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カテゴリー: 人間

筋肉はすごい

カテゴリー:人間

 (霧山昴)

著者  青井渉、 出版 中公新書

 

小腸から肛門までは7メートルもあり、食物の消化、吸収、排出の過程を一日ほどですます。腸のぜん動運動を担うのが筋肉。体の動くところには必ず筋肉がある。

筋肉には収縮タンパク質があり、これが収縮しては緩み、また収縮しては緩むという繰り返して、体を動かすことができる。 このエネルギーは、細胞の中にあるミトコンドリアでつくられる。赤筋はミトコンドリアがたくさん含まれているので、エネルギーをつくるのが得意。赤筋は持久系スポーツに、白筋は瞬発系スポーツに向いている筋肉。

私は週に1回、プールに行き自己流のクロールで40分かけて1キロ(25メートルを20回往復)泳ぎます。まさに持久系です。速くは泳げません。

筋線維の比率は生まれながら決まっていて、後天的な要因によって容易に変わることはない。なのでスポーツ競技の得意、不得手、運動神経の良さは、ある程度、遺伝子によって決まっている。

ミトコンドリアは細胞内のエネルギー発電所と呼ばれ、酸素を使って大量の栄養素を燃やしてエネルギーを発生させる。筋肉は、このエネルギーを使って収縮する。

ミトコンドリアは赤筋に多く、長距離走のときにはエネルギー供給に貢献する。ミトコンドリア 遺伝子は母方のみから遺伝する。

筋肉はマイオカインという物質を分泌している。(ホルモン)血液中の乳酸は、ほぼ筋肉に由来する。

血糖は、脳が使う主要なエネルギー源。かつて疲労物質とされていた乳酸は、エネルギーとして利用できる有用な物質と認識が改められている。

ヒトの体の水分(体液)は弱アルカリ性に保たれている。これが少しでも酸性に傾くとエネルギーをだすシステムが働かなくなり、筋肉の収縮ができなくなってしまう。これが疲労の原因。

長期間同じ姿勢をすると、筋肉の血流の流れが悪くなり、酸素の供給が不十分となる。そうすると、ミトコンドリアでの代謝が十分にできないので、水素イオンが多くでている。

筋肉の主なエネルギー源は(血液中ブドウ糖)糖と筋肉内グリコーゲンと脂肪。逆に言うと、筋肉の中にグリコーゲンの量が多いほど、バテにくい。

筋肉のミトコンドリアは加齢とともに減少。運動を日常的に行うと、ミトコンドリアの数が増え、質も高まるので、安静にしていても脂肪を燃焼しやすい筋肉になる。

加齢による筋肉の減少をサルコペニアと呼ぶ。やせている高齢者より、少しぽっちゃりした高齢者のほうが元気で、要介護状態になりにくい。

フレイルとは、高齢期に生理的予備能力が低下すること。

腸内細菌は単に腸内にいるだけでなく、さまざまな物質を生み出し、ヒトの体のさまざまな部位にメッセージを送っている。

毎年、子どもの日には、近くの小山 (388メートル)に登ってきました。はかなり勾配のきつい坂道もありますが、頂上にある見晴らしの(下界を眺めながら)いい場所でお弁当開きをする気分は最高です。のぼっておりて自宅にたどり着くまで3時間です。まだ、なんとかのぼりおりできてほっとしました。万一、山の中で転落でもしたら、「老人が山で遭難」と報道されるのではないでしょうか。それを考え、ぜひ避けたいと慎重にのぼり、またおりるようにしています。おりるときのほうが、膝がガクガクします。

(2025年10月刊、1078円)

記憶と脳の探究

カテゴリー:人間

(霧山昴)

著者 櫻井 芳雄 、 出版 岩波ジュニア新書

このジュニア新書シリーズの本は私の愛読書です。中高生というジュニア向けだからといって、もちろん手抜きなんてありませんし、ともかく分かりやすいので、超シニアの私にとっても大変ありがたいのです。

記憶は刺激や経験のコピーでも痕跡でもない。記憶は、外界の刺激や自身の経験などを情報として脳がつくる。情報は、感覚記憶→短期記憶→長期記憶という三つのプロセスを流れていくが、その間に変換され姿を変えていく。

記憶は概念ネットワークとして存在している。しかも思い出すたびににそこから再構成される。これも、記憶は脳がつくるということ。記憶は思い出すたびに少しずつ変わっていく。

何も思い出せないにもかかわらず、実は覚えているという記憶を潜在記憶という。

AIを人工知能と呼ぶのはふさわしくない。なぜなら、知能と言いながら、AIは演算を繰り返しているだけで、何も考えていないから。

初めは文法を思い出しながら意識して話していた英語が、練習すると、考えなくてもスムーズに口から出るようになる。これは陳述記憶が非陳述記憶に移行した結果のこと。

記憶細胞の存在は否定されている。格子ニューロンがつくる場所(住所)の情報にもとづいて、場所ニューロンが特定の場所を記憶し、認識する。

記憶力そのものに個人差はほとんどない。「記憶できるもの」に個人差がある。つまり、誰にでも得意な記憶と不得意な記憶があり、何が得意で何が不得意かは、一人ひとり違う。

私は記憶力が良いほうだと思ってきました。歴史は日本史も世界史も好きで、得意でしたから、よく覚えられました。ところが、私は歌の歌詞を覚えることが全くできません。何ひとつとして歌詞の全部を覚えているものがありません。これは私が音痴で、歌うのが好きでないことに関係していると思います。人の名前も覚えられません。でも、顔は覚えられます。すると、知っている人なのに、その名前が出てこなくて、本当に困ることがしばしばです。

自閉症というのは、他の人や周囲の状況を正しく認識できないという先天的脳の障害。ほとんど学習障害をともなう。映画「レインマン」は私もみましたが、非常に心うたれる映画でした。

記憶をつくると脳が変わる。しかし、記憶で脳がどのように変わるかも、一人ひとり違う。

脳の大きさや重さや形態と脳の能力は関係がない。能力を決めるのは、外側からは見えない脳の中の神経回路の働き。

年齢(とし)をとっても、記憶は脳を変えていく。新たなニューロンが生じる神経新生(しんせい)は、80歳の脳でも生じる。

紙の本よりもデジタル教材を使うほうが学習の成績が悪くなる。紙の本だと、どこに何が書かれていたかという場所の視覚的イメージを記憶できるのに対して、パソコンの画面は自由に動いてしまうのでそれが出来ない。記憶術の一つに場所記憶法がある。

学業成績には遺伝の影響は大きい。しかし、すべてが遺伝で決まっているわけでもない。育った家庭環境や本人の努力も、けっこう影響する。遺伝だけで脳の神経回路をつくることは、まったく不可能。生後の学習などの経験でつくっていくことが必要。

大変勉強になりました。一読をおすすめします。

(2026年1月刊。968円)

世界自炊紀行

カテゴリー:人間

(霧山昴)

著者 山口 祐加 、 出版 晶文社

日本人の若い女性が世界 12ヶ国をまわって、38家庭を 取材。うち、各国2家庭ずつ 24組の自炊状況を突撃 取材した面白いレポートです。

料理と、それをつくり出した台所が紹介されていますので とてもイメージが湧き、さぞかし美味しいことだろうと、ついヨダレがたれそうになります。

この女性は人並み以上の強じんな胃腸の持ち主かと思うと、タイのカレン族の料理があまりの唐辛子の辛さに胃腸をやられてお腹を壊したと書かれていて、ああ、フツーの人だったんだねと、むしろ安心してしまいました。

台湾では共働きが当たり前で、男女の平等も当然のこと。台湾はベジタリアン人口の比率は13%で、インドに次ぐ世界二位。台湾のご飯は日本のご飯に比べて水分が少ない。パサパサとした炊き上がりになる。

学歴社会の韓国では、家族そろって食べるのが難しい状況。

ポルトガルでは、あらゆる料理に「バカリャウ」という干し鱈(タラ)が必ず入っている。

スペインでは、オリーブオイルをたっぷり使う、決してケチってはいけない。スペイン人は、1日に5回も食事する。夜ごはんは10時に食べる。それでも、寿命は世界第5位の長寿国。身体的ストレスの少ない生活ができるから…。

レストランの食事もいいけれど、美味しい家庭料理を食べると、心神ともに安心できますよね。

(2025年8月刊。2750円)

人間とは何だろうか

カテゴリー:人間

(霧山昴)

著者 酒井 邦嘉 、 出版 河出新書

 人間の意識は時間の流れのように常に直列的。ところが、心の大部分の過程は脳の領域のあちこちで同時にマルチタスクで進行していて、並列的。むしろ、自覚すらできない状態のほうがはるかに多い。

 これは私の実感にもよく合います。自覚的な意識としては一本線なのですが、実は無意識のうちにいろんなことを並列的に感じ、考え、事を起こそうとしているのです。たとえば、急に人前で話す必要があったとき、口をついて出てくるコトバは、その場の雰囲気をわきまえ、目の前にいる人の表情を読んで、その人の関心にあわせて無意識のものが意識としてあらわれるというのがフツーに起きるのです。人間の心とコトバの摩訶不思議です。

 AIを使っても真の対話・会話はできない。AIは、文字や音声で返答するか、それはコトバを合成しているだけで、意味や意図を推論しているのではない。だから会話にならない。

 「対話型」というのは大間違い。将来も「対話風」にとどまるだろう。要するに、AIは情報を処理しているだけで、自律的に思考しているわけではないのです。

AIを活用したら弁護士は不要となる。これは現時点では、まったくの間違いだと私は断言します。たしかに、過去の判例を集め、分析して、そこから得られるものは大きい。しかし、目の前の人間の抱える問題の、どこが最大の悩みなのか、コトバとして表出していない、最奥でうごめいている感情をどうやって引っぱり出すかというのは、生身の人間同士の対話でしか達成できません。

 だから大きな法律事務所としてパラリーガルとして判例検索などをしている人は失業してしまうかもしれません。

 人間は3歳児のころ、脳の重さが1キログラムを超える。このころ、言語獲得の転回点となり、一人前に話せるようになる。言語こそが人間の本姓(ほんせい)。言語が我々を人間にしている。言語は思考の道具である。

 人間とコトバ、そして意識の関係を対話形式で学ぶことができました。

(2025年12月刊。1100円)

人間の心が分からなかった俺が動物心理学者になるまで

カテゴリー:人間

(霧山昴)

著者 岡ノ谷 一夫 、 出版 新潮社

 著者は47歳で結婚したので、小学校高学年から47歳までが青春だとしています。初めて私は知りました。結婚するまでが青春だなんて……。しかも、そのうえ、小学1、2年生のころも十分青春だった気がする。そのころから好きな子がいたし……。というのです。驚きました。

 我が身を振り返ってみると、幼稚園に通っていたころ、朝は泣きながら通園していたのに、帰りは好きな女の子が園にいるので、いつもニコニコ手をつないで帰ってきていた。親から、何度も冷やかされました。その女の子の名前が「宮本さん」というのは、今でもはっきり覚えています。小学生のころには気になる女の子はいませんでした……。

 著者は小学3年生の夏休みに「巌窟王(がんくつおう)」を読み、10歳のとき、漱石の「草枕」を読んだそうです。早すぎますよね。そもそも、小学3年生のときに何を読んだか、よく覚えているものです。私は小学生のころは図書室で偉人伝を借りて読んでいました。それは覚えています。リンカーンやナポレオンなどです。

 著者は運動(スポーツ)が出来なかったとのこと。中学、高校時代に、スポーツができない男子には青春がないと書かれています。バレンタインのチョコレートが全然もらえなかったのです。私の中学・高校時代は、もっと前の時代ですから、そんなバレンタインなんてなくて幸せでした。私はスポーツでは困りませんでしたが、音楽は不得手でした。歌えないし、楽器は何も出来ません。せめてハーモニカぐらい吹けたらいいと思うのですが……。著者はギターが出来るというのですから、私はうらやましいです。

大学に入ったら、酒(アルコール)を飲めずに苦労したとのこと。私は、大学1年生のころ、寮でみんなで飲んでいて、ウィスキーを半分以上飲み、寮の廊下を「宇宙歩行」したことを今も覚えています。もちろん、翌日は二日酔いで、頭が痛くなりました。私の小学1年生のときから父が小売酒屋を始めていましたから、酔っ払いの醜態を散々見て、嫌だなと思っていましたので、その後は深酒することはなく、今日に至っています。酔っぱらうより、覚めた頭で本を読んでいるほうが、よほど私の性にあっています。

  1983年、著者は24歳のとき、アメリカに渡り、大学院生として勉強を始めます。たいした勇気です。TOEFLは515点でした(550点が最低ラインなのに…)。アメリカまでの片道航空券が54万円もしたそうです。今なら100万円以上という感覚です。講義は録音して、何度も聞き返して猛勉強。

 チャレンジャー号が打ち上げに失敗して、乗組員7人全員が死亡したとき、「アメリカは負けない。またやるんだ」という周囲の唱和に違和感を抱き、著者は日本に戻ることにした。なーるほど、ですね。

 日本のキンカチョウ(小鳥)は、ジュウシマツに子育てを委託して育っている。なので、親の声を聞かないで育っている。これは大きな影響を子に与える。子はオスの親鳥から隔離声を学ぶ必要がある。隔離声とは、鳥が仲間とはぐれてしまったときに出す、お互いを呼びあう声のこと。

 わが家でも、私が小学生のころ、ジュウシマツを飼っていました。店先に鳥カゴを置いていて、エサをやり、水を取り換えました。当時、よく見かける、あたりまえの光景です。そして、犬はスピッツがありふれていました。

 小鳥は、生後2ヶ月以内に父親の歌を音として記憶し、生後3~4か月のあいだに、いろいろな歌い方をためして、それが記憶された父親の歌と十分に似るまで練習を続ける。自分の歌を耳から聴いて、記憶と照合していく。そういうことなんですね。

 ジュウシマツでは、歌をうたう能力も歌を聴き分ける能力も、どちらも左脳に集まっている。これを実験で確かめるのです。すごいことですよね……。ジュウシマツの成鳥は、耳が聴こえなくなると、歌が劣化してくる。

小鳥そして動物たちの心を研究している学者の面白い青春記でした。

(2025年9月刊。1980円)

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