
うひゃあ、ちっとも知りませんでした…。
お蚕さんの食事は人間と同じで、一日三食。小さいときは1万頭いても1日800グラム、ところが大きくなると、80キロの桑の葉を食べ尽くす。そして大小便もたくさんするから、養蚕農家は掃除も大変。
育てはじめて20日目。お蚕さんが身体をそい上げたら、食べるのをやめる合図。
お蚕さんを1頭ずつ小部屋におさめていく方法と、わらをジグザグに打ったなかにお蚕さんを入れる方法とがある。
そして、お蚕さんは細い繊維は吐き出して、だんだん自分の姿は見えないように、真白いウズラの卵の形になっていく。
お蚕さん1万頭から、やっと着物3着分の糸がとれる。
お蚕さんが蛾になって、繭(まゆ)を破って外に飛び出したら困るので、その前にお蚕さんを殺してしまう。繭が破られたら、長い1本の糸がとれない。お蚕さんが繭から飛び出す寸前に乾燥させて、その命を止める。養蚕農家の仕事はここまで。
次は糸とりの仕事だ。繭は細い繊維でからみあって1本につながっている。
長いものは1500メートルになる。それを、20個ほどあわせると、1本の生糸・絹糸になる。
繭を80度の湯の中に入れて、繊維を取り出し、20本で1本の生糸にしていく。糸はあくまで均等な太さの糸にしなければいけない。糸とり機がまわる。
綿花からできている綿は木綿(もめん)。お蚕さんからできている綿は真綿(まわた)という。
真綿は、軽くて暖かい布団やジャンパーにも使われている。生糸から丈夫なパラシュートもつくられた。
お蚕さんのなかで、殺されずに繭の外に出た蛾は、パタパタと羽ばたくことはできても、実は飛べない。糸をとるために改良された生きものなので、飛べなくなってしまっているのだ。
カイコから生糸のできあがるまでが写真と解説文でよく分かりました。
群馬県の富岡製糸場を数年前に見学してきましたが、あそこはフランス人技師の指導によって工場がつくられ、運営されていました。日本からの生糸の輸出は明治期の日本の経済発展を支えたのですよね…。
(2020年7月刊。1500円+税)

山と獣と肉と皮

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 繁延 あづさ 、 出版 亜紀書房
女性写真家が猟師と一緒に山に入り、「殺す」行為を見たときの衝撃を語っています。
ところが、その直後に、肉を食べるほうに関心が移っていくのでした。まことに人間というのは身勝手な存在です。私も子羊の肉をいつも美味しいと思って食べています(でも最近は、残念なことに久しく食べていません…)が、赤ちゃんのときから羊を育てていたら、とても食べられないでしょうね…。
前に、豚を飼ってペットのように可愛がっていた女性が豚を美味しくいただいた(食べた)という体験記を読みましたが、なかなか出来ることではありません(これには飼って育てることも含みます)。
尖った槍のひと突きで猪の心臓を刺す。鉄パイプを思いきり振って猪の眉間を叩く。素早く銃の安全装置を外して引き金を引いて猪を殺す。現場で身近に「殺す」行為を見たときの「圧倒的な暴力」がびんびんと伝わってきます。
箱罠にかかった猪は目から怒りがあわらしている。あきらめという気配がまったく感じられない。追いくる生気に圧倒される。ところが、猟師が狙いを定めて槍を突き出すと、たちまち猪の動きは止まり、魂が抜けていってしまう…。そして、直後に「肉」が見えると、とたんに「おいしそう…」という喜びに近い感情が湧きあがってくる。ふむふむ、少しだけ分かる気がします。
猟師から、獲れたばかりの猪の心臓、ヒレ、ロース、後脚2本そして首をもらう。心臓は焼肉、ロースは焼肉とぽん酢味のしゃぶしゃぶにして食べる。心臓は、しょうが醤油に付け込んでおく。野生動物の肉は、スーパーで売っている肉と全然ちがって、料理する工夫や手間が多い。心臓は、しっかり血を洗い流し、スライスして焼肉にして食べる。独特の歯ごたえがある。猪の肉は、繁殖期のはじまる12月ころが脂が乗っていて、一番おいしい。
著者がついていく猟師は大型バスの運転手を定年退職する前から始めたベテラン。鹿と猪をあわせて年間100頭以上も獲る。とった肉を好みの人々に配っている。
罠にかかって死んだ獣は決して食べない。あくまでも自分が殺した獣を食べる。食べないときには山に埋める。すると、動物たちが寄ってたかって食べて、たちまち跡かたもなくなってしまう。
子どもたちと一緒に山に入って猟師が猪を殺すところ、肉として解体する場面に出かけ、また自宅で一緒に料理する。すごい家庭教育の実践ですね…。
私の家の近辺にはタヌキが巡回することはあっても、猪は見たことはありません。山中で猪と偶然に出くわしたら、本当に怖いですよね…。
こんな勇気ある女性写真家の作品を一度じっくり見せていただきたいものです。これからも健康に留意して、ご活躍ください。
(2020年10月刊。1600円+税)

マンモスの帰還と蘇る絶滅動物たち

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 トーリル・コーンフェルト 、 出版 A&F
19世紀半ば、アメリカ東部には30億から50億弱のリョコウバトがいた。ところが、人間の乱獲によって絶滅してしまった。安い肉として食べ尽くされてしまったのだ。
そして、1980年にヨーロッパの鳥100羽をニューヨークのセントラルパークに放したところ、今や2億羽も生息して、自然と農業の両方に脅威となっている。ヨーロッパホシムクドリだ。うひゃあ、そんなことが起きるのですね、信じられません。
シベリアの凍土に眠っていたマンモスの牙がどんどん掘られ、中国人バイヤーに高く売られている。毎年60トンものマンモスの牙が中国に売られている。
ある中国の企業は、15キロ以上にはならない遺伝子組換えミニブタを販売している。ブタにどんな斑模様がほしいかを前もって顧客に決めさせ、すべての赤ん坊ブタを注文どおりに組み換えようと計画している。
1876年に、アメリカは日本からクリの木を輸入した。日本のクリはアメリカのクリより小さく、樹木の美しさとその実のためだ。ところが、一緒にクリ胴粘病菌も日本から入ってきた。そのためアメリカの野生のクリは破滅した。日本のクリの菌に耐性がなかったからだ。アメリカでは50年間に300万本ものクリの木が枯れてしまった。
アメリカのイエローストーンにオオカミが放たれたことが自然生態系の保護にいいというのも最近では疑問符がついている。
人間に慣れすぎ、その行動を人間に合わせるようにならないように捕食動物を育てて、放つというのはとても難しいこと。
絶滅したマンモスをよみがえらせるというのは、実にむずかしいこと。マンモスだろうが蚊だろうが、動物が死ぬとその身体はすぐに分解しはじめる。長いDNA分子は、最初に壊れるものの一つだ。DNAは、タンパク質やほかの細胞構造に比べて、弱く不安定なのだ。
恐竜のゲノムを研究するには、DNAに6500万年間も残っていてもらわなければいけないということ。この道のりは遠い。とてもよく保尊された恐竜の化石を対象にして、なんとかほんの少しのタンパク質の固定はできた。コラーゲン、ケラチンなど。しかし、DNAはかけらさえ見つかっていない。
絶滅してしまった種を再び復元することがいかに至難のことなのかが、チョッピリ理解できました。スウェーデンの女性科学ジャーナリストによって書かれた専門的な本です。
(2020年7月刊。2200円+税)

おどろきダンゴムシ図鑑

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 奥山 風太郎 、 出版 幻冬舎
わが家にもダンゴ虫はたくさんいます。犬走りのあたり、また、小石を取りあげると、もぞもぞとうごめいています。孫たちは喜んで、ダンゴ虫を手のひらに乗せて、じっと眺めます。
ダンゴ虫は小さい子どもたちに大人気です。決して踏みつぶして殺そうとはしません。あくまでも可愛い仲間なのです。
この本は、いえ、この図鑑は世界のダンゴムシ(虫)のオンパレードなんです。うひゃあ、こ、こんなにいろんな形のダンゴムシがいるんだ…、おどろきました。
ダンゴムシは世界に1350種ばかり。甲殻類のなかのワラジムシ亜目(3700種いる)に属する。
著者は、ダンゴムシを自宅で飼育中とのこと。南西諸島の種を中心として200以上の地域のダンゴムシを、5万か10万か、20万か…。数えきれないほど…。うひゃあ、これはたまりませんね。いくら可愛いといっても、20万もいたら…、ぞぞっとしてきます。
でも、ダンゴムシの飼育は楽しいし、そんなに難しくはないとのこと。
ある程度の湿度を保つことが可能な湿らせた落ち葉や腐葉土を敷けば、どんな容器でも飼育できる。乾燥させないこと、落ち葉や隠れ家をつくることができればいい。餌はニンジンのかけらでいい。
ダンゴムシは、常に穏やかで平和に暮らしている。その様子を眺めていると、日頃のストレスなんて吹っ飛んでいってしまう。
ダンゴムシの一生は意外に長く、飼育下では3年も生きる。
ダンゴムシのほとんどは、社会性のある集団生活を送ることはなく、1ヶ所にたくさんいても、それは結果として集まっているだけで、単独行動を好む。
世界最大のダンゴムシは体長2センチもあり、イタリアに多く、フランスにも少しいる。
ダンゴムシは雑食性で、カルシウム含有量の多い落ち葉ほど、よく食べる。
わが家で見かけるのは、黒光りのするオカダンゴムシ。なんと日本には明治時代に入ってきた外来種だといいます。もとは、地中海が原産地なのです。
いかにも愛くるしい、丸まった姿のダンゴムシは、防禦こそ生きのびるための最大の保障と考えています。いやはや、いったい誰が、そんなことを考えついたのでしょうか…。
ダンゴムシのカラー写真を眺めているだけで、ついつい楽しくなるダンゴムシの図鑑でした。
(2020年6月刊。1300円+税)

オオカマキリと同伴出勤

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 森上 信夫 、 出版 築地書館
昆虫カメラマンというのが、いかに大変なものか、よーく分かりました。タイトルのオオカマキリと同伴出勤というのも事実そのとおりにあったことで、ウソでも誇張でもないのです。
オオカマキリの産卵シーンの撮影のときのこと。おなかがパンパンにふくれ、今にも卵を産みそうなオオカマキリのメスを一晩中見張っていたが、結局、朝まで産卵しなかった。このまま放っておくと出勤中に産卵してしまうのは確実。それで、オオカマキリをミニ水槽に入れて職場に同伴させた。そして、足もとに水槽を置き、水槽のフタに足をのせ、ずっとずっと貧乏ゆすりをしながら、職場で一日を過ごした。メスが落ちついて産卵できないようにゆすっていたのだ。
帰宅して3時間たち、ついにオオカマキリは産卵をはじめた。お尻から真っ白い泡を噴き出しはじめたのだ。一日徹夜して、貧乏ゆすりしながら仕事をして、帰宅してからもずっと眺めていたのが、ついに報われたのです。いやはや、なんという苦労でしょうか…。私には、とても出来そうもありません。
おお名人芸!すごいぞ自分!今日も完璧!ひとり自分をほめて悦に入る。
いやあ、なんだか怪しい気分ですよね…。
生きものカメラマンは、ことばの通じない相手に何もかも合わせる必要があり、仕事の時間をコントロールすることができない。
昆虫カメラマンは、カメラマンだけの収入では生活できず、やむなくサラリーマンと兼業せざるをえない。なので、夜と休日だけのカメラマンとなる。
モデルの昆虫は、なるべく自宅で飼う。自宅マンションのベランダには、たくさんの鉢植えや飼育ケースが並ぶ。そして、それを集中管理するのは大変。
昆虫カメラマンの世界は、なかなか代替わりしない。40代までは若手と呼ばれる。著者は58歳(のはず)。
ウスバカゲロウは謎の多い虫。その幼虫はアリジゴクと呼ばれる。ウスバカゲロウは、エサを食べている姿、交尾している姿、卵を産んでいる姿を見せない。
そんなウスバカゲロウの産卵シーンを夜のお寺の境内で三日三晩すごして、ついに撮影したのです。いやあ、すごい。そして、そのお寺の場所も撮影の時間も書かれていません。まさに、著者の「専売特許」なのです。いやはや…。
著者は昆虫を一度も「かわいい」と思ったことはないとのこと。「かわいい」のではなく、「カッコいい」のです。なーるほど、微妙に違いますよね…。
著者は、高校時代には数学で苦しめられ、ついには落第。ところが生物は、いつだって「五」、そして現代国語のほうも学年2位になったこともある。それで生物が好きだったのに、理学部生物学科ではなく、立教大学の文学部に進学。ええっ、大変でしたね…。
昆虫少年だった著者にとって、昆虫図鑑は、まさしくアイドル図鑑だった。
昆虫少年が終生「虫と添い遂げる」には、受験、就職そして結婚という三大関門がある。でも、その前に昆虫愛をたしかなものにする必要がある。
うむうむ、なかなか壁はあついのですね。
著者の家には、30年来、飼育昆虫がいなかったという日は一日もないとのこと。
昆虫がエサを夢中になって食べてくれる姿は非常に心癒される…。
読んでいるほうまで、なんだかホワッと心が温まってくるのです。いやあ、昆虫少年のまま大人になったって幸せな人生ですよね。
(2020年8月刊。1600円+税)

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