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カテゴリー: 司法

きょうも傍聴席にいます

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 朝日新聞社会部 、 出版  幻冬舎新書
法廷傍聴していると、世の中の断面をくっきりとつかむことが出来ます。そして、弁護人席にいると、傍聴席に誰がいるのかはとても気になることです。傍聴席に誰もいないと、法曹三者と被告人しかいませんので、気が楽です。たった一人の傍聴人であっても、傍聴人の眼を意識して手を抜けないね、法令どおりに発言・主張しないといけないな、そう思って緊張するのです。
全国各地の裁判所で法廷を傍聴し、そこで明らかにされた事情を掘り下げていますので、読みごたえがあります。通り一遍の新聞記事ではなく、事件の背景や本質に記者が迫ろうとしているのです。
祖母と母親が絶対君主のように君臨して娘たちを虐待していた家庭。ある日、姉妹が一致して反抗して祖母と母親に包丁を向けて殺害する。信じられない事件が起きています。
私は45年近くの弁護士生活で、担当した被告人が死刑判決を受けたというのは1件だけしか経験がありません。実に重たい事件でした。確定死刑囚として拘置所に入っている元被告人とは盆と正月にハガキのやりとりを続けていますが、年月とともに思考が深まっている気配を感じます。
いま、オウム真理教の「犯人」たちの死刑執行が迫っていると報道されていますが、私は早期執行はすべきでないと考えています。なぜ、あのような残虐な事件を「宗教」団体のメンバーが起こしたのか、もっともっと本格的に究明し、日本社会として大いに議論すべきだと思うのです。麻原を死刑にしてしまったら、そのような深いところでの議論ができにくくなると心配します。
副支店長をつとめる銀行員が5年間に10億円以上を横領・着服していた事件も紹介されています。不倫相手の女性にマンションを買い与え、自宅にも現金3億円があったというのです。銀行の内部監査は厳しいはずなのに、全国各地で相変わらず、昔も今も預金の横領事件が繰り返されています。
私が弁護士になって驚いたことの一つが、この横領事件の多さでした。現金を扱う職場では、どんなところでも横領事件はつきものなのです。目が覚める思いでした。
私自身は残念なことに裁判員裁判事件の弁護人をやったことがありません。それでも、裁判員裁判事件の法廷を傍聴したことがあります。弁護人も検察官も、もちろん裁判官も一生懸命に裁判の意義を説明していました。裁判官も一般市民に手続きを説明するので緊張しているように見受けました。いいことだと思います。
文庫本で280頁ほどの手軽な本です。世の中で何が起きているのかを知るためにも広く読まれることを大いに期待します。
(2017年11月刊。880円+税)

弁護士50年、次世代への遺言状

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者  藤原 充子 、 出版  高知新聞総合印刷
高知県での弁護士生活が50年になった著者が、その生い立ちから弁護士になるまでの苦闘の日々を振り返っています。
戦前は高等女学校に入ると、戦争たけなわですから、軍需産業へ女子挺身隊として駆り出され、勉強どころではありませんでした。学徒動員で働いていた工場がアメリカ軍の爆撃で焼失し、恩師も亡くなっています。
戦後は、大学に入ることができず、神戸経済大学専門部に入ります。そして、中学教師になるのでした。英語と高等科目を教え、日記は英語で書いていたのです。すごいですね。私もフランス語で日記を書こうかなとチラッと考えたことがありますが、すぐあきらめました。語学の勉強は毎日それなりの時間を確保する必要があるからです。私は読書のほうを選びました。
教師生活1年半のあと、三菱信託銀行神戸支店で働くようになりました。銀行では男女差別と果敢にたたかい、労働組合に婦人部をつくろうと必死でがんばります。銀行内には、男女差別は当然だという声が強くて、著者が支店で活躍するのを心良く思わない上司がいたようです。残念ですが、本当でしょうね・・・。
銀行で与えられた仕事についての不満から、次第に銀行を辞めて法曹界への転身を考えるようになったのです。著者は苦労したあげく司法試験に合格し、司法修習20期生になりました。同期には、江田五月、横路孝弘、高村正彦、そして宮川光治・元最高裁判事がいます。
著者は、原発と同じくアベ改憲は許さないと叫んで訴え、これまでスモン訴訟をはじめとする大型裁判にはいくつも加わっています。弁護士としての50年の歩みは下巻で紹介されていますので、今から楽しみです。
(2017年6月刊。1389円+税)

小説・司法試験

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 霧山 昴 、 出版  花伝社
ほとんどの弁護士にとって、司法試験とは悪夢のようなもので、とても思い出したくない、早く忘れ去ってしまいたいものです。ところが、著者は、その悪夢の日々を当時の日記やメモをもとに刻明に再現していきます。
それは、司法試験の勉強って、どうやって何を勉強するのか、授業には出席したほうがいいのか、ゼミでは何をどうやって議論するのか、それがまず明らかにされます。
そして、毎日の味気ない勉強をどうやったら集中して続けることが出来るのか、スランプに陥ったときの脱出法も語られます。たまには息抜きも必要です。アルコールにおぼれないように、健康管理しながら、意気高く、集中力を維持するにはどうしたらよいか。そのときには、笑いだって必要です。ええっ、受験生が笑って過ごしていいのか・・・。いや、むしろ必要不可欠だと著者は断言します。何を、どうやって笑うのか。
ついに試験本番に突入します。試験会場で心を落ち着ける秘訣は何か、もっている実力を過不足なく発揮するには、どうしたらよいのか。体調管理、とりわけ良質な睡眠時間をいかに確保するか・・・。時間配分はどうするか、正解なのか迷ったときの対処法、論文式試験で答案を書きすすめるときの筋道(アウトライン)のたて方をどうするか、そもそも文章を書きなれておくために有効なことはないか・・・。最後に遭遇する口述式試験で、試験官と気持ちよく対話するためにはどんな心構えが必要か。頭が白紙状態になったとき、どうやったら泥沼から脱出するか・・・。条文をおさえ、定義を述べて重要な論点を落とさない、そんな受験生になるためには、毎日、何が必要なのか・・・。
夏に試験勉強をはじめて5月に短答式を受けてなんとか乗り切り、7月の論文式には実力のすべてを出し切って、8月に山歩きをして、9月下旬の口述式試験では、試験官となんとか対話して合格にこぎつけた。そんな苦闘の日々が手にとるように刻明に再現された画期的な本です。
悪夢の日々が目の前によみがえってきます。全国の受験生を大いに励ましてくれると確信しています。480頁もある大作なのに、なんと定価は1500円。価値ある1500円です。ぜひ、手にとって読んでみてください。『司法修習生』(花伝社)の前編にあたります。
(2018年4月刊。1500円+税)

ライブ講義・弁護士実務の最前線

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 東京弁護士会法友全期会 、 出版  LABO
これはすばらしい。もちろん内容もいいし、本当に勉強になりますが、編集がすばらしい。表や写真のつかい方、カコミ記事の工夫など、編集も業と自称している私ですが、これは良く出来ていると驚嘆しました。
内容は4つのテーマですが、私には会社法とシステム開発をめぐる話は無縁ですので、パスしました。
第1講のGPS操作についての亀石倫子弁護士の話は別なところでも読みましたが、その語りが明快なので、実によく分かります。いったいGPS事件で弁護士報酬はいくらもらったのかなという下世話な関心を前からもっていましたが、報酬ゼロで着手金30万円を弁護団6人で分配して1人5万円ほどだということです。ただし、実費100万円は本人に負担してもらえたそうです。こんな事件だったら、私も同期の弁護士に呼びかけられたら手弁当で参加します。だって勉強になるし、同期で刺激しあえるじゃないですか・・・。
アメリカの連邦最高裁が前例のないGPS捜査は憲法違反だという判決を出していたのだそうです。でも、日本でもすぐに同じような判決がもらえるほど世の中は甘くありません。そして、先行事件では、GPS捜査では問題ないという判決が出てしまいました。
亀石弁護士たちは、GPSを実際に車に装備してラブホテルや病院の駐車場に置いて誤差を調べました。そして最高裁の弁護では、紙の文章を読みあげるのではなく、裁判官の目を見て弁論したのです。
実は、私も一般民事事件で最高裁の法廷で2回弁論したことがあります。どちらも逆転敗訴判決になったのですが、せっかくの機会ですので10分近く口頭弁論をしましたし、その場には東京で学生をしていた私の子どもたちを傍聴させ、社会科見学の機会としました。
亀石弁護士は、弁護団の作り方と運用についての工夫も語っていて、とても参考になります。亀石弁護士は、チームリーダーとして、人一倍の仕事をしたそうです。また、毎回の弁護団会議にお菓子持参だったとのこと。先ほどの5万円は、これに消えたのでしょうね・・・。
第2講の竹花元弁護士のメンタルヘルスと労働審判の話は、とても実務的で、ものすごく勉強になりました。ともかく詳しいのです。86頁も使って、様々な角度からアプローチし、実務的な問題点を解明しています。
会社側の代理人として訴訟に応じるときには、判決までいくと事件名として会社の名が公表されるという問題があることを依頼者である会社には知らせておくべきだということも参考になります。
メンタルヘルスの場合には、職場復帰が容易ではありませんし、会社側による休職命令も軽々しくは出せません。
本分250頁で2830円(単価のみ)というのは高いようですが、私などは前記2つの講義を受けただけでも十分にもとをとった気がしました。
(2018年2月刊。2830円+税)

弁護士って、おもしろい!

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 石田 武臣・寺町 東子 、 出版  日本評論社
私にとって、弁護士は、まさしく天職です。苦しい受験生活を経て司法試験に合格し弁護士になれて本当に良かったと思います。
私なりに一生懸命に弁護士をしているつもりなのですが、これでも事件の相手方(サラ金業者など)や、かつての依頼者から苦情申立や懲戒請求を受けたことが何回もあります。現役の弁護士である限り、苦情申立や懲戒申立をされるのは避けられないと今では悟(さと)りの心境です。無難にしておけば免れるかもしれませんが、「無難に」とか「大過なく」というコトバは私には無縁なのです。
この本には、老若男女の弁護士が弁護士の仕事の面白さ、やり甲斐を大いに語っています。なかには、本当にうらやましい話もあって、もっと私が若ければ・・・と思ったことも再三でした。
かつての法律事務所は「一見(いちげん)さん、お断り」があたりまえだった。今でも、それを高言するロートル弁護士がいないわけでもありません。要するに、ちゃんとした紹介者のない、見ず知らずの人が飛び込んできても、どこの馬の骨かわからないし、きちんと相応の謝礼を支払ってくれるという保証がないので相手にしない。そんな対応をするのが、普通でした。今でも高級料亭はそうだと聞いていますが、同じように特権的地位に弁護士はあぐらをかいていたわけです。
したがって、弁護士が御用聞きのようなことなんて見苦しいこと、恥ずかしい、もってのほかだという反発がありました。「アウトリーチ」なんて、とんでもないという発想です。福岡でも天神に法律相談センターを開設するにあたっては、似たような反発を受けました。今や隔世の感があります。
坪井節子弁護士が東京で子どもシェルターの活動を紹介していますが、本当に頭の下がる思いです。この13年間で、シェルターを利用した子どもは15歳から19歳まで、のべにして350人にもなります。そのうち、親との関係調整が出来て自宅に戻った子どもは2割にもなりません。多くの子どもは家には帰らない。高校を中退する。驚くべきことに、シェルター利用者の4分の3が女子なのです。親との関係では女の子のほうが難しいということでしょうか・・・。
子どもに寄り添うとは、想像を絶する苦しみを味わってきた子どもたちを前に、おのれの無力を痛感することから始まる。・・・すごい活動です。それでも子どもたちから教えられ、導かれていく喜びを味わうことが出来ると書かれていることが救いです。
弁護士のいない市町村は、まだまだ少なくありません。幸い、裁判所あるのに弁護士が一人もいないというゼロ・ワンの市はなくなっていると思います。ところが、過疎地に弁護士への需要はない、事件なんてない、もし、あったとしても都会にすぐ出てこれるから、なにも過疎地に弁護士が事務所をかまえる必要まではない。弁護士法人をつくって、法人の支店を置いて、週のうち何日間か、弁護士が交代で詰めておくだけで足りる(はず)。こんな考えの弁護士(会)がいます。
私は、乙号支部(今は正式には呼びません)に所属する弁護士として、これらは、とんでもない認識不足だし、誤りだと主張してきました。何らかのトラブルが身近におこるのは世の常ですが、そのときすぐに弁護士に相談しておけば、あとあとの対処がずいぶんと楽だったろうと思ったことは数えきれません。初期対応はとても大切なことです。
それにしても谷口太規(元)弁護士のレポートには驚嘆させられました。ひまわり公設事務所の弁護士として活動したあと、アメリカに留学し、今はミシガン州立の公設弁護人事務所で刑務所に長く服役していた人たちの釈放後の社会復帰を支援するソーシャルワーカーとして働いているのです。すごいことです。
この谷口(元)弁護士が弁護士とはいかなる存在なのか、次のように語っています。
弁護士は法律家だ。しかし、法律問題に直面するとき、その人は人生の曲がり角に立っている。このとき、人は負の出来事や感情と向き合い、自分の大切にしているものを考え、人生の意味を問う。弁護士は法律家であると同時に、そうした人々の、傷つきやすく、存在の根幹を賭した瞬間に立ちあう存在でもある。
そうなんです。人々の人生の重要な局面に、弁護士はそのすぐそばに立って支えることが出来るのです。弁護士って、だから面白いのです。
ぜひ、あなたも弁護士の世界に飛び込んでください。弁護士を将来展望の一つに考えている若い人に向けた、いい本です。ただ残念なのは、値段が少しばかり高すぎることです。
(2017年10月刊。2300円+税)

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