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カテゴリー: 司法

憲法の無意識

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 柄谷 行人 、 出版  岩波新書
とてもユニークな憲法9条論です。ええっ、こんな観点で考えることもできるのか・・・、と驚きました。
9条は、むしろ「無意識」の問題。保守派の60年以上にわたる努力は徒労に終わった。
9条は 憲派によって守られているのではない。その逆で、護憲派こそ憲法9条によって守られている。
9条は明らかに占領軍の強制のよるもの。しかし、憲法9条が強制されたものだということと、日本人がそれを自主的に受け入れたこととは、矛盾しない。
憲法9条は自発的な意思によって出来たのではない。外部からの押しつけによるもの。しかし、だからこそ、それはその後に、深く定着した。もし、人々の「意識」あるいは「自由意思」によるのであれば、成立しなかったし、たとえ成立してもとうに廃棄されていただろう。
マッカーサーの意図は、天皇制を維持することにあった。戦争放棄は、そのことについて国際世論を説得するために必要な手段であった。しかも戦争放棄は、マッカーサーよりも、むしろ日本の幣原首相の「理想」だった。
昭和天皇の関心は、何より皇室の維持にあった。そのためには、忠臣だった東條英機を非難し責任転嫁も辞さなかった。昭和天皇にとって、次に重要だったのは、日本の安全保障。そのため、米軍による防衛をマッカーサーに求めた。
憲法1条と9条とは密接につながっている。9条を守ることが1条を守ることになる。
9条における戦争の放棄は、国階社会に向けられた「贈与」なのだ。贈与によって無力になるわけではない。その逆に、贈与の力というものを得る。日本が憲法9条を文字どおりに実行に移すことは、自衛権の単なる放棄ではなく、「贈与」となる。そして、この純粋贈与には力がある。その力は、どんな軍事力や金の力よりも強い。
新自由主義とは、それまでの自由主義の延長上にあるのではなく、その否を。新自由主義は新帝国主義と呼ぶべきもの。
日本がなすべきであり、かつ、なしうる唯一のことは、憲法9条を文字どおり実行すること。私たちは、憲法9条によってこそ、戦争からまもられる。思想的リアリストは、憲法9条があるために自国をまもることが出来ないというが、そんなことは決してない。
「無意識の力」、「贈与の力」というものに気づかされました。小宮弁護士(飯塚市)から強くすすめられて読みました。なるほど、目新しい視点から9条の意義を改めて考えさせられる本でした。あなたも、ぜひご一読ください。
(2016年7月刊。760円+税)

変動期の日本の弁護士

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 佐藤 岩夫・濱野 亮 、 出版 日本評論社
このタイトルだと、弁護士生活も40年をとっくに過ぎた私は手にとって読まなければなりません。なぜなら、私はいったい日本の弁護士として、どんな位置にあるのか知りたいからです。もちろん、場所的には片田舎の弁護士でしかなく、大企業の顧問など無縁ですし、国際取引などしたことも、しようとしたこともありません。そして、労働者の側に立ちたいと思って弁護士になりましたが、実際に労働者側代理人として事件にあたったことは数えるくらいしかありません。もちろん、企業側に立って労働事件をしたことは、もっと少ない(業務上横領事件で解雇する側につきました。今でも、受任したのはやむをえなかったと考えています)のです。
この本は、2010年の日弁連による弁護士経済基盤調査のデータをもとにして議論されています。この調査は、私も一会員として回答したように思います。
弁護士人口は急増中。1980年に1万1千人だったのが、1990年に1万3千人をこえ、2000年に1万7千人をこえた。ところが、2000年代に入ると増加のスピードが加速し、2010年に2万9千人近くになり、2014年には3万5千人を突破した。これは2000年からの10年で日本の弁護士が一挙に2倍に増えたということ。
この弁護士急増については、弁護士会のなかには司法改革失敗だったと批判する人が少なくありませんが、この本は別の視野で問題提起をしていて、私はなるほどそういう面はあるよね、そう思いました。
弁護士人口の拡大は、中長期的に見れば、弁護士が果たしうる役割の対する日本の社会・経済の期待が従来よりも多様かつ広範囲に拡大していることに理由がある。
そうなんです。弁護士の知恵と力は、もっと社会の隅々にまで浸透する必要があると思います。それは過疎地だけでなく、過労死するまで働かされている大企業の職場にまで、弁護士の影響力が及ぶべきだということです。企業内弁護士は増えていますが、それは企業側の立場でしかありません。それとは別の視点からの弁護士活動があってもいいように私は思います。
かつて(1980年代)の弁護士の仕事は、債権回収と不動産を扱う訴訟事件が中心だった。しかし、今や、それが大きく変わりつつある。なるほど、私の扱う事件も大きく変わりました。今では家庭内のさまざまな争いに関与することが圧倒的に多くなりました。強烈な感情がからむことの多い事件ですから、関与する私たち弁護士の側も相当に疲れます。
弁護士の勤務形態としては、単独弁護士が減って、大量の「勤務弁護士」が増えている。私の法律事務所も最高で6人、今は4人の事務所です。
私は「単独」でやっていく自信はまったくありません。というのは、ネット検索をする意思も能力もないからです。今どき珍しいと笑われるかもしれませんが、スマホではなくガラケーですし、いつもはカバンの中に入れていて、ケータイを使うことはほとんどありません。
メーリングリスト(ML)は見てはいます。私の個人ブログもありますが、入力はしませんし、できません。するつもりもありません。こんな私もワープロの時代までは自分で入力していました。
この本によると、大規模事務所ではタイムチャージ方式で経営が成り立っているとのことです。訴額が小さく、弁護士報酬がそのままでは低額になりそうな事件では、たしかにタイムチャージが良さそうです。でも、私の40年以上の経歴のなかでタイムチャージはやったことがありませんし、パソコンそのものが苦手なので、挑戦しようと考えてもいません。
集中審理方式について、私は一般論としては賛成しますが、自分について言えば、やってほしくない審理方式です。大量の訴訟・交渉案件をかかえている「田舎の弁護士」としては、回転率を上げることが必要不可欠なのです。
弁護士の所得が一般的に低下したことは間違いないと私は考えています。しかし、東京の大企業を顧問先としている弁護士たちはアベノミクスの意思を受けて相変わらず超高景気のようです。地方の弁護士は、昔ほどはもうかってはいないというレベルではないのでしょうか・・・。一定年齢以上の弁護士は、そこそこの収入を確保していると考えています。
そして、国民一般の弁護士に対するイメージの低さには驚かされます。「大企業の味方」、「金持ちの味方」、「国・行政の味方」とあります。
弁護士自身は、私も含めて、弁護士イメージは、社会的弱者や少数者の味方であるとしています。このギャップは埋める必要があるように思います。
学術書なので、仕方のないことなのでしょうが、これで5000円は高いと思いました。
(2015年2月刊。5000円+税)

決断

カテゴリー:司法

著者 大胡田 誠 ・大石 亜矢子 出版  中央公倫社
全盲のふたりが、家族をつくるとき。全盲の弁護士と同じく全盲のピアニストが出会い結ばれて二人の子どもをもうけ、家庭を築きあげていく過程が語られています。
実際には毎日、大変な苦労があったことと思いますが、読み手の心を重くするどころか、ああ、人生って、こんなに素敵な出会いがあるんだねと、何かしら明るい希望をもたせてくれる爽やかなワールドへ誘ってくれます。
ちょうど花粉症の症状が出はじめていた私は、電車のなかで読みながら、目と鼻から涙なのか汁なのか分からず水様性のものがポタポタ垂れてきて、周囲に変なオジさんと思われないようにするのに必至でした。
妻は、出生したとき1200グラムの未熟児度。そのため、保育器に入れられ高濃度の酸素を与えられて網膜が損傷して失明した。光を認知できないので昼と夜が逆転してしまうことがある。昼も夜もない世界に住んでいるので、深夜を昼間と勘違いして深夜の3時ころ、靴音の違いを知ろうと遊んでいたころがある。
夫は、新生児の3万人に1人にあらわれる遺伝性の先天性緑内障のため小学6年生に完全に失明した。父親は、失明する前も失明したあとも、子どもたちを山のぼりに連れでいった。弟も同じ病気で失明している。FMラジオの音を頼りに、前へ、前へと進むうちに、見えないにもかかわらず、つまずいたり、転んだりしながら、前にある障害物や危険な穴などを察知する能力を体得すること、これを父親は求めた。すごい父親ですね、すばらしいです。勇気もありますね。
夫は中学生とき、学校の図書館で、竹下義樹弁護士(京都)の『ぶつかって、ぶつかって』という本に出会います。そして、そうだ、ぼくも竹下さんのような弁護士になろうと思ったのです。竹下さんの本はこのコーナーでも紹介したと思いますが、あらゆる苦難を乗りこえる力強い呼びかけに満ちています。そして、その呼びかけに中学生がこたえたのです。夫は、5回目の司法試験で合格しました。全盲の受験生は、4日間で36時間30分の試験時間ですから、朝から夜まで試験を受けている感じ。一般の受験生は22時間30分ですから14時間も余計に長いのです。これは大変ですね・・・。29歳で合格し、今は弁護士として立派に活動中です。前の本『全盲の僕が弁護士になった理由』はテレビドラマ化させたそうですね。
耳が慣れているので、パソコンでの読み上げ速度は普通の2倍に設定している。おかげで目で文字を追うのと遜色ない早さで文章を耳で読むとことができる。たいしたものです。
読むとモリモリと元気の湧いてくる本です。負けてはおれないなと気にさせてくれます。人間の能力のすごさ、無限の可能性を実感させてくれる本でもあります。決してあきらめてはいけないということです。
これからも、お二人には無限なくがんばっていただくことを心より願います。
(2017年11月刊。1500円+税)

憲法的刑事弁護

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者  木谷 明 、 出版  日本評論社
 今や日本の刑事弁護人の最高峰の一人として名高い高野隆弁護士の実践が語られ、刑事弁護人とはいかなる存在でなければならないかが明らかにされている本です。
 この本が高野弁護士の還暦を記念するものであることに少々驚かせられました。というのも、古稀を迎えようとしている私より10歳も年下になることを知って愕然としたのでした。
 編集代表の木谷明弁護士は浦和地裁で裁判長として刑事法廷で高野弁護人と何回となく対峙した経緯を有しています。
 高野弁護人の法延における弁論は、いずれも事件の本質を突くもので、容易に排斥することができない。主張・立証の仕方も実に巧みであった。そして、高野弁護人は裁判員裁判において、天馬空を行くがごとく、次々に無罪判決を獲得していった。
 いったい高野弁護士は、他の一般の弁護士と、どこが違うのでしょうか、、、。
 「一貫して本当のことを言えば、真実は必ず解明される」
 これは弁護人、検察官そして裁判官に共有されている観念です。しかし、この本はそんなものは、まったくの神話にすぎず、偽計だとします。高野弁護士は見事に喝破したのです。
 この本に、木下昌彦准教授が接見禁止が例外的な制度ではないとする小論を載せています。それによると、1994年までは接見禁止のついた裁判は2万件程度で、増えていなかった。ところが、1995年から増加に転じて、2003年には5万件を突破した。その後、2010年に3万6千件に減少したものの、2015年には再び4万件をこえている。
 そして、接見禁止率は1995年に25,7%だったのが、2015年には37,8%となっている。接見禁止は例外的な制度ではないと言わざるをえない。かつてのような暴力団事件や公安事件だけではない。そして、第1回公判期日まで、というのも公判前整理手続に長期間かかると、接見禁止期間も長くなる傾向にある。
 この本では、座談会がとりわけ読んで面白い内容になっています。高野弁護士は弁護士になって4年目にアメリカに留学し、2年間、憲法、証拠法、刑事手続法を猛勉強した。そして、アメリカで弁護士の仕事は、憲法価値によって依頼者の人間性を守る最後の砦となることだと学んだ。
 わが国の刑事被告人は、裁判官による裁判を本当に受けているのか、という問いが投げかけられる世の中に、高野弁護士は日本で弁護士として再スタートした。そして、弁護士には絶望する権利はない。なぜなら依頼者にとっては弁護士しかいないからだと高野弁護士は喝破する。
「赤ん坊殺し」とされた被告人の供述調書に、出産経緯のない警察官が勝手な想像で、現実にはありえない現状を刻明に記述しているというものがあったとき、やはり出産経緯のある女性弁護士の追及は力になります。男にはまったく分からない世界ですね、、、。まあしかし、現実には、それなりにつじつまのあう供述調書を裁判官はそのまま鵜のみにすることが残念ながらほとんどです。
裁判官が公正な第三者としての立証を捨てて、検察官の後見人になってしまっている。そんな法廷を、この40年以上のあいだ、私も何度も体験しました。
 高野弁護士は、法廷で次のように弁論する。
「裁判長。刑事裁判というのは、イメージや推測で行われてはなりません。刑事裁判は、証拠にもとづいて行われなければなりません。証拠を検証し、常識にしたがって判断して、被告人が訴因について有罪であることは間違いない、そういう確証がなければ、被告人は無罪でなければなりません。証拠を検証し、常識にしたがって判断して、被告人が有罪であることに一つでも疑問があったら、無罪の判断をしなければなりません。これは刑事裁判の鉄則であり、絶対に守られなければならないルールです。このルールが守られることによって、我々の自由な社会が維持されているのです」
 法廷で、この真理をゆっくりした口調で、しかも明快に目の前で説かれたら、聞いている人は皆、金しばりにあったようになること間違いありません。それだけ、高野弁護士の言葉には重みというか力があります。
 375貢と大部で、4200円もする本ですが、弁護士にとって一読の価値は大いにある本です。
(2017年7月刊。4200円+税)

裁判官、当職そこが知りたかったのです

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者  岡口基一、中村真 、 出版  学陽書房
 弁護士のつっこみに裁判官がボケることなく、まともに応答していますので、なるほど、そうなのか…と、つい思うところが多々ありました。若手にかぎらず、ベテラン弁護士が読んでも面白く、役に立つ内容になっています。少なくとも買って読んで損をすることはありません。
 裁判官は忙しいので、訴状を読んでとりあえずの心証をとってしまう。裁判官は訴状の第一印象に、少なくともしばらくは拘束される。
たいした内容でもないのに、準備書面がやたら長いと、もうそれだけでダメ・・・。
 証拠説明書は重要。裁判官は、まず証拠説明書を読んでから証拠を見る。
当事者の陳述書は証拠価値はない。それは単なる尋問のためのツールでしかない。
証人尋問の前の練習しすぎもよくない、これは言わされているなと裁判官が思ってしまう。
 代理人に信頼されていない裁判官は、和解もなかなかできない。代理人とケンカしたら和解は無理。判決は書くのが大変なので、裁判官はできたら判決を書きたくない。和解のほうがいいのは裁判官の共通認識。
 昔は(15年前までは)裁判所内に飲みニケーション文化があり、ほとんど毎日のように飲み会があっていた。いまは、裁判官は孤独になっている。
上でひっくり返されないように意識するというのは裁判官全員の共通認識。
岡口判事は大分出身で行橋支部長もしていました。父親は牧師です。その「要件事実マニュアル」を私が利用するようになったのは、この数年のことです。それまでは若手弁護士が身近にいましたので、利用しなくてすみましたが、今はいませんので、必携です。そしてFB仲間として、その情報発信の恩恵を受けています。
(2018年1月刊。2600円+税)

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